産経新聞大阪夕刊【銀輪の華に挑み】よりひとりで頑張れるのは、自分で選んだ道だから 「サイクルフィギュア」堀井和美さん<2>

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 自転車でアクロバティックな技を繰り広げる競技「サイクルフィギュア」で、全日本選手権を16回制し、アジアチャンピオンにも輝いた滋賀県草津市の堀井和美さん(42)。国内ではマイナーな競技を長年にわたって牽引し、引退後は指導者として、子供たちに競技の魅力を伝えている。

(聞き手・産経新聞大津支局 桑波田仰太)

◇         ◇

サイクルフィギュアの堀井和美さん。競技専用の自転車は特徴的だサイクルフィギュアの堀井和美さん。競技専用の自転車は特徴的だ

――世界選手権の初出場が競技を始めて1年半後なんですね

 「大学2年の時、2回目の挑戦で国内の選考会を突破しました。とはいえ、選考会に参加したのは部の先輩と私だけで、2人とも世界選手権に出場できたんですけどね。でも、初めて臨んだチェコスロバキアでの世界選手権では、出場した約30人の中で最下位の成績に終わりました」

――世界との差を痛感した

 「トップクラスの選手たちは、ハンドルを腕で支えて逆立ちをしたり、サドルの上に立ったまま『8』の字に自転車を走らせたりしていました。私は手を離して後輪の回転軸に立つ技を披露したんですが、そんなのは欧州では中学生レベルでした。世界選手権の前は『出場できるのは自分なりに努力した結果だ』と喜んでいたんですが、初挑戦を終えたあとは恥ずかしくて仕方ありませんでした」

――収穫は?

 「世界トップレベルの演技を、肌で感じることができた点ですね。そのとき、優勝したドイツの選手が本当に輝いていて、『私もあんな風になりたい』と心から思え、目標が明確になりました。上位の選手たちの演技をビデオに撮って繰り返し見ながら、『自分には何が足りないのだろう』とずっと考えました」

サイクルフィギュア全日本選手権で16回の優勝を誇る第一人者、堀井和美さんサイクルフィギュア全日本選手権で16回の優勝を誇る第一人者、堀井和美さん

――大学卒業後、競技はどうしたんですか

 「学生時代にお世話になった龍谷大に恩返しをしたいと思い、大学職員の道を選びました。競技のほうは引退を考えたんですが、当時の上司が『せっかくここまでやってきたのに、もったいない』と続けるよう後押ししてくれました。そして、大会が近くなると『早く練習へ行っておいで』と言ってくれたり、1人でも技の練習ができるように―と自転車を支える器具を買ってくれたりもしました。本当に感謝しています」

――それが日本選手権10連覇などの常勝につながった

 「もちろん常に優勝を目指してはいましたが、国内である程度の成績を残せるようになった頃からは、順位にこだわるよりも新しい技を取り入れ、自己ベストをどれだけ更新できるかに重点を置くようにしました。国際大会でいい成績を残すことに狙いを定めていたんです」

――挫折の経験は

 「平成9年8月に、右足首の靱帯(じんたい)を損傷する大けがを負ったんです。ハンドルの上に立つ練習をしていた時でした。その後、半年間以上も練習できず、出場が決まっていた11月の世界選手権は、やむなく欠場しました。でもその間、ストレッチや筋力トレーニングなどできることを続け、翌10年8月に香港で開催された初めてのアジア選手権には間に合い、満足のいく演技で優勝できました。欧州に比べてレベルの低いアジアとはいえ、国際大会で優勝できたことは大きな自信につながりました」

――なぜ、ひとりでそこまで頑張れるんですか

 「よく周りからそのことを聞かれますが、自分で選んだ道だからなんだと思います。以前にバスケットボールをしている友人が『仲間や監督がいるから頑張れる』と言っていたのを聞いたとき、少し違和感を覚えました。個人競技と団体競技の違いでしょうか。私は、自分が『サイクルフィギュアをやる』と決めたから続けられたんです」

<3>へつづく

堀井和美(ほりい・かずみ)

 昭和46年、滋賀県草津市生まれ。龍谷大文学部(京都府伏見区)に入学し、サイクルフィギュアを始めた。全日本選手権では10連覇を含めて計16回の優勝を誇り、世界選手権にも13回出場した国内サイクルフィギュア界の第一人者。現在は、平成15年に自ら設立したクラブチーム「ブルーレイクエンジェル」の代表を務め、次代を担う小・中学生選手の指導に当たる。

産経新聞・大阪版より)

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