ダイナミックなステージレースに全15チームが参戦南アフリカで再び発展する自転車競技 宮澤崇史参戦の「マザンシツアー」をフォトレポート

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 南アフリカ共和国(以下、南アフリカ)で4月8日から12日にかけて開催された5日間のステージレース「マザンシツアー(UCI2.2)」に、ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザが日本人選手の宮澤崇史と小石祐馬を擁して参戦した。2013年のレポートにつづき、今年もフォトグラファーの田中苑子さんによるレポートをお届けする。

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歴史を乗り越え誕生したステージレース

興味津々の子供たちと触れ合う選手ら興味津々の子供たちと触れ合う選手ら

 南アフリカというと、人種差別的な政策であったアパルトヘイトとそれを撤廃に導いたネルソン・マンデラ氏の功績で知られるが、実は自転車競技の歴史は古く、ツール・ド・フランス誕生の10年前にあたる1893年には競技が始まっていたとされる。1912年のストックホルム五輪では、ロードレース種目で同国選手が金メダルを獲得した。しかしその後、欧州や北米における自転車競技の急速な発展に置いていかれる形で南アフリカの競技界は低迷。さらに、アパルトヘイト政策を批判する国際的な動きによって各国とのスポーツ交流が途絶え、名選手が誕生することはなかった。

 アパルトヘイトが1994年に完全に撤廃されたのちの南アフリカは、貧困や治安の悪化といった社会問題を抱えつつも、多民族が暮らす“虹の国”としてアフリカ経済の中心を担う国家へと発展した。そこで一躍トップ選手となったのが、1999年にプロデビューしたロバート・ハンターだ。昨年引退したハンターは、長年、欧米のトップチームに所属し、南アフリカ人選手として初めてツール・ド・フランスやブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝を挙げた。

初開催のマザンシツアーで総合優勝したロバート・ハンター(2013年)初開催のマザンシツアーで総合優勝したロバート・ハンター(2013年)
まだ多く残る黒人居住区から遠くのレースを見守るまだ多く残る黒人居住区から遠くのレースを見守る
旧黒人居住区の横をレースが通り抜ける。一部の黒人や移民の貧困は現在も深刻な社会問題となっている旧黒人居住区の横をレースが通り抜ける。一部の黒人や移民の貧困は現在も深刻な社会問題となっている
小さな街の商店の軒先をレースが通り抜ける小さな街の商店の軒先をレースが通り抜ける

 2013年は、ダリル・インピー(オリカ・グリーンエッジ)がツール・ド・フランス中に総合首位の証である「マイヨジョーヌ」に袖を通し、ケニア出身のイギリス人で、南アフリカで本格的に自転車競技を学んだクリス・フルーム(チーム スカイ)が同大会で総合優勝を果した。

 近年、多くのトップ選手を輩出するようになった南アフリカで2013年、UCIプロコンチネンタルチーム「MTN・キュベカ」が誕生した。今年、ブエルタ・ア・エスパーニャの出場枠を獲得した同チームには、アフリカ諸国の選手が所属し、まさにアフリカ大陸の自転車競技の中心となっている。また現在、UCIが南アフリカにトレーニングセンターを構え、アフリカ全土から才能溢れる若い選手が集まって日々トレーニングに没頭している。

過酷なコースは開催国チーム、MTN・キュベカの独壇場

 マザンシツアーは、急成長を遂げるアフリカ諸国の自転車競技熱を象徴するかのように、昨年、南アフリカで初めて国際基準をすべて満たすUCIレースとして誕生した。「マザンシ(Mzansi)」とは現地の言葉で南部を意味する単語で、南アフリカを指す言葉としてよく使われている。

ヨーロッパ、アジア、北米からの招待チームを含む全15チーム、89選手が参戦したヨーロッパ、アジア、北米からの招待チームを含む全15チーム、89選手が参戦した

 第2回となる今年は、ヨーロッパ、アジア、北米からの招待チームを含む全15チーム、89選手が参戦。より欧米のスタイルに近づくようにと、街から街へのラインレースステージだけでなく、チームタイムトライアル、山頂ゴールが組み込まれるなど、情熱ある主催者のもとで勢いを増して開催された。

総合1位から3位までを独占したMTN・キュベカ総合1位から3位までを独占したMTN・キュベカ

 レース展開の軸となったのは、開催国を代表するMTN・キュベカ。初日プロローグのチームタイムトライアルは2位で終えたものの、第1ステージでは、独特のアップダウンが繰り返される標高の高い土地に海外勢が苦しむ中で、ジャック・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ)が逃げ切って優勝を決めた。

 ゴールデンゲート国立公園での山頂ゴールが設定された第2ステージでは、南アフリカチャンピオンのルイス・マインティーズを筆頭にMTN・キュベカが1位から3位までを独占する結果に。全日程を終えて総合優勝はヤンセファンレンズバーグが、総合3位には、同チームでUCIトレーニングセンター出身のメルハウィ・クドゥス(エリトリア)が入り、表彰台に並んだ。

毎朝テープカットでレースがスタートする毎朝テープカットでレースがスタートする
プロローグのチームタイムトライアルを制したラファ・コンドール・JLTプロローグのチームタイムトライアルを制したラファ・コンドール・JLT
アップダウンを繰り返す南アフリカの独特な地形アップダウンを繰り返す南アフリカの独特な地形
第2ステージは広大なゴールデンゲート国立公園での山岳ステージ第2ステージは広大なゴールデンゲート国立公園での山岳ステージ

「チームワークが発揮できなかった」と宮澤

マザンシツアーに参戦したヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザマザンシツアーに参戦したヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザ

 宮澤と小石を含む6選手で臨んだヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザは、南アフリカ人の若手ウィリー・シミットがエースナンバーを付けて出場。チーム内のステージ最高位は、第3ステージのゴールスプリントで7位に入賞した宮澤で、総合成績はアレッサンドロ・ビソルティ(イタリア)の13位だった。

 レースを終えて宮澤は、「勝てる力は十分あったのに、チームのなかでうまく噛み合わなかった。次に向けて課題の見つかる大会だった」と振り返った。

 今年から新体制のもとで活動を始めたヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザ。かつては各選手がわれ先にと結果を求めてしまい、チームワークを発揮することができなかったという。若手育成をチームの活動方針に大きく掲げる同チームで、チーム最年長となる宮澤は「かといって、若手選手に何かを“教える”ということはしない。一緒に戦って、その中からそれぞれの役割を見いだしてほしい。チームワークが発揮できて、チームがひとつになったときに、若い選手は学び、成長するのだと思う」と続けた。チームにとって次の大きな舞台は、5月に日本で開催される国内最大のステージレース、ツアー・オブ・ジャパンだ。

レース前作戦会議中のステファノ・ジュリアーニ監督率いるヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザレース前作戦会議中のステファノ・ジュリアーニ監督率いるヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザ
最後まで果敢に逃げを見せた南アフリカ人選手ウィリー・シミット(ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザ)最後まで果敢に逃げを見せた南アフリカ人選手ウィリー・シミット(ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザ)

写真・レポート 田中苑子

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