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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<62>国際化を推し進めるジロ・デ・イタリア 「世界一美しいレース」に各国のライダーが集結

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 2014年最初のグランツール、ジロ・デ・イタリアはアイルランドでの3日間を経て、いよいよイタリア本土でのレースを迎えます。これから待ち受ける熱き戦いに胸を躍らせているファンも多いことでしょう。レースの分析は追い追い書くとして、今回は、年々話題が大きくなりつつある「ジロの国際化」について触れたいと思います。

ジロ・デ・イタリアのチームプレゼンテーションで、日本チャンピオンジャージを着た新城幸也が、北アイルランドのベルファスト庁舎前を歩いた(ジロ・デ・イタリア2014)ジロ・デ・イタリアのチームプレゼンテーションで、日本チャンピオンジャージを着た新城幸也が、北アイルランドのベルファスト庁舎前を歩いた(ジロ・デ・イタリア2014)

30カ国の選手が参加 国際色豊かな大会に

 今年のジロはイギリス・北アイルランドのベルファストが開幕地となった。2000年代に入って以降、ジロとしては5回目の海外スタートであり、さらに将来的にはアジアやアメリカ大陸にまで“足を延ばす”計画があるとの噂も。事実、ジロを主催するRCSスポルト社は、今年からドバイ・ツアー(UAE)を開催しており、関係者の間では「ジロが進出する布石ではないか」とのもっぱらの評判である。

 海外進出の成果なのだろうか。ここ数年でジロに出場する選手の出身国に広がりが見えつつある。今年で言えば、30カ国からその国を代表する選手たちが集まった。参考までに、ベルファストでの第1ステージでスタートラインに並んだ各国選手の出走人数は、次のようになっている(リタイアした選手も含む)。

イタリア 59人
フランス 18人
オランダ 17人
ベルギー 15人
コロンビア 14人
オーストラリア 13人
スペイン 12人
ドイツ 7人
ロシア 5人
スロベニア 4人
アイルランド、ベネズエラ、デンマーク、オーストリア、ポーランド、 各3人
日本、スイス、カナダ、アメリカ 各2人
カザフスタン、ノルウェー、コスタリカ、パナマ、イギリス、ポルトガル、ブラジル、クロアチア、ベラルーシ、スウェーデン、フィンランド 各1人

 同国選手のみで構成されるチームや、国家プロジェクト的チームもあることから、一概に「どの国が多くて、どの国が少ない」といった比較は難しい。ただ、サイクルロードレースの先進国・後進国を問わず、これだけの国から選手が揃い、しかも同じ場所(ゴール)を目指してレースに臨むスポーツイベントは、素晴らしいというほかない。そこに「ジロの国際化」の意義や方向性を見出すことができる。

「イタリア人だけの大会にはしない」

マリオ・チポッリーニ(左)とマルコ・パンターニ。当時は出場選手の多くをイタリア人が占めていた(ジロ・デ・イタリア2001)マリオ・チポッリーニ(左)とマルコ・パンターニ。当時は出場選手の多くをイタリア人が占めていた(ジロ・デ・イタリア2001)

 ジロのレースディレクター、マウロ・ヴェーニ氏は、大会の国際化を強力に推し進めるキーパーソンだ。開幕前日の記者会見では、「ジロの国際化に向け、この10年ほどは懸命に働いてきた」とコメント。2000年以降の数年の大会を例に挙げ、「当時のジロはイタリア人選手ばかりだった。マルコ・パンターニ、マリオ・チポッリーニといったホスト国イタリアのライダーとチームが完全に支配していた。しかし今は、スペインやコロンビア、オーストラリアなどから若いライダーが多く集まっている」と、その変化を歓迎している。

 ジロならではの特色が国際化に活かされていることも見逃せない。総合争いにおいて、個人タイムトライアルの比重が大きくなりがちなツール・ド・フランスに比べ、ジロは急峻な山々が舞台になることが多い。仮にタイムトライアルで後れを取っても、山岳ステージで挽回するチャンスがめぐってくる。クライマーの中にはホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ)のように、自身の脚質について「ツールよりもジロ向きだ」と公言し、イタリアでの3週間に執念を燃やすライダーもいる。

 ヴェーニ氏は、「ツールは偉大であり、若い選手がジロをステップアップの場としてくれて構わない」と述べているが、選手としての最大の目標をジロに据えるライダーも多くなってきた。しかも、それはイタリア人選手だけでなく、ロドリゲスのような他国出身の選手にも浸透してきている。

多くの国からトップライダーを輩出するために

 ジロの国際化が推し進められる一方で、相反するような状況もみられる。例えば、第2カテゴリーのプロコンチネンタルチームから選出されるワイルドカード(主催者推薦)は、イタリアチームがほとんどを占めた(今回の選出についてはヴェーニ氏いわく苦渋の決断だったというが…)。また、イタリアのファンは当然のことながら自国ライダーの総合優勝やステージ優勝を望む。

北アイルランドで開幕したジロに、多くの観客が詰めかけた。イギリスやアイルランドでも自転車人気が高まっている(ジロ・デ・イタリア2014)北アイルランドで開幕したジロに、多くの観客が詰めかけた。イギリスやアイルランドでも自転車人気が高まっている(ジロ・デ・イタリア2014)

 そして、主催者がどんなに旗を振っても、各チームがさまざまな国のライダーを雇用しなければ国際化は進まない。すなわち、多くの国から“トップライダー”と呼ばれる域の選手が育たなければ、国際化は実現しえないのだ。

 もちろん、「ジロの国際化」というお題目のために、レベルの低い選手を獲得しようとするチームなど存在しない。RCSスポルトが打ち出す国際化への取り組みは、いわばUCI(国際自転車競技連合)が掲げる全世界への自転車競技の普及・強化あってのものだ。

 ツールが「世界最大の自転車レース」であれば、ジロは「世界一美しいレース」。そんな美しきレースが目指す国際色が、今後どのように広がりを見せていくのかにも注目してほしい。

ジロ第1週後半の展望

第5ステージ(5月14日、タラント~ヴィジャーノ、200km、難易度3)

 今大会最初の中級山岳ステージにして、頂上ゴールが登場。終盤2つの4級山岳は、1つ目をクリア後一旦下り、残り7kmからゴールに向かって再度の上り。ゴールまでのラスト1kmは最大勾配8%になる。総合争いを見据える選手たちにとって、足慣らしのステージとなりそうだ。

第6ステージ(5月15日、サッサーノ~モンテカッシーノ、247km、難易度2)

 中盤以降はほぼフラットなコースだが、ラスト8.5kmで2級山岳が突如現れる。上り始めてすぐに最大勾配10%の区間があるものの、その後は5~6%の上りがゴールまで続く。ゴール地のモンテカッシーノは第2次世界大戦で大規模な戦闘が繰り広げられた街だ。

第7ステージ(5月16日、フロジノーネ~フォリーニョ、211km、難易度2)

 前日までの2日間を耐えたスプリンターが再び主役となる。この日最後の山岳ポイント(4級)はゴールまで約40km。仮に上りで遅れても、挽回することが可能な距離といえそうだ。

第8ステージ(5月17日、フォリーニョ~モンテコピオーロ、179km、難易度4)

 いよいよ難関山岳ステージが登場する。終盤に1級、2級、1級と立て続けに山岳が登場。総合優勝候補をふるいにかけることになりそうだ。3つの山岳のいずれにも10%を超える勾配区間があるほか、ゴール前約250m地点が13%の上り坂。激坂ハンター向けのレイアウトだ。

第9ステージ(5月18日、ルーゴ~セストラ、172km、難易度3)

 2回目の休息日を前に、もう1度山頂ゴールを目指すステージが登場。セストラを目指す最後の上りは、16.5kmと距離は長め。残り5.5kmで最大勾配13%に達する。総合成績を左右する決定的な動きが起こるかどうかに注目したい。

今週の爆走ライダー-スヴェイン・タフト(カナダ、オリカ・グリーンエッジ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 5月9日のジロ第1ステージ。チームタイムトライアルの優勝候補として前評判の高かったチームは、強まる雨と風をものともせず、一寸の乱れなくゴールへと到達した。最後は、37歳の誕生日を迎えたチーム最年長にマリアローザをプレゼントする粋な計らいまで決めてしまった。

マリア・ローザに袖を通したスヴェイン・タフト。37歳の誕生日を祝う、うれしいプレゼントとなった(ジロ・デ・イタリア2014)マリア・ローザに袖を通したスヴェイン・タフト。37歳の誕生日を祝う、うれしいプレゼントとなった(ジロ・デ・イタリア2014)

 バラ色を身にまとったのは翌日だけだったが、レースをコントロールするチームのトレイン最後尾につけ、エースポジションで1日を過ごした。そして、後輩にマリアローザを譲った後は、再びいつものポジション。トレインの牽引役としてレースをコントロールする役割に戻っている。

 地元のコンチネンタルチームに所属した2008年に、個人タイムトライアルで世界選手権の銀メダルを獲得。それをきっかけに、31歳にして初めてプロチーム(ガーミン・スリップストリーム)との契約をつかんだ。年齢だけ見れば大ベテランの域に達しているが、トップシーンでのキャリアはそれほど長くはない。

集団を牽引するスヴェイン・タフト。トレインの先頭が定位置だ(ツアー・オブ・カタール2014)集団を牽引するスヴェイン・タフト。トレインの先頭が定位置だ(ツアー・オブ・カタール2014)

 自身はカナダ人だが、何かとオーストラリアに縁がある。2010年シーズン終了後、オーストラリア初のプロチームと謳われたペガサススポーツと一度は契約。しかしチームはスポンサーを確保できず、計画がとん挫したため、結果的に格下のプロコンチネンタルチーム、スパイダーテック(カナダ)で1年を過ごす苦労を味わった。2012年シーズンからは、オーストラリア初のプロチームとして発足した現チームに加わっている。
 
 アイルランドでの3日間を終え、リーダーチームとしてイタリア本土入り。マリアローザを着たときのようなインパクトはないかもしれないが、イタリアの道を先導する彼を目にする機会がきっとあるだろう。淡々と役目をこなす“仕事人”としての姿がこれほどまでに似合う選手は、そう多くはない。

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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