高額賠償例も自転車向け保険 事故への備え確認を

新生活スタートを機に、通勤や通学で新たに自転車を使い始める人も多いだろう。環境に優しい乗り物として利用が広がっている自転車。しかし、歩行者にけがをさせた場合など、高額な賠償金の支払いを求められるケースもある。安全運転を心掛けることに加え、万一に備えて「自転車向け保険」も活用したい。(竹岡伸晃)
■個人賠償責任保険
「成人男性が昼間、信号を無視して高速度で交差点に進入。青信号で横断歩道を渡っていた女性に衝突し、女性は死亡した」「女子高校生が夜間、携帯電話を操作しながら無灯火で走行。前方を歩行中の女性に衝突、女性に大きな障害が残った」
これらは、日本損害保険協会(東京都千代田区)の調べによる自転車での加害事故の例だ。加害者は、いずれも裁判で5千万円以上の賠償金の支払いを命じられた。
自賠責保険への加入が義務付けられている自動車と異なり、自転車には強制保険がない。自転車関連の事故件数は減少傾向にあるものの、事故を起こせば、被害の大きさによっては数千万円規模の賠償金支払いを求められる。損保協会業務企画部自動車・海上グループリーダーの大坪護さんは「多くの人が自転車に乗っているが、事故を起こせば未成年でも賠償責任を問われる。保険などで備えておくべきだ」と話す。
では、どのように備えればいいのか。ファイナンシャルプランナーの馬養(まがい)雅子さんは「現在加入している保険の内容をまず確認してほしい」とアドバイスする。自分自身の死亡やけがは、生命保険や医療保険などで、ある程度はカバーできる。
問題は、事故を起こして相手を死亡・けがをさせたり、物を壊したりして賠償金の支払いを求められた場合だ。馬養さんは「日常生活でのさまざまな賠償責任を補償する個人賠償責任保険でカバーできる」と指摘する。個人賠償責任保険は火災保険や傷害保険などにセットされているケースがあり、特約として月額数百円程度で付けることも可能だ。自動車保険にも自転車の事故までカバーしたり、特約として追加できたりするものがあるという。

■加入で安心しない
これらの保険に加入していない場合、自転車向け保険が選択肢となる。
au損害保険(港区)が手掛ける「100円自転車プラン」「新自転車ワイドプラン」は、auの携帯電話・スマートフォン(高機能携帯電話)やパソコンから簡単に加入できるのが特徴。保険料も月額100円からと手ごろだ。福岡孝夫・執行役員営業企画部長は「いつでも、どこでも、手軽に入れる商品を目指した」と説明する。
三井住友海上火災保険(中央区)の「自転車向け保険」は、コンビニエンスストア「セブン-イレブン」のマルチコピー機を使って加入できる。保険料は年額4760円から。この他、日本交通管理技術協会(新宿区)の「TSマーク付帯保険」などもある。
馬養さんは「損害賠償などに対しては、5千万円以上を目安に保険で備えておきたい」と話す。ただ、「保険加入で安心するのではなく、安全運転に十分気をつける」(損保協会の大坪さん)ことが重要なのは言うまでもない。