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豊岡英子と田中苑子の欧州シクロクロス遠征記 2013-14<4>ワールドカップ終了、いよいよオランダの世界選へ! 豊岡選手のレースはきょう2月1日

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 豊岡英子選手(パナソニックレディース所属、通称“姫”)と私(フォトグラファー田中苑子、通称“チュー”)の欧州シクロクロス遠征。先週末はフランスでのワールドカップ最終戦。豊岡選手は26位でレースを終え、今週末の世界選手権に向けて、いい手応えを掴みました。

ワールドカップ最終戦で順調に走る豊岡選手ワールドカップ最終戦で順調に走る豊岡選手

 ちょっと更新が遅くなりましたが、私たちは元気にベルギーで過ごしています! ヨーロッパのシクロクロスシーズンは2月まで続きますが、UCIが主催するワールドカップは世界選手権の1週間前、1月26日のフランス・ノメ大会をもって、シリーズ最終戦を迎えました。

 10月20日に初戦が開催された今季のワールドカップは全部で8戦。シーズン中ずっとヨーロッパに滞在しないかぎり、全戦出走することは難しいのですが、それでも今季、豊岡選手は7戦に出場しました。チェコやイタリアなど、苦労して遠征した場所もあり、最終戦を迎えるという思いはひとしお! 拠点から片道600km、私と運転を交替しながら、スイス国境に近いフランスのノメへと向かいました。

長い階段がホームストレートの直後に作られたワールドカップの会場。段差が微妙に違い、つまづきやすい階段でした長い階段がホームストレートの直後に作られたワールドカップの会場。段差が微妙に違い、つまづきやすい階段でした
多くの選手でごった返した階段セクション。慎重に周りの選手のバイクを避けながら登っていきます多くの選手でごった返した階段セクション。慎重に周りの選手のバイクを避けながら登っていきます

 世界選手権を翌週に控えるとあって、ノメ大会はこれまでのワールドカップよりも多くの選手がエントリーしていました。日本ナショナルチームもそうですが、遠方から世界選手権に参加する国は、滞在期間を伸ばし、調整を兼ねて、今大会に出場するのです。ですからいつもの常連選手だけなく、アメリカやイタリア、スペインなどからも強い選手がたくさんエントリーしていました。

 本来、雪深い山間部に位置するノメですが、今年のヨーロッパは例年にない暖冬に見舞われています。拠点にしているベルギーでは、信じられないことにまだ雪が降っていません。いつもならヨーロッパ全土に強烈な寒波が襲い、すべてが凍り付きますが、今年の冬は東京のほうが寒いくらいです。ですから、ノメにも雪はなく、路面一帯が滑りやすい泥に覆われるコンディションでした。芝を巻き込むような泥だったので、エンドを折るようなトラブルが続出しましたが、幸い豊岡選手は、大きなトラブルもなくレースを走り切り、「自分の実力どおりの結果だと思う」と、26位でワールドカップ最終戦を締めくくりました。

豊岡選手お気に入りの1枚。ホームストレートへと降りる下りセクション豊岡選手お気に入りの1枚。ホームストレートへと降りる下りセクション

チュー「ワールドカップ最終戦、26位! いい結果だったよね?」

「うん。思ったより、走れてビックリした」

チュー「ええええ…。走れないと思っていたの???」

ワールドカップ最終戦の試走へ。泥の厳しいコースなので空気圧の調整を慎重にワールドカップ最終戦の試走へ。泥の厳しいコースなので空気圧の調整を慎重に

「コースの芝とか泥が混ざる感じは本当に難しいと思ったし、世界選手権前のワールドカップでここまで成績を出せたことはなかったから。今年はしっかりと練習メニューを組んで、休養も取り入れていたのが良かったと思う」

チュー「毎週末レースが続く中で、コンディションをうまくキープできているよね。ナショナルチームとも合流して、日本人のメカニックに見てもらって、これまでの連戦で消耗している機材も見つかった。ペダルがダメってレースの直前、会場に向かう途中で連絡がきたときは焦ったよね?」

「いや、本当に! でもいつも面倒をみてくれるフランキー(近くに住むメカニック)が助けてくれて…。今回も、古いモデルだったけど、前日にも関わらず、快く用意して、会場に持ってきてくれた」

チュー「ベルギーで遠征を始めて5年目。本当に、いつもいつも、ベルギーの人たちには助けてもらっているよね。年を重ねるごとに、ネットワークが広がっていって、いざというときに助けてくれる人たちが増えた」

26位でワールドカップ最終戦を終えた豊岡選手。今季はワールドカップを7戦走ることができたという達成感をありました26位でワールドカップ最終戦を終えた豊岡選手。今季はワールドカップを7戦走ることができたという達成感をありました
すべてを出し切ることができたレースでした。トラックに戻っても、しばらく動けませんすべてを出し切ることができたレースでした。トラックに戻っても、しばらく動けません

「せやで。先週のルーヴェンでのレースのときだって、レース中にチェーンを落としてしまって、そのチェーンがからまって、直せなくて『もうダメだ~』って立ち尽くしたときに、向こうのほうからすごい勢いでベルギーのナショナルチーム監督のデビーが走ってきて、『アヤコォォォ~、泣いちゃダメだ! 大丈夫だから!!』って素手でチェーンを直してくれた。で、おまけに周りの観客に『なんで、君たち、誰も彼女を助けないんだ!!!???』って叫んでて…(笑)。ちょっと笑えたけど、本当に助かったんだよね。ゴールしてからも、『大丈夫だったか? このあとのレースも頑張れよ』って励ましてくれた」

チュー「もちろん、物理的にも助かるんだけど、そういう人が、このレースの世界にいるっていうことは、すごく大きな心の支えにもなるよね! 何も見返りを求めず、ただ競技が好きだから、そして困っている人がいたら進んで助けようとする優しさに、とても救われていると思う」

ワールドカップからベルギーの拠点に戻り、部屋でマッサージを受ける豊岡選手。知り合いづてに腕のいいマッサーが来てくれましたワールドカップからベルギーの拠点に戻り、部屋でマッサージを受ける豊岡選手。知り合いづてに腕のいいマッサーが来てくれました

「うん。彼らの顔を見ると安心する。どこのレース会場に行ってもみんないるしな」

チュー「そうだよね、最近、このシクロクロスの世界は、外で見ているよりもずっと小さいように感じる。でも、世界選手権だけ走っても、この世界には入れない。しっかりとレースの中心地に腰を据えて、継続的に活動することで、私たち外国人には入ることが許される、そんな世界。これは昔からここで戦ってきた日本人選手たちのおかげでもある。目には見えなくても、彼らが残してくれたものがあって、それをしっかりと受け継いで、また下に繋げていきたいね。この世界に入れてこそ、結果がついてくると思うし」

「うん。試走をしてても、みんな『アヤコ、アヤコ! コッチのラインだよ』って、コースのアドバイスをくれる。小さなことの積み重ねだけど、本当に仲間に支えられるスポーツだと思う」

チュー「さて、いよいよ世界選手権だよ! コースの印象はどうかな?」

「天候にもよるけど、スピードレースになるような気がする。毎年、コースレイアウトは違うけれど、基本的なところは一緒。泥がひどくなるような気もするけど、特別難しいというコースではないよね」

日本ナショナルチームと合流。たくさんの機材がチームの駐車場に溢れます日本ナショナルチームと合流。たくさんの機材がチームの駐車場に溢れます
試走を終えた豊岡選手。多くのベルギー人たちが会場には駆けつけ、試走中にいたるところから声をかけられたそう試走を終えた豊岡選手。多くのベルギー人たちが会場には駆けつけ、試走中にいたるところから声をかけられたそう

チュー「もうホーガハイデのレースは、何回走っている?」

「世界選手権を含めて…う~ん、8回目、やな!」

チュー「で、今年の目標は?」

「もちろん10番台に入りたい。自分の位置をしっかり把握しながら、冷静に走って、いままでの経験をすべてレースに反映させたい。集中力を切らさずに、焦らずに自分の力を出し切りたい。トラブルがあったとしても、スタートで落車があったとしても、そこで立て直していかないとっていう意気込みがないと無理やな」

チュー「うん。今年の姫なら大丈夫。テレビで応援してくれる人もたくさんいるから、いつもどおりの走りで頑張ろう!」

世界選手権に向かう当日。我が家の猫たちは外に出てしまっていたので、お世話になっているランジット宅のうさぎたちと記念撮影世界選手権に向かう当日。我が家の猫たちは外に出てしまっていたので、お世話になっているランジット宅のうさぎたちと記念撮影

◇         ◇

 今週末はいよいよ世界選手権です。オランダ南部、ベルギーとの国境に近いホーガハイデが戦いの舞台。女子と男子ジュニアは2月1日、男子アンダー23と男子エリートは2月2日に開催されます。これを書いている時点(1月30日)の天気予報では、豊岡選手が走る2月1日は雨の予報で、気温は8℃前後。泥のコンディションになりそうです。私たちは、いろんなことを経験しながらも、前を向いて、無事に世界選手権を迎えられることを嬉しく思っています。どんな結果になるか、楽しみです。

(写真・文 田中苑子)

豊岡英子
豊岡英子(とよおか・あやこ)

1980年、大阪生まれ。トライアスロンを経て自転車競技の選手に。シクロクロスでは2005年~11年まで全日本選手権で7連覇を達成し、2012年は2位、2013年は4位。ヒョウ柄のウエアとバイク、キラキラのヘルメットなど華やかなビジュアルが彼女のトレードマーク。


田中苑子
田中苑子(たなか・そのこ)

1981年、千葉生まれ。2005年に看護師から自転車専門誌の編集部に転職。2008年よりフリーランスカメラマンに転向し、現在はアジアの草レースからツール・ド・フランスまで、世界各国の色鮮やかなサイクルスポーツを追っかけ中。


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