ミッション盛り沢山の合宿、監督の評価は「大成功」ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザが2014年に向けてトレーニングキャンプ

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 2014シーズンから新しく活動するUCIコンチネンタルチームのヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザが、チームの拠点となるイタリア中部のアブルッツオ州で1回目のトレーニングキャンプを行った。チームは日本登録であるものの、イタリアに拠点を構え、6人の日本人選手と5人のイタリア人選手、そしてルーマニア、スウェーデン、オーストリア、南アフリカ人選手が所属する多国籍チーム。このうちアンダー23カテゴリーの若手選手が約半数を占める。(レポート 田中苑子)

所属選手13人と、サテライトチームのアンダー23チームから6人が参加したトレーニングキャンプ。若さとモチベーションの高さがチームの原動力となる所属選手13人と、サテライトチームのアンダー23チームから6人が参加したトレーニングキャンプ。若さとモチベーションの高さがチームの原動力となる
最初のミーティングで熱心に監督の話しを聞き入る宮澤崇史。チームの最年長選手であり、豊富な経験からキャプテン格となるが、来季は「勝つことにこだわりたい」と話す最初のミーティングで熱心に監督の話しを聞き入る宮澤崇史。チームの最年長選手であり、豊富な経験からキャプテン格となるが、来季は「勝つことにこだわりたい」と話す
選手たちを前に熱弁を振るうステファノ・ジュリアーニ監督。これまでに多くの有名選手を育てあげた名将と言われる人物で、選手時代はジロ・デ・イタリアで逃げ切ってステージ優勝をしている選手たちを前に熱弁を振るうステファノ・ジュリアーニ監督。これまでに多くの有名選手を育てあげた名将と言われる人物で、選手時代はジロ・デ・イタリアで逃げ切ってステージ優勝をしている

アットホームなトレーニングキャンプ

 トレーニングキャンプは11月25日から12月10日まで2週間以上に渡って実施され、選手やスタッフ間の親睦を深めたほか、日本ではアスリートに馴染みの薄い骨密度検査をはじめとする身体能力測定や血液精密検査、新しいバイクのフィッティングなど、多くのミッションが盛り込まれた。2014シーズンに向けて大きな意味合いをもつ、有意義なキャンプとなった。

 参加した日本人選手は、チームのキャプテン格となる宮澤崇史(チーム サクソ・ティンコフ)を筆頭に、山本元喜、黒枝士揮、石橋学(鹿屋体育大学)、秋丸湧哉(EQA U23)、小石祐馬(コルバ・スペラーノハム)の6人。ほかに7選手と、サテライトチームの位置づけとなるアンダー23チームの6選手が参加し、陽気なステファノ・ジュリアーニ監督のもとでアットホームな雰囲気でトレーニングが進んだ。

アブルッツオ州の山岳部でトレーニングを行う。トップチームで走った経験をもつアレッサンドロ・ビソルティ(左)とアレッサンドロ・マラグーティ(右)が先頭を走るアブルッツオ州の山岳部でトレーニングを行う。トップチームで走った経験をもつアレッサンドロ・ビソルティ(左)とアレッサンドロ・マラグーティ(右)が先頭を走る
真新しいエムエスティナのチームウェアのフィッティング。濃紺と蛍光イエローの鮮やかなウェアに袖を通して、選手からは笑顔がこぼれる真新しいエムエスティナのチームウェアのフィッティング。濃紺と蛍光イエローの鮮やかなウェアに袖を通して、選手からは笑顔がこぼれる
チームが拠点を置くイタリア中部のアブルッツオ州。自然豊かなエリアで海沿いの平坦路から2千メートル級の山岳部など最高の練習環境があるチームが拠点を置くイタリア中部のアブルッツオ州。自然豊かなエリアで海沿いの平坦路から2千メートル級の山岳部など最高の練習環境がある
新しいチームメイトと練習中に談笑する小石祐馬(中央)や黒枝士揮(左)新しいチームメイトと練習中に談笑する小石祐馬(中央)や黒枝士揮(左)

名将が率いるチーム 1回目のキャンプは「大成功」

 選手、スタッフともに、キャンプ前はどんなチームになるのか不安も大きかったというが、キャンプを終えて、ジュリアーニ監督は次のように語った。

 「1回目のキャンプとしては大成功でした。外国人選手同士の文化や生活習慣の違いが唯一の心配でしたが、長年の経験から、絶対にうまくいくと自信をもっていたし、実際そのとおりになりました。キャンプを通じて、みんなには信頼関係を築いてもらうことに挑戦してもらったのです。自分は選手に対して、日本人や外国人といった意識はありませんが、英語や日本語はうまく話すことができません。でもレクリエーションのなかからジェスチャーや顔の表情でうまくコミュニケーションを取ることができました。笑うことに国境はないのです。このチームは新しい挑戦とともにやりがいのあるプロジェクトです。選手に対して、エモーションを与えれば、選手はエモーションを返してくる。情熱をかきたてるのが自分の仕事であって、いい情熱の連鎖を作っていきたいと思います。自分がチームをまとめて、チームがまとまったときにいい結果が出るでしょう」

トレーニング前に選手たちに注意事項を伝えるジュリアーニ監督。選手一人一人の状態をよく把握し、熱心に指導するトレーニング前に選手たちに注意事項を伝えるジュリアーニ監督。選手一人一人の状態をよく把握し、熱心に指導する

 チームは、2015年のプロコンチネンタルチームへの昇格と、ジロ・デ・イタリア出場という高い目標をもつ。選手たちはそれぞれに向上心やモチベーションが高い。秋丸湧哉は、「このチームはあくまでもステップだから、と伺ってます。意識としては常にこのチームを踏み台にして、もっと上のチームに行くんだと思っていたい。もちろんこのチームが昇格して、結果このチームでジロに行くのはすごいことで、まだ実感が沸かず、イメージできないことですが、あくまでも自分のなかでは、ここからもっと上をめざすというのが大きな目標です」と話す。

 また、宮澤崇史も来季に向け、「ヨーロッパで走ること、そして2015年以降、またトップレースで走るための選択をした。勝つことにこだわって、もう一度初心に戻り、勝てる選手としてチームの役割を果たしていきたい。つねに将来を見据えて走りたいと思う」と意欲を語った。

空き時間に宮澤崇史が若手日本人選手を連れ出し、アドレア海沿いを歩く空き時間に宮澤崇史が若手日本人選手を連れ出し、アドレア海沿いを歩く
このエリアは冬でも温暖な気候で過ごしやすいこのエリアは冬でも温暖な気候で過ごしやすい
初めての合同トレーニングを前に表情が引き締まる黒枝士揮初めての合同トレーニングを前に表情が引き締まる黒枝士揮
若い選手にバランスボールを使った体幹トレーニングを教える宮澤崇史若い選手にバランスボールを使った体幹トレーニングを教える宮澤崇史

詳細な検査と測定を実施 バイオロジカルパスポートも独自導入

身体測定で身長を測る黒枝士揮身体測定で身長を測る黒枝士揮

 チームはキエーティ・ペスカーラ大学スポーツ医学研究所と提携し、独自に「バイオロジカルパスポート」を導入すると発表している。もちろんドーピングから若い選手を守るための意味合いもあるが、血液データだけでなく、心肺機能など様々な計測を行っており、それを専門医師の解析のもとトレーニングメニューやレースでの役割に反映させて、選手の素質を伸ばす目的が大きい。

 日本人選手の測定結果をみたジュリアーニ監督は「彼らの数値はとても良く、驚かされました。これがイタリア人選手だったら、お前ら何か悪いことをしたんじゃないか?って思わず疑いたくなるような数値だけれど、日本人選手にそのような心配はない。これから選手それぞれのキャラクターをよく見て、向き不向きをふまえながら、彼らの高い身体能力をどこまで伸ばすことができるか、レースをどう走らせることができるのだろうか、と好奇心をかき立てられています。ただ、体重の軽い選手が多いので、彼らはうまく人の力を利用して走る方法を考えないといけないね」と話す。

採血中の小石祐馬。今後継続的に血液データが保管される採血中の小石祐馬。今後継続的に血液データが保管される
ジュリアーニ監督とじっくりと時間をかけて個別の面談を行い、詳しいオフトレーニングメニューを組んでいくジュリアーニ監督とじっくりと時間をかけて個別の面談を行い、詳しいオフトレーニングメニューを組んでいく
VO2MAXなどの測定。たくさんのドクターたちが選手の測定を見守るVO2MAXなどの測定。たくさんのドクターたちが選手の測定を見守る
肺活量や呼吸機能の測定を受ける秋丸湧哉肺活量や呼吸機能の測定を受ける秋丸湧哉
心機能をみるために、心臓エコー検査も行われた心機能をみるために、心臓エコー検査も行われた

 キエーティ・ペスカーラ大学スポーツ医学研究所の専門医からは、トレーニング面だけでなく、アスリートとしての基本的な食事や生活面での講習もあり、若い選手たちは熱心に聞き入っていた。

骨密度検査の結果を熱心に聞き入る山本元喜。骨の状態を見ることで、身体全体のバランスや適正なポジションを取れているかなどもわかるという骨密度検査の結果を熱心に聞き入る山本元喜。骨の状態を見ることで、身体全体のバランスや適正なポジションを取れているかなどもわかるという
キエーティ・ペスカーラ大学のドクターが働くクリニックで採血を受けた選手たち。ドクターたちは皆、自転車競技が大好きキエーティ・ペスカーラ大学のドクターが働くクリニックで採血を受けた選手たち。ドクターたちは皆、自転車競技が大好き

希望と課題を胸に、2014年シーズンへ

食事を摂る山本元喜とルーマニア人のジュゼッペ・フォンツィは、1991年生まれの同い年食事を摂る山本元喜とルーマニア人のジュゼッペ・フォンツィは、1991年生まれの同い年

 2週間の日程はアッという間に過ぎ去り、チームと過ごすなかで、若い日本人選手に出された課題は多い。

 小石祐馬は「まずは言葉。イタリア語を覚えることが、最低限、現時点でやらないといけないことだと思います。今回はまったく話せなかったので、ちょっとでもそこを改善させたい。オーストリア人のダニエルもイタリア語が話せなかったが、1カ月間で勉強して、自分たちよりも話せるレベルになっていた。そういうところの意識も違うので、見習わないといけないと思いました」と話す。

 また秋丸湧哉は「合宿はとてもいい雰囲気で、毎日、24時間とても楽しかったです。イタリア人選手やスタッフも日本人に対してとてもウェルカムな印象を受けましたが、これは今後、僕らが積極的にコミュニケーションを取っていかないと続かないものだと思うので、語学の勉強なり努力を続けて、今の雰囲気を保っていきたいと思います。あとはスポンサーやスタッフの期待が“環境”という形で示されているので、ありがたいのですが、その分、すごく気が引き締まって、しっかりと結果で恩返しをしないといけないと思います。その思いがこの合宿にきて、より強く固まりました」と感想を述べた。

新しいバイクのフィッティングを行う。デローザ「プロトス」の乗り味は最高!と選手たちは口を揃える新しいバイクのフィッティングを行う。デローザ「プロトス」の乗り味は最高!と選手たちは口を揃える
日本人メカニックがイタリア人メカニックに特殊なバイクの組み方を説明する。チームは選手だけでなくスタッフの育成にも熱心に取り組む日本人メカニックがイタリア人メカニックに特殊なバイクの組み方を説明する。チームは選手だけでなくスタッフの育成にも熱心に取り組む
ミラノのデローザ工房ででき上がったばかりのフラグシップモデル「プロトス」を組み上げ、選手に渡す前に最終調整するミラノのデローザ工房ででき上がったばかりのフラグシップモデル「プロトス」を組み上げ、選手に渡す前に最終調整する

 日本人選手たちは1回目のキャンプを終えて帰国し、オフシーズンを日本で過ごす。ジュリアーニ監督は身体計測の結果をふまえながら、選手個々にトレーニングメニューを組んだ。黒枝士揮は「日本に帰ってからのメニューはもらっているので、それをしっかりやって身体を作り、ちゃんと春の時点で即戦力になるように頑張りたい。日本のレースにも出たいと思っているので、そこでしっかりと成長していることを示せたらいいと思う。来シーズンが楽しみで仕方ないです」と抱負を語った。

トレーニング中にバールに立ち寄ってカプチーノ休憩をする。おどける宮澤崇史トレーニング中にバールに立ち寄ってカプチーノ休憩をする。おどける宮澤崇史
若手も本場のカプチーノを堪能若手も本場のカプチーノを堪能

 笑いの絶えない和気あいあいとしたキャンプだったが、いざシーズンが始まれば、若い選手が主体となるヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザにとって、厳しいレースが続くことになる。チームは2月2日、GPコスタ・デリ・エトルスキ(イタリア)で初戦を迎え、2月5日~8日のジロ・デ・イタリアの主催者RCSスポルトが手がけるドバイツアーへの出場が決定している。ジュリアーニ監督のもと、大きなチャレンジが始まろうとしている。

田中苑子
田中苑子(たなか・そのこ)

1981年、千葉生まれ。2005年に看護師から自転車専門誌の編集部に転職。2008年よりフリーランスカメラマンに転向し、現在はアジアの草レースからツール・ド・フランスまで、世界各国の色鮮やかなサイクルスポーツを追っかけ中。


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