産経新聞大阪夕刊【銀輪の華に挑み】より日本開催の世界選手権に向け、一大決心で挑んだドイツ留学 「サイクルフィギュア」堀井和美さん<3>

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 自転車でアクロバティックな技を繰り広げる競技「サイクルフィギュア」の日本における第一人者、堀井和美さん(42)へのインタビュー。引退後は指導者として子供たちに競技の魅力を伝えている堀井さんは、世界選手権に13回出場するなど、国内におけるマイナースポーツを長年にわたって牽引してきた。連載の第3回は、日本で初めて開かれた世界選手権のために挑んだ、ドイツ留学について語る。

(聞き手・産経新聞大津支局 桑波田仰太)

◇         ◇

「ドイツ留学は無駄じゃなかった」と振り返る堀井さん (松永渉平撮影)「ドイツ留学は無駄じゃなかった」と振り返る堀井さん (松永渉平撮影)

――競技歴11年目の平成12年にドイツへ留学しました

 それまでずっと、ひとりでできる範囲の練習しかしなかったので、なかなか新しい技に挑戦できず、悶々としていました。そんな時、13年に日本で初めて世界選手権が開かれることが決まったんです。せっかくの地元開催で、初めてこの競技を観戦してくれる日本の人たちもいるのに、このままの技術レベルで出場するわけにはいかなかったんです。そこで、本場・ドイツでトレーニングを積むことを考え、ドイツの室内自転車連盟に「そちらで練習したい」と手紙を出したんです。

――一大決心だったわけですね

 そうですね。ドイツへ行くには、こちらの仕事を辞めないといけないので、母や祖母からは「そこまで自分を追い詰めなくても」と猛反対されました。

――それでも決意は揺るがなかった

 父の影響が大きかったと思います。私が大学3年の夏に病気で亡くなったんですが、父は「太平洋を船で横断したい」などとよく話していて、挑戦することや夢を持つことをとても大切にする人でした。その父を亡くし、「自分の夢ってなんだろう?」と自問を続けた結果、サイクルフィギュアの国際大会で好成績を残すことが自分の夢だと改めて気付いたんです。「今できること、やりたいことはすべてやろう」っていう気持ちになり、ドイツ行きを諦めませんでした。最後は母も背中を押してくれましたよ。

――ドイツでの生活は

 ヘアフォートという町に住み、地元のクラブチームの練習に参加しました。なんせ、指導者に教わるのは初めての経験だったのでとても新鮮でした。ただ、苦労したのは「言葉」の問題。はじめは片言の英語にドイツ語の単語を交えてしゃべっていたんですが、細かなニュアンスが伝わらなくてもどかしい。コーチからすごいけんまくで怒られることもありましたが、いまいち怒られている内容が分からなくて。とにかく、競技だけでなくドイツ語習得も必死で取り組みました。

技を披露する堀井さん (松永渉平撮影)技を披露する堀井さん (松永渉平撮影)

――上達は順調でしたか

 指導してくれたのは、本場・ドイツでトップレベルの選手だった方。今まで満足にできなかった「立ち技」などにも積極的に挑戦できました。技術だけでなく、競技に対する意識や練習態度、すべてが参考になりました。でも、練習中に足の甲を骨折して自転車に乗れない時期もあり、9カ月の留学期間の終わりが近づいてきて焦りも募りました。クラブの練習は週2、3回だったので、ドイツやオーストリアにいる知り合いの選手たちに連絡を取り、「練習に参加させてほしい」と頼み込んだりもしました。自分のレベルを上げるためなら何でもしようと必死だったんです。

――そうして平成13年に迎えた日本初開催の世界選手権は

 恥ずかしながら自国開催のプレッシャーもあり、自分が思い描いた通りの演技ができず、結果は散々。出場するまでは、この世界選手権を花道にしようと考えていたんですが、この悔しい結果と「ドイツまで行って頑張ったのに」という無念さとで、世界に挑戦したい気持ちが再びこみ上げてきました。その後、ハンドルの上に座り前輪を浮かせて走行するなどドイツで習った新しい技を身に付けることができ、4年後にドイツで開かれた平成17年の世界選手権では、自己ベストのスコアを更新することができました。時間はかかったけど、「ドイツに行ったことは無駄じゃなかった」とようやく思えましたね。

<4>へつづく

堀井和美(ほりい・かずみ)

 昭和46年、滋賀県草津市生まれ。龍谷大文学部(京都府伏見区)に入学し、サイクルフィギュアを始めた。全日本選手権では10連覇を含めて計16回の優勝を誇り、世界選手権にも13回出場した国内サイクルフィギュア界の第一人者。現在は、平成15年に自ら設立したクラブチーム「ブルーレイクエンジェル」の代表を務め、次代を担う小・中学生選手の指導に当たる。

産経新聞・大阪版より)

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