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はらぺこサイクルキッチン<8>ヒマラヤの過酷な山岳レース「ヤックアタック」へ再挑戦 カギは感染症に強い体づくり

by 池田清子 / Sayako IKEDA
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ネパール料理屋でライスを注文し忘れ特大のナンを前にする池田選手。グルテンフリーはお休み!ネパール料理屋でライスを注文し忘れ特大のナンを前にする池田選手。グルテンフリーはお休み!

 地球上で最も標高が高く“世界の屋根”とも称されるネパールのヒマラヤ山脈で、2014年3月3日から11日にかけて、過酷なマウンテンバイクレース「ヤックアタック(Yak Attack)2014」が開催されました。夫でありプロMTB選手の池田祐樹(トピークエルゴンUSA)は、唯一の日本人選手として参戦しました。2年目の挑戦です。

 「はらぺこサイクルキッチン」では“ヤックアタック対策”として、レースに向けて摂った食事や、持参した補給食、現地での食生活についてお伝えします。今回は前編として、日本を発つまでのアスリート食を振り返り、感染症に勝つ体づくりや減量策をご紹介します。

「山が呼んでいる」 リベンジのヤックアタック

 ヤックアタックの過酷さは「全競技を合わせても世界で5本の指に入る」と言われるほど。スタート時の気温は30~40℃、レース後半はマイナス20℃という気温差。最高地点は富士山より遥かに高い標高5400m。この上なく厳しい環境下で競走するのです。全8ステージのレースでは、世界中から集まる強豪選手、容赦なく変化していく大自然、そしてくじけそうになる自分自身と闘わなければなりません。

 初参戦だった昨年は、レース前半こそ表彰台に立ったものの、感染症にかかり「最後まで走りたい」という意志に反してレース中に気を失い、ドクターストップ。涙ながらに途中棄権しました。

感染症により下痢と嘔吐を繰り返しリタイアした昨年のレース(ヤックアタック2013)感染症により下痢と嘔吐を繰り返しリタイアした昨年のレース(ヤックアタック2013)

 池田選手本人は帰国当時、「生死の境をさまよった。一日中いたトイレの臭いは一生トラウマになりそうだ」と震える口調で振り返ったものです。しかしその数日後…「山が呼んでいる」と2014年のエントリーをしていました。再度チャレンジするのなら、今度はまず感染症にかからず「完走する」ことが最低条件です。そして、参戦する以上は、やはり「結果を残してくること」が第一の目標となりました。

免疫力&パワーを身につけて感染症に勝つ

 そのためにまず考えたのが、現地での食事をどうするかということ。はじめは、全食インスタント食品を持参しようと考えていました。皿やスプーンなども使い捨てにして、感染リスクを極力断つという策です。しかし、それで本当によいのでしょうか。

 短い日程ならまだしも、約3週間に及ぶ現地での生活をインスタント食品のみで過ごし、過酷なレースを乗り切れるとは思えません。約60食分ともなれば、相当な量になってしまいます。また、気温が氷点下となる銀世界では、温かい作りたての食事が大きな楽しみであり、モチベーションを高めてくれるもの。そして何より、その土地の気候にはその土地のものをいただくことが、体にとっても理にかなっているはずです。

チリビーンズとレンコンの煮込みチリビーンズとレンコンの煮込み

 食事の席は選手同士の交流をより深めてくれる貴重な時間。郷に入りては郷に従え。現地の料理をおいしく食べられるように、感染症にかからない強い体を目指すことにしました。

 トレーニングと並行して実践したのは、免疫力をつけることとパワーをつけること。前回、花粉症などのアレルギー対策で紹介したレンコンがここでも大活躍! レンコンのあの糸は「ムチン」といって、粘膜を強化し免疫力を高めてくれる効果があるのです。

 また、腸内環境を整えてくれる発酵食品は欠かさず摂りました。自家製培養ヨーグルト、さつまいもに加え、乳酸菌を期待して生こうじの味噌を使った味噌汁などを作りました。念には念をということで、池田選手と親しいカナダのマウンテンバイクマラソン・ナショナルチャンピオン、コーリー・ウォレス選手から教えてもらった「消化酵素と善玉菌を補う」というサプリメントを海外からネットで取り寄せました。

ラストスパートの減量策

鍋いっぱいに作った脂肪燃焼スープ鍋いっぱいに作った脂肪燃焼スープ

 レースが近づいてくると東京は記録的な大雪に! 外で思うように自転車に乗れない日々が続いたため、減量も視野に入れた献立を組み込むことにしました。参考にしたの本は『毒出し脂肪燃焼スープが効く!』(主婦の友社)です。

 これがすごい威力を発揮しました。出発前の3日間に3食食べ続けたところ、体重は「ラストスパート!」と言わんばかりに減少。この時は一緒に、高たんぱく低脂質な食材、豆腐や豆も摂りましたよ。

 出発当日の朝、体重は過去数年間で最も少ない63.4kgに。2014年の年始に掲げた“ベスト体重”にピッタリ合ったので、2人で驚いてしまいました。見た目にも筋肉のバランスがいい感じに仕上がっていました。体がつくれていると、気持ちの面での自信にもつながったのではないでしょうか。

味噌汁とスープの両方食べる味噌汁とスープの両方食べる
本来はアドカボで作るグアカモーレを豆腐で作って肉料理のディップに本来はアドカボで作るグアカモーレを豆腐で作って肉料理のディップに
出発当日朝の体重測定出発当日朝の体重測定

胃を慣らす以上の収穫を得たネパール料理店

国旗が掲げられたネパール料理店の入口国旗が掲げられたネパール料理店の入口

 おまけでもうひとつのエピソードを。日本にいるときから現地の食事を食べて胃を慣らしておこうと、自宅からさほど遠くないネパール料理店へ食事に出かけました。メニューはほとんどカレーで、スタッフは全員ネパール人。カレーは沢山の香辛料が効いていて、食べると汗が出るほど身体が熱くなりました。

 この店での食事は1回だけでしたが、胃を馴らしておくこと以上の収穫がありました。それは、モチベーションが一層アップしたこと。日本にいながらネパールの方と話し、現地に近い食事を食べることで、ヤックアタック参戦がリアルに感じられるようになったからでしょうか。現実味が増すと、同じトレーニングをこなしていてもより効果が高まると池田選手は話していました。

 また、今回新たに試したのは、「食べたい」と思う食事の量を本人に任せたことです。私はネパールへ同行しないため、現地で何をどれだけ食べるかは本人次第。必要な分は食べるが、必要以上に食べない、適量だった時のよいコンディションを覚えておく、食べ過ぎた時の体調の変化を感じる…といったことを考えながら食べるのがポイントです。簡単ではありませんが、これも大事なトレーニングです。

補給食は5kg おやつの干し芋を忘れずに

8日分の補給食の総重量は5kg!8日分の補給食の総重量は5kg!
池田選手のお母様、お祖母様とともに成田空港で盛大に見送りました池田選手のお母様、お祖母様とともに成田空港で盛大に見送りました

 出発前に補給食をずらりと並べてみました。総重量5kg。これだけの量を8日間でほぼ全て食べると思うと、圧巻です。現地でもエイドステーションで補給はできるそうですが、やはり信頼している補給食の方が、慣れない環境での戦いを後押ししてくれます。

 おやつには干し芋、ノンフライのレンコンチップス、梅干し、海苔、煎餅など。中でも干し芋は、便通に効くサツマイモを現地でも食べるための秘策です!

 2月下旬。いざ出陣! 気をつけていってらっしゃい! 今回は体調を崩さず最後まで完走出来るでしょうか。現地での食事は? 後編に続きます。

池田清子池田清子(いけだ・さやこ)

アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネージャー経験を生かし2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを開始、同秋結婚。平行して「アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。ブログ「Sayako’s kitchen」にて情報配信中。

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