第19回全日本シクロクロス選手権大会エリート男女ともに王者が第一人者の意地を見せる 若い力の台頭も印象的なレースに

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 シクロクロス日本一を決める、全日本シクロクロス選手権大会は8日、滋賀県高島市のマキノ高原特設コースで開催され、エリートは男女ともにディフェンディングチャンピオンが王座を守った。エリート男子では竹之内悠(京都・コルバ・スペラーノハム)が3連覇を、エリート女子では宮内佐季子(静岡・CLUB viento)が2連覇を達成した。

エリート男子3連覇に向けて突き進む竹之内悠(京都・コルバ・スペラーノハム)エリート男子3連覇に向けて突き進む竹之内悠(京都・コルバ・スペラーノハム)

 シクロクロスは、主に冬場に行われるオフロード競技。使用されるバイクは、一見ロードバイクに近く感じるが、悪路にも対応する衝撃吸収性の高いフレームが使われる。タイヤもロード用と比較すると太く、表面はブロック状になっているものが多い。平地を走ることはほぼ無く、土、砂、芝などの不整地やアップダウンをこなす。スピードはもちろんだが、パワー、ボディバランスが要求される競技だ。

 主にヨーロッパを中心に展開され、ベルギーでは国技ともされる。世界のトップライダーの多くはベルギー人選手で、隣国のオランダやフランス、ドイツなどが続く。日本でもここ数年人気が高まっており、ロードレースがオフシーズンとなる冬場は、各地でシクロクロスがシリーズ形式で行われている。

下りセクションを疾走する武井亨介下りセクションを疾走する武井亨介
力強いダンシングで加速する沢田時力強いダンシングで加速する沢田時

 今回の舞台となったマキノ高原では、2年ぶりの全日本シクロクロス。関西シクロクロスなどではおなじみの会場だが、今回は前日から当日明け方にかけて雨が降り続き、コンディションが予想しにくい状態。前日試走では、当初コースに設けられていた立体交差で落車が発生。危険性が指摘され、急遽コースから除外されることとなった。

 それでも、難コースであることには変わりがない。スキー場の斜面を利用し作られたコースは、元シクロクロス日本チャンピオンの三船雅彦氏がアドバイザーを務めた。テクニカルなコーナーの連続、荒れた路面のアップダウン、中盤には長いダウンヒルセクション、後半にはシケイン、階段と休む場所が全くない複雑さが選手を苦しめた。

次世代のスペシャリスト頂上決戦 最後は中井のスピードが勝る

 レースを振り返ろう。まず、最初のカテゴリーはジュニア男子(レース時間40分)。17歳(1996年)、16歳(1997年生まれ)の選手が対象となる。スタートラインに立ったのは5選手。

 序盤から先頭に立ったのは、中井唯晶(滋賀・瀬田工業高校)。これに続いたのは、竹内遼(長野・Team ProRide)。中井はスタートで出遅れたものの、すぐにリカバーし先頭を走り続ける。一方の竹内は、中井の背中を見ながらレースを進める。

レース序盤、落車した山田将輝を、中井唯晶がギリギリかわすレース序盤、落車した山田将輝を、中井唯晶がギリギリかわす
中井と竹内の激しいトップ争い中井と竹内の激しいトップ争い

 最初の動きは3周目半ば。まず中井がペースを上げ、竹内を引き離しにかかる。しかし、竹内は余裕を持って対応。続く4周目では、竹内が前に出てペースを上げる場面が増え始める。レース終盤に向けて、2人のつばぜり合いが激しさを増す。

 そして勝負の最終周(5周目)。下りでアタックしたのは竹内だ。中井との差を10メートルほどに広げると、テクニカルなゾーンで一気にペースアップ。一度は中井が合流するが、最終コーナー直前で再アタック。トップでホームストレートに帰ってきた。

階段の上りで先行する中井唯晶階段の上りで先行する中井唯晶
押し区間で先行する竹内遼押し区間で先行する竹内遼

 ゴール前の直前は緩やかな上り。ここでスピードとパワーを見せたのは中井だった。徐々に竹内に迫ると、ゴール数メートル前で逆転。力強いガッツポーツでゴールに飛び込んだ。

 ゴールしてその場に倒れ込んだ両選手の姿からは、戦いの激しさが伝わってくる。中井は終始レースをリードし、最後にものにした勝利だった。一方の竹内は悔しさを滲ませながらも、「来年必ずリベンジする」と述べ、さらなる飛躍を誓った。

ゴール前のスプリントで大逆転を見せた中井唯晶ゴール前のスプリントで大逆転を見せた中井唯晶
レース後、地面に倒れ込む竹内遼レース後、地面に倒れ込む竹内遼

中井唯晶(滋賀・瀬田工業高校)のコメント
「当初のレースプランは逃げ切り勝ちだった。スプリント勝負に切り替えたのは、周回後半の階段セクションのあたりから。竹内くんに前に出られてしまったが、ジュニアカテゴリーではスプリント力がある方なので、最後は思い切っていった」

ジュニア男子表彰、(左より)2位の竹内遼、優勝の中井唯晶、3位の山田将輝ジュニア男子表彰、(左より)2位の竹内遼、優勝の中井唯晶、3位の山田将輝

竹内遼(長野・Team Pro Ride)のコメント
「トライしてみたが上手くいかなかった。下りで何度も仕掛けたが、差を広げることができなかった。純粋にスプリントをしたのでは負けてしまうと思って早めに仕掛けた結果が2位。悔しいが来年必ずリベンジする」

ジュニア男子(40分・5周)結果
1 中井唯晶(滋賀・瀬田工業高校) 39分2秒
2 竹内遼(長野・Team ProRide) +0秒
3 山田将輝(長野・Limited846/DIRTFREAK) +2分32秒
4 早川裕紀(京都・北桑田高校) +4分20秒
5 岡野樹(大阪・Team RINGOROAD) +6分35秒


女王・宮内が見せた「シーズンベストの走り」 ロード王者・與那嶺が2位

 ジュニア男子での激闘の余韻冷めやらぬうちにスタートしたのは、エリート女子(レース時間40分)。女王・宮内佐季子(静岡・CLUB viento)の連覇なるか、チャンピオン返り咲きを狙う豊岡英子(大阪・パナソニックレディース)の復権はあるのか、今シーズンからシクロクロスに本格参戦の與那嶺恵理(茨城・チーム・フォルツァ!)の走りはいかに? 多くの興味が集まる中、15選手がスタートラインに立った。

 序盤は宮内、豊岡、與那嶺、坂口聖香(兵庫・パナソニックレディース)がパックを形成し、代わる代わる先頭に立つ。2周目に入ると、宮内が他の3選手から徐々にリードを奪い始める。特に、豊岡のペースが上がらず、ズルズルと後退。

まず4人が先頭グループを形成まず4人が先頭グループを形成
ディフェンディングチャンピオンの宮内が2周目から先頭に立つディフェンディングチャンピオンの宮内が2周目から先頭に立つ

 やがて宮内が2位以下に10秒以上のリードを築き、独走態勢へ。2番手争いは、與那嶺が坂口との差を広げる。

 最終周回(5周目)に入っても、宮内のペースは衰えない。その頃には2位を走る與那嶺との差を約20秒まで広げ、盤石の態勢に。結局、最後までほぼミスなく走った宮内が2連覇のゴールへと飛び込んだ。

 與那嶺も2位のポジションを守りきり、笑顔でゴール。「表彰台に上がることができるとは思っていなかった」と自身も驚きの走りだったのは、3位の坂口。豊岡は体調不良の影響もあり、4位に終わった。

宮内が2位に大差を付けて2連覇宮内が2位に大差を付けて2連覇
ロード2冠王の與那嶺が2位ロード2冠王の與那嶺が2位
3位に入ったのは若手の坂口聖香3位に入ったのは若手の坂口聖香

宮内佐季子(静岡・CLUB viento)のコメント
「自分のペースを守って走ることを心掛けた結果。勝負は誰かと2人に絞られてからと考えていたが、みんなとの差が自然と広がっていった感じだった。1人になってからは落ち着いて走ることができ、周回を追うごとに攻める自分らしさは出せたと思う。今日はシーズンベストの走り。自らで取りに行った勝利で、昨年とは全く違う。今シーズンは、ここまで日本チャンピオンジャージで勝利することが無かったので、今度こそ勝ちたい。次はシクロクロス東京でしっかりと結果を残したい」

エリート女子表彰、(左より)2位の與那嶺、優勝の宮内、3位の坂口エリート女子表彰、(左より)2位の與那嶺、優勝の宮内、3位の坂口

與那嶺恵理(茨城・チーム・フォルツァ!)のコメント
「レースごとに上手く走ることができるようになっている。2位に終わったことは悔しいが、スタッフや多くの人たちに支えられて、本当に楽しく走ることができた。シクロクロスでの走りをロードにどのように活かすか、自分の中では見えてきている」

エリート女子結果(40分・5周)
1 宮内佐季子(静岡・CLUB viento) 43分09秒
2 與那嶺恵理(茨城・チーム・フォルツァ!) +21秒
3 坂口聖香(兵庫・パナソニックレディース) +1分42秒
4 豊岡英子(大阪・パナソニックレディース) +2分53秒
5 今井美穂(群馬・CycleClub.jp) +4分33秒
6 武田和佳(埼玉・Team CHAINRING) +4分43秒
7 相野田静香(長野・Club GROW) +5分56秒
8 坂口楓華(兵庫・パナソニックレディース) +6分31秒
9 川崎路子(静岡・CLUB viento) +8分36秒
10 上田順子(京都・BC.ANELLO獣遊) +10分18秒

王者の風格漂う竹之内 世界を見据えた走り

 13時スタートのエリート男子(60分)。天候の心配はないものの、山から吹き降ろす北風が冷たい。ホームストレートを走る選手にとっては向かい風だ。

 スタートラインに就いたのは95選手。各地のシリーズ戦を走り抜き、参加資格を得た歴戦の強者が揃ったが、類を見ない出走者数だ。このカテゴリーのみ80%ルール(トップの選手のラップタイムから+80%以上のタイム差がある選手は自動的にレースから除外される)が適用される。

エリート男子のスタートエリート男子のスタート
序盤の先頭争いは小坂と竹之内序盤の先頭争いは小坂と竹之内

 スタートから飛び出したのは、優勝候補筆頭の竹之内悠(京都・コルバ・スペラーノハム)。ベルギーでロードシーズンを送り、シクロクロスシーズン前半もベルギーやオランダを転戦し本場での経験を積む第一人者だ。続くのは小坂光(長野・宇都宮ブリッツェンシクロクロス)。昨年は2位、今回は初優勝を狙って意気込んでいる。さらに数選手が2人を追随するが、その差は徐々に広がってゆく。

 2周目に入ると、小坂の積極性が目立ち始める。盛んに先頭を牽き、自らの展開に持ち込もうという構え。

担ぎセクションで小坂が先行担ぎセクションで小坂が先行

 4周目、その小坂にトラブルが発生。ダウンヒル区間でピットに向かって後輪を指さしパンクしたことをアピールする。同じタイミングで竹之内がペースアップし、独走態勢に持ち込む。ペースを大きく落とした小坂は、3番手を走る沢田時(滋賀・チームブリヂストン・アンカー)に追い付かれてしまった。

 中盤以降、レースは竹之内の独壇場。後続との差を大きくしたことで、こまめにバイク交換するなど、トラブルを未然に防ぐ余裕も生まれた。

中盤以降、独走体制となった竹之内中盤以降、独走体制となった竹之内
2位争いを演じた小坂と沢田2位争いを演じた小坂と沢田

 終始7分前後のラップを刻み、次々と後続を周回遅れにする。結果的に、最終周までレース続行できた選手は27人。世界を目指すライダーとして、地力の差を見せつけた形となった。

 最大で1分11秒あった2位との差は、最後は57秒にまで詰まったが、危なげのない走りで3連覇を達成。観客とハイタッチをしながらのゴールとなった。

大差を維持してのエリート男子3連覇を達成した竹之内大差を維持してのエリート男子3連覇を達成した竹之内
2位争いはスプリント争いを小坂が制した2位争いはスプリント争いを小坂が制した
4位には小橋勇利が入った4位には小橋勇利が入った

 早朝、誰よりも早くコース試走を行い、感覚を掴んでいった竹之内。「下りに始まり、すぐに上る。それの繰り返しといった印象で、コース攻略のカギは下りの勢いを上りにどう結びつけるかだった」とレース後に語った。また、前半は余裕が無く、小坂についていくのが精一杯だったことを明かし、「内容的には悔しいレースになった」とも。

U23男子表彰、(左より)2位の小橋、優勝の沢田、3位の横山U23男子表彰、(左より)2位の小橋、優勝の沢田、3位の横山
エリート男子表彰、(左より)2位の小坂、優勝の竹之内、3位の沢田エリート男子表彰、(左より)2位の小坂、優勝の竹之内、3位の沢田

 中盤のアクシデントで優勝争いから遅れをとった小坂は、沢田とのデッドヒートを制し2位を死守。調子のピークを合わせていただけに、こちらも悔いの残るレースとなったという。3位の沢田は、アンダー23(23歳以下)ではトップに。そのほか、トップ10にはアンダー23対象者が5人食い込み、将来性を感じさせる結果となっている。

竹之内悠(京都・コルバ・スペラーノハム)のコメント
「ペースを上げた瞬間と小坂のパンクが同じタイミングだった。その後は、トラブルを避けるために短いスパンでバイク交換を行った。最初の2〜3周は本当に苦しくて、小坂のペースに合わせるので精一杯だった。今後は世界選手権をメーンに、国内レースを回避して調整に充てるかもしれない。世界選手権では、10位台でのフィニッシュを目指しているので、そのために何をするべきなのかを考えていきたい」

小坂光(長野・宇都宮ブリッツェンシクロクロス)のコメント
「年間最大の目標だったレースで、パンクという形での2位は悔しい。気持ちを切り替えて、世界選手権に向けて調整をしていきたい」

エリート男子結果(60分・8周)
1 竹之内悠(京都・コルバ・スペラーノハム) 57分44秒
2 小坂光(長野・宇都宮ブリッツェンシクロクロス) +57秒
3 沢田時(滋賀・チームブリヂストン・アンカー) +57秒
4 小橋勇利(愛媛・愛媛県自転車競技連盟) +1分37秒
5 横山航太(長野・篠ノ井高校) +2分1秒
6 濱由嵩(石川・SNEL CYCLOCROSS TEAM) +2分42秒
7 小坂正則(長野・スワコレーシングチーム) +3分9秒
8 中原義貴(大阪・Cannondale) +3分35秒
9 山田誉史輝(長野・BIKE RANCH/DIRTFREAK) +3分46秒
10 丸山厚(長野・JPPORTS TEST TEAM-MASSA-ANDEX) +4分12秒

世界選手権は来年2月、オランダで開催

 今大会は2014年2月1日〜2日にオランダ・フーゲンハイドで開催されるUCIシクロクロス世界選手権の代表選考会も兼ねており、この結果が参考材料とされる。代表は後日発表される予定だ。

(文 福光俊介/写真 中川裕之)

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