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腰痛ヲヤヂのトライデイズ<1>帰ってきた腰痛オヤジ! カナヅチの告白…恐怖のスイム克服の秘訣はプールに潜んでいた

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 2013年の夏にCyclistで連載した「『アイアンマン・ジャパン北海道』に挑戦 前編中編後編レース編」では、激しい腰痛と闘いながらトライアスロンに挑む塩田厚さんの姿に、読者から大きな反響が寄せられた。今回、塩田さんが、愛娘のナナさんと交互に父娘リレー連載をスタートする。パパの連載は「腰痛ヲヤヂのトライデイズ」。笑いあり、涙ありで挑戦を続けるトライアスリートの日々をつづる。

◇         ◇

私は大のスイム嫌い

「アイアンマン70.3 セントレア知多・常滑ジャパン」スタート前の塩田さん(2013年)「アイアンマン70.3 セントレア知多・常滑ジャパン」スタート前の塩田さん(2013年)

 以前、腰痛と闘っていることを明かした塩田厚です。皆さん、練習していますか?

 トライアスロンは3種目の練習をせねばなりません。好きなバイクは少しの雨でも一日中乗っているのに、嫌いなスイムはというと、寒い日のプールにはなかなか行く気になりません。冷たい雨でも降ろうものなら「なんでわざわざ濡れに行かなきゃいけないんだ!」。忙しい仕事が終わって飯食った後にウトウトすれば「夜のプールは行きたくない」。「今日は疲れた」「肩がすこし痛い」「少し風邪気味だし咳も少し出る。大事を取って…無理してはダメ」等々、行かない理由は無限に思いつきます。

 泳ぎが不得意な私にとって、スイムは命がけです。そりゃもう溺死の恐怖と隣り合わせなのですから。何といっても、大好きな空気を時々しか吸わせてくれないのです。そして、動作をやめると深くて暗い“奈落の底”に、ブクブクと沈んでいくのです。

 トライアスロンにスイムがなければいいと思ったこともありました。スイムスタート前の緊張で大脳の酸素消費量が最大になり、泳ぐ前からぐったり疲れてしまい、自転車の時はすでにヨロヨロしています。「自分のアンクルバンドをこっそり誰かの足につけて、上陸したら千円と引き換えに受け取ってはどうか?」と考えたこともあるくらいです。やったことはありませんが…。

 あるミドルの大会でスイムを制限時間ジャストで上陸した時には、場内アナウンスで「本日スイムを一番長く楽しんだ神奈川県からお越しの塩田さん、今、スイムアップです! 56歳!」…うるさいのである。連呼するな! 極めつけは、バイクシューズを履いているときにインタビューに来たので「バイクは得意だ」というと「塩田さんはバイクが得意!」と再アナウンス。結局、バイクは後先考えずに飛ばしてしまい、ランはヘロヘロだったわけですが。

おねえさんの脚を見つめ続けてスイスイ泳げた

ある日のプールにて。右から塩田さん、インストラクター、塩田さんの歯科医院の同僚ある日のプールにて。右から塩田さん、インストラクター、塩田さんの歯科医院の同僚

 腰痛持ちは腰を伸ばすことが不得意で、ストリームラインを意識して頑張ってしまうと腰が痛くなってきます。首にもヘルニアがあるので呼吸の時には首の回りが悪い。溺死の恐怖と体の硬さで呼吸のたびに上を向きすぎていた時、プールのインストラクターの若くて可愛いおねえさんがコーチをしてくれました。

 「塩田さん、目線が上過ぎです。私がプールサイドを歩きますから、私の脚を見て泳いでみてください」
「本当に見ていいのですか!?」
「目線を確認しますから」
「では、ホントに見ますよ!」

 「見てくれ」というなら喜んで見ます。穴があくほど!

 最初は「なかなかエエ脚やな~」と思いながら水中でニヤニヤ。ところが、おねえさんが実にいい位置取りで歩いてくれて、気がつけばあんなに苦しい呼吸が楽で、水も飲まない。回す首も痛くなく、腕も腰も伸びてスイスイ進むではないですか。ありがたい!

 脚を見てスイムが上達するのなら、毎日でもプールに来ます。雪が降ろうが、槍が降ろうが。しかし、このレッスンの大きな欠点は、ターンをした後、戻りの泳ぎにおねえさんの脚がないということ。戻りに見えるのは、隣のレーンでガンガン泳ぐ、同じ年くらいのオヤジの濃いすね毛だったりします。

小学生に笑われたのも、今は昔

 もともと考え込む性格は変えられず、自転車に乗れば「ハムストリング」「殿筋」「骨盤立てろ」。走れば「前傾」「腕角度」「胸をはれ」。スイムも無心で泳げば楽なことは知っているのだけれど、考えてしまいます。「指先から足の先まで、うまく動いているだろうか?」と考えるほど体は硬くなり、無理に動かしておかしくなってしまいます。

 そういえば以前ゴルフをした時、朝の緊張の第一打を考えすぎないようにと出発の前日、ドライバーのシャフトに「目線」「左手首」「頭動かすな」と確認事項を書いたことがありました。打つ直前に確認・復唱することで弱点を再確認。最初はうまくいったけれど、次のホールでキャディーさんがシャフトを雑巾で綺麗に拭いて終わってしまいました。

 私の歯科医院では、患者さんの中に50mを45秒で泳ぐ小学生がいて、治療の途中で腕のまわし方を教えてもらったことがあります。私の腕の動きを見るや、

 「なんか先生、硬い。操り人形見たい、ハハハ!」
「先生は50mが1分かかるんだ…速くならなくて」
「それだけ長い手なんだから、どこかですごくロスしてるよ。練習してる?」

 …大人ですからもちろん我慢しましたが、大事な患者様なので殴るわけにもいかないですね。

塩田厚さん(パパ)と娘のナナさん塩田厚さん(パパ)と娘のナナさん

 金づちが泳ぎ始めて3年。練習の翌朝の歯磨きは、痛くて腰が曲げられないため両膝をつく「アラーの祈り」ポーズでないと出来なかったのが、今では逆に時々泳がないと関節の可動範囲が狭くなったような気がしてきます。

 嗚呼、原稿を執筆しているきょうは、三度の飯より好きなスイムの日。なぜなら水曜日で「水の日」だから(インストラクターのおねえさんの出勤日とは関係ありません)。

◇         ◇

 運動するうえで腰痛は大敵。特に、やり過ぎの腰痛ではなく持病の腰痛の方が、たちが悪い。こいつとうまく付き合って、1回のレースで達成感を3度味わえる楽しい競技、トライアスロンをボチボチ、でもガンガン続けていくとする。

塩田厚塩田厚(しおた・あつし)

神奈川県茅ヶ崎市の歯科医。腰痛の克服を目的にマラソンを始めたことをきっかけに、トライアスロンをスタート。「全日本トライアスロン宮古島大会」(2011年)、「アイアンマン全米選手権」(2012年)、「アイアンマン・ジャパン北海道」(2013年)などの完走経験を持つ。ジャズバンドのウッドベーシスト。

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トライアスロン パパのトライ&ナナの湘南デイズ

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