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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<47>ダウンアンダー、サンルイス、開幕戦2レースを総括 2月の注目レースプレビュー

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 いよいよ幕が開けたサイクルロードレースシーズン。この1週間はファンの皆さんにとって怒涛の日々だったのではないでしょうか? 開幕の喜びと同時に、身も心もまだシーズンに入りきれていない、なんて方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は、ツアー・ダウンアンダー、ツール・ド・サンルイス、注目度の高かった開幕2レースを総括し、今後のレースとの関連性を探ってみたいと思います。

最高のシーズンスタートを切った選手に共通する3つのポイント

 レース結果から振り返っていこう。ツアー・ダウンアンダーは既報の通り。

昨年のツールでは新人賞と山岳賞の“2冠”に輝いたキンタナ。真のエースへの階段を一歩ずつ上っている昨年のツールでは新人賞と山岳賞の“2冠”に輝いたキンタナ。真のエースへの階段を一歩ずつ上っている

 前回第2ステージまでお届けしたツール・ド・サンルイスは、1級山岳頂上ゴールの第4ステージで、ナイロアレクサンデル・キンタナ(スペイン、モビスター チーム)が本領発揮。圧倒的な強さで山岳を征服すると、続く第5ステージ、19.2km個人タイムトライアルでまずまずの走りを見せ総合トップへ。第6ステージの1級山岳頂上ゴールは、第2ステージを制したジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレック ファクトリーレーシング)に勝利を譲ったが、最後までリーダージャージを守りきり総合優勝。

 なお、スプリンター向けの第3、第7ステージはそれぞれジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック ファクトリーレーシング)、サーシャ・モドロ(イタリア、ランプレ・メリダ)が勝利している。

 開幕戦とあって、本気度の高い選手と、トレーニングライド感覚の選手との差がかなり激しいのは致し方ない。時期的に考えて、これらのレースで上位に顔を見せる選手たちには、勝利を狙うほかに何らかの意図があると推察できる。あくまでも筆者的にではあるが、この2レースで活躍した選手たちには、以下の3つのポイントのうち、いずれかが当てはまるのではないかと感じている。

 (1)1月12日のオーストラリア選手権に出場した選手
(2)春のクラシックをターゲットとする選手
(3)ジロ・デ・イタリアを見据える選手

オーストラリア選手権2位、ダウンアンダーでも総合2位とステージ1勝を挙げたエヴァンスオーストラリア選手権2位、ダウンアンダーでも総合2位とステージ1勝を挙げたエヴァンス
オーストラリア選手権2位、ダウンアンダー総合4位と第5ステージ優勝のポートオーストラリア選手権2位、ダウンアンダー総合4位と第5ステージ優勝のポート

 (1)は、今年史上最高レベルと言われるほどのメンバーが揃い、その評判に違わないレースとなった。優勝したサイモン・ゲランス(オリカ・グリーンエッジ)のほか、2位カデル・エヴァンス(BMCレーシングチーム)、3位リッチー・ポート(チーム スカイ)は、その後のダウンアンダーでも総合争いを演じた。アダム・ハンセン(ロット・ベリソル)はダウンアンダー総合9位と山岳賞、ゲランスを支えたオリカ・グリーンエッジのアシスト陣も徹底したレースコントロールを見せた。1月のレースに向け、オーストラリア勢が早く仕上げてきたのは間違いないだろう。

ダウンアンダー第2ステージでゲランスを破って勝利したウリッシダウンアンダー第2ステージでゲランスを破って勝利したウリッシ

 (2)を見ていくと、ゲランスやダウンアンダー総合3位のディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)などが、3月のミラノ~サンレモで期待される選手だ。サンルイスでは、北のクラシックで期待されるトム・ボーネン(ベルギー、オメガファルマ・クイックステップ)、ペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール プロサイクリング)、テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)らが、まずまずのスタートを切った。今年はゲランスもツール・デ・フランドル(4月6日)を目指す意向を示している。順調なシーズンスタートは春につながるケースが多いだけに、彼らには十分に期待して良いだろう。

 (3)は少し気が早いかもしれないが、偶然か必然か、ジロへの出場を表明している選手たちが最高のシーズンインを果たしているのである。エヴァンス、ウリッシ、ポート、キンタナ、アレドンド…。スプリンターでは、ニッツォーロやモドロといったイタリアンスプリンターもジロのメンバー入りを狙うことだろう。

 一方的な見方ゆえ、各選手・チームの動向をしばらく注視していく必要はあるが、さまざまな要素を抽出しながらこの時期のレースを追っていくと、より楽しめるのではないだろうか。何の根拠もないが、この2レースで好走した選手たちが、3月から5月にかけてのビッグレースで大活躍すると筆者は見ている。

2月前半の注目レース

 プロチームに所属するライダーの大多数が、2月のレースでシーズン初戦に臨む。前項で触れた選手たちに加えて、春のクラシックやグランツールを見据えてレースに臨む選手が次々と登場する。そこで、ビッグネームが揃う注目のレースをいくつかピックアップしてみよう。

●ドバイ・ツアー(2月5日~8日、UAE、UCI2.1)
ジロなどのイタリアレースを主催するRCSが新たにスタートさせる中東レース。第1ステージに10km個人タイムトライアル。第2、4ステージがスプリント、第3ステージが中級山岳ステージ。ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ チーム)、ファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック ファクトリーレーシング)、ペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール プロサイクリング)らが参戦。チーム ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザも出場予定。

●マヨルカ・チャレンジ(2月9日~12日、スペイン、UCI1.1)
シーズン序盤の合宿地としておなじみのマヨルカ島で行われる、脚試しのレース。UCI1.1クラスのワンデーレースが4日間連続で行われる(全レース出走者対象の総合表彰もある)。スプリンター、クライマー、パンチャーそれぞれに適したレースが用意され、現地でキャンプ中の選手たちは、トレーニングを兼ねて参加する。ツアー・ダウンアンダーでシーズン初戦を終えたばかりの新城幸也(チーム ヨーロッパカー)が出場を予定している。

カタールといえば平坦で広い道と、あらゆる方向から吹きつける強風だカタールといえば平坦で広い道と、あらゆる方向から吹きつける強風だ

●ツアー・オブ・カタール(2月9日~14日、カタール、UCI2.HC)
中東レースの代名詞。全ステージ、オールフラットなのが特徴で、スプリンターや北のクラシックを見据えるライダーが多く顔を揃える。今年は第3ステージに10.9km個人タイムトライアルを設定。カンチェッラーラ、ボーネン、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)らが出場予定。

●ツール・メディテラニアン(2月13日~16日、フランス、UCI2.1)
温暖な地中海沿岸で行われる(稀に極寒になる!)、オールラウンダー向けのステージレース。フランスチームが中心のレース展開が予想される。別府史之(トレック ファクトリーレーシング)は、このレースでシーズン初戦となる。

今週の爆走ライダー-サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

オーストラリア選手権に続いてツアー・ダウンアンダーも制したゲランスオーストラリア選手権に続いてツアー・ダウンアンダーも制したゲランス

 1月のレースで、最も好調さをアピールした選手であることは間違いないだろう。2度目のオーストラリアチャンピオンに輝き、ツアー・ダウンアンダーでは2年ぶり3度目の総合優勝。ここまでの流れは、2年前と同じ。その年は、3月のミラノ~サンレモを制しており、当時の再現を期待する声が高まっている。

 今年のダウンアンダーでは、第3ステージで一度はリーダージャージを失ったが、すぐに第5ステージでの奪取に集中。どうやってジャージを取り戻すか、常に思案しながらのレースだったという。その結果、リーダージャージのみならず、スプリント賞、チーム総合を含めた3冠を達成した。

 最高のシーズンスタートを切った彼だが、ミラノ~サンレモとともにツール・デ・フランドルを目標にすると宣言した。北のクラシックへの出場経験はないが、石畳は苦にならないと分析。もっとも、「あのコースが自分向きであることにようやく気付いた」のだとか。終盤の上りで好位置につけ、人数が絞られた集団でのスプリントとなれば、まさに勝ちパターン。パヴェ巧者に食らい付くことができれば、大いにチャンスはあるだろう。

 ワンデーレースを筆頭に、これまでのキャリアで数多くのタイトルを獲得してきた。3つのグランツールすべてでステージ優勝経験があり、昨年のツール・ド・フランスではマイヨジョーヌを2日間着用した。ここ数年は、ナショナルチーム内でもエース待遇を受けていることから、秋には世界選手権での期待もかかる。派手さはないが、巧みなレース運びで新たな勲章を手に入れるシーズンになるかもしれない。

ダウンアンダー第1ステージでは、真新しいオーストラリアチャンピオンジャージを着てステージ優勝を飾ったダウンアンダー第1ステージでは、真新しいオーストラリアチャンピオンジャージを着てステージ優勝を飾った

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介
福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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