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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<48>ホーナーとサンチェス、ベテラン2人の契約のプロセスとは ツール・ド・フランス出場チームも決定

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 ツアー・ダウンアンダー、ツール・ド・サンルイスと開幕戦があり、次の注目レースに向け、わずかなブレイクの1週間。ところが、まるでこのタイミングに狙いを定めていたかのように、ビッグニュースが相次ぎました。すでにご存知の方も多いかと思いますが、いま一度、事の経緯を整理してみたいと思います。

“最後のビッグネーム”2人が勝ち取った強力チームとの契約

所属チームが決まらなかったクリストファー・ホーナーだが、ビッグチームとの契約が成立した所属チームが決まらなかったクリストファー・ホーナーだが、ビッグチームとの契約が成立した

 まずは、1月30日にランプレ・メリダとの契約が発表されたクリストファー・ホーナー(アメリカ)。頂点に立った昨年のブエルタ・ア・エスパーニャの時点で、2014年シーズンの契約が決まっていないことは話題に上っていた。結局、契約更新、移籍チーム決定ともにいたらず、フリートランスファーとして新シーズンを迎えてしまった。

 その間、チーム ヨーロッパカー、ユナイテッドヘルスケア、イエローフルオ、カハルーラル・セグロスRGA、クリスティーナウォッチズといったチームへの加入がたびたび取りざたされた。しかし各種報道によると、チーム ヨーロッパカーはオファー時点でホーナー側の求める年俸に届いていなかったこと、その他4チームはプロコンチネンタルチームまたはコンチネンタルチームと、カテゴリーが下がることから、本人がチーム入りを望まなかったとされている。

ブエルタの連覇がかかるクリストファー・ホーナー。ジロにも出場する予定だブエルタの連覇がかかるクリストファー・ホーナー。ジロにも出場する予定だ

 そしてホーナーは昨年末、長年のエージェントであったマイケル・ラザフォード氏との契約を破棄。今年の初めからは、昨年までオリカ・グリーンエッジで走っていたバーデン・クック氏をエージェントに迎えた。これが見事に奏功し、ランプレ・メリダとの契約を勝ち取った。

 ホーナーとランプレ・メリダとの接触は今年に入ってから噂にのぼるようになり、結果的にその噂通りとなった。後にクック氏が明かした話として、1月上旬には契約が成立する方向だったという。しかし、どこからかリークされてしまい、周辺が騒がしくなったことで契約までの時間を要してしまった。

 なお、チーム、本人ともに1月30日に契約を認め、翌日にチームが公式発表を行っている。また、ジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャを狙うことも明らかにしている。ジロではダミアーノ・クネゴ、ディエーゴ・ウリッシ(ともにイタリア)、プシェメスワフ・ニエメツ(ポーランド)らとの共闘が期待される。

2013年シーズン限りで引退したバーデン・クック氏2013年シーズン限りで引退したバーデン・クック氏

 ちなみに、クック氏はUCI公認エージェント資格を所持しておらず、資格取得は早くてもこの秋とのこと。無資格者のエージェント業は禁じられてはいないが、業務報酬を得ることができないとされている。つまり、クック氏は“タダ働き”で大仕事をやってのけてしまったのである。

“引退”ほのめかしたサンチェス、最後にビッグチームへ

 大きな驚きをもって受け止められたのは、サムエル・サンチェス(スペイン)のBMCレーシングチーム入り。2日、チームが突如発表した。

 バスク地方の誇りとされたチーム、エウスカルテル・エウスカディの長年の顔であり、バスク自転車界の歴史を次々と変えてきた男でもある(サンチェス自身はアストゥリアス人)。

北京オリンピック金メダル、ツール・ド・フランス2011山岳賞など輝かしい記録をもつサムエル・サンチェス北京オリンピック金メダル、ツール・ド・フランス2011山岳賞など輝かしい記録をもつサムエル・サンチェス

 昨シーズン限りでのチームの解散を受け、当初は同郷のF1ドライバー、フェルナンド・アロンソがオーナーとなるチームに参加することで合意に達していた。しかし、“チーム・アロンソ”プロジェクトは難航。2015年シーズンに活動を開始する方向となったが、その間、サンチェス自身は2014年の所属チームを見つけることが難しい情勢になってしまった。

 こちらもホーナー同様、いくつかのチームがオファーしていると噂された。ワンティ・フロープホーベルト、スカイダイブドバイ、チーム ティンコフ・サクソといったチーム名が挙がった。特に、チーム ティンコフ・サクソに関しては、友人でもあるアルベルト・コンタドール(スペイン)のアシストを務めるのではないか、との見方が強かった。コンタドール自身、チームがオファーしていればとの前提で「加入してくれれば大歓迎だ」とするコメントも出していたほどだ。しかし、いずれも契約は実現せず。

 サンチェスは1月下旬に受けた取材に対し、「今後10~15日以内にチームが見つからなければ引退する」とコメントしていた。トレーニングは消化していたが、モチベーションが低下しつつあったという。それから数日して、ビッグチームとの契約が発表に。

バスクの英雄サムエル・サンチェスの新天地はアメリカ籍のチームに決まったバスクの英雄サムエル・サンチェスの新天地はアメリカ籍のチームに決まった

 サンチェスは契約合意を受け、ここ数日のうちに、チームマネージャーのジム・オショウィッツ氏、スポーツディレクターのイヴォン・ラダノワ氏、カデル・エヴァンス(オーストラリア)の三者が話し合い、自身を迎え入れる決定を下していたことを明かした。交渉は1週間もかからずにまとまったそうだ。

 ホーナーは2月9日からのチャレンジ・マヨルカ(スペイン)でシーズン初戦を迎える。サンチェスは近日中にイタリアでメディカルチェックを受け、ベルギーへ移動してバイクフィッティングを行う予定だ。シーズン初戦は未定としている。なお、ともにチームとの契約期間は1年とのこと。

 いずれにせよ、プロトンの功労者でもあり今後の活躍がまだまだ期待されるベテランが、不本意な形で引退を余儀なくされるという寂しい末路は回避されたので、ファンとしては一安心だ。強い気持ちでフリーの時期を過ごし、それを乗り越えて新たなシーズンを迎えようという2人。彼らの熱い走りをリスペクトとともに見守っていきたい。

ツール・ド・フランス2014 出場チーム決定

 ツール・ド・フランスを主催するA.S.O.は1月28日、今年のツール・ド・フランスに出場するチームを発表。プロコンチネンタルチームからは、4チームをワイルドカード(主催者推薦)で選出した。

 UCIワールドツアーライセンスを持つ18チームは自動選出されたが、ワイルドカードの4チームについては、「サイクリングのグローバル化」「フランス自転車界のサポート」といった観点から選出したと、大会ディレクターのクリスティアン・プリュドム氏が説明。

 また、4チーム中3チームがツール初出場というフレッシュな顔ぶれも特徴だ。シルヴァン・シャヴァネル(フランス)が加入したイアム サイクリング、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでの活躍が記憶に新しいレオポルド・ケニッグ(チェコ)擁するチーム ネットアップ・エンデュラが切符を獲得した。

2013年に強烈な印象を残した新星の1人、レオポルド・ケニッグ。今度はツールで結果を残せるか2013年に強烈な印象を残した新星の1人、レオポルド・ケニッグ。今度はツールで結果を残せるか
ハインリッヒ・ハウスラーら強力なメンバーを揃えるイアム サイクリングが、結成2年目で初のグランツール出場権獲得ハインリッヒ・ハウスラーら強力なメンバーを揃えるイアム サイクリングが、結成2年目で初のグランツール出場権獲得

 大会は7月5日、イギリス・リーズで開幕する。出場が決定した22チームは以下の通り。

■UCIプロチーム

アージェードゥーゼール ラモンディアル(フランス)
アスタナ プロチーム(カザフスタン)
ベルキン プロサイクリングチーム(オランダ)
BMCレーシングチーム(アメリカ)
キャノンデール プロサイクリング(イタリア)
FDJ.fr(フランス)
ガーミン・シャープ(アメリカ)
カチューシャ チーム(ロシア)
ランプレ・メリダ(イタリア)
ロット・ベリソル(ベルギー)
モビスター チーム(スペイン)
オメガファルマ・クイックステップ(ベルギー)
オリカ・グリーンエッジ(オーストラリア)
チーム ヨーロッパカー(フランス)
チーム ジャイアント・シマノ(オランダ)
チーム スカイ(イギリス)
チーム ティンコフ・サクソ(ロシア)
トレック ファクトリーレーシング(アメリカ)

■ワイルドカード(プロコンチネンタルチームから選出)

ブルターニュ・セシ アンヴィロンマン(フランス)
コフィディス ソリュシオンクレディ(フランス)
イアム サイクリング(スイス)
チーム ネットアップ・エンデュラ(ドイツ)
 
※ブルターニュ・セシ アンヴィロンマン、コフィディス ソリュシオンクレディ、イアム サイクリングは、3月9日~16日のパリ~ニースにも出場。
※コフィディス ソリュシオンクレディ、イアム サイクリング、チーム ネットアップ・エンデュラは、6月8日~15日のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネにも出場。

今週の爆走ライダー-ネイザン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 また1人、ジャパンカップで活躍したライダーがワールドクラスへと成長を遂げようとしている。2011年、優勝候補筆頭とも言われたダミアーノ・クネゴ(イタリア、当時ランプレ・ISD)や、古賀志林道で必死に食らい付いた日本人ライダーを寄せ付けなかった。当時は無名選手だったが、あの勝利をきっかけに現チームへの加入が決まった。

勝負がかかる上りでも粘り強く食らいついていったネイザン・ハース(右から2人目)勝負がかかる上りでも粘り強く食らいついていったネイザン・ハース(右から2人目)

 その後2年間は主だった結果こそ残せなかったが、今シーズンに入り、ツアー・ダウンアンダーで総合5位。第3ステージでの2位を筆頭に、4度のステージ上位。スプリントにも参戦し、最大の勝負どころであるウィランガ・ヒルでも粘りに粘った。

 スプリント、上りともに強いことを証明した開幕戦。今後のターゲット次第では、ビッグレースでも注目株となりそうだ。もちろん、グランツールでの活躍も期待がかかる。昨年初出場のジロ・デ・イタリアでは、第16ステージで途中リタイア。今の力なら完走はもちろんのこと、ステージ優勝も狙えるレベルにあるだろう。

 ジャパンカップを制した当時所属していた、ジェネシス・ウェルスアドバイザーズは現在、アヴァンティサイクリングチームと名を変え、次世代を担うであろうオーストラリア人選手が揃う、国内きっての強豪チームとなった。チームはハースを世界に送り出したことを誇りにしているという。そして、若手選手たちはハースに続けとばかりに活躍を誓う。

2011年のジャパンカップ優勝からワールドクラスの舞台に足を踏み入れたネイザン・ハース。2011年のジャパンカップ優勝からワールドクラスの舞台に足を踏み入れたネイザン・ハース。

 彼が切り拓く道に、新たな力が続くのは時間の問題だろう。一大勢力となった南半球の大陸から、新たなパイオニアが誕生した。

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介
福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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