Cyclistの新人記者も100kmに初挑戦自転車の楽しみ方を提供するために 一緒に走って分かったホダカ「サイクリング入社式」の意義

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 埼玉県越谷市の自転車メーカー「ホダカ」が4月1日に開催した「サイクリング入社式」。新入社員5人が、社長や先輩社員と一緒に100kmを走り切った姿は、新聞やテレビでも報道され、大きな反響を巻き起こした。そのサイクリングに、Cyclist編集部の新人記者である筆者もロードバイクで参加し、密着取材した。目的はもちろん、新人社員たちの奮闘ぶりを通じて、サイクリングの素晴らしさを伝えるため…だったが、実は筆者はこれまで自転車で100kmを走ったことがないビギナー。ホダカの新人の皆さんと一緒に、筆者自身も限界に挑戦する一日となった。(レポート 平澤尚威)

ホダカの新入社員たちが走った「サイクリング入社式」。Cyclist編集部の新人も初めての100kmサイクリングに挑戦したホダカの新入社員たちが走った「サイクリング入社式」。Cyclist編集部の新人も初めての100kmサイクリングに挑戦した

肩身が狭かった“100km未体験”

 「お前、100km走ったことあるのか?」

 Cyclist編集長が時折、こう絡んでくると、筆者は「…」と無言を通すしかなかった。

 昨年8月、筆者のたっての希望がかない、それまでのSANSPO.COM編集部からCyclist編集部へ異動することができた。何年も前からJ SPORTSの放送を通じてサイクルロードレース観戦に熱中している筆者にとって、すぐ近くの席で「ツール・ド・フランスが…」「次のJプロツアーは?」と話し合うCyclist編集部は、憧れの的だった。

 そのCyclist編集部へ入るために、昨年の春、意を決してカーボンロードバイクを購入。「取材に必要」と言われ、有り金をはたいて一眼レフカメラと望遠レンズも買った。そして、晴れてCyclistの席へ仲間入りさせてもらったのだが…

筆者がCyclist編集部へ入るために購入したロードバイクCyclist編集部へ入るために購入したロードバイク
Cyclist編集部へ入るために購入した一眼レフカメラCyclist編集部へ入るために購入した一眼レフカメラ

 「え~っ、平澤君100km走れないの~!?」と、先輩の女性記者は容赦なく白い目を向けてくる。エースライダーY記者は、ちらりと一べつするだけで、私に関心すら示さない。そして編集長はイライラ…100km未体験ということが、こんなにも肩身の狭いことだったとは。

 そんな筆者に3月末、編集長からこう指示が出された。「ホダカの新入社員の皆さんに、100kmの走り方を教えてもらってこい!!」

過酷な「内定者サイクリング」を乗り越えてきた新人たち

 昨年のサイクリング入社式は、Cyclist編集部のエースライダーY記者が同行取材し、新入社員に100kmの走り方をアドバイスしたという。今年、筆者は足を引っ張らないだろうか? 4月1日、不安で胸が締め付けられるような思いで、越谷市のホダカ本社に向かった。

辞令を受けた(左から)畠山由圭さん、渡邊有喜さん、小山渚さん、大竹信太郎さん、詫間啓耀さん辞令を受けた(左から)畠山由圭さん、渡邊有喜さん、小山渚さん、大竹信太郎さん、詫間啓耀さん

 今年の新入社員は、大竹信太郎さん、小山渚さん、詫間啓耀(たかあき)さん、畠山由圭(ゆか)さん、渡邊有喜(ゆうき)さんの5人。スーツ姿で辞令を交付された後は、いよいよサイクルウェアに着替えて100kmを目指す。

 本社前で着々とスタートの準備が進む。私と同じように緊張しているように見えた小山さんは、学生時代に琵琶湖でレンタサイクルのアルバイトをしていて自転車に興味をもったという。これまでのサイクリング歴を聞くと、「個人で楽しんでいた程度なので…」と少し不安そう。

 一方、リラックスした表情の渡邊さんは、大学時代にはサイクリング部に所属し、サイクルショップでアルバイトをしていたという自転車好き。「会社では色々なことを経験しながら、直営店でお客様と直接関われる仕事もしたいです」と話してくれた。

リラックスした表情の渡邊有喜さん(右)リラックスした表情の渡邊有喜さん(右)
小山渚さん(右)は少し緊張した様子小山渚さん(右)は少し緊張した様子

 新入社員が主役のイベントが、実はホダカにもう一つある。入社の半年前に、3日間の合宿で走りこむ過酷な「内定者サイクリング」が行われているのだという。

 つまり、前述の小山さんを含め、全員が筆者よりサイクリングの経験が豊かなのは明らか。ロックバンドが趣味で、ロードレースは観戦専門、サイクリングイベントは何度も取材したけれど走ったことがなかった筆者の目には、新入社員の皆さんがたくましく見えた。

春を感じ、楽しく会話しながらサイクリング

 昨夏、Cyclistに「CYCLE AID JAPAN(サイクルエイドジャパン)2013」のレポートを寄稿してくれた2年生社員の徳野詩織さんが、今年は後輩をサポートする立場で参加した。徳野さんは昨年のサイクリング入社式で無念のリタイアを喫しており、今年は再挑戦する意味もある。足に自信のない筆者は、「一緒にがんばりましょう」と誓い合った。

 この日は、山崎一社長をはじめ、5人の新入社員と先輩社員を含む計14人が、2班に分かれてスタートした。ホダカでは、本社を拠点に社員同士のサイクリングがよく行われているそうで、信号や交通量が少ない区間をつなぐように、複雑なルートをスイスイと走り抜けて行く。コース上は景観の美しい区間が多く、春を感じながら、楽しい会話を交えてのサイクリングが続いた。新入社員同士はもちろん、先輩、さらには社長とも円滑にコミュニケーションができている。“慣れない環境に萎縮した社会人1年生”といった印象は、新入社員たちからは感じられなかった。

お待ちかねの昼食はおにぎりと豚汁お待ちかねの昼食はおにぎりと豚汁
休憩中に集まって語り合う新入社員たち休憩中に集まって語り合う新入社員たち

 全行程の3分の1程度をこなすと1回目のエイドステーションに到着し、昼食が提供された。筆者にとっては、人生初のエイドステーションだ。いままで一人でトレーニングに出かけた際は、コンビニで肉まんやあんぱんをほおばっていたが、エイドが用意されていることは、このうえない楽しみなのだと知った。昼食後、2つの班が合流して全員で走っている時に、小川の脇で咲き乱れる桜並木を通った。せまい砂利道なので自転車降りて歩きながら、みんなで桜を楽しむことになった。

桜並木をバックに、ずらりと並んで記念撮影桜並木をバックに、ずらりと並んで記念撮影

横風区間でちぎれて…

筆者をあっという間に置き去りにしていった畠山由圭さん筆者をあっという間に置き去りにしていった畠山由圭さん

 その後は、風が強い区間に突入。自然と、それぞれのペースで走る時間帯が続いた。体力に不安のある筆者は“ゆっくり走る組”だ。この時、一緒に走っていた畠山さんは、お世話になっていた自転車店の仲間とヒルクライム大会などに出場していたそうで、かなり走れる印象の女性だ。しばらくすると、遅いペースに我慢できなくなったのか、前を走る集団を飛ぶように追いかけていった。

 休憩で合流した後に、筆者はスピードの速い集団についていってみたが、かなり消耗した。川沿いの土手を走っている時、ふとした瞬間に集団と距離が開いてしまった。サイクルロードレースファンの筆者は「集団からちぎれる」という状況を少しだけ楽しんだが、こうなってしまえばなかなか追いつけない。楽しさも束の間、「横風区間で取り残される」選手の苦しみをたっぷりと味わった。

 新入社員のなかには、2人の自転車選手がいる。大竹信太郎さんはトライアル競技、詫間啓耀(たかあき)さんはマウンテンバイククロスカントリーの大会に出場してきた経験をもつ。休憩中などには、自転車に乗ったまま止まるテクニック「スタンディング」を、ロードバイクでやってみせた。一方で、ロードバイクには少しずつ慣れてきたそうだが、「スピードがあるので少し怖い」と口をそろえる。それでも速いグループで走れるのは、さすがだ。

トライアル競技の大竹信太郎さんは「たぶん自分が一番苦しんでいます」と話したトライアル競技の大竹信太郎さんは「たぶん自分が一番苦しんでいます」と話した
終始余裕のある様子で走っていた詫間啓耀さん終始余裕のある様子で走っていた詫間啓耀さん

自転車の楽しみ方を提供する自転車メーカー

2回目の挑戦で完走した徳野詩織さん。後ろでは後輩たちが次々と取材を受けている2回目の挑戦で完走した徳野詩織さん。後ろでは後輩たちが次々と取材を受けている

 終盤は全員が一緒に走れるようなペース。最後は、社長と新入社員全員が一緒にゴールした。入社2年目の徳野さんも、昨年の雪辱を果たして完走。後輩たちについて「弱音を吐かないし、今後の活躍に期待できます」と賛辞を送った。

 筆者も、生まれて初めて100kmを走り切った。もちろん、ホダカの皆さんのサポートと応援のおかげだ。この日、走っていて感動したのは、ホダカの社員たちが示してくれた“ウェルカム”というべき温かいもてなしの雰囲気だった。それは山崎社長が掲げる、「自転車を作って売るだけでなく、自転車の楽しみ方を提供する」という企業姿勢からくるものだろう。筆者は取材をする立場にありながら、サイクリングの楽しさを教えてもらえたと感じている。新入社員たちが投げかけてくれた「楽しかったですね」という言葉が、心に沁みた。

100kmを走り終えた新入社員ら。堂々とした頼もしい姿だった100kmを走り終えた新入社員ら。堂々とした頼もしい姿だった

 その感激を、編集部に戻って真っ先に伝えると、ちょっと意地悪だった先輩たちも「頑張ったね」と温かい言葉でねぎらってくれた。

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