4カ所の競技場を転戦、年間全7戦を開催トラックレースを楽しもう 誰でも参加できる「関西トラックフェスタ」、プロ選手との交流も

関西のバンク(自転車競技場)を転戦して行なわれる、トラックレースのシリーズ戦「関西トラックフェスタ」の第2戦が5月6日、京都府向日市の京都向日町競輪場で開催された。多くのクラスが設けられ、ロードバイクで走るクラスもあるなど参加しやすいのが特徴。子供や女性の参加も増えており、今大会は100人を超える参加者がトラックでのレースを楽しんだ。
トラック競技を走る多彩な選手たち
関西トラックフェスタを主催するのは、元競輪選手の山岸正教さん。「トラックレースは自転車競技の基礎となる事が多く、もっと幅広い層に楽しんでもらいたい」という山岸さんの思いを具現化している大会だ。
参加選手も個性的な顔ぶれになってきた。2013年シリーズチャンピオンジャージを着る皿屋豊選手(イナーメアイランド信濃山形)は、今年のロードレースJプロツアーの開幕戦「宇都宮クリテリウム」で2位に入り、注目を集めている選手だ。
皿屋選手は、「トラック競技は今年3年目。友達に誘われて始めて、ハマってしまいました。(宇都宮で)2位になったのはトラック競技をやっていたからこそ。ゴール前の駆け引きはケイリンやポイントレースで勉強し、レースでそれを生かせたと思います」とトラック競技の魅力を語る。
女子の注目選手は、ロードやシクロクロスにおいて姉妹で活躍している、パナソニックレディース所属の坂口楓華選手。姉の聖香選手が関東の大学に進学したものの、コーチを務める父親や兄の聖成さんら家族と一緒に参加している。女子クラスはまだ人数が少ないため、45歳以上のマスターズクラスと混走しているが、脚力が違う男性選手の中でも着実に実力をつけており、高校生ながら果敢に走るシーンが見られる。兄の聖成さんもとても強く、まさに自転車一家だ。
そして山岸さんが京都産業大学自転車競技部のコーチを務めているつながりで、学生選手も参加しており、ときおり学生らしい応援が競輪場でこだまする。
小さい子供も参加。斜度のキツいバンクを頑張って走る姿には、将来、自転車選手になるであろう姿が重なって見えるようだ。
今年はシリーズ全7戦で開催
関西トラックフェスタは今年で3シーズン目を迎え、これまで開催されてきた向日町、旧大津びわ湖、奈良に、新しく岸和田競輪場が加わり、全7戦のシリーズとなった。各バンクは周長がそれぞれ異なり、奈良は333m、向日町と岸和田が400m、旧大津びわ湖は500mとなっている。周長やカント(傾斜)の違いによって走り方も変わってくるなど、トラックレースの奥深さを体感することができる。
昨今は自転車ブームと言われるものの、トラック競技の競技人口は少ない。近年の「ピスト自転車ブーム」も波及する事なく、マイナー競技にとどまっている。しかし、過去には日本からオリンピックのメダリストや世界チャンピオンを輩出しており、また国内には競輪を開催するために、トラック競技の専用競技場であるバンクが各地に存在している。バンクの保有数は世界の国の中でもトップクラスで、トラック競技が普及する環境は整っているのだ。

高校、大学の自転車競技部や国体でもトラック競技は行われており、そこからロード競技などへ転身して活躍する選手も多い。こういったトラック競技を一般の人にも認知してもらい、もっとシンプルで手軽に楽しめる環境を広める事を目的に、関西トラックフェスタは開催されている。
1日に複数の種目へ出場でき、団体種目のチームパーシュート、チームスプリントも走る事ができる。走る選手のレベルによってクラス分けされ、幅広い参加者がレースを楽しむことができる。
現役競輪選手の参加で盛り上がる会場 元五輪代表選手も
第2戦では山岸さんが元競輪選手の人脈を活かして呼びかけ、現役の競輪選手の参加があった。京都所属の選手から、今年の全日本選抜競輪を制した村上博幸選手が、川村晃司選手、窓場千加頼選手と共にチームスプリントのデモンストレーションを行った。プロが魅せる大迫力の走りに、会場からは拍手喝采が送られた。
デモンストレーションを終えた村上選手は次のようにコメントした。
「自転車が好きな人達が集まっているのが伝わってきました。自分達は職業として自転車に乗っていますが、また違うものを得たような気がします。皆さんの走りを見て、初心に帰るような気持ちになりました」
「チームスプリントはあまりタイムが良くなかったです。日頃は競輪の自転車で練習していますが、カーボンフレームとディスクホイールの自転車で走る難しさや楽しさ、ディスクが出す音は迫力を感じました」
「これでトラック競技も盛り上がって、競輪も見に来てもらえると嬉しい。自分の競輪も誇りに思える日でもありました」
ガールズケイリンからは山本レナ選手、山路藍選手がマスターズクラスに参加。同じく青木志都加選手がケイリンの誘導を務めた。参加者は、普段一緒に走る事がないガールズケイリンの選手達と競う、貴重な体験をする事ができた。ガールズケイリンの選手達は参加者と一緒に写真を撮ってもらったりと、交流を楽しんだようだ。
山本選手は「男性の方は脚力があったので負けたのが悔しいです」とコメント。大会に参加して、高校時代にアマチュアの自転車競技に打ち込んでいた頃を思い出したという。
またロンドンオリンピックに出場した現日本チャンピオンの前田佳代乃選手が、アジア選手権に遠征する前に選手のホルダーを手伝うといった姿も見られた。
トラック競技の発展を目指す 次回は岸和田競輪場で開催
この日のプログラムは、落車もなく無事に終了した。山岸さんは「新しい顔ぶれが非常に多くて、トラック競技人気が広がってきたのかなと感じる事ができた一日でした」と大会を振り返った。
さらに山岸さんは、「今回は競輪選手によるデモンストレーションを入れたり、ガールズケイリンの選手がレースに出場したりと、新しい試みをしました。参加者と競輪選手が刺激しあって面白いレースになったと思います。こういう事を広げて、自転車競技と競輪が盛り上がってくれたらいいなと思います」と、これからの展望を語った。
次戦は6月22日に初の会場となる岸和田競輪場で開催される。ここは年末、競輪選手にとって特別な一戦「競輪グランプリ」の舞台となる競技場だ。そんな大舞台を走るチャンス。これを機にトラックレースにチャレンジしてみてはいかがだろうか。
(レポート 関西トラックフェスタ実行委員会・写真 中尾亮弘)