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はらぺこサイクルキッチン<9>「ヤックアタック」で総合2位 “食の準備万端”でヒマラヤのステージレースを好走

by 池田清子 / Sayako IKEDA
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 ヒマラヤを舞台に3月3日から11日にかけて開催された過酷な山岳ステージレース「Yak Attack」(ヤックアタック)。そのレースに向けて、(夫の)祐樹さんは「出来るだけのことはやった。準備万端!」と万全のコンディションでネパールに向けて出発しました。前回の続きは、現地での食生活や食事情、そして気になるレース結果をお伝えします。

ヒマラヤ山脈の標高4000m地点を走るヒマラヤ山脈の標高4000m地点を走る

 結果からお伝えしますと、2回のステージ優勝を含む総合2位で幕を閉じました。やりました! 特に初日と3日目のステージ優勝は、日本にいた私も大興奮。祐樹さんにとってシーズンの開幕レースでもあったので、どんな仕上がりか、こちらまでドキドキしていましたが、好調を証明してくれて嬉しかったです。感染症によりリタイヤした昨年の悔しい結果から考えると、今年の総合2位は「よくやった」と思います。何より、最低条件であった“完走”が無事出来たことに、心底ホッとしたというのが正直なところです。

表彰式で。共に戦った仲間達と一緒に表彰式で。共に戦った仲間達と一緒に
賞金GETしました!賞金GETしました!

効果を発揮した干し芋

 祐樹さんはネパール料理が大好き。カレー、定番のダルバート、餃子の様なモモ、揚げ物…など、どれも味がよく、食欲を満たしてくれます。しかし悲しいことですが、滞在中は常に『食中毒の危険性』と隣り合わせで、食事の度に不安があったことも事実。実際に『生ものは口にしない』『歯磨きもミネラルウォーターにする』など、どんなに気を付けていても、国際的に活躍している選手は全員、最終日までに何らかのお腹の不調を訴えました。途中棄権した選手も続出で、祐樹さんは昨年の自分を見ているようで辛かったそうです。

 彼もまたレース後半に差し掛かったころ、何度かお腹が緩くなり、「このままレースまでは保ってくれ」と祈る気持ちでいました。と、ここでお腹の救世主となった存在が。それは、何とおやつに持って行った干し芋でした。干し芋がネパールでもお通じを良くしてくれたそうで、祐樹さんは全くの私見として『腸に悪い菌が留まる時間が短くなり、スムーズに身体の外へ出て行った』のではないかと分析していました。最終日までできるだけもつようにと、1日1枚、少しずつ食べたそうですが、それでも効果は大きかったようで「今後も海外遠征には必ず持っていく」と断言していました。

ダルバートと肉料理ダルバートと肉料理

 地元選手はもちろん、祐樹さんも滞在中何度も食したネパールを代表する『ダルバート』をご紹介。パラパラのバート(米)、ダル(豆)スープ、タルカリ(おかず)、漬け物の4品がワンプレートに盛られるのが基本形(地域によって異なる場合があります)。日本でいう定食のような存在です。基本はお変わり自由で、これもまた選手には嬉しかったそうです。祐樹さんは最初の盛りつけと同じ位の量をおかわり。その他に、鶏肉またはヤックの肉料理をオーダーするというスタイルが定番の食事となりました。

ヒマラヤで楽しんだ“グルメ”

 そして、昨年は到達出来なかったステージ5のフィニッシュ地点、マナンに到着。ここでどうしても行ってみたい場所がありました。それは、マナンで有名なパン屋さん『TILICHO BAKERY』。お目当てにしている登山客も多く、お店は賑わっています。

TILICHO BAKERYTILICHO BAKERY
沢山の種類が並ぶ。どれもうまい!沢山の種類が並ぶ。どれもうまい!

 「唯一の休養日がちょうどマナンだったので、パン屋へ選手みんなで行ったのはいい息抜きになった。全種類制覇しようということになって、山々に囲まれた大自然の中で少しずつ分け合って食べた。何もかもが美味しかった」。それはよかった!

青空テーブルでの食事は最高!青空テーブルでの食事は最高!

 そしてステージ7のフィニッシュ地点、標高2900mのKagbeniには、何と「ヤクドナルド」なるハンバーガーショップがあったそうです。通常は標高4000〜6000m付近に生息するヤックの肉を使ったジューシーなハンバーガー。「これがまた美味しかった」そうですが、このネーミング面白い! こんな場所でハンバーガーにありつけたら、格別でしょうね。

ヤクドナルド。奥にはコンビニエンスストアもあるヤクドナルド。奥にはコンビニエンスストアもある
「ヤクドナルド」にて「ヤクドナルド」にて

スパイス&ハーブで体を温めてくれるマサラティー

現地の食堂のキッチン現地の食堂のキッチン

 レース中は基本的に朝と夜、選手揃って泊まっているホテルの食堂で食べることが多く、昼食は各自それぞれに。ダルバートの他に、外国からの選手の為にピザやパスタも多く用意されていたそうです。ここでは祐樹さんもグルテンフリー(小麦食品を摂取しない食生活)は中断。そして食事の際に必ず頼むのが、マサラティー。チャイに似た飲み物で、スパイスとハーブが数種類入っていて内蔵を休めたり解毒効果があったり、ミルクと合わせることで栄養補給にもなるそうです。

ポットでテーブル毎に置かれるマサラティーポットでテーブル毎に置かれるマサラティー

 暑い時に特にその効果を発揮するのですが、温かいマサラティーは身体の芯から温めてくれるので欠かせない存在だったとか。やはりその土地で愛されているものは現地の気候や風土にあっているのでしょうね。レース中の食事はリラックスタイム。選手同士が談笑し、温かい飲み物と食べ物で身体を回復させてくれる大切なひとときでした。当初考えていた“オールインスタント食品”にしなくて正解でした。

 水に関しての情報を。今回、祐樹さんを含め選手の多くは「Safe Water Station」という場所を利用しました。そこではペットボトルを持参すると、1ℓ当たり約50円でフィルターを通した水が購入出来ます。アメリカの技術を使っていて、どのような仕組みになっているのか、英語での説明書きと証明書が置いてありました。主に登山ルートに設置されていて、地図にも載っているそうです。飲み水以外にも利用することが多いので、経済的にも助かったとのこと。

 他にも、外国からの選手が持ってきていた興味深いアイテムが。ペットボトルのキャップに写真の装置を取り付け、発せられるイオンの光を約90秒間水に当てる(軽くボトルを振る)と、水中のバクテリアが殺されてクリアな水になるという器具です。様々な製品が開発されているのですね。

水をクリアにする器具水をクリアにする器具
USBで充電できるUSBで充電できる

気になるネパール人選手のパワーの源

優勝したアジェ選手(中央)、3位のナラヤン選手(右)と一緒に。祐樹さんは高山病のため全身むくんでいます優勝したアジェ選手(中央)、3位のナラヤン選手(右)と一緒に。祐樹さんは高山病のため全身むくんでいます

 トップ10の選手のうち7人がネパールの選手でした。彼らはほぼ毎日ダルバートをチョイス。ライスはおかわりしていましたが、さほど“食べている”という印象はなかったそうです。優勝したアジェ選手は小柄で細めなのに、雪道でバイクを担いで進むセクションでは、どこからものすごいパワーが出てくるのか。トレーニングや食事の内容が興味深いです。

 ちなみにアジェ選手は「68km登りのみ」という過酷なレース内容の日、スタート時に持っていた補給はエナジーバー1本とウォーターボトル1本のみ。その日の優勝者にも輝きました。3カ所のエイドステーションがあるとはいえ、補給食の少なさに祐樹さんはビックリ。彼は必要量を考えて持っていったのですが、それでもあまりの消耗に足りなくなり、途中でハンガーノック状態になってしまったそうです。アジェ選手の身体はどんな構造になっているのでしょう。恐るべし!

土地に合わせた食事対策でレースに集中

 日本ではパフォーマンスを高めるため、そして現地に対応できる身体を作るための食事でした。現地では過酷なレースに耐えられるように、安全を最優先した食事に。ネパールはコメという選択肢があったので、比較的日本食に近い感覚もあったようですが、標高が高くなるにつれて手に入るものも限られるため、その土地のものを美味しくいただける身体というもの大事だと感じました。

 お腹も、“感染症にかからない身体作り”が食べ物によってどこまで奏功したのか、ハッキリとは分かりませんが、結果として大事にもならず良かったです。常に危険と隣り合わせというのはつらいことで、そのストレスとも戦わなければなりません。事前の準備などで少しでもその不安を解消できれば、レース中は競技に集中できるものです。

 とにかくこのレースに参加した選手、サポートしてくださった皆さまにお疲れさまと言いたいです。これからもその土地に合わせた対策をして、万全な状態で臨めるように私もサポートしていきたいと思います。

池田清子池田清子(いけだ・さやこ)

アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネージャー経験を生かし2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを開始、同秋結婚。平行して「アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。ブログ「Sayako’s kitchen」にて情報配信中。

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