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日向涼子のサイクリングTalk<2>イタリア生活を彩る素敵な料理とテーブルコーディネート 宮澤崇史選手&花菜子さんインタビュー

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インタビュー取材は初体験。ドキドキしながらお話をうかがいましたインタビュー取材は初体験。ドキドキしながらお話をうかがいました

 自転車のヒルクライムレースに挑戦している私は、成績アップに役立つと考えて昨年、スポーツのための食事学の資格「アスリートフードマイスター」を取得しました。とはいえ、競技のための食事を毎日実践するとなると、なかなか難しいものです。そんな悩みに陥った頃、日本を代表するロードレース選手の一人、宮澤崇史選手の奥様である花菜子さんのお料理ブログを知りました。

 いつも美味しそうな料理と、それに合ったテーブルコーディネート、また花菜子さんのお人柄が垣間見えるブログを拝見することが、いつしか私の日課になりました。競技のための栄養管理と、素敵な食事を両立している宮澤家の食卓への憧れは募るばかり。

 そこで、Cyclist編集部を通じて取材をお願いすると、快く受けてくださり、今回、お二人そろってインタビューに応じていただくことになりました。

料理はテーブルコーディネートから

 ご夫妻のご自宅を訪ねると、外出中の宮澤選手のために花菜子さんが昼食の準備中。部屋には宮澤選手の写真や賞状が飾られていましたが、自転車は見当たりません。聞けば、生活空間に自転車は置かないようにしているとのこと。また、「彼が自転車選手だということを忘れている時がある」と、意外な言葉も返ってきました。

宮澤選手の帰宅に合わせて料理を始めた花菜子さん宮澤選手の帰宅に合わせて料理を始めた花菜子さん
テーブルコーディネートが食事に彩りを添えてくれますテーブルコーディネートが食事に彩りを添えてくれます

 そんな話をしていると、「ただいまー」と宮澤選手がリビングに現れました。その表情は、世界を舞台に活躍しているトップ選手とは思えないほどの、人懐っこい笑顔。花菜子さんが言っていたことが何となく分かるような…。宮澤選手には男女ともにファンが多いことも、うなずけます。宮澤選手が食事を終える頃には、私の緊張もいくぶんか解け、いよいよインタビューがスタートしました。

「いただきます」宮澤選手もこの笑顔!「いただきます」宮澤選手もこの笑顔!
取材日は、ステージレース後の疲れを回復しなければならない状態だったので、乳酸菌・クエン酸・抗酸化作用の強い食材が中心。献立は肉豆腐と大根の煮込み、野菜ときのこの炊き合わせ、タコともずくの酢の物、キムチ納豆、トマトジュース取材日は、ステージレース後の疲れを回復しなければならない状態だったので、乳酸菌・クエン酸・抗酸化作用の強い食材が中心。献立は肉豆腐と大根の煮込み、野菜ときのこの炊き合わせ、タコともずくの酢の物、キムチ納豆、トマトジュース

──さっそくですが、シーズン中の工夫を教えてください。

花菜子さん「基本的にバランスや品目数はオンもオフも変わらないですね」

宮澤選手「シーズンオフは、夜食に豚骨ラーメンが追加されるとか、プラスアルファーがでかいだけで(笑)」

花菜子さん「それ以外は普通だね。フライが増えるとかもないし」

宮澤選手「基本的に脂っこいものは好きじゃないので」

──日頃からバランスの良い食事をされているということですね。それ以外に気を遣っていることはありますか?

花菜子さん「食事って毎度のことだから、いつも雰囲気を変えることを大切にしています。外食の雰囲気もですが、自宅の食卓でもテーブルコーディネートを変えるようにしていて、特にイタリアでは毎日変えています」

──毎日ですか!

花菜子さん「彼が出かけたら、夕食は和にする、洋にする、中華にする…と決め、そしてまずテーブルコーディネートをしてから料理を始めるんです。ろうそくを使ったり、お花を使ったり、リネンを変えたり。気分を高めるというか、それだけで切り替えになりますよね。食事も、毎日変化をつけます。鍋料理のように一緒に何かを突っつく日もあれば、たくさんの具材を並べて、思い思いのトッピングして『どっちが美味しいか!』のようなゲーム感覚で楽しんだり。パスタにオリーブオイルだけかけて、どのメーカーが美味しいかなんて食べ比べをしたり。食卓にエンターテイメントを創るんです。選手はランチで外食なんてしないので 自分でお店やメニューを選ぶ事は少ないと思います。だから、食卓がマンネリにならなようにしたい。栄養に特化するのではなく、食事を楽しめる環境づくりを心がけています」

リビングでくつろぎながらお話をうかがいましたリビングでくつろぎながらお話をうかがいました

 「スポーツのための食事」というと、つい栄養面を中心に考えてしまいがちですが、花菜子さんは栄養バランスを前提としつつ、それ以上に食事を楽しんでもらう空間作りを工夫されているとのこと。そんな女性らしい感覚に、いっそう憧れてしまいました。私に限らず、自転車業界には花菜子さんのファンが多いのですよ。

シンプルで豊かなイタリアでの生活

日本のご自宅での食事。和食でもオシャレにコーディネートしています日本のご自宅での食事。和食でもオシャレにコーディネートしています

──花菜子さんのブログやFacebookページを拝見すると、お料理がいつも素敵なテーブルコーディネートとともに紹介されていますね。コーディネートはどこかで学ばれたのですか?

花菜子さん「学校に通って勉強したことはありません。美味しい料理がうまく出来た時、写真を撮ってブログやFacebookに掲載しているうちに『もっときれいに撮りたい』という気持ちが強くなって、気がつけば食器が増えていたり(笑)。あと、ほかの人の料理ブログは隈なく見ています。自分の感覚だけだと、どうしても似たような感じになっちゃうけれど、ほかの人の料理を見ると発見があります。そうやって(コーディネートは)自然に身に付いたのかな。でも、最近は崇史も一緒にコーディネートするよね」

宮澤選手「面倒くさい時は『トイレ行ってくる』とかになっちゃうけどね(笑)」

 食後のアイスを食べて幸せそうな宮澤選手と、それを包み込むような笑顔で見つめ、話しかける花菜子さんの様子は、時に、仲の良い姉弟のようでもあり、「お互いに居心地がいいのだろうなあ」と思わせてくれます。そんなお二人のイタリアでの生活、とっても気になりますよね?

──イタリアでは、食材の調達はどのようにされていますか?

花菜子さん「昔と違って今は、手に入らなくて困るものはありません。でも、和食の食材に関しては値段が高いので、日本から持っていきます。出汁もそうですし、海苔などの磯ものは向こうの人は食べないので。日本ではあまりやらないけれど、イタリアでは一番出汁、二番出汁って、丁寧に出汁を取ります」

イタリアのご自宅での食事とテーブルコーディネートイタリアのご自宅での食事とテーブルコーディネート

──イタリアだと、ですか?

宮澤選手「日本で暮らしていると、『あれをしなきゃ』『あそこに行かなきゃ』って、何かと忙しくないですか?」

──確かに、何かとバタバタ動き回って一日が終わったりしますね

宮澤選手「イタリアでは、それがないんですよ。シンプルだよね。時間もあるし」

花菜子さん「あっちにいる時の方が私たちは心地いいよね。彼はひたすらトレーニングだし、私はひたすら家のこと。無になれるというか。だから、料理もいろいろ試したくなっちゃう」

 例えば煮物なら、材料をドカッと一緒に煮ちゃうのではなく、それぞれ準備して、ひとつひとつ煮ていくのだそうです。大根は下茹でしてから味を入れるとか、大根・人参・筍などすべて具材ごとに火を入れる時間を調整するとか。「でも、それって、おばあちゃんがやってきた当たり前のことなんですよね」と花菜子さん。先人の知恵というか、料理の基本を実践する環境やゆとりが、イタリアにはあるというのです。

笑顔が絶えないお二人のおかげで、インタビューの話も弾みます笑顔が絶えないお二人のおかげで、インタビューの話も弾みます

花菜子さん「むこうにいると、日本と違って最低限やらなきゃいけないこともあります。例えば、ヨーロッパの大根って固いんですよ。“なんでだろう”って考えながら料理をしてきたら、自然に美味しく出来るようになりました。また、お魚を手に入れて『つみれだな』と思ったら、つみれを作らなきゃならない。日本だったら、つみれが出来ている状態で売られているでしょう?」

 確かに「つみれを作ろう」という発想になるのは、時間だけでなく心にもゆとりがある時。今の私には、そこまで手をかけること自体が贅沢だけれど、たまには日常を手放して、一日のすべてを料理に使う日があってもいいのかも。逆に、あえてそのような時間を作ることで、生活にメリハリがつくのではないでしょうか。お二人の話を聞いていると、そんな気持ちになっていました。

誤解だらけだったイタリア料理

──日本は便利すぎるんですね。では、イタリア料理はどのように学ばれたのでしょうか

食の話から、イタリアでの生活、そして夫婦関係…興味の尽きないインタビューとなりました食の話から、イタリアでの生活、そして夫婦関係…興味の尽きないインタビューとなりました

花菜子さん「基本的な作り方は知っていたつもりだったんです。オーソドックスなものに関しては、レシピ本を読まなくても作れます。でも、誤解していたこともいっぱいあることに気づきました。というのも、イタリアは食材自体が美味しいし、オイルも美味しい。だから下ごしらえさえきちんとすれば、素材を生かすだけで美味しいものを作れるということに気づいたんです」

──素材の違いが、料理に大きく影響しているのでしょうか

 「自然と調理法が変わりました。イタリアの家には裏に畑があるので、常に旬のものがいただける。そこで採れたアスパラガスを塩茹でし、オリーブオイルをかけるだけで『ああ、こんなに美味しいんだ』って感じることが出来ます。ミートソースを作るにしても、お肉にしっかり下味を付けて、肉が焦げたタイミングでワインを振るなど、調理のタイミングや順番を守れば、塩とトマトだけで余計な味付けは不要だと分かったのです。日本ではケチャップやら何やら、いろいろ入れるでしょう? 日本人はマネが上手で、そんな調味料で美味しくしちゃう。それはそれでいいと思うのですが、私は料理のルーツというか、本来の美味しさを知りたくなったのです」

宮澤選手「マネも、本物を知った上でやるのはいいと思うんですよ。でも、本質を知らないで、とにかく『簡単、時短』で似たようなものを“本物”だと思うのは間違いです。例えばヨーロッパに行って、ごはんの上にトビッコとアボカドとカニカマが乗ったものをSUSHIだと出されたら『えっ?』って思うでしょう。そういうことなんですよ」

「素材が違うので、調理法も変わった」と語る花菜子さん「素材が違うので、調理法も変わった」と語る花菜子さん
「イタリアでの生活はシンプル。時間もある」と語る宮澤選手「イタリアでの生活はシンプル。時間もある」と語る宮澤選手
日本の自宅でクリスマスの料理を盛り付ける宮澤選手(2012年12月)日本の自宅でクリスマスの料理を盛り付ける宮澤選手(2012年12月)

 イタリアの新鮮な食材を知ったことで、調理方法が変わっただけでなく、ルーツまで知りたくなってしまったとは、イタリアの料理によっぽど深みと存在感があるのでしょう。また、宮澤選手が語ったSUSHIの例え話は、花菜子さんの気持ちを分かりやすく説明してくれたものです。「やっぱり夫婦だな」と思わされた瞬間でもありました。

自転車ゴハン“パート2”を出したい

 味や栄養の面だけでなく、心にも美味しさを届けようとする花菜子さんの料理は、作っているところを想像するだけで幸せな気持ちになります。そんな愛情のこもった手料理を宮澤選手はどのように感じているのか、気になるところです。

──宮澤選手は、花菜子さんが作る料理で「今日は何か違うな」と変化に気付くことはありますか?

宮澤選手「美味しいと感じたときは、それで“お金を取れるレベル”かどうか、という基準で判断するところはありますね。使っている食材と手間から原価率を考えて、『いくらで出せるよ』とか」

花菜子さん「『あの店で出せばいいんだよ』とか、よく言ってるよね(笑)」

宮澤選手「逆に、ダメなときは“この料理の何がダメなのか”を考えます」

花菜子さん「私も同じことを考えていることが多いよね。塩も、先に入るのと後から入るのでは微妙に違うんですよ。『これは(下味が足りなくて)後塩の味になっちゃってるね』と話したりしています」

お二人が共同で手がけた「自転車ゴハン」。続編を期待します!お二人が共同で手がけた「自転車ゴハン」。続編を期待します!

──塩のタイミングまで分かるとは。宮澤選手自身も料理本を書かれただけあって、会話が高度ですね。著書の『自転車ゴハン』を出版されたのは3年前。続編の構想はありますか?

花菜子さん「『パート2を出したいね』って言ってるよね」

宮澤選手「最近は、(自転車ゴハンを出版した)当時以上に食事を気遣うようになったので。“体に優しい”を基本とし、プラス、今は選手として必要な要素もより多く料理に取り入れるようになりました。さらに、ダイエットにもなるし、強さも得られる。そんな本を出せると思います」

 アスリートフードマイスターの資格を取得しつつも、実生活になかなか生かせていない私にとって、「自転車ゴハン パート2」はぜひ読んでみたい一冊です。また、レースには出ないまでも、“体に優しくダイエットにもなる”と聞けば、誰もが読みたくなるのではないでしょうか。そんな期待と願望が膨らみました。

◇         ◇

 今回、私はインタビュアーを初体験。相手の気持ちを汲みながら対話し、それをまとめる作業を通じて、多くのことを学びました。宮澤さん夫妻に対しては「アスリートと、それを支える妻」をイメージしていましたが、そう単純ではなく、もっと自然で自由な関係だったことがとても新鮮でした。花菜子さんにとって宮澤選手は、自転車選手である以前に“大切な男性”であり、だからこそ、いつも心地よく迎えようとしているのでしょう。取材を終えて、自分がスポーツへ向き合う姿勢にも、余裕が生まれたような気がしています。(日向涼子)

最後は3人で記念撮影。楽しく取材させていただき、ありがとうございました最後は3人で記念撮影。楽しく取材させていただき、ありがとうございました

日向 涼子 日向 涼子(ひなた・りょうこ)

企業広告を中心に活動するモデル。食への関心が高く、アスリートフードマイスター・食生活アドバイザー・フードアナリストの資格を持つ。2010年よりロードバイクに親しみ、ヒルクライム大会やロードレース、サイクリングイベントへ多数出場。自転車雑誌「ファンライド」で『銀輪レディの素』を連載中。ブログ『自転車でシャンパンファイトへの道』( http://ameblo.jp/champagne-hinata/ )

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