欧州現地レポート<下>「ブリヂストン アンカー サイクリングチーム」をフランスで支えるスタッフ 選手を包み込む安心感

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慣れた手さばきでランチ用のバゲットサンドイッチを作っていくミシェル・シャンペさんと水谷壮宏監督の夫人・セリンさん慣れた手さばきでランチ用のバゲットサンドイッチを作っていくミシェル・シャンペさんと水谷壮宏監督の夫人・セリンさん

 プロ・ロードレースチーム「ブリヂストン アンカー サイクリングチーム」は、活動拠点を埼玉県上尾市と、フランス中南部の都市、クレルモン・フェランに置く。シーズン中、フランスで過ごす期間は、ほぼ毎週末にレースへ出場するなど精力的に実戦・トレーニングを重ねている。今回のレポートでは、選手たちの生活や競技活動を支えるチームスタッフの素顔に迫った。(柄沢亜希)

チームメカニックが守る機材

 ブリヂストン アンカーの日本人選手らが共同生活を送る「ブリヂストンアンカーベース」が“ベース”(基地)たる所以は、ガレージを見れば一目瞭然だ。クランク、ハンドル、ペダル、クリート…プロ選手を支えるパーツの数々が、ガレージの突き当りの壁に設けられた手製の棚に所狭しと並ぶ。一見、無造作のようだが、中古品から新品まで、どれもきれいな状態で保管されている。そんな“宝の山”を前にすると、まるで秘密基地に迷い込んだような緊張感と興奮に包まれる。

ブリヂストンアンカーベースに備わるガレージブリヂストンアンカーベースに備わるガレージ

 選手とともにブリヂストンアンカーベースに住まうメカニック、金田正さんが守るこのガレージは、在庫の有無やパーツの新旧が把握しやすいように配列され、整理整頓が行き届いている。意外だったのは、すでにパッケージのないむき出しのパーツであっても、新品が多いということだ。その理由を、金田さんはこう説明した。

 「例えば日本のシマノからサポートされるパーツは、日本からフランスへ配送するよりも安く確実に手に入るため、選手やスタッフが日本へ帰国した際に自分たちの手でフランスへ運びます。その際、かさばる箱から中身を出して持ち帰るんです」

箱から出されて並べられた新品のスプロケット箱から出されて並べられた新品のスプロケット
チームメンバーのクランク長は「(清水)都貴は167.5で椿は172.5。長身のダミヤン、トマは175」チームメンバーのクランク長は「(清水)都貴は167.5で椿は172.5。長身のダミヤン、トマは175」
黒に統一しているというバーテープと新しいヘルメット黒に統一しているというバーテープと新しいヘルメット
ブリヂストン アンカー サイクリングチームのメカニックを務める金田正さんブリヂストン アンカー サイクリングチームのメカニックを務める金田正さん

 金田さんは、ブリヂストン アンカーのメカニックとして5年目を迎えるが、もともとはマウンテンバイク(MTB)のチームをサポートしていたという。そこでは冬季、シクロクロスの全日本チャンピオンだった辻浦圭一のメカニックも経験してきた。ロードチームへ移って2年、苦労する点は「MTBチームに比べて人数が多いので、その分機材の管理も大変です」と語る。特に大変なのは消耗品の管理で、代表例としてブレーキシューとタイヤを挙げた。

 「落車が多発するようなレースでは急ブレーキをかけるシーンも多く、部分的にタイヤのトレッド面が削れてしまいます。そうなると、そこからパンクしやすくなるので、まだパンクをしていなくてもタイヤの張り直しが必要になってきます」

 バイクの洗車に関しては、「一番大変なのはシクロクロス!」と笑い飛ばす。オフロード系競技で豊富な経験を持つ金田さんにとって、ロードバイクの管理はそれほど苦ではないようだ。この日も、雨のライドから戻ってきた選手がバイクを返しに来ると「きょうは車体を軽く拭いておけばOK」と素早く判断した。ただし、「ステアリングコラムはたまに開けて、ヘッドパーツにグリスを塗るなどしてメンテナンスをしますよ」と話すように、普段から整備の要点はきっちり押さえているそうだ。「軽く拭いておけば…」という言葉の裏には、レース前後にきちんとメンテナンスしているバイクだからこそ、それで良いのだというメカニックの自信が表れているようだった。

中古のフィアット・デュカートはチームトラックとして内装を加工中古のフィアット・デュカートはチームトラックとして内装を加工
機材が積み込まれたチームトラック内部機材が積み込まれたチームトラック内部
「もっとも扱いに気を遣うパーツ」代表の車輪は、ケースに収納して移動「もっとも扱いに気を遣うパーツ」代表の車輪は、ケースに収納して移動
車輪の積載部分。フランスには、こういった内装加工を請け負う業者が多くあるのだという車輪の積載部分。フランスには、こういった内装加工を請け負う業者が多くあるのだという
チームトラックに機材を積み込む金田さんチームトラックに機材を積み込む金田さん

レースの現場で頼れるサポート

レース前日、到着してすぐに選手バイクを試走用に準備する金田さんレース前日、到着してすぐに選手バイクを試走用に準備する金田さん

 チームが挑んだUCI1クラスのレース「ラ・ルー・トゥランジェール」(4月27日)の前日、メカニックの金田さんらチームスタッフは、選手たちが試走に出ている数時間以外、ほとんどチームカーやトラック周辺で作業を続けていた。レース当日の朝も、食事をいち早く終え、各自が最終準備へと向かって行った。

 レース中、メカニックは工具を携え、スペアホイールとともにチームカーの後部座席に控える。いざという時にホイールを持って飛び出すためだ。

 さらに、「ヨーロッパではチームカーから選手へ補給を手渡すシチュエーションが多い。なので、いつも(運転席の)監督とは反対側の後部座席に座ります」と金田さん。座席に器用に置かれたホイールは、カーボン素材が多用され、金田さんにとって「もっとも扱いに気を遣うパーツ」なのだという。

選手にドリンクを手渡すシャンペさん選手にドリンクを手渡すシャンペさん
チームカー後部座席に積み込まれた車輪。レース当日、メカニックはこの隣に座るチームカー後部座席に積み込まれた車輪。レース当日、メカニックはこの隣に座る
慣れた手さばきでランチ用のバゲットサンドイッチを作るセリンさん慣れた手さばきでランチ用のバゲットサンドイッチを作るセリンさん

 補給地点で配ったり、チームカーから直接手渡したりする補給食は、事前にスタッフの手でサコッシュバッグに詰められる。今回のレースで、前日の試走時と当日の朝に補給食やドリンクを準備していたのは、チームマッサージャーを務めるミシェル・シャンペさんと、水谷壮宏監督の夫人・セリンさんだ。

 シャンペさんは、水谷監督の若手時代も知るというベテランスタッフ。2人の付き合いは長く、水谷監督が15歳で渡仏し、学業とともにレース活動をスタートさせた際に、各地のレースへ連れ出すなどサポート役を買って出たのがシャンペさんだった。水谷監督にとっては「師匠、そして大切な人」なのだそうだ。

 悪天候に見舞われた今回のレースでは、清水都貴以外の選手が全員リタイア。補給地点は、残念ながら初山翔とトマ・ルバをチームトラックへ回収する地点となった。そんな状況でも、選手たちを温かく出迎え、てきぱきと機材を片付けていくシャンペさんの落ち着いた仕事ぶりが印象的だった。

補給として手渡されるサコッシュバッグの中身補給として手渡されるサコッシュバッグの中身
回収車からチームの機材を受け取る回収車からチームの機材を受け取る
リタイアした選手のバイクをチームトラックへ片付けるリタイアした選手のバイクをチームトラックへ片付ける

◇         ◇

 フランス国内外でいくつものワンデイレースやステージレースをこなしてきたブリヂストン アンカー サイクリングチームは、5月18日に開幕する「ツアー・オブ・ジャパン」に出場するため、まもなく日本へ帰国する。水谷監督は「準備は万端」と自信をみせており、チームは一丸となって勝利を目指す。

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