東京にも3店舗 年度内に展開へ「鹿屋アスリート食堂」1号店がオープン 鹿屋体大自転車競技部と連携

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 自転車競技の大学王者、鹿屋体育大学(鹿児島県鹿屋市)のすぐ近くに、スポーツ栄養学に基づいてアスリート向けの食事を提供する「鹿屋アスリート食堂」本店(1号店)が4月7日にオープンした。鹿屋体大の自転車競技部と深い関わりを持つ同店は、学生アスリートはもちろん、健康志向が強い市民の関心も集め、行列が出来るほどのにぎわいをみせている。東京進出も予定しているという鹿屋アスリート食堂のオープンまでの道のりや将来展望について、鹿屋体育大学自転車競技部3年の橋本直さんのレポートで紹介します。

「鹿屋アスリート食堂」から支援を受ける上野みなみ選手(左)と塚越さくら選手「鹿屋アスリート食堂」から支援を受ける上野みなみ選手(左)と塚越さくら選手

スポーツ栄養学講師の熱い思い

 鹿屋アスリート食堂は、鹿屋体育大学の講師で、スポーツ栄養学を教える長島未央子さんの「世界を目指す鹿屋の学生アスリート達に良い食事を摂らせてあげたい」という素朴で熱い想いからスタートした。将来的には全国展開し全国のアスリートの役に立ちたいとの夢を持ちながら、まずは鹿屋の大学周辺での1号店オープンが目標。鹿屋体育大自転車競技部の黒川剛監督らと共に、空き家などを探し、改装してオープンさせるための情報収集や資金・人材確保を模索したが、なかなか思うように進まなかった。

 一方、長島さんは、鹿屋市が同大学と連携して取り組むプロ野球選手などの合宿誘致において、食事面のサポートに携わっていたことから、同市役所の職員にも相談。構想を知った市職員らの仲介によって、事業は急展開を見せた。

産官学連携プロジェクトへ

 救世主となったのは、大阪に本社機能を持つバルニバービ社の佐藤裕久社長だった。同社は大阪と東京を中心にカフェ等を手広く経営しているほか、鹿屋市の食材を使った居酒屋「鹿児島 本家 かのや」(東京・代々木)を運営するなど、鹿屋市と深い関係がある。また、佐藤社長は自身が自転車を愛するサイクリスト。打ち合わせのために鹿屋市を訪れた際、自転車部メンバーとサイクリングを楽しみ、一気に距離が縮まった。こうして鹿屋アスリート食堂は、構想を掲げた鹿屋体育大と、全国へ食材を売り込みたい鹿屋市、そして食堂として事業を展開できるバルニバービ社の協力により「産学官連携プロジェクト」として実現する日を迎えた。

「鹿屋アスリート食堂」のオープニングセレモニー =4月7日「鹿屋アスリート食堂」のオープニングセレモニー =4月7日

こだわりのインテリア 店内は市民と学生のふれあいの場に

 4月7日のオープニングセレモニーには、多くの関係者や報道陣が集まった。店舗の前ではバルニバービ社の佐藤社長、中西茂鹿屋市長、そして提唱者の長島さんらがテープカットを行ったほか、くす玉割りには自転車部のエースとして活躍する上野みなみ、塚越さくら両選手も参加。さらにオープン記念パーティには、同大学出身でアテネオリンピック競泳女子800m金メダリストの柴田亜衣さんらも駆けつけて祝辞を述べた。

(左から)塚越さくら選手、佐藤裕久・バルビーニ社長、上野みなみ選手(左から)塚越さくら選手、佐藤裕久・バルビーニ社長、上野みなみ選手

 佐藤社長は「2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催が決まり、これからスポーツの全てに関心が集まってくる。アスリート食堂では、食を通じてアスリートの体を作るだけでなく、健康になりたい市民の皆様にも体に良い食事を提供していく。鹿屋でとれた農畜水産物にも注目が集まるようなお店にしていきたい」と話した。

 もともと東京や大阪でお洒落なカフェを多数経営するバルビーニ社のこだわりから、店内の調度品はほとんどがヨーロッパからの輸入品。オープンカフェやマルシェ(野菜市場)も併設して、食事だけで無く“食の空間”を楽しめるようになっている。

 地元ではメディア各社の報道で話題になったこともあり、最初の週だけで1000人を超える客が来店し、受付に長蛇の列が出来た。その事によって鹿屋体育大生と市民の語らいが生まれ、あちこちで小さな交流が始まり、市民にも喜ばれているようだ。

目的に合わせて選べるメニュー サイクリストのために日曜も営業

 アスリート食堂のメニューは、長島さんの監修により「一汁、一飯、三主菜」のバランス定食が基本となっている。

学生たちの食事風景はこんな様子学生たちの食事風景はこんな様子

 三主菜のおかずは「肉・魚・卵メイン」が5品、「野菜+タンパク質メイン」が5品、「野菜メイン」が5品。3つのカテゴリーから、増量、減量、貧血など自らのテーマに合わせて、自分の考えで選べる方式だ。迷ったときには管理栄養士の田畑綾美さんをはじめ、店員がアドバイスしてくれる。

 アスリート食堂本店の女将、野中直美さんも、鹿屋体育大学カヌー部の出身。自転車ロードレースの清水都貴選手や内間康平選手(ともにブリヂストン アンカー)らが多数所属した山本正嘉教授のゼミでトレーニング科学を学んでおり、体育会系ならではの話題にも十分に対応出来る体制を整えている。

 営業時間は昼が午前11時30分~午後2時、夜は午後5時30分~10時30分(ラストオーダー)。夜遅くまでトレーニングに励む学生らの心強い味方となるだろう。

 もちろん一般の人も利用が可能で、定食は850円。鹿屋体育大生のみ500円と格安料金が設定されている。夜は宴会コースもあり、鹿屋の美味しい食材や料理を食べられる。

「鹿屋アスリート食堂」の夜の様子。午後10時半ラストオーダーで、遅い時間まで勉強やトレーニングに励む学生を支える「鹿屋アスリート食堂」の夜の様子。午後10時半ラストオーダーで、遅い時間まで勉強やトレーニングに励む学生を支える
店舗に設けられたバイクラック店舗に設けられたバイクラック

 当初は日曜日を休業にする予定だったが、黒川監督の「日曜日はたくさんのサイクリストが集まる場にしたい」との申し入れを佐藤社長が快諾。日曜日は営業し、自転車部のオフ日と合わせて月曜日が休業日となった。

 店の前にはバイクラックが完備されていることも、自転車好きには大きなアピールポイントだ。

食堂がスポンサーとして上野みなみ&塚越さくらをサポート

 アスリート食堂のオープンとともに、佐藤社長のもう一つの取り組み「10 OVER 9」(テンオーバーナイン)が始まっている。

 このプログラムは、「今の自分を超えるために特別な時間を過ごす」という考え方のもと、未来あるアスリートのサポートを目指す。鹿屋体育大自転車競技部から今春、大学院に進学して2016年リオデジャネイロ五輪、そして2020年東京五輪を目指す塚越さくら、上野みなみ両選手は“アスプロ・アスリート”1期生に選ばれており、あわせて自転車競技部も新スポンサーとしてアスリート食堂の支援を受けることになった。

アスリート食堂の軒先で展開されるマルシェ(野菜市場)をPRする(左から)岡本孝志・農業生産法人オキス社長、上野みなみ選手、塚越さくら選手、長島未央子・鹿屋体育大講師アスリート食堂の軒先で展開されるマルシェ(野菜市場)をPRする(左から)岡本孝志・農業生産法人オキス社長、上野みなみ選手、塚越さくら選手、長島未央子・鹿屋体育大講師

 佐藤社長の熱意は、地域の支援者の輪も広げている。

 アスリート食堂に食材を納入し、軒先でマルシェ(野菜市場)を運営する農業生産法人(株)オキスの岡本孝志社長も、自社ブランド「薩摩の恵」で自転車競技の新しいスポンサーとなった。岡本社長は「佐藤社長の熱意に賛同した。準備段階で出会った自転車部員達もさわやかで、迷わず応援することにした」と語る。

目指すは全国展開 そしてサイクリストの交流拠点

 「鹿屋」は、スポーツ界では知られた名前。特に自転車競技関係者では、知らない人はいないだろう。しかし一般的には「かや」「しかや」と呼ばれるなど、残念ながら認知度はいま一つである。

 嬉しいことに「鹿屋」の名を冠した「鹿屋アスリート食堂」は全国展開する計画を持つ。

 本年度内に東京都内で3店ほど開設する計画があり、すでに夏までには鹿屋本店に続く2号店が神田に開店予定。両国、品川などにも出店を計画しているという。

 東京などの都心での事業には、同じビル内にトレーニングジムを併設する構想も有り、健康な体をスポーツと食事の両面からサポートしていく構えだ。鹿屋体育大の自転車競技部関係者は、全国展開する「鹿屋アスリート食堂」が自転車選手らの交流拠点になればと期待している。

(文・写真 鹿屋体育大学自転車競技部3年 橋本直)

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