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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<61>ジロ・デ・イタリア開幕直前! 新城幸也、別府史之やエヴァンス、キンタナ、キッテルらに注目

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 今年最初のグランツールとなるジロ・デ・イタリアの開幕が目前に迫ってきました。開幕地はイギリス・北アイルランドのベルファスト。5月9日から約3週間にわたり、われわれサイクルロードレースファンはバラ色(マリアローザ)の日々を送ることとなります。そこで今回はジロ開幕直前特集として、有力選手のピックアップと、大会第1週前半の展望をまとめていきます。

初のジロ・デ・イタリア総合優勝に向け、前評判の高いカデル・エヴァンス(写真はティレーノ~アドリアティコ2014)初のジロ・デ・イタリア総合優勝に向け、前評判の高いカデル・エヴァンス(写真はティレーノ~アドリアティコ2014)

別府と新城の参戦が正式決定!

 まずはうれしいニュース。今回のジロには、別府史之(トレック ファクトリーレーシング)、新城幸也(チーム ヨーロッパカー)の出場が決定した。別府はオリカ・グリーンエッジ時代の2012年以来の3回目、新城は2010年以来2回目の参戦となる。それぞれ前回出場時を振り返ると、別府は主にスプリントトレインの牽引役として貢献、新城は第5ステージで逃げ切りを決め、あと一歩でステージ優勝となる3位の大活躍。知っての通り、両名とも当時とは比較にならないほどの進化を遂げており、活躍に期待が膨らむ。

ジロに照準を合わせてきた別府史之(リエージュ~バストーニュ~リエージュ2014)ジロに照準を合わせてきた別府史之(リエージュ~バストーニュ~リエージュ2014)
新城幸也は好調でジロを迎える(リエージュ~バストーニュ~リエージュ2014)新城幸也は好調でジロを迎える(リエージュ~バストーニュ~リエージュ2014)

 別府はシーズンイン時点でジロへの出場が内定していたことから、この時期に調子のピークが来るよう調整を進めている。一方の新城は、4月に入ってから絶好調。中盤ステージまで総合上位を争ったバスク一周、優勝争いに加わったブラバンツ・ペイル、そして10位入賞を果たしたアムステル・ゴールドレースと、快走の連続。その勢いのまま本番へと乗り込む。

 それぞれ、チームのエースをアシストする仕事を持つが、一方でレース展開やコースの特性から、別府や新城がエスケープ、またはゴール勝負を任される場面もめぐってくることだろう。日本人選手初のグランツールステージ優勝を目標とする2人だが、どこで勝利を狙ってくるかも見ものである。

個人総合は“BIG5”の争いか

 今回のマリアローザ(個人総合時間賞)争いは、例年以上の混戦が予想される。出場選手の脚質や、ステージ構成を見る限り、1人の選手が圧倒的な差をつけて勝利することは考えにくい。

イヴァン・バッソは4年ぶりのマリアローザを目指す(ジロ・デ・イタリア2010)イヴァン・バッソは4年ぶりのマリアローザを目指す(ジロ・デ・イタリア2010)

 主催者が注目選手として推すのは5人。ホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ)、ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)、イヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデール)、リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファルマ・クイックステップ)、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)。

 このなかで、前評判が最も高いのはエヴァンスだ。各チームがジロの前哨戦として臨むジロ・デル・トレンティーノ(イタリア、UCI2.HC、4月22日~25日)で総合優勝を果たした。第2ステージでリーダージャージを獲得すると、第3ステージも優勝してリードを拡大。4日間のステージレースながら、総合2位ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール・ラモンディアル)に50秒差をつける圧勝劇となった。チームTTで争われた第1ステージも制しており、実質的には初日からトップに君臨する完全優勝だった。

昨年は総合2位に入ったリゴベルト・ウラン(ジロ・デ・イタリア2013)昨年は総合2位に入ったリゴベルト・ウラン(ジロ・デ・イタリア2013)

 ウランは、4月29日~5月4日のツール・ド・ロマンディ(スイス、UCIワールドツアー)で総合14位。無理なくレースを進めた印象だった。2月のツアー・オブ・オマーン総合3位以外、今シーズンは主だったリザルトを残していないが、昨年もジロで突如ブレイクしたように、その爆発力は侮れない。ここまでの走りやリザルトは、彼にとって想定の範囲内と言えそうだ。

 バッソもここまで目立った走りを見せないまま、ジロを迎える。ロマンディではトップから17分48秒遅れの総合41位。ただ、2度目のジロ制覇を果たした2010年も、シーズン前半を静かに過ごし、本番で完璧にピークを合わせた。昨年のジロは体調の問題から大会直前に欠場を決断。その後、ブエルタ・ア・エスパーニャでも途中リタイアに終わっており、今回に賭ける意気込みは並々ならぬはずだ。

 ロドリゲスは、アルデンヌクラシックでは度重なる落車で不本意な結果に終わった。リエージュ~バストーニュ~リエージュでは、痛みで途中リタイアするなど、不安要素を抱えている。まずはけががどの程度まで回復しているか。ここまでのスケジュールをみると、レース数を絞っており、ジロに調子のピークを合わせている。

昨年のツール総合2位のナイロアレクサンデル・キンタナ(左)と同3位のホアキン・ロドリゲスが参戦する(ツール・ド・フランス2013)昨年のツール総合2位のナイロアレクサンデル・キンタナ(左)と同3位のホアキン・ロドリゲスが参戦する(ツール・ド・フランス2013)

 未知数なのはキンタナだ。昨年のツール・ド・フランスでの活躍もあり、ジロには満を持して単独エースとして乗り込む。こちらもレース数を絞っているが、出場したステージレースで確実に総合上位に食い込んでいる点は見逃せない。1月のツール・ド・サンルイス(アルゼンチン、UCI2.1)総合優勝、3月のティレーノ~アドリアティコ(イタリア、UCIワールドツアー)総合2位、同じくカタルーニャ一周(スペイン、UCIワールドツアー)総合5位と、成績はいずれも高水準だ。

 そのほか、2012年総合優勝のライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)や、ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)、ポッツォヴィーヴォ、ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ プロチーム)、ラファウ・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)らも、“BIG5”に次ぐ存在として押さえておきたいところだ。

 総合争いを決定づける勝負どころは、大会第3週の難関山岳ステージになることだろう。それまでのステージでは後れをとらないことが、総合優勝の最低条件となる。あとは、タイムトライアルステージでの遅れも絶対に避けたい。第1ステージのチームタイムトライアル(後述)で大きく遅れると、チームは早い段階から攻撃を仕掛ける必要性が生じる。また第12ステージに設けられた個人タイムトライアル(41.9km)は、4級山岳を含み、クライマーでも勝負可能なコースレイアウトだ。TTステージでのタイム差や、山岳アシストの働きぶりが大会終盤での勝負に大きく影響することだろう。

初出場のキッテルがスプリンター勢をリード

 山岳ステージに目を奪われがちだが、今年はスプリントステージも充実している。特に、大会序盤に多く設けられていることから、スプリンターにマリアローザがめぐってくる可能性もある。

ツールのステージ4勝以降も勝利を重ねるマルセル・キッテルが、初のジロに挑む(ドバイ・ツアー2014)ツールのステージ4勝以降も勝利を重ねるマルセル・キッテルが、初のジロに挑む(ドバイ・ツアー2014)

 スプリンター関連で最大のトピックは、マルセル・キッテル(ドイツ、チーム ジャイアント・シマノ)の参戦だろう。昨年のツール・ド・フランスでステージ4勝、マイヨジョーヌ1日着用は、観る者に鮮烈な印象を与えた。自信を深めた今シーズン、すでに5勝を挙げており、アイルランドとイタリアでさらなる勝利量産をもくろむ。ツール出場も予定していることから、後半ステージで大会を離脱する可能性は高く、チーム全体としてキッテルの第1週での活躍を後押しすることだろう。チーム内ではキッテルに続く存在として、ルカ・メズゲッツ(スロベニア)も控えており、平坦ステージで主導権を握る姿がたびたび見られそうだ。

 キッテルの対抗馬は、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデール)とナセル・ブアニ(フランス、エフデジ ポワン エフエル)。ヴィヴィアーニは直前のツアー・オブ・ターキー(トルコ、UCI2.HC、4月27日~5月4日)でステージ2勝。ブアニもフランスレースを中心に、シーズン5勝を挙げている。ともに、多少の上りならものともしない総合力が魅力だ。

 ミラノ~サンレモ3位のベン・スイフト(イギリス、チーム スカイ)、好調のマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、イタリア期待のジャコモ・ニッツォーロ(トレック ファクトリーレーシング)もステージ優勝争いに加わってくるだろう。

ジロ第1週前半の展望

第1ステージ(5月9日、ベルファスト~ベルファスト、21.7km(TTT)、難易度3)

 日本でもおなじみ、タイタニック号をテーマにしたウォーターフロント「タイタニック・クオーター」前を各チーム9人の選手たちがスタートする。東へ進路を取り、国会議事堂前を折り返してベルファスト市街地へと向かう。まずはチーム力が試されるステージ。総合優勝候補を抱えるチームにとって、大きな遅れは禁物だ。

第2ステージ(5月10日、ベルファスト~ベルファスト、219km、難易度2)

 大会最初のラインステージは、スプリンターが主役に。ベルファストから北に進路を取り、北海とアイリッシュ海を見ながらベルファストへと戻る。海からの風に要注意だ。

第3ステージ(5月11日、アーマー~ダブリン、187km、難易度1)

 北アイルランド南部の都市アーマーをスタートし、アイルランド共和国へ入国。首都ダブリンにゴールする。スプリンターのためのステージだが、前日同様にアイリッシュ海からの風がポイントとなりそう。また、ゴール前1.5kmからはテクニカルなコーナーが連続する。

休息日(5月12日)

 UCI規則では、グランツールにおける1週目の休息日設定は禁止されている。しかし、アイルランドでの開幕となる今回に限り、特例として第3ステージ後の休息日が認められた。翌日からのイタリアステージに向けて、選手たちは空路で大移動する。

第4ステージ(5月13日、ジョヴィナッツォ~バーリ、112km、難易度1)

 イタリアステージの幕開けは、南部の都市ジョヴィナッツォから。移動を終えた選手たちへの体力的配慮で、レース距離は短い。中盤からは、バーリ市内の8.3kmの周回コースを8周。スピードレースになることは確実だ。

今週の爆走ライダー-エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデール)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 4日に閉幕したツアー・オブ・ターキー。8ステージ中6ステージがゴールスプリントとなった大会は、前評判ではマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファルマ・クイックステップ)の独壇場かと思われた。そんな状況に待ったをかけたのは、イタリアンスプリンターの頂点へ上り詰めようとしているこの男だ。

エリア・ヴィヴィアーニがマーク・カヴェンディッシュを相手にステージ2勝を挙げた(ツアー・オブ・ターキー2014)エリア・ヴィヴィアーニがマーク・カヴェンディッシュを相手にステージ2勝を挙げた(ツアー・オブ・ターキー2014)

 ヴィヴィアーニが挙げたステージ2勝は、いずれもカヴェンディッシュの真後ろをキープし、早掛けを余儀なくされたライバルをあっさりと抜き去っての勝利だった。

 現在のプロトンでは有数のトラックレーサーでもある。イタリア国内では、中距離種目で彼の右に出る者はいない。トラック競技特有の動きで培われた走りは、ロードでのスプリントにも生きる。ゴール前での強さはもちろんのこと、ポジション確保や、急激なペース変化にも対応する。実際、ターキーでは集団前方での中切れを自ら埋めに行き、最後はゴールも制したほどだ。

 昨年に続く出場となるジロでは、悲願のステージ優勝を狙う。そして、大会序盤でのマリアローザ獲得も視野に入れる。そのためには、「チームタイムトライアルで実力を発揮すること」。運命の数日間は、もう間もなくやってくる。

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介
福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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