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つれづれイタリア~ノ<16>チーム消滅と失業保険 スペインとイタリアの制度はどう違う?

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 12月、クリスマスの足音が聞こえてくる時期ですが、今回は「失業」について。特にイタリアにおける「失業手当制度」について書きます。

契約満期という大きな壁

 自転車ロードレース界では12月、ほとんどのチームが新体制のもとで合宿に臨むなどして、翌シーズンの準備を始めます。新人選手が加わる一方、まだ所属チームが決まらず苦しんでいる選手も少なくありません。

トップ選手ペテル・サガンの年収は?(ツール・ド・フランス2013)トップ選手ペテル・サガンの年収は?(ツール・ド・フランス2013)

 チームの将来が不安定なため、多くの選手は1年契約を結ぶのですが、契約満了が近づくにつれて、チームが存続するかどうか、来シーズンは移籍するかどうか…など不安や苦しい思いが募るようです。生活がかかっているのですから。

 2012年のトップチームの平均年俸は24万ユーロ(約3336万円)とされていますが、この中にはアルベルト・コンタドールやペテル・サガンらトップ選手も含まれており、実際のところはわかりません。2013年のワールドツアーチームで25歳以上の選手の最低年俸は3万6300ユーロ(約500万円)、プロコンチネンタルチームは3万250ユーロ(約420万円)、コンチネンタルチームは給料がもらえるかどうかわからない状態だそうです。

※アーンスト・アンド・ヤング調べ


エウスカルテルに適用された保険

 今年は、オレンジのチームカラーで知られる、スペイン・バスク地方の歴史あるトップチーム「エウスカルテル・エウスカディ」が活動に終止符を打ちました。ヨーロッパを襲っている経済危機は、スポーツにも暗い影を落とし、たとえ強豪チームであってもスポンサーが支えられなくなったのです。

最後のブエルタ・ア・エスパーニャで舞台に並んだエウスカルテル(2013年)最後のブエルタ・ア・エスパーニャで舞台に並んだエウスカルテル(2013年)

 契約期間が過ぎれば、選手達は基本的に職を失うことになります。しかし、例外もあります。スペインの新聞「エルコッレオ」によれば、エウスカルテル・エウスカディの場合、2014年まで契約が残っているエース、サミュエル・サンチェスを含む7選手に対して失業保険が適応されるとのことです。とても珍しいケースのため、話題になりました。

 スペインには「ERE(Expediente de Regulacion de Empleo)」という制度があり、給料の一部は契約期間が切れるまで保証されるといいます。本来なら雇う側に支払う義務がありますが、倒産などで資金が調達できない場合、国が負担する仕組みになっています。その間、レースに参加できない苦しみはありますが、生活は保証されるということですね。

 

イタリアの失業保険制度

 イタリアにも「Cassa integrazione guadagni(所得補償制度)」という失業保険制度が存在します。ただし、イタリア自転車競技連盟(FCI)に問い合わせたところ、スポーツ選手に対し失業保険は適応されないそうです。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2013では、サンチェスをはじめとするエウスカルテルの選手が先頭をひく場面も見られたブエルタ・ア・エスパーニャ2013では、サンチェスをはじめとするエウスカルテルの選手が先頭をひく場面も見られた

 1947年に制定された所得補償制度では、企業の業績が悪くなった場合、従業員を解雇せず一時的に「休業」とします。その際にも原則として企業が給料を支払うのですが、支払いができない場合のみ国が負担する制度です。

 補償の有効期間は1年ですが、会社が倒産した場合はさらに6カ月まで延長することができます。また、存続している会社なら1年ごとに2回までの延長が認められています。給料の80%が保障され、ボーナスはありません。

 かつてはどんな高い給料でも保障されていましたが、現在の制度では限度額が月額1089ユーロ(約15万円)に設定されました。決して高くはない金額ですが、イタリアでは贅沢しなければ暮らしていける金額になっています。副業は禁止ではなく支給額が減らされ、再就職できた時点で当然ながら受給資格を失います。

 制度の悪用も問題になっています。今年8月、アリタリア航空の一部パイロットが、他国の航空会社に勤めながらイタリア国内では失業者扱いで不正に所得保障を受けていたという事件もありました。不正を暴くため、私服警官が定期的に巡回し、生活実態の証拠ビデオを撮影するなどして取り締まりを強化しています。

 確かに、南ヨーロッパの人たちはのんびり屋さんが多く、あまり働く気力がない雰囲気があるのは否めません。経済不況をきっかけに真面目になる時代が来るかな?

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)
イタリア語講師。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会で、自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」(インビーチ)を担当する。サイクルジャージブランド「カペルミュール」のモデルや、Jスポーツへ「ジロ・デ・イタリア」の情報提供なども行なう。東京都在住。ブログ「チクリスタ・イン・ジャッポーネ

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