自転車を通じて“地域力”を全国へ発信豊かなローカル色と絶好のロケーション 初開催「にし阿波シクロクロス大会」は大好評

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 徳島県初のシクロクロス大会として2月16日に開催された「第1回にし阿波シクロクロス大会」。四国シクロクロスシリーズ2013-2014の一戦として行われたレースは、シクロクロスシーズン最終盤での活躍を期する選手たちが集結。それと同時に、地元ライダーや四国観光を兼ねたホビーライダーが集まる和やかなイベントでもあった。初開催とは思えないほどの賑わいと充実度を見せた今大会を、徳島県在住ライターの視点でレポートする。(文・写真 福光俊介)

四国一の清流、吉野川から数メートルという場所にコースが設けられた四国一の清流、吉野川から数メートルという場所にコースが設けられた

徳島県西部のローカル色を前面に

 徳島県は、北に鳴門海峡と瀬戸内海、東に紀伊水道、南に太平洋と海を望み、西には四国山地と阿讃山脈がそびえる自然の宝庫である。地元サイクリストたちは、山岳コース選びに不自由せず、強い海風との戦いも楽しむ。そんな土地にシクロクロスがやってきた。

コースはほぼフラットだが、泥やシケイン、階段といった多彩なセクションが設定されたコースはほぼフラットだが、泥やシケイン、階段といった多彩なセクションが設定された

 シクロクロスは、主に冬場に行われるオフロード競技。土、砂、芝などの不整地やアップダウンをこなし、スピードはもちろん、パワーやボディバランスも要求される難しい競技だ。UCI(国際自転車競技連合)会長のブライアン・クックソン氏は先ごろ、シクロクロス競技の冬季五輪参入を目指すと宣言し、その普及度や魅力に全世界の関心が寄せられている。

 とはいえ、国内のシクロクロス大会はトップライダーからビギナーまで門戸が開かれており、オフロードバイク(最上位カテゴリー以外はシクロクロスバイクでなくても参加OK)さえあれば参加ができる手頃さも人気だ。

地域の憩いの場である「ぶぶるパークみかも」がこの日ばかりはサイクルパークに地域の憩いの場である「ぶぶるパークみかも」がこの日ばかりはサイクルパークに

 にし阿波シクロクロスを主催するのは、徳島県西部の三好市池田町に位置するNPO法人「ツール・ド・にし阿波プロジェクト」。イベント開催を通じてサイクルスポーツの振興・普及を図りながら、“にし阿波”の地域振興を目指している団体だ。2011年にNPO法人として認証されて以降、毎年、晩春に同プロジェクト最大のツーリングイベント「ツール・ド・にし阿波」を開催。法人設立前に開催した第1回と合わせ、過去4回の大会はいずれも成功を収めている。

 シクロクロスの誘致にあたっては、準備期間に2年を要したという。今年で7回目を迎えた「さぬきシクロクロス」(香川県)をはじめ、近県のシクロクロス大会を視察し、徳島県での実現可能性や運営方法、そして会場の適地を模索してきた。

自然の洗車場が登場!? これぞ“にし阿波”ならでは!自然の洗車場が登場!? これぞ“にし阿波”ならでは!
竹のトンネルがコースに組み込まれる竹のトンネルがコースに組み込まれる

 同プロジェクトの田埜泰弘理事長は、「自転車イベントを通じてサイクルスポーツに適した場所であることを発信すると同時に、物産を含め地域活動のアピールの場としたい」と開催の意義を説明する。

東みよし町の高地で収穫されたそばの実を使って作られる「そらのそば」。地元の“おばちゃん”たち手作りの心がこもった一杯東みよし町の高地で収穫されたそばの実を使って作られる「そらのそば」。地元の“おばちゃん”たち手作りの心がこもった一杯

 “地域力”といった部分では、開催地・東みよし町の特産品である「そらのそば」、徳島が誇る食材「阿波尾鶏」のから揚げ、地元の人気カフェなどが出店し、イベントの盛り上げに一役買った。

 そして何より、会場となった「ぶぶるパークみかも」にセッティングされたコースは、数メートル脇に吉野川、遠方には高峰・四国山地を望む絶好のロケーション。参加者がここを走るだけで“にし阿波”を堪能できる環境が用意された。

四国山地を脇に望む「第1回にし阿波シクロクロス大会」四国山地を脇に望む「第1回にし阿波シクロクロス大会」

カテゴリー昇格・残留をかけた最後の戦い

C1カテゴリースタートC1カテゴリースタート

 レースは早朝から午後にかけて、男女合わせて全15カテゴリーで争われた(混走含む)。午後からはメーンレースが行われ、最上級カテゴリーのC1は前半からトップが目まぐるしく変わる展開に。中盤から抜け出した門田基志(TEAM GIANT)が優勝。愛媛県今治市を拠点に、マウンテンバイクライダーとしてもプロ活動を行っており、2月9日のシクロクロス東京でも6位に入った実力者だ。

 レース前半にチェーントラブルに見舞われ、1分半ほどロスしたという。それでも、焦ることなく先行ライダーを追い、トップに立つとあっという間に独走態勢を築いた。「難易度は決して高くはなかったが、泥セクションが多く、パワーで押していかないと止まってしまう感じだった。本当に楽しく、素晴らしいレースだった」と充実のコメント。表彰式ではユーモラスな発言で会場を和ませるなど、レース外でも大会を盛り上げた。

門田基志がC1優勝門田基志がC1優勝
C1の表彰式C1の表彰式

自転車王国を目指す徳島の未来

 関西シクロクロスの協力もあり、絶妙なコースセッティングがなされ、選手・関係者からのオーガナイズへの評価もかなり高いものとなった。間違いなく、第1回大会は大成功と言える。同時に、“にし阿波”の地域振興、サイクリングポイントとしてのアピールも上々だ。閉会式では、第2回開催を期待する声が数多く挙がった。

ツール・ド・にし阿波プロジェクトの田埜泰弘理事長ツール・ド・にし阿波プロジェクトの田埜泰弘理事長

 今大会の成功を受け、田埜理事長は次を見据える。「ロケーションを含め、“にし阿波”ならではのイベントを作っていきたい。コースバリエーションを増やすなど、参加者のニーズにできる限り応えていきたい」と、理想はまだまだ高い。こうした意気込みは、5月25日に開催予定の「ツール・ド・にし阿波」につながっていくことが期待される。

 サイクリングイベントの振興は、徳島県全体でも活発になりつつある。徳島県自転車競技連盟の中西裕幸理事は、「競技力向上はもちろんだが、まずはサイクリングイベントの主管として連盟が携わり、ライダーの総数を増やすことに重きを置きたい」と述べる。競技・普及・振興の三位一体のアプローチを目指す体制づくりに着手しているところだ。

普及活動の一環として、キッズカテゴリーのレースも行われた普及活動の一環として、キッズカテゴリーのレースも行われた

 例えば、今大会のジュニアカテゴリーで地元のホープ、森智大(小松島西高校)が優勝するなど、競技力向上のアプローチは徐々に奏功し始めている。

 また、徳島県在住のホビーライダーが下位カテゴリーに多数参加。鳴門市から出場した新居和仁さんは「シクロクロスは2回目。積極的に参加して、もっともっと強くなりたい」と話す。地元ライダーによる参加意欲の高まりは、普及・振興面で将来を明るく照らしている。

 関東や関西といった大都市圏で暮らす方の中には、四国は縁遠い地と感じている向きも少なくはないだろう。だが、四国にサイクリングに適した環境がいたるところにあり、ひとたび足を踏み入れれば誰もがその魅力に取りつかれる。サイクリングイベントをきっかけに徳島、さらには四国を感じてみてほしい。

 「究極の目標は、自転車競技で徳島からオリンピック選手を輩出すること」(中西理事)、「四国から世界を目指していきたい」(C1優勝・門田)と、世界を視野に入れた発言も飛び出した第1回にし阿波シクロクロス大会。その思いを実現するべく、選手・関係者の熱い取り組みはこれからも続いていく。

C1(60分)結果
1 門田基志 1時間21秒
2 福田透 +1分4秒
3 久保信次 +1分57秒
ジュニア(40分)結果
1 森智大 40分49秒
2 今井有樹 +12秒

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