春のクラシック前半戦を締めくくる“北の地獄”ニキ・テルプストラがパリ~ルーベ初優勝 チーム戦術で“クラシックの女王”のタイトル手中に

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 春のクラシックシーズン前半戦の締めくくりにして、最大の盛り上がりを見せるパリ~ルーベ2014(UCIワールドツアー)が13日、フランスで行われ、ニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファルマ・クイックステップ)が初優勝を果たした。終盤に10人以上に膨れあがった優勝争いの集団から抜け出しての逃げ切りを決めた。

効果的なアタックを決めたニキ・テルプストラが、パリ~ルーベ初優勝効果的なアタックを決めたニキ・テルプストラが、パリ~ルーベ初優勝

過酷な路面にパンクが続出

 パリの北北東約70kmに位置するコンピエーニュをスタートし、フランス北部、ベルギー国境に近いルーベのヴェロドロームを目指すコースは、257kmに設定された。握り拳をはるかに超える大きさの石畳(パヴェ)が敷き詰められた区間(セクター)を通過しながら、はるか先のゴールを目指す。それぞれのセクターには難易度が設けられ、最も難しいもので5つ星とされる。今年は28のセクター数で、パヴェ総距離51.1km。例年、落車やパンク、メカトラブルなどが多発するほか、雨だと泥が路面に浮き出し、晴れだと砂埃が舞い、選手たちを苦しめる。レースの格式の高さから“クラシックの女王”と呼ばれる一方で、そのコースコンディションの凄まじさから“北の地獄”とも呼ばれる。

5つ星パヴェのアーレンベルグを、メーン集団のなかで落ち着いて走るファビアン・カンチェッラーラ5つ星パヴェのアーレンベルグを、メーン集団のなかで落ち着いて走るファビアン・カンチェッラーラ

 今年は、連覇を狙うファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック ファクトリーレーシング)、過去4度の優勝を誇るトム・ボーネン(ベルギー、オメガファルマ・クイックステップ)の2強のほか、昨年ゴールスプリントで涙を飲んだセップ・ヴァンマルク(ベルギー、ベルキン プロサイクリングチーム)、久々の参戦となったペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール)、ブラッドリー・ウィギンス(イギリス、チーム スカイ)らに注目が集まった。

 天候は晴れ、ドライコンディションの中スタートを切ったレースは、ケニー・デハース(ベルギー、ロット・ベリソル)ら8選手が逃げ集団を形成。50km地点でこの日最大の9分10秒のリードを得たが、それを境にタイム差は縮小傾向となる。メーン集団では、セクター26のキエヴィ(難易度4)でボーネンがパンク、その直後には集団後方で落車が発生したが、いずれも大きなトラブルにはいたらず。サガンもパンクに見舞われる場面があったが、アシストを使って集団に戻っている。

アーレンベルグで、アレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ)がアシストからホイールを譲り受けるアーレンベルグで、アレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ)がアシストからホイールを譲り受ける

 最初の5つ星パヴェ、セクター18のトルイー・ド・アーレンベルグ(距離2.4km、難易度5)に差し掛かると、約4分半のリードをもつ集団内で、立て続けにパンクが発生。その難しさに悪戦苦闘する。続くメーン集団は、パヴェを前に各チームがトレインを組んでスプリントさながらの位置取り争い。こちらは結果的に、ほとんどの有力選手が無難にクリア。レース後半の戦いへと向かった。

レースを動かす優勝候補たち

 レースが動き始めたのはその直後。カンチェッラーラのアシストを務めるヘイデン・ルールストン(ニュージーランド、トレック ファクトリーレーシング)が道路の段差に車輪を取られ落車してしまった。メーン集団前方でのできごとだったため、カンチェッラーラを含む多くの選手が巻き込まれる事態に。それをきっかけに、BMCレーシングチームの選手たちが続けざまにアタック。なかでも、トル・フースホフト(ノルウェー)の動きの良さが目立った。

積極的にレースを動かしたトム・ボーネン積極的にレースを動かしたトム・ボーネン

 こうした動きに乗じ、残り65km付近で追走集団が形成される。ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)らが加わったグループは、メーン集団に対し少しずつタイム差を広げていった。後れて合流したのはボーネン。石畳を利用してメーン集団から抜け出すと、あっという間にトーマスらの追走集団に追いついた。このレースに賭けるボーネンの意気込みが伝わってくる。

 ところが、ボーネンは集団メンバーに先頭交代のローテーションをうながすも、思うように協力が得られない。メーン集団との差が10~20秒で推移するのが精一杯の状況となった。これを受けてフースホフトが再度後方からアタックし、ボーネンらのグループへ。この頃には序盤からの逃げ集団をパスしており、ボーネンやフースホフトらは、6人で逃げ切りを狙う集団を先導する格好となった。それでも、ローテーションに積極的な選手とそうではない選手との差が明確な状況。ボーネンが苛立つシーンが何度も見られた。

 一方のメーン集団もペースが思いのほか上がらない。残り40kmで先頭集団との差が40秒と、少しずつ拡大していく。これにしびれを切らし、残り36kmでサガンがブリッジを試みる。ヴァンマルク擁するベルキン勢からマールテン・ウイナンツ(ベルギー)がチェックに入ったため、ほぼ1人での追走を余儀なくされたが、残り約24kmで先頭集団への合流に成功した。

 するとサガンは、ゴールまで21.5kmの地点で単独アタック。ボーネンらはそれを追うことなく、残り20kmで迎えたセクター5、カンファン・アン・ペヴェル(距離1.8km、難易度4)でメーン集団がボーネンらに合流した。それとタイミングを同じくして、ヴァンマルクが満を持してアタック。昨年から今年にかけて、数度にわたり死闘を繰り広げてきたカンチェッラーラがしっかりとチェックに入った。2人の勢いは増す一方。続く5つ星パヴェ、セクター4のカルフール・ド・ラルブル(距離2.1km)でサガンを捕えると、いよいよゴールを視野に入れた争いへと移っていった。

クラシックレースで着実に好成績を残しているジョン・デゲンコルプクラシックレースで着実に好成績を残しているジョン・デゲンコルプ
先頭集団へのブリッジや単独アタックなど強さを見せたペテル・サガン先頭集団へのブリッジや単独アタックなど強さを見せたペテル・サガン

11選手の優勝争い

 ヴァンマルク、カンチェッラーラの動きに対応したのは、ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チーム ジャイアント・シマノ)とズデニェック・シュティバル(チェコ、オメガファルマ・クイックステップ)。これにサガンを加えた5選手が先行したが、残り9kmでボーネンら有力選手で形成された追走集団が合流。

最後の難関カルフール・ド・ラルブルで先頭集団を追うニキ・テルプストラ最後の難関カルフール・ド・ラルブルで先頭集団を追うニキ・テルプストラ

 ルーベのヴェロドロームの門をトップで通過する資格を得たのは、11選手。ヴァンマルク、カンチェッラーラ、デゲンコルプ、シュティバル、サガン、ボーネン、テルプストラ、トーマス、ウィギンス、セバスティアン・ラングフェルド(オランダ、ガーミン・シャープ)、ベルト・デバッケル(ベルギー、チーム ジャイアント・シマノ)。近年にない大人数での優勝争いとなったが、チーム力を武器に2~3選手を最終局面に送り込んだチームが多い印象だ。

 スプリンター、ルーラー、アタッカーと、さまざまな脚質のメンバーが揃った優勝争いだったが、結末はあっさりと訪れた。

 残り6.2km、先手を打ったテルプストラのアタックは、たった一撃だったとはいえ、ライバルの追走意欲を削ぐのには十分すぎるものだった。みるみるうちに差を広げていき、残り1kmで20秒差に。パンク、落車などがなければ安全圏となるタイム差だ。

 そして、ルーベのヴェロドロームへ。何度も後方との差を確認しながらゴールまでの1周半を回った。最終コーナーを越え、ようやく優勝を確信。力強いガッツポーズでゴールラインを通過した。

石畳巧者が大願成就

 初優勝のテルプストラは、1984年生まれの29歳。トラック世界選手権でチームパシュート銀メダルなどの実績を積み、ロードでは2007年にチーム ミルラムでプロデビュー。チームの解散に伴い、2011年に現チームへと移籍した。2010年、2012年の2度オランダチャンピオンに輝いているほか、世界選手権チームタイムトライアルでは2012年、2013年にオメガファルマ・クイックステップの連覇に大きく貢献。石畳系クラシックに強く、3月開催のセミクラシック、ドワーズ・ドアー・フラーンデレン(ベルギー、UCI1.HC)では2012年、2014年の2度優勝。北のクラシックでは、ボーネンに続くチーム2番手的な位置づけで、パリ~ルーベは7度目の出場で大願成就。なお、オランダ勢としては2001年のセルファイス・クナーフェン以来の優勝者となった。

 また、オメガファルマ・クイックステップはシュティバルが5位、ボーネンが10位でフィニッシュ。選手層の厚さを示したと同時に、的確なチーム戦術が好結果につながった。

表彰台に上がった(左から)ジョン・デゲンコルプ、ニキ・テルプストラ、ファビアン・カンチェッラーラ表彰台に上がった(左から)ジョン・デゲンコルプ、ニキ・テルプストラ、ファビアン・カンチェッラーラ

 テルプストラの逃げ切りを許した10人の選手たちは、ルーベのヴェロドロームで熾烈な2位争い。最後は、スプリンターのデゲンコルプが先着し、初の表彰台を確保した。カンチェッラーラは連覇こそ逃したものの、ここでもキレのあるスプリントを披露して3位を死守している。また、ツール・ド・フランス総合優勝経験者としては、グレッグ・レモン以来の出場となったウィギンスが、3年ぶりの出場ながら9位と快走。パヴェステージが控える今年のツールに向け、チーム スカイにとっては好材料と言える結果を得た。

 春のクラシックシーズンは、オランダやベルギー南部のワロン地域が舞台となるアルデンヌクラシックへと移っていく。20日のアムステルゴールドレースからは、ステージレースで活躍するオールラウンダーやクライマー、登坂力に長けるパンチャーが主役のレースが始まる。

(文 福光俊介・写真 砂田弓弦)

パリ~ルーベ結果
1 ニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファルマ・クイックステップ) 6時間9分1秒
2 ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チーム ジャイアント・シマノ) +20秒
3 ファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック ファクトリーレーシング)
4 セップ・ヴァンマルク(ベルギー、ベルキン プロサイクリングチーム)
5 ズデニェック・シュティバル(チェコ、 オメガファルマ・クイックステップ)
6 ペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール)
7 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)
8 セバスティアン・ラングフェルド(オランダ、ガーミン・シャープ)
9 ブラッドリー・ウィギンス(イギリス、チーム スカイ)
10 トム・ボーネン(ベルギー、オメガファルマ・クイックステップ)

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