スペイン・マヨルカ島でのCyclist記者体験記メリダ「リアクトEVO」でサイクリング&ハイスピードライド プロと同じバイクに乗り、プロのアシスト付!?

澄み渡った空に真っ青な海、きりりとした風の中をプロ仕様のバイクで走る――スペイン・マヨルカ島で2月中旬に行なわれた「メリダ・プレスキャンプ」では、テストライドやサイクリングのチャンスが何度か訪れた。Cyclist記者も、プロチーム「ランプレ・メリダ」のメインバイク、メリダ「リアクトEVO」に乗り、報道関係者らと共に計およそ70kmのライドを体験してきた。
まずはのんびりサイクリングへ
到着の翌日、まずはサイクリングへ。バイク撮影だけのつもりが、あまりに心地よい気候にそわそわとし始め、撮影に協力していただいていたメリダの国内総代理店ミヤタサイクルのスタッフとともに「乗らずにいられるものか」とばかりに飛び出した。
リアクトEVOは空力性能に長けたフレーム形状に、パワーを最大限活用することができるという楕円が特徴の「Rotor(ローター)」製チェーンリング、2006年創立のイタリアの新鋭メーカー「Prologo(プロロゴ)」のサドル、シマノ・デュラエースのコンポーネントがセッティングされている。時間の制約があったことと、翌日にはしっかりライドをする予定が控えてたため、“あくまでもサラッと乗る”構えの記者を含む2人はこの日、リアクトEVOに恐れ多くもフラットペダル(フラペ)を装着した。

会場であるホテルから走り始めれば、それはもう爽快・快適! 特に案内標識があるわけではなかったが、車道横に設けられたスペースは路肩まで1m以上はあり、皆が自転車道として利用している。途中、サイクリスト向けに、高低差などが記載された周辺の推奨走行ルートのガイドも見かけた。
海の気配を頼りに住宅街・別荘街を進むと、海沿いの遊歩道横にサイクリングロードが敷かれていた。全長は2.4kmほど。夏にはヨーロッパからのリゾート客でにぎわうはずの街はシーズンオフとあって閑散としているものの、カフェやレストランがいくつかオープンしていて、テラス席でくつろぐ人たちの姿も見られた。海側を見れば停泊しているヨットの白いマストが空や海の青に映える、美しい風景だ。
復路で車道横を4kmほど走行する区間は、風もなく順調。速度を見て驚いた。フラペにスニーカーという点だけでは街乗り自転車と条件が同じにもかかわらず、軽々と平均時速32.2kmという速度で走ることができたのだ。ふだんロードバイクに乗る記者だが、この条件下で自身のこんな記録を見たのは初めてだった。否が応でも翌日のライドへの期待が高まっていった。
「ゆっくり」が存在しないライド

その翌日には、世界の報道関係者ら20~30人で出かけるライドが開催された。前日のサイクリングでの走行感から想像するに、ロードバイク用のビンディングペダルを装着して走れば、ハイスピードな展開になることは分かっていた。それでも、ためらわずに参加を決めたのは事前に「スピードごとのグループに分けて走るのでご心配なく」とアナウンスされていたからだ。
ところが、出発前に募っていたグループは「ハイスピード」か「ほどほどのスピード」。え、「ゆっくり」は…? 何度か確認をとってみたが、ゆっくりという概念はないらいしい。仕方なく「ほどほどのスピード」グループのあたりにたたずんでいると、今度は「ハイスピードのメンバーが思ったより集まらなかったので、ひとつのグループにまとめます!」というアナウンスが。
そもそもあたりを見回すと、ライドに女性参加者がいない。その場にいた唯一の女性サイクリスト、プロMTB選手のガン・リタ ダール(マルチバン・メリダ バイキングチーム)に話かけたが、彼女はスタートを見送りに来ただけだという。腹をくくった。
スタートを切った集団は、感心するほどスムーズに2列編成が組まれ、一定スピードで進むトレインができあがった。並んで走る他国のメディアと情報交換などをしながら畑の風景が交じる街々を通り抜ける間、平均時速27kmと「ほどほどのスピード」が出ていたが、集団の中にいると苦もなく走ることができた。
10kmほど走ったところで、後方から何か声が聞こえたと思うと、集団が2つに分断された。「途中でスピードに違いが出始めたら、グループを分けるかも」。出発前に聞いた言葉を思い出した時は、もう手遅れ。記者は前方グループに“取り残されて”しまっていたのだ。そしてほどなく、アップダウンが始まった。
ホセ・ヘルミダにアシストされて…
小高い丘を上り、20km手前で3分の休憩が設けられた。女性ということでトイレなど気にかけてもらい、感謝をしつつ再出発を切り――気付いた脚の違和感。乳酸…なのだろうか、ここまで順調に来ていたので休憩中も気にかけなかったが、何かが溜まっている感じは否めない。
気付いてしまうと不安になり、疲労感が増す。さらに、コースは上り中心へと変わっていた。集団は、7.6km続く上りでもトレインを崩さず美しくよどみなく走行。この間記者は、なんとマルチバン・メリダ バイキングチームのベテラン選手ホセ・ヘルミダ、さらに24歳の若手選手オンドレイ・ツィンクに背中を押されつつ集団に復帰するという幸運な経験をした。「時間はまだまだあるからそんなに慌てなくて大丈夫だよ」というホセの言葉が心に染みた。
上りきって下り中心になっても決して楽はさせてもらえなかったが、安定の乗車感でスピードにのれるバイク、コースを満喫することができた。記者の計測ウォッチに表示された「時速56.5km」という数字に驚愕したり、あまりに高速化した集団についていけず諦めかけたところでガイドスタッフがブリッジをかけて記者をひいて戻してくれたりとドラマチック。
フィニッシュ後に「よく走ったね」と労われると、すぐにでもまた走りたい気持ちになるから不思議だ。流れるオリーブ畑の景色の中でのライドは、素晴らしい経験となった。