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はらぺこサイクルキッチン<11>選手を変える食べ物のチカラ 不足を補いパフォーマンス向上を担うアスリートフード in USA

by 池田清子 / Sayako IKEDA
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現地のキッチンで、ビーツとレンコンをオーブンへin!現地のキッチンで、ビーツとレンコンをオーブンへin!

 マウンテンバイクのプロとして世界各地を転戦する夫の池田祐樹選手に同行して、アメリカ、ベルギー、ドイツへと1カ月以上続く遠征の旅が始まりました。渡米3週間が経過した今は、アリゾナ州プレスコットに滞在。その間、アメリカ人のチームメートと衣食住を共にし、私は買い出しから調理までを引き受けました。今回は、チームの食事をほぼ毎日担当した私のアスリートフード in USAをレポートします!

日本から干し芋2kgを持参

 日本を出発する前には、長旅へ向けて、リカバリーに役立つもの、腸内環境を整えるもの、体調を改善する助けになるものなどを基準に、日本から持参するものと現地で調達できる物を吟味しました。

日本からアメリカに持参したアスリートフード日本からアメリカに持参したアスリートフード

 日本から持参したアスリートフードは、干し芋、味噌、昆布(細切り・とろろ・粉末)、いりこ、玄米です。干し芋は、総合2位と好成績を残した3月のステージレース「ヤックアタック」で、腸内環境を整えるのにとても役立ちました。量は約2kgを用意しました。

いりこと昆布を入れて作る自家製「だし味噌」いりこと昆布を入れて作る自家製「だし味噌」
発芽する玄米2・白米1の割合で混ぜて炊きました。玄米を炊く時は昆布を入れると味がよりまろやかになります発芽する玄米2・白米1の割合で混ぜて炊きました。玄米を炊く時は昆布を入れると味がよりまろやかになります

 味噌は、特に味噌汁用に準備しました。塩分をほどよく摂取できる上、身体を温め、発酵の力で腸を整えます。具だくさんにすることで野菜をまとめて摂ることもできますし、異国の地でホッとできる日本食のひとつでもあります。同行する私にとっても欠かせません。

 味噌には事前に、無添加の「だし味噌」になる工夫をこらしていきました。作り方は、2cm角にカットした昆布といりこを味噌の中に入れるだけ(できるだけ冷蔵保存をオススメします)。キッチンのない宿でも、コーヒーメーカーなどでお湯さえ手に入れれば、具はなくとも味噌スープを即席で作ることができます。粉末の昆布やとろろは、そんな時のお助けアイテムになりますよ。

 さらに今回は「現地でもお米のパワーを借りよう!」ということで、玄米を持参しました。ただの玄米なら現地で入手することも可能ですが、いま注目が集まっている食材「発芽玄米」となると特別です。発芽玄米は、お米を水に浸して発芽させることで、ギャバと呼ばれるアミノ酸の一種が白米の10倍、玄米の3倍に増え、ストレスを軽減したり不安を緩和したりする働きがあるそうです。玄米に比べて消化が早いので、レース前日でも安心して食べることができます。

日本人の身体に合うケール&赤ビーツ

プレートを持って一列に。各自で盛りつけます。好きなだけ召し上がれ!プレートを持って一列に。各自で盛りつけます。好きなだけ召し上がれ!

 旅の1週目は宿にキッチンがなかったのですが、その後キッチンのある宿へ移動した際には、チェックインより先にオーガニック食品が充実しているスーパーマーケットへ向かいました。定番のスーパー「WHOLE FOODS」「Trader Joe’s」に加え、カリフォルニア州のフェアファックスという街では「GOOD EARTH」というスーパーにも足を運びました。オーガニック食品が豊富なスーパーが建ち並ぶ街は、週末に大勢のライダーやランナーが走っているなど、健康への意識が高いことがうかがえました。

 同宿したチームメートたちは、「加工食品を摂らない」「精製された砂糖が含まれているものも摂らない」「できるだけオーガニック製品を選ぶ」という生活を心がけており、栄養素の高い野菜についてもよく知っていました。特に「これは欠かせない」とチョイスしていたのは、ケール、赤ビーツ、キヌア、ココナッツオイル、卵、5種類の野菜が入ったサラダ用の葉物、スモークサーモン、そして自分でナッツから絞るアーモンドバター。どれもおいしくて、毎日食べていたほどです。

 中でも祐樹さんと私の身体が直接効果を感じたのが、ケールと赤ビーツ。日本では、加工されていない状態で手に入れることが難しい食材です。ケールは、見るからに栄養価が高そうな、張りのあるガッシリとした元気な葉が特徴。生でも炒めても食べられる野菜なので、ストックしておくと便利です。栄養素としては、食物繊維がごぼうの3.5倍と豊富で、カルシウムはキャベツの5倍、ビタミン類やミネラルも含まれています。ビタミンCはキャベツの6.5倍もあり、免疫力を高める効果があります。植物油を使って炒めると、ビタミンAやEなど脂溶性ビタミン類の吸収がアップするということで、毎朝ココナッツオイルで炒めるのが定番となりました。

ベイクしてほくほくになったビーツとレンコンベイクしてほくほくになったビーツとレンコン
サラダに入れたケールサラダに入れたケール

 赤ビーツは、リン、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、鉄、カルシウムなどの栄養素を豊富に含んでいます。特に鉄は、人工製剤の鉄に比べて吸収されやすく「食べる輸血」といわれるほど。赤い色は、血を増やしてくれる栄養素と直結しているのですね。トレーニングやレースで身体を消耗するアスリートにはもちろん、貧血気味の女性にも嬉しい食材です。さらにビタミンA、ナイアシン、ビオチン、そして食物繊維も含んでいます。

 最初、私は赤ビーツをどう扱ってよいものか分からず、チームメイトの手ほどきを受けながら調理しました。皮を剥き、2cmのさいの目にカットして、同じく増血剤になるレンコンと一緒に塩とオリーブオイルをまぶして、温めたオーブンで40分ほど焼きました。ヤングコーンのような印象で、甘みがあっておいしい!

炒めたケールにヘンプシードをトッピング。トーストにはアーモンドバターを炒めたケールにヘンプシードをトッピング。トーストにはアーモンドバターを

 ほかに、ヘンプシード(麻の実)も初めて購入してみました。ヘンプシードには卵の約3倍のたんぱく質や鉄、銅、亜鉛などのミネラルが含まれています。ゴマのようにそのままトッピングとしても使え、風味があって予想以上のおいしさでした。

 メニューの工夫点は、疲労回復に役立つスモークサーモンをサラダに入れるなどして、限られた日数で使い切れるようにしたことです。そして、セーブしたのは肉。宿にキッチンがなかった時は、惣菜を買ってきたり、外食をしたりすることが多く、肉を食べることも少なくありませんでした。しかしそれでは、3月のステージレースで疲弊した祐樹選手の体調がいっこうに改善されず、口の端が切れるなどトラブルもあったため、肉を控え目にしてみたのです。

現地のフレッシュな野菜を味方につける

しっかり食べて、備えてくださいしっかり食べて、備えてください

 実はヤックアタックを終えてからというもの、祐樹さんは何をしても慢性疲労や倦怠感が抜けないままでいました。それまでは一切なかった花粉症などのアレルギー症状も、一気に吹き出すといった異変もありました。鼻水・咳が止まらず、頭もぼーっとしてしまう…帰国から2週間経っても症状が収まらず、不安を抱えたまま今回の遠征に臨んだのでした。

 それが、ここまで書いてきたような食生活で丸2週間経過した頃には、さまざまな症状が急速に改善していきました。その回復ぶりには周囲も驚くほど。夕食は18時、就寝は21時という規則正しい生活を送れたことも影響していると思います。本人は「これだけオーガニックや身体に優しい食事を連続して食べるのは久しぶりだからか、身体が入れ替わったように調子がよい。やっとトレーニングとレースを再開できる!」と大喜びでした。これが野菜の力なのでしょうか。

 日本では珍しい食材をフレッシュな状態で手に入れることができ、さらにそれを自分で調理して皆でいただくことができたことは、とてもいい経験でした。また今回は調理する環境のせいもあって、素材そのものの味を生かす調理法が多くなりました。チームメートは毎食お代わりをしてくれたので、作り手としては安心でき、非常に嬉しく思いました。

米アリゾナ州から次はヨーロッパへ!米アリゾナ州から次はヨーロッパへ!

 祐樹さんは「知らない土地では、自分にあう食材と出会えるととても心強い」と言います。今回の場合は、ケールと赤ビーツでしょう。ひとつの食材で完全なものはなく、様々な食材の栄養素が合わさって身体に必要な栄養が摂れるのだと思います。そして足りないものが補給された時には身体の調子が整い、実力を十分に発揮できるようバックアップしてくれます。

 食べもので選手は変わります。次に向かうヨーロッパでも、現地で手に入る元気で新鮮な食材と出会えるのが楽しみです。

池田清子池田清子(いけだ・さやこ)

アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネージャー経験を生かし2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを開始、同秋結婚。平行して「アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。ブログ「Sayako’s kitchen」にて情報配信中。

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