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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<43>エヴァンスは「もう1つの夢」ジロ制覇に向けて始動 BMCレーシングチーム 2014シーズン展望

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 サイクルロードレースファンの皆さま、メリークリスマス! 今年1年はどんな「サイクルイヤー」でしたか? このコーナーでは、ひと足早く2014年シーズンの展望をお届けしています。戦力充実のBMCレーシングチームは、幾分シフトチェンジしてのシーズンとなりそうです。

シーズン前半に比重のエヴァンス ツールはヴァンガーデレンで勝負

 2011年のツール・ド・フランスで涙の総合優勝を果たしたカデル・エヴァンス(オーストラリア)。「ツール制覇への挑戦は35歳がタイムリミット」と述べていた彼にとって、34歳でのツール制覇はギリギリとも言える勝利だった。とはいえ、連覇を狙った2012年は総合7位、2013年は総合39位に終わったが、5月のジロ・デ・イタリアで総合3位。2月で37歳になるが、コンディションさえ整えば、まだまだ総合争いを戦えるだろう。

カデル・エヴァンス(ジロ・デ・イタリア2013)カデル・エヴァンス(ジロ・デ・イタリア2013)

 2014年は、ジロでの総合優勝を視野に入れる。ツールを制した後の夢だったというマリアローザへの挑戦だ。第12ステージに設けられる43.0kmの個人タイムトライアルでアドバンテージを築き、後半ステージで続く超級山岳での走りにつなげられるかどうかがポイント。急坂が多いイタリアの山岳ゆえ、下りもテクニカル。エヴァンス得意のダウンヒルにも期待したい。

 ジロにフォーカスするため、例年より早い始動となる。シーズン開幕戦、ツアー・ダウンアンダー(1月21日~26日)には、マイヨ・アルカンシエルを着て臨んだ2010年以来の出場を予定している。

 エヴァンスはジロ参戦を表明すると同時に、「ツール引退」とも受け取れる発言をしており、チーム内での世代交代が進んでいるようだ。ここ数年、チームの2番手として総合上位に食い込んできた若きエース、ティージェイ・ヴァンガードレン(アメリカ)が、いよいよ単独リーダーとしてツール・ド・フランスに向かう。

ラルプ・デュエズでは惜しくも勝利を逃したヴァンガードレン(ツール・ド・フランス2013)ラルプ・デュエズでは惜しくも勝利を逃したヴァンガードレン(ツール・ド・フランス2013)

 5月のツアー・オブ・カリフォルニア(UCI2.HC)では完勝したものの、調子のピークを迎えてしまい、約1カ月半後のツールでは下降線をたどったままの走りとなってしまった。その反省から、2014年はカリフォルニア出場を回避し、ツールに集中する構え。総合トップ5を目標とする。シーズン前半はパリ~ニース(3月9日~16日)を目標に走り、ツール直前はクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ(6月8日~15日)で調整することになりそうだ。

パワフルな走りでパヴェ(石畳)やタイムトライアルに強いテイラー・フィニー(パリ~ルーベ2013)パワフルな走りでパヴェ(石畳)やタイムトライアルに強いテイラー・フィニー(パリ~ルーベ2013)

 ヴァンガードレンにとっては、ジュニア、アンダー23の時代から一緒に走ってきた選手がチーム内に多いのも心強い。ツールデビュー予定のテイラー・フィニーや、ガーミン・シャープから移籍のピーター・ステティナ(ともにアメリカ)らがアシストを務める公算だ。フィニーは、パヴェが待ち受ける第5ステージや、第20ステージの個人タイムトライアル(54.0km)ではステージ優勝候補でもある。本人もこの2ステージは勝利を意識し、その他のステージではアシストの役割をまっとうしたいとしている。

 グランツールやステージレースで結果を残してきたBMCだが、一方で、メンバーを揃えながらいまひとつ「不発」の印象を拭えないのがクラシックでの走り。2012年の大型補強の目玉だったフィリップ・ジルベール(ベルギー)、トル・フースホフト(ノルウェー)という2人の元世界チャンピオンは、そろそろチームにフィットしてもいい頃だ。

 ジルベールは今シーズンを振り返り、「ツアー・ダウンアンダーでのシーズンインは失敗だった」とコメント。第2ステージでの落車のダメージが残ったことや、調子のピークが早く来てしまったことで、肝心のアルデンヌクラシックに合わせられなかったのだという。以降もリズムに乗りきれず、シーズン勝利はブエルタ・ア・エスパーニャ第12ステージの1勝のみ。世界選手権も9位に終わった。2014年は一昨年までのように、2月からレース活動を開始することになるだろう。

調子の上がらなかったジルベール。2014年は復活を期す(リエージュ~バストーニュ~リエージュ2013)調子の上がらなかったジルベール。来季は復活を期す(リエージュ~バストーニュ~リエージュ2013)
2013年はシーズン9勝と復活を印象付けたトル・フースホフト(パリ~ルーベ2013)2013年はシーズン9勝と復活を印象付けたトル・フースホフト(パリ~ルーベ2013)

 フースホフトは今年、シーズン9勝と復活を印象付けた1年だった。再び北のクラシックで優勝争いに加わりたい。また、フィニー同様、ツール第5ステージにも意欲を示しており、同様にパヴェが組み込まれた2010年ツール第3ステージでの勝利の再現を目指す。平坦の走りはもとより、上りへの対応力など、グランツールでアシストとして計算できるのも強みだ。

 そのほか、パヴェ、激坂とマルチな走りができるグレッヒ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー)、移籍によりステージレースに集中できる環境を得たペーター・ヴェリトス(スロバキア)、スーパールーキーのリック・ツァベル(ドイツ)など、さまざまなアプローチが可能なメンバーを揃えて新シーズンを迎える。

シーズン開幕戦への出場選手が次々と発表に

 11月から12月にかけて、UCIプロチーム、プロコンチネンタルチームの多くがチームビルディングキャンプを実施した。チーム内でのコミュニケーションを図ることや、ライド感覚を取り戻すこと、そして翌年のレースプログラムの確認などを行う。

 それらを終えた各チームが次々とシーズン開幕戦の出場メンバーを発表している。UCIワールドツアー第1戦のツアー・ダウンアンダー(オーストラリア)、年々人気が高まっているツール・ド・サンルイス(アルゼンチン、UCI1.1)には、それぞれビッグネームが集結。現時点で出場が明らかになっている有力選手をまとめておこう。

●ツアー・ダウンアンダー(1月21日~26日)

ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ベルキン プロサイクリング)
カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)
リック・ツァベル(ドイツ、BMCレーシングチーム)
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデール プロサイクリングチーム)
ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)
アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター チーム)
サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
マルセル・キッテル(ドイツ、チーム アルゴス・シマノ)
トマ・ヴォクレール(フランス、チーム ヨーロッパカー)
リッチー・ポート(イギリス、スカイ プロサイクリング)
フランク・シュレク(ルクセンブルク、トレック・ファクトリーレーシング)
イェンス・フォイクト(ドイツ、トレック・ファクトリーレーシング)

●ツール・ド・サンルイス(1月20日~26日)

カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、アージェードゥーゼール ラモンディアル)
ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ プロチーム)
ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)
トル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシングチーム)
テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)
ペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール プロサイクリングチーム)
ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)
フィリッポ・ポッツァート(イタリア、ランプレ・メリダ)
ユルヘン・ヴァンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)
トム・ボーネン(ベルギー、オメガファルマ・クイックステップ)
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファルマ・クイックステップ)
ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ チーム)
アイマル・スベルディア(スペイン、トレック・ファクトリーレーシング)

今週の爆走ライダー-タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ プロチーム)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 今週は、来たるシーズンに向けてぜひとも押さえておいてほしい選手をピックアップしたい。タネル・カンゲルト、26歳。アスタナ プロチームのエース、ヴィンチェンツォ・ニバリが全幅の信頼を寄せるアシストの1人である。

将来を嘱望されるステージレーサー、タネル・カンゲルト(ジロ・デ・イタリア2012)将来を嘱望されるステージレーサー、タネル・カンゲルト(ジロ・デ・イタリア2012)

 ビッグレースの勝利は、2012年ツール・ド・スイス第9ステージの1勝だけだが、今年はジロ総合14位、ブエルタ総合11位。いずれも山岳最終アシストとしてニバリを支えながらの結果である。一躍将来を嘱望されるステージレーサーへと上り詰めた。

 2008年、アージェードゥーゼール ラモンディアルでプロデビュー。しかし、フランスチームには馴染めず、2009年限りで契約終了。翌年には無所属を経験した。転機は、2011年。同郷の英雄、ヤーン・キルシプー氏が、アスタナの御大アレクサンドル・ヴィノクロフ氏に彼を紹介したことにある。

今年はジロで総合14位と活躍。来シーズンはいよいよツールにデビューする(ジロ・デ・イタリア2013)今年はジロで総合14位と活躍。来シーズンはいよいよツールにデビュー(ジロ・デ・イタリア2013)

 2014年は再びニバリのアシストとして走り、ツールへのデビューも予定している。しかし、本人は「ツールは自分に合わない。いずれはジロで勝負する。今は世界のさまざまなレースを経験する時期」と話し、今後を見据えた1年にするつもりだ。

 このほど、チームと3年の契約延長に合意し、好待遇を得た。近々チームのエースになるであろうオールラウンダーに、今から熱い視線を送ってみていただきたい。

文 福光俊介

福光俊介
福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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