城崎温泉、洞窟群、古い街並みを周遊ヴェロ・ミシュランのレンタサイクルがもたらす新しい自転車文化 兵庫・豊岡の観光スポットを満喫

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 ミシュランの自転車ブランド「ヴェロ・ミシュラン」のスポーツバイクを採用したレンタサイクルが、兵庫県豊岡市で今年4月に導入された。外国人観光客が急増している城崎温泉など市内の名所を結ぶ足として、そしてこれまでにないプレミアムな旅の手段として注目される試みだ。全国で初めて、観光ルートを多数のヴェロ・ミシュランの「Paris-Brest Sport」(パリ・ブレスト スポール)が行き交う街、豊岡市を取材した。(レポート 平澤尚威)

ヴェロ・ミシュランの「パリ・ブレスト スポール」が走る豊岡は観光地が豊富。竹野海岸は、夏には海水浴客で賑わうヴェロ・ミシュランの「パリ・ブレスト スポール」が走る豊岡は観光地が豊富。竹野海岸は、夏には海水浴客で賑わう

スカイツリーと並ぶ二つ星

 豊岡市がパリ・ブレスト スポールをレンタサイクルとして導入したのは、ミシュランが世界中で発行する旅行ガイドの日本版「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」に、豊岡の代表的な観光地である城崎温泉が掲載されたことがきっかけだった。ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンは、日本各地の観光地などの魅力を格付けして紹介する外国人向けのガイドブック。城崎温泉は2013年2月に発売された改訂第3版で、「寄り道をして訪れるべき場所」を意味する二つ星を獲得した。これは、東京スカイツリーや、日本三景の一つである天橋立と並ぶ評価だった。

 では、ミシュラン・グリーンガイドに載ったことで、どれだけの効果があったのだろうか。それは数字を見ると明らかだ。平成23年の時点で年間約1100人だった外国人観光客の数は、城崎温泉が改訂版に掲載された平成25年には約9600人になった。9倍近くまで増加していることから、その影響力が計り知れるだろう。

パリ・ブレスト スポールとミシュラングリーンライナー号パリ・ブレスト スポールとミシュラングリーンライナー号
パリ・ブレスト スポールに興味を示すミシュラングリーンライナー号の利用者たちパリ・ブレスト スポールに興味を示すミシュラングリーンライナー号の利用者たち

 ガイドブック発行を機に豊岡市とミシュラン社との縁は深まり、2013年の7月からは大阪~城崎温泉を結ぶ高速バス「ミシュラングリーンライナー号」を運行するなど、観光をめぐる協力関係に発展してきた。

浴衣が“正装”の外湯めぐり

 実際にパリ・ブレスト スポールを借りて豊岡市内を巡ってきた。

 城崎温泉街では、浴衣で歩いている人の姿を多く見かける。7つの公衆浴場に入り放題の「外湯めぐり」を売りにしている城崎温泉が、その“正装”として浴衣や着物を推奨しているからだ。木造の建築が並び、温泉街を流れる大谿川では石造りの橋や柳の木が風情を漂わせる。訪れた外国人観光客たちは、古風で美しい日本の街並みのなか、浴衣を着た人たちが行きかう光景を目にすることで、異国情緒を感じられるだろう。もちろん、神経痛、筋肉痛、消化器病などに効くという温泉そのものの魅力も忘れてはならない。

城崎温泉の街並み城崎温泉の街並み
城崎温泉「一の湯」の前を、浴衣を着た人たちが行き交う城崎温泉「一の湯」の前を、浴衣を着た人たちが行き交う

 豊岡には、マグマでできた洞窟群で知られる「玄武洞公園」のほか、日本海に面した竹野地区にも「はさかり岩」や「淀の洞門」といった自然の彫刻が豊富。文字通りそばを皿に盛って提供する「皿そば」が名物の出石は、城崎のように古い建物が残る街並みも魅力だ。

玄武洞公園の「玄武洞」玄武洞公園の「玄武洞」
「はさかり岩」「はさかり岩」
「淀の洞門」「淀の洞門」
出石の町をパリ・ブレスト スポールで走る出石の町をパリ・ブレスト スポールで走る
出石のシンボル「辰鼓楼」出石のシンボル「辰鼓楼」

「乗ってみたい」ポップでスポーティーなデザイン

 レンタサイクルが開始される前日の4月19日には、豊岡市役所新庁舎のグランドオープン式典や商店街での祭りに合わせて、レンタサイクル試乗会が開かれた。そこで印象的だったのは、自転車に不慣れな様子の年配の男性や、スポーツバイクは初めてという女性、年齢制限で乗れずに残念がる子供といった、幅広い層の人たちが関心を示していたことだ。

豊岡市役所新庁舎の前でレンタサイクル試乗会が行われた豊岡市役所新庁舎の前でレンタサイクル試乗会が行われた
レンタサイクルを試乗する女性たちレンタサイクルを試乗する女性たち

 豊岡市に導入されたパリ・ブレスト スポールは、しなやかな弧を描くセミドロップハンドルや、レンタサイクル限定カラーのグリーンのフレームが特徴的。自転車に詳しくないライトユーザーをもひき付けるポップなデザインと、乗ってみたいと思わせるスポーティさを兼ね備えているのだ。観光地を走るレンタサイクルとして、このバイクが“適任”であることを感じさせられた。

ミシュランの哲学「移動する楽しみ」を豊岡へ

パリ・ブレスト スポールのお披露目会見に出席した森田哲史社長室長・広報部長パリ・ブレスト スポールのお披露目会見に出席した森田哲史社長室長・広報部長

 日本ミシュランタイヤの森田哲史社長室長・広報部長は、「自転車文化が根付いた国々の人には、ただ観光するだけでなく『行って、走って、観たい』という思いがあるはずだ」と語る。また、パリ・ブレスト スポールについて「特に、下りで“すーっ”ときれいに曲がっていくあたり、スポーツバイクに乗り慣れた人にはすぐによさをわかってもらえる」と期待する。パリ・ブレスト スポールのフレームを設計したのは、日本有数のフレームビルダーである「レベル」の松田志行さん。それだけに、自転車に造詣の深い外国人観光客も、日本でのサイクリングを気持ちよく楽めると確信しているという。

サイクリングで城崎温泉を訪れる人もサイクリングで城崎温泉を訪れる人も

 豊岡市では、観光客の行動範囲が広がることを期待している。これまで豊岡には通常のシティサイクルと電動アシスト型のレンタサイクルが導入されていたが、平成23年の利用実績2846台のうち8割は城崎温泉で借りられていた。月におよそ20~30人程度という外国人観光客の利用も、ほぼ城崎温泉に集中するのが例年の傾向だ。とはいえ、“ママチャリ”では城崎から外まで出づらく、観光地同士を結ぶ交通手段としてはなかなかは利用してもらえなかった。

 今回導入されたパリ・ブレスト スポールには、その不足を補うだけの機動力が備わっている。城崎温泉を拠点に、自然豊かな豊岡の景観を楽しみながら他のスポットへ足を伸ばせば、新しい観光のスタイルが生まれることだろう。「移動する楽しみを伝える」というミシュランのブランド哲学が、豊岡の観光事情に見事にマッチしたのだ。

豊岡に広がる新しい自転車文化

 レンタサイクル以外にも、豊岡市には自転車を生かした新しい取り組みが始まっている。日本一のかばんの産地である豊岡には「かばんストリート」と呼ばれる商店街がある。その一角に、豊岡の職人が技術とアイデアを結集した「A&D27」という新ブランドがオープンし、自転車用のかばんを発売した。サイクリストの要望に応え、さらにかばんのプロとしての発想を加えた、美しさと機能性を備えたラインナップだ。

「A&D27」ブランドの鞄を装着してディスプレイされた自転車「A&D27」ブランドの鞄を装着してディスプレイされた自転車
豊岡市の「かばんストリート」にある鞄の自動販売機豊岡市の「かばんストリート」にある鞄の自動販売機

 また、9月7日には「山陰海岸ジオパーク コウノトリチャレンジライド in 但馬」というサイクリングイベントが豊岡で開催される。2012年に第1回が開かれた、まだ新しい大会だ。重要な自然遺産をもつ地域として「世界ジオパーク」に認定された但馬地域の観光資源を生かし、サイクリング・スポットとしての魅力をアピールする。豊岡市では、旅行者が輪行で訪れやすくなるように、豊岡へアクセスする公共交通機関に対して、自転車で乗り入れできるように打診していく考えもあるという。

 ミシュランと豊岡市の出会いは、レンタサイクルに、旅の移動手段を超える価値をもたらした。豊岡を訪れ、パリ・ブレスト スポールに乗って街を散策すれば、新しい自転車文化の息吹を感じることができるだろう。

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