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201cmのサイクリスト 山本隆弘<1>元バレーボール全日本代表のエース・山本隆弘さんがロードバイク生活をスタート

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 2013年に現役を引退した元バレーボール全日本代表の山本隆弘さんが、ロードバイクに挑戦し始めました。201cmという身長を武器に、世界の舞台で活躍してきたスーパーアスリートですが、「体に合う自転車がなかった」山本さんにとって、スポーツバイクは未体験のことばかり。オーダーメイドでようやく手に入れた特大バイクとともに、初心者としてスタートしたロードバイク生活を、山本さん自身による連載でお届けします。

◇         ◇

「僕に合うサイズの自転車があるなら」

 僕とロードバイクとの出会いは、バレーボールの先輩であり親交のある益子直美さんの一言がきっかけだった。

 「自転車は色々な出会いがあって楽しいし、良い運動になるから一緒にやらない?」

 僕はこの時の話を、半分くらい聞き流していた。なぜなら、自転車に乗るにしても、僕にとっての一番のネックは体に合う自転車がないことだった。僕の身長は2メートル。普通に考えれば、日本の需要に合わないそんなサイズの自転車なんて、あるはずがない。

 現役の頃に大阪で何回か、ごく普通の自転車に乗って出かけたことがあったが、サドルを限界まで上げても、膝が曲がった状態で地面に足が着いてしまう。さらに、ペダルを回すとハンドルに足が当たってしまうため、ガニ股での運転しかできない。自転車に乗っている人には分かると思うが、これでは全くペダルに力が伝わらないし、股関節と太ももばかり疲労して妙な筋肉痛になったものだ。

 当時のチームメートの間では、ガソリンの高騰に伴ない自転車通勤がブームとなっていたが、僕はそのブームに乗ることなく、自転車とは無縁の状態になっていた。ただ引退してからは、バレーボール漬けだった日々から一転し、全く体を動かさない生活になっていたので、自転車をやってみたいという感情が目覚めてきた。そこで、益子さんにこう返答した。

 「僕に合うサイズの自転車があるなら、やってみたいです」

 この言葉が、僕のロードバイク生活のスタートとなった。

生まれて初めて、地面に足の裏が届かない自転車と遭遇した

 2013年の終わり頃だっただろうか。「作っていただける会社が見つかった」と一報が入った。自転車メーカー、ホダカの「コーダーブルーム」というスポーツバイクブランドで、僕の場合は全てがオーダーメード。その上、僕の名前と、座右の銘である「志」の文字を入れてくれるとのことだった。出来上がりがすごく楽しみで、ワクワクしていたことを思い出す。

 2月下旬、待ちに待った僕のロードバイクが完成した。元プロ・ロードレース選手の山本雅道さんと益子さん夫妻が神奈川県藤沢市で営むサイクルショップ「BICYCLE FACTORY YAMAMOTO」を訪ねると、店に入った瞬間、今まで見たことのない大きさの自転車があった。うれしくてドキドキしながら入っていったはずの僕だったが、急に「大丈夫か…?」と不安の方が大きくなった。生まれて初めて、地面に足の裏が届かない自転車と遭遇したからだ。

 そんな僕の不安をよそに、自転車の調整がどんどん進む。ハンドルの位置や高さを調整して、固定されたスタンドの上で、ブレーキのかけ方とギアの切り替え方を教わった。

山本隆弘さんの体に合わせたオーダーメードのロードバイク山本隆弘さんの体に合わせたオーダーメードのロードバイク
山本雅道さん(右)のサイクルショップでロードバイクとの対面を果たした山本雅道さん(右)のサイクルショップでロードバイクとの対面を果たした
フレームには名前と、座右の銘である「志」の文字がフレームには名前と、座右の銘である「志」の文字が

 ある程度の調整を終えたら、試しに店の前の道路を走ってみた。この時、ブレーキをかけて無意識に右足をついて停車したら、注意された。右足を軸にして立つと、右に重心がかかって傾いた時も右に倒れてしまうから、道路を走っていた場合にはクルマにひかれてしまう、とのことだった。

 それ聞いて、さらに不安が大きくなった。僕は左利きで、今まで自転車に乗る時は必ず左足の方からペダルを漕ぐ癖がついていた。極端に言えば、右足から踏むということさえも初心者であり、そこからのスタートなのだ。こんな不安な気持ちを誰にも言えないまま、自転車をクルマに載せ、この日の練習コースへと向かった。

自転車またがっての、つま先立ちも初めてだ自転車またがっての、つま先立ちも初めてだ
店の前を少しだけ走ってみると、さまざまな不安がよぎった店の前を少しだけ走ってみると、さまざまな不安がよぎった

上りでアスリート魂が

不安を抱えながら出発の準備。山本雅道さんと益子直美さん夫妻(右)は当然リラックスしている不安を抱えながら出発の準備。山本雅道さんと益子直美さん夫妻(右)は当然リラックスしている

 そこは僕からするととんでもない坂道があるコースだった。ウエアも全く持っていないため、必要最低限のグッズをそろえてもらって身にまとった。何回も言うが、何もかもが不安からのスタートだった。

 コースを周回することになり、1周目は雅道さんや益子さんたちとゆっくり走った。それでも僕は最初の坂道で、ギブアップしたくなるくらい足がパンパンになった。不安と戦いながら、早く上りきろうとし過ぎて大きな筋肉ばかり使っていたのだ。アスリート魂なのだろうか。現役時代のような感覚で、苦しいことは一気に苦しんで乗り切ろうとしていて、景色を楽しむこともなく先ばかり見て走っていたように思う。

 上りきると、今度は急な下り坂になった。ペダルを漕がなくても進むので楽ではあったが、タイヤが細いためハンドルを取られそうになる。自分でも、だんだん肩や腕に力が入っていくのがわかる程だった。何とかゆっくり下り終え、そこからはフラットな道を走った。この頃には少し自転車にも慣れ、景色を楽しむ余裕ができた。

走っているうちに少しずつ余裕が出てきた走っているうちに少しずつ余裕が出てきた
川の音を聞き、景色を眺めながら自転車の楽しさを感じることができた川の音を聞き、景色を眺めながら自転車の楽しさを感じることができた

 そして初めて「自転車っていいな」と思えた。クルマを運転していても、ゆっくり周りを見ている余裕はないし、外の音も聞こえてこない。自転車はクルマに比べると周りの景色を楽しみながら走ることができる。風を体で感じられるし、風の音や、鳥や虫の鳴き声も聞こえる。ほとんどの人が時間に追われながら生活をしていると思うが、自転車に乗ることで、時間を忘れ、自然と触れ合いながら自分の心が安らかになっていくような感覚になった。

日本一長身のサイクリスト

初めてのライドを終えた山本隆弘さん。サイクリストとしての成長を誓った初めてのライドを終えた山本隆弘さん。サイクリストとしての成長を誓った

 初めてのロードバイクは周回コースを3周して終えたが、坂道以外は不安がなくなり、楽しむことができた。今回はランニングシューズでペダルを回していたが、次回はロードバイク用のシューズを購入し、ペダルをビンディングに変えようと思う。どこのロングライドでも坂道はつきもの。その坂道と友達のように、楽しみながら走れるようになるためにも。

 ビンディングになれば坂道も楽になるという話を聞いたが、足が固定されるため転倒するリスクも伴う。もしものために、左足を軸にして降りる練習と右足からペダルを漕ぐ練習をしよう。

 まだまだロードバイク初心者の僕ですが、日本一長身のサイクリストとして、読者の皆さまと同じくらいまで成長できるように努力するとともに、皆さまと一緒にサイクリングできることを楽しみにしています。

(文 山本隆弘)

山本隆弘山本隆弘

元バレーボール選手。201cmの長身サウスポーとしてスパイクやサーブを武器に、Vプレミアリーグのパナソニック・パンサーズや全日本でエースとして活躍。2008年には北京オリンピックに出場した。2013年に現役引退してからは解説者、タレントとして活動。身長に合わせたオーダーメードのロードバイクで、初めてのスポーツ自転車に挑戦中。山本隆弘オフィシャルブログ「志」http://ameblo.jp/takahirokokorozashi/

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