山本幸平の「チェンライチャレンジ」参戦レポート<前編>激坂を上って下って、ゾウにも乗って タイの自然を満喫した「チェンライ国際MTBチャレンジ2014」
2月8日、9日にタイで開催された「第15回チェンライ国際マウンテンバイクチャレンジ2014」のレポートを、MTBクロスカントリー日本チャンピオンの山本幸平選手の執筆でお届けします。山本選手のマネージメントを担当するアスリートバンクの中野裕二郎さんによる、スポーツクラス参戦レポートや、タイ旅行のミニアドバイスも。
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「Cyclist」をご覧の皆さん、こんにちは、マウンテンバイクライダーの山本幸平です。僕のプロフィールは別途公式サイトや公式フェイスブックなどで見てもらうとして、簡単に言うとMTBクロスカントリー部門で、2013年のUCI(国際自転車競技連合)世界ランキングが11位まで上がって来たプロライダーです。兄の山本和弘はMTBからロードレースに転向して2年、Cプロジェクト(クロップス・チャンピオンシステム)チームの一員として活躍しています。
“象さんレース”なんて言えない本格レース

さて、このチェンライ国際MTBチャレンジ、この業界で言うところの“象さんレース”は、なんと今年で15回目を迎えました。出場した回数は自分でも覚えていませんが、このレースは時季的にも場所的にも、シーズンの起点と言うべき初戦になるレースなんです。このチェンライで1カ月ほど滞在して、身体を徐々にワールドカップ参戦へと調整していく―そんな位置づけになっています。
チェンライチャレンジは日本人、タイ人、韓国人、現地欧米人など、毎年100人以上のレース参加者がいる本格レースです。カテゴリーは3つから選択でき、エントリークラスというべき「ファンクラス」、苦しく楽しく走りたい人向けの「スポーツクラス」、そして僕のエントリーする最上級の「インターナショナルクラス」があります。
今年は僕だけでなく、ブリヂストンアンカーから平野星矢選手、そしてアンカーに移籍してきた斎藤亮選手も参戦し、フロントローはまるで全日本選手権かと思える光景となりました。
一路「チェンライ」へ 朝夕はひんやり

まずはタイへ入国するところからレポートします。タイ最北部に位置し、ミャンマー、ラオスと国境を接するチェンライへは、残念ながら日本からの直行便がありません。僕はスイスに住んでいるので、ハブ空港であるバンコク・スワナプーム国際空港で乗り換えて向かいました。バンコクで中野さんと合流し、バンコクからチェンライまでの飛行時間は1時間15分程度。約700キロを北に飛んで行きます。
僕らがチェンライ空港に到着したのは朝の9時すぎ。日陰はTシャツではちょっと寒いほどの気温でした。コートやダウンはいらないですが、朝晩はパーカーやプルジャケットくらいはないと風邪をひきますね。ただ僕はスイスからすでに風邪をこじらせていて、チェンライ入りしたときはかなり体調が悪かったです(泣)。
でも日中は30℃近くまで上がりますのでご安心を。乾季なので雨はまず降りません。
レースの前日はオフィシャルホテルであるリムコックホテルで、まずは受付を済ませます。このホテルは川沿いにある大きなリゾートホテルで、期間中、参加者はこのホテルに滞在することになります。
受付では翌日のコース図をチェックしたり、スタート時間の確認、ゼッケンの取り付けを自分で行ないます。ゼッケンを自分のバイクに装着するのは、気分が高鳴るときでもありますよね。翌朝はホテルの前で午前7時半に集合するので、早々にベッドインしました。
ポリスカーの先導でスタート

朝7:30、参加者たちがホテル正面のドライブウエイに集まりました。毎年参加している人たちは再会を喜び、今年のレース内容について話しながら、8:00のスタート時間まで、肌寒い中を待ちます。タイ北部の民族舞踏で安全祈願をしてもらい、いざレースがスタートします。
スタートと言っても、最初はコンボイという地元のツーリストポリスカーが先導し、スペシャルステージの開始される15キロ先のシンハーパークまでを一団となって走行します。ポリスカー先導のおかげで、信号が赤でも通過しちゃいます。ここで参加者はウォーミングアップもでき、1日目の約40キロ走破に備えます。
名物の「激坂」へ挑め!
30kmのスペシャルステージ1のスタートは、チェンライ市内から15キロ離れた「シンハーパーク」内にあるマウンテンバイクコース。その名前からも分かる通り、シンハービールで有名なブンロート・ブリュワリー社が運営する観光施設です。広大な敷地でお茶、フルーツなどが製造販売されています。
朝9:00、インターナショナルクラスのスタート時間がやってきました。僕はアンカーの精鋭選手たちと同組でスタート。気分はホントに全日本選手権です。
スタート後、トップ集団では、アンカーチームや韓国のサンちゃん(ナ・サンフーン選手)らと、かわりばんこにペーサーとなって上りと下りをクリアしていきました。体調の悪さから、苦しいのを我慢してのレースとなりましたが、このセクションではチェンライチャレンジのハイライトの一つである「激坂」が待ち受けています。
その激坂の前にもたくさんのアップダウンがあって、これでもかとばかりに坂が現れます。途中、自分がミスコースをしたため、午前のセクションを2位で終えました。
お楽しみ、ランチタイムはタイ料理

午前のレースを終えると、ランチタイム。もちろんタイ料理です。辛いのが苦手な人は、スタート前にコンビニでパンやチョコレースなどを用意しておくのもいいでしょう。ボランティアが用意してくれるランチは、ほんとアロイ(美味しい)ですね。むろんライダーは到着順にランチをいただくので、到着が遅いと午後のスタート時間までのインターバルが短くなってしまいます。
午後のスペシャルステージ2は9.7km。午前と同じく4選手での走行が続きました。ところが、終盤でどの辺りがゴールなのかはっきり分からず、3選手とのスプリントに乗りそこね、ペダルを踏まないままゴールを迎えていました。たぶん4着で1日目を終了。
激坂では「去年は足を付いたが、今年は頑張って上りきるぞーっ」と思っているライダーがたくさんいます。ワールドカップでは、これ以上の上りや下りは沢山ありますが、僕にとっても決して楽な坂じゃないことは確かですね。
チェンライの辺りはタイ最北部なので、言葉も方言というか部族の言葉が、走っていると聞こえてくるんです。きっと子供たちは頑張れーみたいなことを叫んでいるのだと思いますよ。
お待ちかねのゾウ! そしてボートで川下りも
このレースの醍醐味のひとつは、川を渡るのに、自分の自転車と一緒にゾウに乗ることです。これは日本では絶対にできない経験です。

僕の故郷である北海道・幕別町もナウマン象が発掘された場所なので、ゾウにはちょっと親近感はあります。とはいえゾウに乗ることなんてありません。ほんの数十分ですが、巨大なゾウに乗ってのライドも、非日常で楽しいひとときです。ゾウは匂いもしませんし、固い背中の高い位置からの景色は格別です。
降りる時にちょっと頭を足で踏んでしまうのはかわいそうな気がするけど、ゾウさん、本当にありがとう。
一日中上って下っての40kmを走り終えると、僕も皆も体力消耗状態。この日一日の走りについて皆で談義をしたりして、ビール片手に疲れを癒します。
そしてホテルへの帰路は、ホテルの真下までボートで川下りをします。1つのボートにバイクと一緒に4人乗車。これが何とも言えないくらい気分がいい! 疲れた身体にボートの揺れが優しく、そして夕方近くの気持ちいい空気に包まれ、僕もそうですが恐らく皆も寝てしまいます。
ホテルの船付き場へ到着すれば1日目が終了。部屋へ戻ってシャワーを浴びたら、即マッサージへ直行です。タイに来てマッサージを受けない人はいないでしょう。たいてい2時間で300バーツ(約942円)ですから、利用しないと損ですよね。何時間でも受けていたいくらいです。
(レポート 山本幸平・写真 山中基嘉、中野裕二郎)
■タイへ行くならこれは揃えよう
アスリートバンクの中野裕二郎です。私は山本幸平のサポートに加え、自分自身もスポーツクラスへ出場しました。私の参戦レポートは次回にして、今回はまずタイ旅行のアドバイスをお届けします。
(1)SIMフリー携帯電話
最近は日本でもSIMフリー携帯が販売されています。何がいいって、通話代、3G、テザリングなどインターネット接続が安いことにつきます。挿入するSIMカードは、空港またはセブンイレブンで簡単に購入できます。日本への通話もめちゃくちゃ安いです。SIMのチャージが無くなったら、まだセブンイレブンで好きなだけチャージすれば良いのです。
ただし、たいていは有効期間があります。チャージをしていても、数カ月すると残額がゼロになっている場合があるので、ご注意を。

(2)サングラス、日焼け対策
日本でもサングラスをかける人は多いですが、ここタイはホントに日差しが強いです。紫外線は眼球をも焼いてしまいますので、サングラスを持参するか、こちらでも購入することをお勧めします。
チェンライは朝晩は15℃位なのでひんやりするのですが、太陽が昇るとともに気温は30℃近くまで上昇します。この時期は乾期なので乾燥していて、紫外線も強いですから、日焼け止めクリームやジェルは欠かせないアイテムです。
(3)ブヨに刺されたら
日本とは種類が違う虫や害虫がたくさんいます。不思議なことに、全く刺さない蚊もいたりします(私の経験です)。

しかし、非常に厄介なのが、ブヨに刺されたとき。これは大変です。私もこちらでゾウの川渡りから降りて、ボートを待っている間にやられました。ブヨは皮膚に針を刺して血を吸うのではなく、皮膚を削って出て来た血を取るんです。やられてしまったら、もう掻かずにはいられません。痒くて痒くて仕方がないんです。
一番は掻かない事ですが、薬局でアンターガンクリームという軟膏を入手して塗るといいです。たった20バーツで買えます。
(4)水
タイでは、水は信じられないほど安く簡単に購入できます。だいたい20バーツ(約60円)もあればおつりも来ます。日本人にとって、水道水が飲用に不安なことは事実でしょうね。水分を沢山とっておくのに悪い事は一切ないです。
(5)ATM、円→タイバーツ

町には至る所にATMマシンが24時間動いています。提携している銀行であれば、日本と同じように、カードを入れてタイバーツを引き出すのがもっとも簡単です。手数料がかかることもあるので、事前に調べておきましょう。
また、タイではたいていの町に私設の交換所があります。一見怪しくは見えますが、手数料も安く、円からタイバーツの交換が、サインするだけでできちゃいます。成田や羽田で高い手数料を払う必要はないですね。
(6)レンタル原付バイク

町にあるオートバイ屋さんの店頭には、「FOR RENT」という看板とともに、レンタルバイクが並んでいます。50ccや100cc位で1日200バーツ、ビックスクーター系なら500バーツで簡単にレンタルができます。メリットは、タクシー代が節約できること、移動が簡単なこと。2人乗りもできちゃいます。
手続きは簡単。バイクを選んで、借りたい日数分の料金を前払いで支払います。ただし、保険についてはないものと思ってください。しかもレンタル中はパスポートを店に預けないとなりません。
(7)GPS機器
携帯電話のGPS地図を見るのも良いですが、通信代が安いとはいえもったいないかも知れません。そこで使えるのが、自転車にも装着できて、言語が日本語対応のナビ。これを持って行くとネバーロストです。ガーミン製のGPS機はタイではアジア版のSDカードを入れるだけで細かな路地まで表示されるし、多言語対応なのでとても便利ですよ。
(8)自転車の輸送

航空会社によっても異なりますが、タイ航空の場合、日本からのエコノミークラスでは最大20kgまでの荷物が無料です。おおよそバイクが10kg、ラゲッジが10kgの範囲内なら、自転車も無料で預けられます。
ただし、ハードケースでなければディレーラーは外し、タイヤの空気は抜いてください。ショックオイルは大丈夫ですね。MTBはディスクローターも取っておいたほうが無難です。事前に3辺のサイズがわかれば、航空会社へ連絡しておくのが良いでしょう。
(中野裕二郎)