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栗村修の“輪”生相談<14>40代男性「プロならではのレース中の機材面での工夫を教えてください」

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 2013年のパリ~ルーベを見返していますと、最後の数kmでスパートに備えてセプ・ファンマルクがブレーキのクイックを開いたとコメントされていました。そんな細かいところまで見るのかと非常に興味深かったです。

 やはりプロともなるとレース中に色々とセッティングを変えることは多いんでしょうか? 私のような週末ライドを楽しむレベルでは全く無用のこととは思いますが、プロならではのレース中の機材面での工夫というものがあったら教えてください。

(40代男性)

プロは最新の機材を使える一方で、その選択肢は意外に狭いもの(柄沢亜希撮影)プロは最新の機材を使える一方で、その選択肢は意外に狭いもの(柄沢亜希撮影)

 走りながら調整できるのは、流石にブレーキのクイックやワイヤーの微調整ネジくらいですね…。ただ、これも真似をすると指を巻き込んだりと危険ですし、そもそも、開く必要があるほどホイールがぶれることも多くないと思います。ちなみにパリ~ルーベでファンマルクが後輪のクイックを開いていたのは、スプリント中にプロのパワーでリムがブレーキシューに接触してロスになるのを防ぐためです。

 プロの選手って、機材に関する自由度が低いんですよ。スポンサーやサプライヤーとの関係がありますからね。だから、自由に選択できるものは

 (1) 空気圧
(2) ギヤ比
(3) サドル・ハンドル・ホイールなどの種類(メーカーは決まっていますが)
(4) ポジションに関連する各種セッティング

くらいです。細かいところはほかにもありますが…。

 空気圧って、あまり注目されない印象があるんですが、こだわる選手は凄くこだわりますし、そうでなくても個人差が非常に大きい。たとえば、ブリッツェンの場合、体重が軽い堀選手なんかは6.8気圧くらいです。でも、引退しちゃった飯野選手は7.5気圧くらいだったかな。あと、同じ選手でもレースが変わると1気圧以上上下したり。前後で空気圧を変える選手も多いですが、揃える選手もいます。とにかく、びっくりするほどバラバラ。

 神経質な選手は、コンマゼロ以下の世界に生きています。ずいぶん考えていたと思ったら「栗村さん、明日はちょっとウェットらしいので、前が7.12、後ろは7.55でお願いします」なんてことを言います。了解!とメカニックに伝えるんですが、そこまでの目盛はありません。メカニックさんがどうしているかは謎です。でもまあ、選手が気持ちよく走れることが重要なのです。

メカニックの皆さん、いつもありがとうございます(砂田弓弦撮影)メカニックの皆さん、いつもありがとうございます(砂田弓弦撮影)

 僕が選手をやっていたころは、タイヤはひたすら細く、空気圧はとにかく高く、が正義でした。18cのタイヤに9気圧くらいぶちこむのが漢とされていた時代です。その方が転がり抵抗が減ると信じられていたからですね。でも最近は、太いタイヤのほうが転がり抵抗が低いとか、ある程度空気圧を減らしたほうがいい、という話も出ています。たしかに、カチカチのタイヤだと路面で跳ねて、ロスが大きかった気もします。体重や路面状況、乗りかたによっても変わるので、自分にとってのベストを探してみてください。

 ホイール。同じメーカーではありますが、リムハイト(リムの高さ)を選べる場合が多いです。理屈上は、リムハイトが高く(空気抵抗が小さい)、軽量(ぺダリングが軽い)であるものが理想です。両者は相反する要素なので、コースや脚質によって使い分けます。そして、剛性が高い(ロスが少ない)ほうがよいとも言われています。

 ところが、平地のレースならば巡航性能重視でリムハイトが高いもの、上りならば軽さ重視でリムハイトが低いもの、そして剛性はひたすら高く、というのが教科書的な見解なのに、実際はちょっと違うので面白い。色々な選手を見てきましたが、イマイチ一貫性が見えないんです。似た体形の選手が同じコースを走るのに、ホイールの選択が全然違ったりします。

 これは推測ですが、ホイールの好みはケイデンスやフォームと関係があるんじゃないでしょうか。脚が長い・シッティングばかり・ケイデンスが高い、などトルク変動の少ない選手はあまり剛性を求めない印象ですね。一方で、ダンシングが多い・ケイデンスが低い選手は剛性を重視する気がします。たわむからでしょうね。けれど、そういう選手にガチガチのホイールを渡したら硬すぎて脚にきちゃったり。難しいですね。

独特なハンドルセッティングの清水都貴選手(ブリヂストンアンカー)。かなりハンドルを送っている(米山一輝撮影)独特なハンドルセッティングの清水都貴選手(ブリヂストンアンカー)。かなりハンドルを送っている(米山一輝撮影)

 そしてハンドルまわりは超・個性的です。やたら送っている選手がいると思えば、変にしゃくっている選手もいる。それとは別にブラケット位置も、手首の角度に影響するので大切です。あと付け加えると、サドルやクリートも、多くの選手はこだわっています。

 どうも、セッティングに関しては選手の数だけ正解があるみたいですね。ただ、ひとつ言えるのは、空気圧とハンドルまわりのチューニングはタダだということです。いろいろ試す価値はありそうです。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 「宇都宮ブリッツェン」テクニカルアドバイザー、「J SPORTS」サイクルロードレースレース解説者、「ツアー・オブ・ジャパン」副イベントディレクター。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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