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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<42>絶対エース・ニバリを軸とするグランツール向きの布陣 アスタナ プロチーム 2014シーズン展望

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 有力チームの2014年シーズンを展望するこのシリーズ、今回は、大物ライダーを揃えてビッグチームへと成長する「アスタナ プロチーム」をセレクト。再びツール・ド・フランスの頂点を狙うチームの方向性をチェックしてみます。

ニバリを中心にツールメンバーは7人が“当確”状態

 かつてチームの顔であったアレクサンドル・ヴィノクロフ氏がゼネラルマネージャーに就任し、2013年シーズンはレース内外を通じて“ヴィノクロフ色”が濃厚に表れた1年だった。もっとも、即戦力として他チームから実力者を引き抜いたものの、1年で結果を残せなければ放出することさえある厳しさも、このチームの特徴だ。カザフスタンの国家プロジェクトであり、首脳陣の意向がストレートに反映されるチーム運営は、中央アジアならではの趣が漂う。

ニバリのジロ総合優勝、ブエルタ総合2位という結果は、ヴィノクロフ氏(前列の白いシャツ)も満足の活躍だ(ジロ・デ・イタリア2013)ニバリのジロ総合優勝、ブエルタ総合2位という結果は、ヴィノクロフ氏(前列の白いシャツ)も満足の活躍だ(ジロ・デ・イタリア2013)

 そうした中、一発で“満点”の結果を残したのが、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)。2012年のストーブリーグで移籍が発表された時点から、ジロ・デ・イタリア総合優勝を念頭に動き始め、見事にそれに応えた。その後のブエルタ・ア・エスパーニャも、本調子でない状態ながら総合2位にまとめた。ニバリのほか、アシストとして長年彼を支えてきたヴァレリオ・アニョーリ、アレッサンドロ・ヴァノッティ(ともにイタリア)らアシスト陣も大きな評価を勝ち取るシーズンとなった。

 ニバリの2014年は、ツール総合優勝が最大の目標となる。大会序盤に設けられたパヴェステージを意識し、春にはツール・デ・フランドルへの出場も検討中とか。個人タイムトライアルが54kmと長いが、6つの頂上ゴール含む山岳ステージの充実度を見ても、十分にチャンスがあるだろう。ツールを制すれば、ブエルタ(2010年)、ジロ(2013年)を加え、全グランツール総合優勝を達成する史上6人目のライダーとなる。

リーダージャージを守り続けたアシスト陣が、さらにパワーアップする(ジロ・デ・イタリア2013)リーダージャージを守り続けたアシスト陣が、さらにパワーアップする(ジロ・デ・イタリア2013)

 チームのスポーツディレクター、ジュゼッペ・マルティネッリ氏は12月16日にスペインメディアのインタビューに応じ、ツールでニバリをアシストするメンバーとして、ヤコブ・フルサング(デンマーク)、アンドリー・グリフコ(ウクライナ)、タネル・カンゲルト(エストニア)、フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン)、移籍加入するミケーレ・スカルポーニ(イタリア)、リーウ・ウェストラ(オランダ)を指名した。ツール開幕まで半年以上もある現時点で、7選手も当確というのは異例のこと。彼らはニバリとほぼ同じレースプログラムに臨むことになるだろう。

 ニバリにとって、もう1つのターゲットともいえるクラシック。コース変更によりチャンスが広がった3月のミラノ~サンレモには、パリ~ニースでの調整を経て参戦する。そして、スペイン・ポンフェラーダで開催される世界選手権には、今回もイタリアチームのエースとして臨むことだろう。

安定した走りをみせるスカルポーニが、大舞台での勝利を狙う(リエージュ・バストーニュ・リエージュ2013)安定した走りをみせるスカルポーニが、大舞台での勝利を狙う(リエージュ・バストーニュ・リエージュ2013)

 ツールでアシストに回るスカルポーニは、移籍早々、ジロでの総合エースが確約された。2013年はリエージュ~バストーニュ~リエージュ5位、ジロ総合4位をはじめ、大きなレースで上位に安定。世界選手権でも見せ場を作った。9月には35歳になるが、2011年(繰り上げ優勝)以来のジロ総合制覇を目論む。こちらには、若手有望株のファビオ・アール(イタリア)も加わり、強力クライマーを揃えてマリアローザを狙うこととなる。

カヴェンディッシュに競り勝ったグアルディーニ(ジロ・デ・イタリア2012)カヴェンディッシュに競り勝ったグアルディーニ(ジロ・デ・イタリア2012)

 マキシム・イグリンスキー(カザフスタン)、エンリーコ・ガスパロット(イタリア)らのクラシックスペシャリストも充実している。2012年のジロ第18ステージでマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、当時スカイ プロサイクリング)らを撃破し、鮮烈な印象を残したアンドレア・グアルディーニ(イタリア)も、チームのエーススプリンターとして控える。

 エースクラスの走りが計算できるチームだけに、シーズン序盤から勝利を量産する可能性は大いにあるだろう。

UCIロードレース世界選手権ポンフェラーダ2014 コース発表

 2014年9月20日から28日までの会期で開催される、UCIロードレース世界選手権ポンフェラーダ2014のコースが12月13日に発表された。合わせて、公式ホームページ、Twitter、Facebookも開設されている。

2011年のブエルタで登場したポンフェラーダの山岳ステージ。パンチャータイプのミヒャエル・アルバジーニが制した(ブエルタ・ア・エスパーニャ2011)2011年のブエルタで登場したポンフェラーダの山岳ステージ。パンチャータイプのミヒャエル・アルバジーニが制した(ブエルタ・ア・エスパーニャ2011)

 舞台は、スペイン北西部のカスティーリャ・イ・レオン州ポンフェラーダ。人口約7万人の街で開かれる世界一を決める大会は、2013年と同じくジュニアからアンダー23、エリートと全12レース。いずれもポンフェラーダ市内を発着点とし、サッカースタジアムであるエスタディオ・エル・トラリン前でのゴールとなる。

 タイムトライアルはチーム、個人ともにゴール前約4km地点に7%の上りがあるものの、概ね平坦基調。エリート男子は中盤から少しずつ上り基調となり、終盤に2ヵ所の丘を越えることに。TTスペシャリストがどのようにペースを配分するかがポイントだ。

ウェブサイト「UCI ROAD CHAMPIONSHIPS PONFERRADA2014」よりウェブサイト「UCI ROAD CHAMPIONSHIPS PONFERRADA2014」より

 ロードレースは、18.2kmの周回コースで実施。北へ進路をとり、エリート男子個人タイムトライアルでも使われるバルセラ貯水池付近の丘を2つ越えて発着地点に戻ってくる。2つ目の丘の頂上からゴールまでは約5km。終盤の上りで人数が絞られ、最後の下りと平地で残った選手による優勝争いになるだろう。その点では、フィレンツェで開催された2013年大会と似たような展開が予想される。エリート男子(254.8km)の獲得標高にいたっては4284mとあり、クライマーや登坂力に優れたクラシックハンター向けのコースだ。

■UCIロードレース世界選手権ポンフェラーダ2014 イベントプログラム

【9月20日】
タイムトライアルトレーニング
オープニングセレモニー
【9月21日】
エリート女子 チームタイムトライアル(36.15km)
エリート男子 チームタイムトライアル(57.10km)
【9月22日】
ジュニア女子 個人タイムトライアル(13.90km)
アンダー23男子 個人タイムトライアル(36.15km)
【9月23日】
ジュニア男子 個人タイムトライアル(29.50km)
エリート女子 個人タイムトライアル(29.50km)
【9月24日】
エリート男子 個人タイムトライアル(47.10km)
【9月25日】
ロードレーストレーニング
UCI評議会
UCIジュニアカンファレンス
【9月26日】
ジュニア女子 ロードレース(72.80km、18.2km×4周、獲得標高1224m)
アンダー23男子 ロードレース(182km、18.2km×10周、獲得標高3060m)
【9月27日】
ジュニア男子 ロードレース(127.4km、18.2km×7周、獲得標高2142m)
エリート女子 ロードレース(127.4km、18.2km×7周、獲得標高2142m)
【9月28日】
エリート男子 ロードレース(254.8km、18.2km×14周、獲得標高4284m)

今週の爆走ライダー-イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 エウスカルテル・エウスカディの消滅が決定して以降、移籍先の噂が絶えなかった。最初にそれが報じられてから約4カ月。ようやく正式な行き先が決まった。スペイン唯一のUCIプロチームとなるモビスター チームへと活躍の場を移す。

マイヨロホを着たままリタイアという無念を味わったが、再び総合順位での活躍を目指す(ブエルタ・ア・エスパーニャ2010)マイヨロホを着たままリタイアという無念を味わったが、再び総合順位での活躍を目指す(ブエルタ・ア・エスパーニャ2010)

 クラシック、ステージレースと快進撃を繰り返したのが2010年。その年のブエルタ・ア・エスパーニャでは、総合優勝に最も近いところにいた。落車による骨折でマイヨロホを着たまま大会を去ったが、「バスクにアントンあり」と誰もが認めた。

 最近は、ステージレースの総合優勝争いから遅れをとることも多いが、総合がダメならステージ狙いへと即座に切り替える。ジロ通算1勝、ブエルタ通算4勝はその証だ。しかし、本人は満足しない。あくまでも総合を狙う。

バスク出身のアントンの走りに、バスクのファンたちも熱くなるはずだ(ブエルタ・ア・エスパーニャ2011)バスク出身のアントンの走りに、バスクのファンたちも熱くなるはずだ(ブエルタ・ア・エスパーニャ2011)

 新チームでは、ツールメンバーの2番手として期待されているという。エースのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)とともに、総合上位を目指す。まだチーム内でのグランツール布陣が固まっていない状況ではあるが、好待遇を得られることは間違いない。

 世界に誇ったバスクチームはなくなりこそすれ、選手たちは移籍するそれぞれのチームで活躍を期する。アントンもスペインチームで、その灯を消すまいと快走を見せることだろう。

文 福光俊介

福光俊介
福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて数十年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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