しまなみ海道の玄関口で、上質な自転車旅を実現動き始めた自転車複合施設「ONOMICHI U2」 ジャイアントストア尾道もオープン

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 広島県尾道市で今年3月にオープンしたサイクリスト向け複合施設「ONOMICHI U2」(オノミチユーツー)。Cyclistではオープン前から取材し、その素晴らしさを紹介してきたが、今回、オープン後に再び現地を訪れる機会を得た。実際に動き始めたU2の姿を、前回のレポートとはまた違った視点から紹介していこう。(米山一輝)

「ONOMICHI U2」の全景。周囲はウッドデッキが整備された遊歩道で、散歩客が行き交う「ONOMICHI U2」の全景。周囲はウッドデッキが整備された遊歩道で、散歩客が行き交う

昭和18年竣工の倉庫を再活用

 「ONOMICHI U2」は、尾道駅近くの県営海運倉庫を改修し、再活用することで生まれた施設だ。JR尾道駅から西へ徒歩5分という絶好のロケーションは、観光客でにぎわう駅東側とは異なる装い。かつては駅から分かれて倉庫の真横まで貨物線が通っていたという。

 その外観は、倉庫として使われていた時とほとんど変わらない状態を保っている。外壁には「県営2号」の文字。実は「U2」の名称は、この倉庫の名称「県営上屋(うわや)2号」から来ているという。昭和18年竣工の、非常に歴史のある倉庫なのだ。

扉の「U2」ロゴと並んで壁には「県営2号」の文字がそのまま残る扉の「U2」ロゴと並んで壁には「県営2号」の文字がそのまま残る
かつては船が横付けして荷物の積み下ろしをしていたであろうスペース。現在は憩いの場にかつては船が横付けして荷物の積み下ろしをしていたであろうスペース。現在は憩いの場に
道路側からの風景。手前は海運倉庫として現役の「3号」。U2はその向こう側道路側からの風景。手前は海運倉庫として現役の「3号」。U2はその向こう側

 2号があるなら1号もあるのだろうか? 隣にも似たような建物が並んでおり、こちらは現在も海運会社が倉庫として使用している。ただ、この倉庫は3号なのだそうだ。実は1号はすでに取り壊されており、現在は駐車場としまなみレンタサイクルのステーションに生まれ変わっている。

 戦時の資材不足が進む中で建築されたことで、最初に工事を始めた駅側と、後になった駅反対側とでは、同じ上屋でも後になるほど作りが質素になっているのだとか。もちろん現在は、建物全体に耐震補強工事が施されている。

道路側には、公衆トイレとコインシャワーがある。これもサイクリストには嬉しい施設道路側には、公衆トイレとコインシャワーがある。これもサイクリストには嬉しい施設
コインシャワーは男女1室ずつ。100円で5分間お湯が出る。建物には広島県産の桧材を使用コインシャワーは男女1室ずつ。100円で5分間お湯が出る。建物には広島県産の桧材を使用
すぐ横は瀬戸内海(尾道水道)。向かいに見える陸地は、その名の通り向島(むかいしま)だすぐ横は瀬戸内海(尾道水道)。向かいに見える陸地は、その名の通り向島(むかいしま)だ

倉庫のスペースを活かした開放的な一体空間

メーンゲートを入ると、尾道の坂道を上り、瀬戸内海の波にも乗るサイクリストをイメージしたアート作品「モルキュラー・サイクル」が出迎えるメーンゲートを入ると、尾道の坂道を上り、瀬戸内海の波にも乗るサイクリストをイメージしたアート作品「モルキュラー・サイクル」が出迎える

 開業前のU2レポートを、筆者は遠く離れた東京で読む立場だったが、記事からは読みきれなかった疑問点があった。それは、「倉庫をどうやって2階建てのホテルにするの?」というものだ。

 実際にU2の現地を訪れても、疑問は大きくなるばかりだった。少なくとも外観は、平屋の倉庫そのままだったからだ。しかしU2の中に入ってみて、疑問はすぐに氷解した。

 倉庫の中に別の建物が建っている!

 県営倉庫の躯体をほぼそのまま生かしつつ、内部の空間を使って、ホテルやレストランの厨房などを、建物内建物といった方式で作っているのだ。必要なスペースは囲いながらも、全体に余計な間仕切りは設けず、天井の高い倉庫の空間を一体に利用することで、開放的なスペースを生み出している。自然光が差し込むとはいえ薄暗い感じの昼間と、室内の明かりが煌々とともる夜とでは、また趣が異なって面白い。

駅側のエントランスを入ると、開放的な上屋を一望できる駅側のエントランスを入ると、開放的な上屋を一望できる
倉庫上屋本体の躯体とは別に、屋内に施設の建物が作られている倉庫上屋本体の躯体とは別に、屋内に施設の建物が作られている

愛車と共に泊まるホテル

 U2の半分近い面積を占めるのが、宿泊施設「HOTEL CYCLE」だ。

 「HOTEL CYCLE」は、全てツインルームで28室が用意される。客室内は機能的にコンパクトにまとめられる一方で、通路を兼ねた中央部の吹き抜けスペースはゆったり作られている。ここには椅子やテーブルが点在し、宿泊者同士のラウンジとしても機能する仕組みだ。

「HOTEL CYCLE」の中央の吹き抜けスペース。バイクをいじりつつ自転車談義、なんてのも楽しそうだ。余計な仕切りはなく、向こう端まで景色がつながる「HOTEL CYCLE」の中央の吹き抜けスペース。バイクをいじりつつ自転車談義、なんてのも楽しそうだ。余計な仕切りはなく、向こう端まで景色がつながる

 ホテルは自転車をそのまま持ち込んでチェックイン可能で、分解しないで客室内まで持ち込むことができる。共用のメンテナンススペースが、各フロアに1カ所用意されているのも嬉しい。

 室内には本物のドロップハンドルとステムを使った、特製のバイクラックが設置されており、バイクを持ち込んでも室内スペースを有効に使用できる。

上品な調度品を揃えたツインルーム上品な調度品を揃えたツインルーム
共用のメンテスタンド、空気入れが置かれているメンテナンススペース共用のメンテスタンド、空気入れが置かれているメンテナンススペース
ホテル2階の通路から見下ろすホテル2階の通路から見下ろす
室内にはバイクラックがあり、上下に2台並べられる室内にはバイクラックがあり、上下に2台並べられる
天然石をふんだんに使用したバスルーム天然石をふんだんに使用したバスルーム

瀬戸内の絶品が並ぶショップ&レストラン

 U2の中央部はショップ&レストランスペース。ライフスタイルショップ「U2 shima SHOP」、天然酵母の焼きたてパンを販売する「Butti Bakery」、カフェスペースの「Yard Cafe」、カウンターバーの「KOG BAR」、そしてレストランの「The RESTAURANT」が並ぶ。

 共通するコンセプトは、“瀬戸内のいいもの”の発信。ショップでは瀬戸内の海産物やフルーツを使用した商品、地元・備後産のデニムなどを扱い、レストランでも肉、魚、野菜、果物など、瀬戸内の幸をふんだんに使ったメニューを提供する。

こだわりの粉と天然酵母を使用した「Butti Bakery」のパンこだわりの粉と天然酵母を使用した「Butti Bakery」のパン
「U2 shima SHOP」には、瀬戸内のドライフルーツやジャムなどが並ぶ「U2 shima SHOP」には、瀬戸内のドライフルーツやジャムなどが並ぶ
「尾道デニム」のウェアはショップのスタッフも着用「尾道デニム」のウェアはショップのスタッフも着用
落ち着いた時間が流れる「Yard Cafe」。ウッドデッキには自転車に乗ったまま注文できる“サイクルスルー”も落ち着いた時間が流れる「Yard Cafe」。ウッドデッキには自転車に乗ったまま注文できる“サイクルスルー”も
楽しげな話し声が飛び交う「KOG BAR」楽しげな話し声が飛び交う「KOG BAR」

 お値段は、安さを売りにする感じはなく、上質な品を真っ当な価格で提供している印象だ。パンなどは、コンビニの菓子パンに慣れた筆者は一瞬ためらう値段だったが、実際に食べてみると納得させられてしまった。表面がパリッとしつつ中身はモチモチで、しかも生地の香りや風味が非常に豊か。これだけで今日のゴハン終了!と言われても構わないほどの味とボリュームだった。

 パンはレストランの食事でも出されるので、ぜひ味わってみてほしい。レストランでは、朝はベーカリービュッフェ、昼はピッツァ&アラカルト、夜はコース&アラカルトと、時間に応じてバラエティに富んだメニューを用意する。

 平日ランチ限定のピッツァオーダービュッフェは、前菜、4種から選ぶピッツァ、サラダバーで、大人1400円、小学生までは1000円。パスタ+サラダバーのパスタランチは1000円(いずれも税別)。

開放的な雰囲気の「The RESTAURANT」開放的な雰囲気の「The RESTAURANT」
ピッツァは天然酵母の生地を使い、石窯で焼くピッツァは天然酵母の生地を使い、石窯で焼く
この日のピッツァオーダービュッフェ。ピッツァは瀬戸内レモンのピッツァをセレクトこの日のピッツァオーダービュッフェ。ピッツァは瀬戸内レモンのピッツァをセレクト

「ジャイアントストア尾道」 しまなみ海道の両端を押さえる

 U2の一番駅に近いスペースで3月に同時オープンしたのが、「ジャイアントストア尾道」だ。ジャイアントは2年前にしまなみ海道の四国側の玄関口、今治にストアを開業しており、その当時からもう一方の端である尾道での出店を計画していたという。

 今回の尾道でのストア開業で、しまなみ海道の両端をジャイアントストアが押さえることになった。これにより大きな意味を持ってくるのが、両店舗で提供するレンタサイクルサービスだ。ロードバイクに限られるが、一方でレンタルしたバイクを、しまなみ海道を渡った反対側で乗り捨てることが可能になった(乗り捨てには別料金が必要)。

ついに尾道にもジャイアントストアがオープンついに尾道にもジャイアントストアがオープン
オンロード、オフロード、サイクリングまで、幅広い車種が揃うだけでなく、アクセサリーも充実オンロード、オフロード、サイクリングまで、幅広い車種が揃うだけでなく、アクセサリーも充実
店舗のガラス面には、しまなみ海道の地図が描かれる。しまなみを貫くブルーラインの両端に、ジャイアントストアが居を構えた店舗のガラス面には、しまなみ海道の地図が描かれる。しまなみを貫くブルーラインの両端に、ジャイアントストアが居を構えた

 レンタサイクルはキッズ、クロスバイク、アルミロード、カーボンロードといった本格スポーツバイクが用意される。周辺自治体が提供しているレンタサイクルに比べて料金設定は高めだが、バイクは原則として最新モデルで、返却後には次の貸し出しの前にスタッフがメンテナンスを行なうなど、ベストコンディションで乗れるのが安心だ。

 尾道市内でスポーツバイクを専門に扱うショップは初めてとのことで、オープンから間もない時期に訪れたが、店内はストアを訪れる客でにぎわっていた。

新しいサイクリングカルチャーのシンボルに

夜はライトアップされてムード満点夜はライトアップされてムード満点

 しまなみ海道を中心としたサイクリング熱が高まる中、その本州側の玄関口に誕生した「ONOMICHI U2」は、新しいサイクリングカルチャーの一つのシンボルと言えるだろう。ゆったり大人の自転車旅を楽しむための施設だと感じた。

 ショップやレストラン、周囲のウッドデッキや港湾の風景など、オシャレスポットという視点でみても優れているので、自転車抜きでも尾道観光の際にはぜひ立ち寄ってみてほしい。「坂の町」「映画の町」「猫の町」として知られる尾道だが、従来の観光スポットである駅東側とは反対側に立地することで、この西側地域をサイクリスト中心に盛り上げていくことも期待される。

 最後にあえて難点を挙げるとすれば、ムード満点すぎる点だろうか。特に夜など素敵ムードすぎて、女子旅ならともかく、男連れサイクリストだけの旅で滞在したら、少々いたたまれない気分になる恐れがある(というか、なりました)。愛するパートナー、あるいは意中のあのコを誘って訪れるのが良さそうだ。

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