産経新聞【光る瀬戸内人】よりしまなみ海道を走るサイクリストへ生口島流のおもてなし 「レモン配りのおばさん会」出口王子さん

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 国内外のサイクリストに人気の「しまなみ海道」が通る瀬戸内海の生口島(いくちじま)は、日本一のレモンの生産地。その生口島で、訪れたサイクリストにレモンやミカンなど地元の柑橘類を振る舞っている「レモン配りのおばさん会」リーダーの出口王子(きみこ)さん(70)を、産経新聞記者が取材した。

◇         ◇

サイクリストに差し出される「地元の味」

 「レモン食べて行きんさい!」

 「お接待よ!!」

サイクリストにはちみつ漬けレモンを配る出口王子さん =広島県尾道市瀬戸田町サイクリストにはちみつ漬けレモンを配る出口王子さん =広島県尾道市瀬戸田町

 専用のウエアとヘルメットに身を固め、海沿いの道をさっそうと走るサイクリストに向かって“おばさん”たちの声が飛ぶ。

 いきなり声をかけられた人は、とまどいながらも笑顔に招き寄せられて道ばたに自転車を止める。とたんに差し出されるのは地元産の柑橘類。レモンのはちみつ漬けやひと口サイズにカットしたネーブルオレンジ、皮をむいてひと房ごとにしたハッサクなど、どれも食べやすくしてある。

 お礼を言って果実を味わった後は、たいていの人が自転車を降りて一休み。「どこから来んさったの?」「きょうはどこまで行くの?」と、にぎやかな“おばさん”たちとひととき会話を交わし、再びペダルを踏み出していく。

 ここは瀬戸内海に浮かぶ生口島。住所で言えば広島県尾道市瀬戸田町で、本州と四国を結ぶ3本のルートのうち最も西の「しまなみ海道」が通る島だ。しまなみ海道の特徴はなんと言っても橋を自転車で通行できること。このため、国内外からたくさんのサイクリストが集まってくる。

 “おばさん”たちはその名も「レモン配りのおばさん会」のメンバー。春から秋にかけてほとんどの好天の週末、大三島(愛媛県今治市)との間に架かる多々羅大橋の自転車道登り口に陣取り、「地元の味」をサービスしている。

不自由はない。というよりも食べきれない

 レモン生産量日本一の生口島。自らの呼びかけによって活動が始まったのは、橋が開通して間もない平成14年ごろだった。

 夫の退職でUターン。柑橘農家ではないが、ご近所からのおすそ分けで柑橘類に不自由はない。というよりも、食べきれない。「腐らせるくらいなら、自転車の観光客に配ったら喜ばれるのでは」と思いついた。

 最初のころは「余ってるレモンやミカンがあったらちょうだい」と、知人の農家に声を掛けて出荷基準に満たないものを分けてもらっていた。しかし、島中に活動が知られるようになってからは進んで持ってきてくれる農家が増えた。

 「島を訪れた人たちが喜んでくれると、私たちもうれしい。一切れのレモンから手紙のやりとりが始まったり、何度も来てくれる友人ができたりと、楽しいことがいっぱい。楽しいから続けているだけ」と笑顔があふれる。

 「ミカンを分けてくれる農家の協力や、道路脇のスペースを使えるようにしてくれた行政の支援などがあってできること。そういう意味では、配っている柑橘類は島全体からのおもてなしなんです」

(産経新聞福山支局・服部幸一)

産経新聞・広島版より

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