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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<50>スペクタクルか安全か、ミラノ~サンレモに浮上したコース問題 2月下旬のレースも紹介

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 おかげさまで「週刊サイクルワールド」は50回目を迎えました。これもひとえに皆さまのご愛読の賜物と、心より感謝しております。100回、200回…と続けていきたいと思っています。今回は“ラ・プリマヴェーラ(春)”こと、ミラノ~サンレモをめぐって噴出した、コースの問題についてピックアップします。

新ルート「ポンペイアーナ」をめぐる主催者と行政当局の意見相違

2009年優勝のカヴェンディッシュ。初のモニュメント制覇にゴール後は号泣2009年優勝のカヴェンディッシュ。初のモニュメント制覇にゴール後は号泣

 これまでミラノ~サンレモといえば、「スプリンターズクラシック」との見方が強かった。歴代優勝者には、エディ・メルクス、エリック・ツァベル、マリオ・チポッリーニ、オスカル・フレイレといった面々が名を残す。現役スプリンターでは、アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、オメガファルマ・クイックステップ)が2005年に優勝。また、現在はペタッキからリードアウトを受けているマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)も、2009年に涙の勝利を飾った。マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は2011年に南半球初の優勝者となった。

 ここ数年はレースの高速化や、脚質による完全分業がなされていることもあり、スプリンターが勝利することは幾分難しくなってはきている。それでも、例年、終盤の上りでアタックした選手と、それを追うスプリンターチームの構図はほとんど変わらず、レースの特徴でもあった。

 そんな数々の激闘が繰り広げられてきた、イタリアに春を告げるスプリンター中心のレースが、新たな展開を迎えようとしている。昨年9月、主催者のRCSスポルトは、終盤の勝負どころである「チプレッサ」と「ポッジオ」の間に「ポンペイアーナ」の丘越えを追加したのだ。

ミラノ~サンレモ2014のコースプロフィール。終盤(右側)に3つの丘越えが並ぶ ©RCS Sportミラノ~サンレモ2014のコースプロフィール。終盤(右側)に3つの丘越えが並ぶ ©RCS Sport
「ポンペイアーナの丘」の詳細。平均斜度は5%だが、後半に最大斜度14%の急勾配区間がある ©RCS Sport「ポンペイアーナの丘」の詳細。平均斜度は5%だが、後半に最大斜度14%の急勾配区間がある ©RCS Sport

 これにより、レース最後の約38kmの間に、急坂越えが3つに。ポンペイアーナは、登坂距離5km、平均勾配5%、上りの中腹で最大勾配14%のセクションが控える。頂上通過する時点で、ゴールまでの距離は約20km。残された距離や、最終盤にポッジオが控えていることを考えると、ここで決定的なアタックは起こりにくいが、しかしスプリンターをふるい落とすには十分な関門と見ることはできる。

 この決定により、“春”を迎えようと意気込んでいたスプリンターたちはガッカリ。カヴェンディッシュやマルセル・キッテル(ドイツ、チーム ジャイアント・シマノ)らは怒りをあらわにし、早々に欠場を表明した。

 一方で、チャンス到来と喜んだのは、クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)ら、ステージレーサーやクライマーたち。「クライマーズクラシック」の様相を呈し、クラシックハンターとの勝負が注目されるところとなった。

ツアー・オブ・オマーンでシーズンインするフルームツアー・オブ・オマーンでシーズンインするフルーム
ドバイツアーを走るニバリドバイツアーを走るニバリ

 ところが、ここへきてポンペイアーナがルートから除外される可能性が浮上してきた。イタリア・インぺリア県の警察が、下りで多くの危険性を見つけたというのだ。道幅が狭いうえ、ガードレールが設けられていないポイントも多くあるという。また、最近の悪天候により、泥が道路に流れ込むケースや、地滑りが起こる事例もあったとされる。したがって、安全性の確保が難しいとして、行政当局はポンペイアーナのレース使用に難色を示している。

 これに対し主催者のRCSスポルトは、綿密なモニタリングを行うと主張。今のところコースから除外することはないとしている。

すでにシーズンイン、ドバイツアーを走るカヴェンディッシュ。2度目の優勝を狙ってのミラノ~サンレモ参戦はあるのか?すでにシーズンイン、ドバイツアーを走るカヴェンディッシュ。2度目の優勝を狙ってのミラノ~サンレモ参戦はあるのか?

 選手・関係者も即座に動き始めた。出場意欲をアピールしていたフルームは、「ポンペイアーナが入らないのであれば、自分自身をミラノに送り込む意味が無くなる」とし、欠場の可能性を示唆。逆に、カヴェンディッシュの周辺は、出場に向けて準備しようとしている。オメガファルマ・クイックステップのスポーツディレクターであるダヴィデ・ブラマーティ氏は、「従来のルートで行うならば、マーク(カヴェンディッシュ)はミラノ~サンレモに戻るだろう」と述べている。

 レース開催まで残り約1カ月。「なぜ今頃!?」との印象は拭えないが、今後のRCSスポルトの判断が注目される。レースに難易度やスペクタクル性を求めるのか、それとも安全性を重視するのか。近年、イタリアのロードレースでは、2011年ジロ・デ・イタリアでワウテル・ウェイラント(ベルギー、当時レオパード・トレック)が落車事故により死亡している。また2009年ジロでは、ペドロ・オリーリョ(スペイン、当時ラボバンク)が崖下80mへ落下する大惨事に見舞われた。もちろん、ポンペイアーナの問題とジロでの事故を一括りに論じることはナンセンスだが、過去の事例などと照らし合わせながら、正しい決断を下してほしいと願う次第だ。

2月下旬のレースプレビュー

 シーズンインを迎えた選手たちは、いよいよクラシック、グランツールを見据えたレースプログラムを本格化させる。そこで、近く開催予定の中から、注目度の高いレースをピックアップしていこう。

■ツアー・オブ・オマーン(2月18日~23日、オマーン、UCI2.HC)

今年もビッグネームが集うオマーン。(左より)カンチェッラーラ、ロドリゲス、ニバリ、フルーム、サガン、ヴェリトス今年もビッグネームが集うオマーン。(左より)カンチェッラーラ、ロドリゲス、ニバリ、フルーム、サガン、ヴェリトス

 シーズン序盤の中東シリーズ最終戦。同じく中東のレースであるドバイ・ツアーやツアー・オブ・カタールとは異なり、総合力が試されるコースレイアウトだ。おなじみグリーンマウンテンの頂上ゴールは第5ステージ。フルームは、このステージレースをシーズン初戦とする。その他、ニバリ、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ)、ペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール プロサイクリング)らビッグネームも集結する。

■ブエルタ・ア・アンダルシア(2月19日~23日、スペイン、UCI2.1)

 別名“ルタ・デル・ソル(太陽への道)”。スペイン・アンダルシアを一周するレース。全体的に山がちなルートで、頂上ゴールの第2ステージが要注目だ。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)は総合3連覇に挑む。ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ プロチーム)、ブラッドリー・ウィギンス(イギリス、チーム スカイ)、バウケ・モレマ(オランダ、ベルキン プロサイクリングチーム)も参戦。

■ヴォルタ・アオ・アルガルヴェ(2月19日~23日、ポルトガル、UCI2.1)

 アルベルト・コンタドール(スペイン、チーム ティンコフ・サクソ)御用達のレースとして有名になった大会で、もちろん今年も出場する。世界選手権奪取後の凱旋レースとして2年ぶりに参戦するルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)、総合2連覇がかかるトニー・マルティン(ドイツ、オメガファルマ・クイックステップ)らもスタートラインにつく。第3ステージの個人TTと、アルト・ド・マルハオ頂上ゴールの第4ステージで総合争いが決する。

■ツール・ド・ランカウイ(2月27日~3月8日、マレーシア、UCI2.HC)

昨年はNIPPO・デローザのアレドンドが総合優勝。この成績を引っさげ、トップチームのトレック移籍を決めた昨年はNIPPO・デローザのアレドンドが総合優勝。この成績を引っさげ、トップチームのトレック移籍を決めた

 いまやアジア最大のステージレースの1つに成長。今年もアジア、ヨーロッパ、アフリカから23チームが出場を予定している。全10ステージで争われ、おなじみのゲンティンハイランドは第4ステージで登場。UCIプロチームでは、アスタナ プロチーム、ベルキン プロサイクリングチーム、オリカ・グリーンエッジ、チーム ヨーロッパカー、チーム ティンコフ・サクソが参戦。日本からは愛三工業レーシングの出場が決まっている。

今週の爆走ライダー-ニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファルマ・クイックステップ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

ツアー・オブ・カタールで総合優勝したニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファルマ・クイックステップ)ツアー・オブ・カタールで総合優勝したニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファルマ・クイックステップ)

 2月14日に閉幕したツアー・オブ・カタール(UCI2.HC)で総合優勝。第1ステージで逃げ切り勝利を決めると、翌日からの5ステージでリーダージャージを守り抜いた。その間、トム・ボーネン(ベルギー)のスプリントをアシストするなどマルチな走りを披露した。

 その万能さは、トラックレースでの経験に由来する。2005年にはチームパシュートで世界選手権銀メダル。現在もトラックへの熱意は衰えておらず、チームメートのイルヨ・ケイス(ベルギー)と組んで6日間レース(短距離から長距離までさまざまなトラック種目を、2人1組で6日間かけて行うレースシリーズ)に参戦、この冬も好成績を収めた。

 そんな彼だが、かつては万能さゆえのミスも多かった。独走力を武器にアタックするも、バッドタイミングでの飛び出しとなって勝利を逃すこともしばしば。2011年に現チーム合流後は、ボーネン門下生として石畳強化とともに、勝負勘も養う。今回のカタールでは、自身の勝利はもとより、ステージ2勝を挙げた“師匠”ボーネンの復調を「強いトムが帰ってきた!」と喜んだ。

カタールでは総合を守りながらチームリーダーのボーネンに寄り添う走り。ボーネンもステージ2勝を挙げたカタールでは総合を守りながらチームリーダーのボーネンに寄り添う走り。ボーネンもステージ2勝を挙げた

 2月末からは、ベルギーでのセミクラシックが始まる。「目標はツール・デ・フランドルとパリ~ルーベ。トムと一緒に勝ちたい」とモチベーションは高い。2012年のルーベでは、中盤にボーネンを引き連れて集団から飛び出し、勝利をアシストした。パヴェ巧者が揃うチームを引っ張る存在として、今年も重要な役割を担うこととなる。

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介
福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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