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豊岡英子と田中苑子の欧州シクロクロス遠征記 2013-14<2>ベルギーで怒濤のレースウィークを経てローマへ コース外でも繰り広げられるオンナの戦いと一大事

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ワールドカップ第5戦ゾルダー大会の前日、サーキットにて。この頃から豊岡選手は風邪気味でしたワールドカップ第5戦ゾルダー大会の前日、サーキットにて。この頃から豊岡選手は風邪気味でした

 豊岡英子選手(パナソニックレディース所属、通称“姫”)と私(フォトグラファー田中苑子、通称“チュー”)の欧州シクロクロス遠征。1月1日に開催されたBポストバンクトロフィー・GPスヴェン・ネイスを終え、昨年末からの怒涛のレースウィークが一段落。ホッと一息ついたところですが、4日にはワールドカップ第6戦が開催されるイタリア、ローマに入りました。

 クリスマスから元旦にかけての約1週間は、ベルギーのシクロクロスレースがもっとも盛り上がる時期です。男子エリートカテゴリーだと、1週間ほぼ毎日レースが開催され、トップクラスの選手たちは、1週間のうちに5日ほどレースをこなします。連日レースを走ることは、いくら強豪選手といえど、間違いなく体力を消耗します。

 それに、ベルギーは小さい国で、端から端までクルマで2時間もあれば到着しますが、それでも連日の移動やバイクの調整、洗濯など、レースの準備や後片付けで、選手だけでなくサポートするすべての関係者にとって、クリスマスや新年を祝う間もなく多忙な1週間だったことは間違いありません。

いつもサポートしてくれているジャスティンのレースも年末にありましたいつもサポートしてくれているジャスティンのレースも年末にありました
何もお正月らしいことはできませんが、大晦日にすき焼き風の牛肉炒めを作りました。椎茸やネギはベルギーでも手に入ります何もお正月らしいことはできませんが、大晦日にすき焼き風の牛肉炒めを作りました。椎茸やネギはベルギーでも手に入ります

 豊岡選手は、以下の4戦を予定していましたが、12月27日のルンハウト(※)でのレースは体調不良につき、参加を取りやめ、それ以外の3レースに出場しました。

12月26日 UCIワールドカップ#5・ゾルダー(ベルギー)
12月27日 Bポストバンクトロフィー・ルンハウト(C1、ベルギー)※
12月29日 スーパープレステージ・ディーヘム(C1、ベルギー)
1月1日  Bポストバンクトロフィー・バール(C1、ベルギー)

 最初のワールドカップ第5戦ゾルダー大会は、かつてF1も開催されていたモータースポーツのサーキットで開催されるもの。サーキットというと舗装路のイメージが強いのですが、観客席を取り巻くオフロードが上手にコースに組み込まれ、アップダウンにも富んでいます。

ワールドカップ第5戦ゾルダー大会にて。長い下り坂のセクションを慎重に通過しますワールドカップ第5戦ゾルダー大会にて。長い下り坂のセクションを慎重に通過します
レース前のアップ風景。いつもたくさんのファンが豊岡選手のポストカードを求めてやってきますレース前のアップ風景。いつもたくさんのファンが豊岡選手のポストカードを求めてやってきます
レース後にベルギーナショナルチームの監督とパチリ。ベルギーではかなり有名な人物で、いつもコースを自ら走り、選手たちに走り方を教えていますレース後にベルギーナショナルチームの監督とパチリ。ベルギーではかなり有名な人物で、いつもコースを自ら走り、選手たちに走り方を教えています

 好調なスタートを切った豊岡選手ですが、この日はバッドラックに見舞われました。2周回目で斜行して、体当たりで割り込んできたという選手(なんともすごい女子選手ですが…)と接触して大きく落車。そこで順位を落としてしまい、最後までリズムを掴めず、43位でフィニッシュ。「シクロクロスは1レースのうちにトラブルが2、3回起きても普通のこと。何かトラブルがあっても、それを挽回できる力をつけたい」とレース後に話しました。

ビッグレースで、初めて最前列でスタートしたディーヘム。スタート1分前、選手たちの表情が引き締まりますビッグレースで、初めて最前列でスタートしたディーヘム。スタート1分前、選手たちの表情が引き締まります

 ワールドカップ・ゾルダー大会の翌日にもレースを予定しいていましたが、朝起きてみると体調が悪く、これまでもあまり体調が良くなかったこともあり、苦渋の決断でしたが、レースをキャンセル。その後のディーヘムでは17位、バールでは15位という結果でした。

チュー「やっと一息ついたね! この1週間どうだった?」

「ナミュール(12月22日)から、体調を崩してしまったことが残念だね。あんまり今までそんなことはなかったんだけど…。ゾルダーのワールドカップはトラブルがあったけれど、それはまぁオンナの戦いなんで…とりあえず完走できて良かった。で、次の日、朝起きたときから風邪だったから、初めてレースをキャンセルした」

チュー「キャンセルしたルンハウトは一番好きなレースってよく言っているよね。残念だった」

「楽しみにしていた試合だったんだけどな…」

ディーヘムは街全体を上手に使ったコースレイアウト。選手たちは教会やカフェの横を通り抜けますディーヘムは街全体を上手に使ったコースレイアウト。選手たちは教会やカフェの横を通り抜けます

チュー「まぁ一度、体調もぜんぶリセットして、後半戦につなげられればいいよね。そのあとのディーヘムとバールはどうだった?」

「ルンハウトの日からディーヘムまでの2日間はずっと寝て、ディーヘムはとりあえず走ったけど、やっぱり本調子ではなかったよね」

チュー「そのあとのバールでは、だいぶ良くなったように見えたけど?」

「バールもできるかぎり調整して、やっと2周目から追い込める感じになって、レース後もすべて出し切った感じの疲れがあったから、コンディションがようやく少し戻ってきたと思う。やっぱりバールはコースきついし、泥の下りがとにかくすごくテクニカルで、吐きそうなくらいキツいんだけれど、それが楽しかった!」

とにかくしんどい!というバールの長い階段。ここを4周回しましたとにかくしんどい!というバールの長い階段。ここを4周回しました
なんとか持っている力を出し切ることができた元旦、バールでのレース。15位でフィニッシュなんとか持っている力を出し切ることができた元旦、バールでのレース。15位でフィニッシュ
レース後は疲れと吐き気でしばらく言葉が出てきませんレース後は疲れと吐き気でしばらく言葉が出てきません
気温は高いものの、雨が降ったり止んだりというベルギーらしい天気が続いているため、どのレースも泥のコンディション気温は高いものの、雨が降ったり止んだりというベルギーらしい天気が続いているため、どのレースも泥のコンディション

チュー「でも、なんで風邪を引いたんだろう?」

「うーん…たぶんナミュールのレース後やな」

チュー「え、風邪を引くような状況って、何かあったっけ?」

「まずレースが終わって、いつも履くズボンを履かなかった。レース後で身体が温まっていたし、ドロドロで汚れるのもイヤだったから、そのときは『いらんわ!』って思ったんだけど、雨が降っていて、クルマに戻るまでに濡れてしまったうえに、そのままダウンもやった。で、短パンのままシャワーに行くと、シャワーが2つしかなくて、みんな全裸でひたすら、待ってて…」

レース前にバイクの調整をするランジット。いつも献身的なサポートをしてくれていますレース前にバイクの調整をするランジット。いつも献身的なサポートをしてくれています

チュー「え、ワールドカップを走った女子選手たちが全裸でシャワーの順番待ち?」

「せやで!(笑)自分の順番まで待つし、順番が来ても、とにかく他の人が待っているからって、ササササッて泥を落として終わり。で、もうナミュールのシャワールームは本当に狭いから、髪の毛を乾かすスペースもないし。絶対に、アレがあかんかったわ…」

チュー「なんか凄まじい状況が想像できる…。レース後もオンナの戦いは続いていたんだね…」

「うん…女子のキャンピングカー持っていない子はみんな来るからね。トイレもせやで。いつも大渋滞。で、温まらないシャワーを終えると、女子特有のダベリング(おしゃべり)が始まるし…(笑)」

トップ選手が愛用するキャンピングカーが会場を埋め尽くします。キャンピングカーを持つことが多くの選手の憧れ。シャワーやトイレがあるのでとても便利ですトップ選手が愛用するキャンピングカーが会場を埋め尽くします。キャンピングカーを持つことが多くの選手の憧れ。シャワーやトイレがあるのでとても便利です

チュー「つまり、解決策は、トップライダーになって、キャンピングカーをゲットすることのみってこと?」

「そうかもしれない…。だって、あれぜったい車中も暖かいしな。でも、そんなシャワールームが、数少ない情報交換の場でもあるからなぁ…。あそこでみんなリラックスして、『今日のレースはあーだった、こーだった』って話をしてるねん。友だちも増えるし!」

チュー「そういう場所は大事だよね!」

「いや、それにシャワールームでいろんな女子選手たちを見るのは面白いんやで。なんかアクセサリーとか香水とかたくさん装飾品が出てくる子もいてな。お前それクルマでやれよ!って思うけど、そんなのを見ているもの楽しい。あとは流行りのパンツとかもあってさ…。たまにみんな同じようなのを履いていたりして、聞くとどこで売ってるか教えてくれる。いや〜、寒いのはイヤだけど、ずっとシャワールーム見ていたい。オンナの一大事って感じがして、ほんとに面白いんだけどな(笑)」

チュー「そ、そっか…。とりあえず、これからは風邪を引かないように気をつけてね!」

キャンピングカーこそないものの、ランジットのトラックには暖房が用意されています。ここで着替えや食事などをしますキャンピングカーこそないものの、ランジットのトラックには暖房が用意されています。ここで着替えや食事などをします

 今週末はイタリア、ローマの競馬場を使って開催されるワールドカップに参加します。自転車は陸路で運び、私たちは飛行機でイタリアに行きます。昨年も同じ会場でワールドカップが開催されましたが、経費が多くかかってしまうために出場を見送った経緯があり、私たちにとって初めて参加する大会なので、とても楽しみです。

(写真・文 田中苑子)

豊岡英子
豊岡英子(とよおか・あやこ)

1980年、大阪生まれ。トライアスロンを経て自転車競技の選手に。シクロクロスでは2005年~11年まで全日本選手権で7連覇を達成し、2012年は2位、2013年は4位。ヒョウ柄のウエアとバイク、キラキラのヘルメットなど華やかなビジュアルが彼女のトレードマーク。


田中苑子
田中苑子(たなか・そのこ)

1981年、千葉生まれ。2005年に看護師から自転車専門誌の編集部に転職。2008年よりフリーランスカメラマンに転向し、現在はアジアの草レースからツール・ド・フランスまで、世界各国の色鮮やかなサイクルスポーツを追っかけ中。


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