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はらぺこサイクルキッチン<6>120kmのMTBマラソンを走る選手の胃袋事情 「キング・オブ・王滝」のレース食を公開

by 池田清子 / Sayako IKEDA
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 こんにちは、アスリートフード研究家のSayakoです。最終回のきょうは、国内最長となる120kmの長距離マウンテンバイクレース「セルフディスカバリーアドベンチャー(SDA)・イン・王滝」でのレース中の食事について。2012年、2013年と総合勝利を飾った、夫の池田祐樹(トピーク・エルゴンレーシングチームUSA)がどのタイミングでどんなものを食べているのかを、一挙公開します!

◇      ◇

食事によって負けることのないよう万全に

スタート前の池田祐樹選手スタート前の池田祐樹選手

 長野県王滝村で毎年春と秋に開催されるSDA・イン・王滝の、秋の走行距離は120km…。さらに大きな特徴は、セルフディスカバリーつまり装備や補給など全て自己責任で行うレースであるということです。何をチョイスするか、そこからレースは始まっています。

 夫は基本的に固形物を持たずにスタートラインに経ちます。今回も然り。5時間以上も走り続けるレースなので最初は驚きましたが、レース中は常に全力のため固形物を食べるタイミングがないと言います。またドリンクの方がより早くエネルギーになる、胃に負担がかからないといった理由から、液体物で補給するのだそうです。

 さっそく、起床してからレースのリカバリーまでに摂取した食べ物を、タイムスケジュールで見ていきましょう。

レース食のタイムスケジュール

 03:30 【起床】大きめのおにぎり2個、バナナ1本、無脂肪ヨーグルト
 05:00 ジェル1本
 05:45 ジェル1本、血糖値を安定させるサプリメント1本
 06:00 【スタート】持参した補給食=水(750ml)、アイソトニック飲料(※)(ハイドレーションパック約1.5L)、ジェル4本入りフラスコ×2本、電解質タブレット×4つ
 11:59 【フィニッシュ】リカバリードリンク
 12:30 バナナ、シャケ、会場で配られる豚汁、焼鳥、炊き込みご飯

※ナトリウム+糖質が高めの飲料

 選手によって、また当日の天候によってもチョイスは様々。私も他の選手が何を摂って勝っているのか、かなり気になります。食事だけでは勝てないけれど、食事を疎かにすると食事によって負けることもあると思います。当日に照準を合わせて厳しいトレーニングを積んできた成果を十二分に発揮するためにも、摂取するものを上手に選びたいですね。

年間を通してのタイムで2年連続のキング・オブ・王滝(2013年)年間を通してのタイムで2年連続のキング・オブ・王滝(2013年)

レース前は梅干しが吉、食料調達先チェックも忘れずに

<レース前>

 レース前の食事のポイントは糖質(ご飯やパンなどの炭水化物)を多めにしつつ、脂質が多い菓子パンを避けます。そして消化・吸収をほぼ終えた頃にスタートを切れるよう、通常であればレース開始3時間前までに食べ終わるように食事スケジュールを組みます。

朝食にはおにぎりやバナナ、そして梅干し朝食にはおにぎりやバナナ、そして梅干し

 …ですが、今回のレースに当てはめると2時半に起床しなければいけなくなります。睡眠の確保も大事ですので、早朝スタートの場合は食べる物を調整します。消化がよく、エネルギーになる糖質を中心に。2時間前に食べ終えてから、着替えなどの準備に入ります。

 朝食については、毎回宿泊している宿の方がレース向けに用意してくださるおにぎりやバナナを食べています。おにぎりの具は、梅干しが必須。塩分とクエン酸の効果で疲労を和らげてくれます。 特に夏のレースではナトリウム(塩分)切れにならないように気をつけなければいけません。糖分だけでなくナトリウムもきちんと摂ることで、足を攣るなどのアクシデントを避けることに繋がりますよ。

 たんぱく質源のヨーグルトも欠かせません。前もってスーパーマーケットやコンビニエンスストアに立寄り、レース朝はもちろんレース後に食べる回復食まで購入しておきます。レース会場付近にお店がない場合は、どこで食料が手に入るかのチェックも大切です。

 豚肉・胚芽パンなどに含まれるビタミンB1は、糖質からエネルギーを作るために欠かせません。消化に影響がない範囲で一緒に摂取すると、疲労を防いでくれます。

<レース中>

スタート前には右下のパワージェル2つと血糖値安定効果のあるベスパハイパーを。レース中の水はプラスコのジェルを口の中で中和してくれるスタート前には右下のパワージェル2つと血糖値安定効果のあるベスパハイパーを。レース中の水はプラスコのジェルを口の中で中和してくれる

 レースの継続時間によって、液体物にグミやバーなどの固形物をプラスするかどうか判断します。脱水症状を防ぐため、喉が渇く前にこまめに飲むことを忘れずに(喉が乾いてからでは手遅れ!)。

 かつては15分ごとに飲むように意識をしていたこともあったそうですが、トップ争いになってくると「○分ごと」という時間割ではコントロールできない状況がほとんどだと言います。マウンテンバイクであれば、荒れた路面を走行するので飲むときも集中力が必要ですが、一瞬でも落ち着く場所があればさっと飲むように心がけましょう。

ゴール後“30分以内”にフルーツジュース

ゴールをする池田選手ゴールをする池田選手
リカバリードリンク早く飲まないと~。ボトルを持って待ち構えますリカバリードリンク早く飲まないと~。ボトルを持って待ち構えます

<レース直後>

 ゴール後30分以内に、糖質+たんぱく質の補給をしましょう。さらに1時間以内にバランスの良い食事を摂ることが理想です。私たちサポートスタッフがフィニッシュラインに向う際は、リカバリー食を詰め込んで選手を迎えます。今か今かとゴールを待つときは、毎回緊張するものです。

 ゴール後は、戦友と言葉を交わしつつもリカバリーに向けて気が抜けない時間帯。長時間のレース直後は固形物が喉を通らなくとも、リカバリードリンクは欠かせません。夫は炭水化物とたんぱく質が4:1の割合で配合されたドリンクをチョイスし、30分以内に飲み終えています。この“30分以内”が鍵! 回復を助ける働きのあるクエン酸が含まれたフルーツジュースもおすすめです。

<レース日の夜>

 言わずもがな、いかに回復し、疲労を予防するかが鍵となります。筋肉を修復させるため、主食・主菜・副菜・果物などのバランスの良い食事を心がけ、主菜(メインのおかず)を通常の2割ぐらい多めに摂ります。レバー、うなぎ、ナッツ類、ブロッコリー、ピーマンなど、抗酸化物質を含む野菜・果物・豆などを摂ることで身体の活性酸素を抑制し、回復を早める効果が期待できます。

レース後、食べたいものは何ですか?レース後、食べたいものは何ですか?

 なるべく早く食べたいのと遠く離れたレース会場からの移動があるため外食になってしまいますが、その際には本人が食べたいと思う物を聞きます。それは、食べたいもの=身体が欲している栄養素、だと思っているからです。極限まで追いつめられて、本能的に何が身体に足りないか選手は自分自身が一番分かっているのです。

池田清子池田清子(いけだ・さやこ)

アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネージャー経験を生かし2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを開始、同秋結婚。平行して「ジュニア・アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。

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