名将ルーカ・シント監督に集まる注目ジロ・デ・イタリア2014に向け過熱するワイルドカード争い 「イエローフルオ」再起への険しい道のり

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 冬はロードレースがシーズンオフとなるが、来季に向けて欧州の自転車競技界は激しく動いている。各チームは比較的暖かい気候を求め、イタリアやスペインで合宿を行っている。合宿は新メンバーの顔合わせという意味で重要なほか、体力テストを行ったり、レースカレンダーに対して出場選手のリストを練ったりする機会でもある。

 動いているのはチームだけではなく、グランツールを主催する各団体も慌しい。5月のジロ・デ・イタリアと、7月のツール・ド・フランスは、すでにコースも発表され、プロコンチネンタルチームの出場権争いが過熱している。

2013年のジロ・デ・イタリア第1ステージ。ジロはツールとまた異なる華やかさだ2013年のジロ・デ・イタリア第1ステージ。ジロはツールとまた異なる華やかさだ

出場権はプロコンチネンタルチームにとって狭き門

 UCI(国際自転車競技連合)の規定では、ワールドツアーへの参加資格を持つUCIプロチームは、ワールドツアーシリーズ戦に自動的に出場することになる。しかし、その下のカテゴリーであるプロコンチネンタルチームにとって、ワールドツアーのレースへ参戦が許されるのは、各レース主催者に参加登録の申請書を送り、認められたチームのみだ。

 グランツールへ出場するにも、ワイルドカードが必要。つまり、主催者から招待されない限り、グランツールやUCIワールドシリーズに位置づけられたレースには参加できない。審査で重要とされる点は、経済力、チーム体制、モラール面(ドーピングへの取り組み)などだ。

 グランツールはチームやスポンサーにとって知名度を上げる絶好の機会であり、出場の可否は非常に重要だ。選ばれると天国、落選すると地獄が待っている。

 事実、2012年にジロ・デ・イタリアへの参加が叶わなかった名門チーム、アクア・エ・サポーネは、そのシーズン一杯で解体に追い込まれた。歴史ある地元チームだったため、主催者のイタリア・RCSスポルトが大きな批判にさらされた。

 新城幸也所属のヨーロッパカーは、プロコンチネンタルチームながら毎年、ツール・ド・フランスに参加している。これは選手やスタッフの大変な努力と、レースでの好成績による成果なのだ。

イエローフルオ不掲載騒動

 11月28日、RCSスポルトがジロの公式サイトで、2014年開催への出場を申し込んだプロコンチネンタルチームの名前を公表した。3チームのワイルドカード枠に対し、8チームが出場権を争っている構図だ。

ヴィーニファンティーニ・セッレイタリアには2013年シーズン、日本の佐野淳哉も所属したヴィーニファンティーニ・セッレイタリアには2013年シーズン、日本の佐野淳哉も所属した

 その中に、イタリアで知名度の高いルーカ・シント監督が率いるイエローフルオ(ヴィーニファンティーニ・セッレイタリアの解体から生まれた新しいチーム)の名前が掲載されていなかったことで、ロードレース界やイタリアのメディア、そしてファンの間でちょっとした騒ぎに発展した。

 これを受けてRCS広報担当のマッティア・カヴァッツゥーティ氏は弁明に追われた。

 「イエローフルオからまだ申請書が届いていない。公式サイトで公表したのは、すでに申請書が届いたチームのみ。12月18日の締切までは、他のプロコンチネンタルチームも申請する権利がある。すべての申請チームの中から3つのチームが決まる」という。

騒動の発端はアンケート

RCSスポルトがTwitterに投稿した画像RCSスポルトがTwitterに投稿した画像

 騒動の発端となったのは、RCSスポルトが申請の締め切りを待たず、ジロの公式Twitterに掲載したアンケートだった。

 「quali di queste squadre vi piacerebbe vedere al Giro d’Italia 2014?(2014年のジロ、この中でどんなチームが参加してほしいですか?)」

https://twitter.com/giroditalia
http://twitpic.com/dmstys

 まるでワイルドカード争いが、この8つのチームのみで行なわれるように誤解されてしまった。

2013年11月29日現在、ワイルドカードを争っているプロコンチネンタルチーム
バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス
カハルーラル・RGA
チームコロンビア
IAMサイクリング
MTNキュベカ
ネットアップ・エンデューラ
ノヴォノルディスク
ユナイテッドヘルスケア

イエローフルオはどんなチーム?

チームキャンプで選手とともに走るルーカ・シントチームキャンプで選手とともに走るルーカ・シント

 ところで、渦中のイエローフルオはどんなチームなのか。

 まずは監督であるルーカ・シントについて語らねばなるまい。1968年にトスカーナ州で生まれたシントは、1994年プロデビュー。主にアシストとして活躍し、その献身的な走りが絶賛された。所属チームではミケーレ・バルトリ、イタリア代表として4回連続出場した世界選手権ではマリオ・チポッリーニのアシストを務めた。自身も1997年にツール・ド・ランカウイの総合優勝を経験している。

 2002年、チポッリーニの世界チャンピオン獲得をアシストした後、引退してコーチに転身。トスカーナ男子らしい熱い性格の持ち主で、落ちこぼれたチャンピオンを再生させる手腕で知られる。フィリッポ・ポッツァート(ランプレ・メリダ)、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(モビスター)らは彼の手によって蘇った。

 狙った獲物を離さないことから付いたあだ名は「il pitone(ニシキヘビ)」。過剰な発言は時に物議を醸すが、歯に衣着せぬ言動は、ファンから愛される理由にもなっている。

イエローフルオに対する厳しい目

ジロ期間中に陽性が明らかになりレースを追われたディルーカ(左)と、ジロ期間中のサンプルがドーピング陽性となったサンタンブロージオ(右)ジロ期間中に陽性が明らかになりレースを追われたディルーカ(左)と、ジロ期間中のサンプルがドーピング陽性となったサンタンブロージオ(右)

 シント率いるチームは、イタリア国内での人気がとても高かったが、ヴィーニファンティーニ・セッレイタリアとして臨んだ今シーズン、主力選手であるダニーロ・ディルーカ、マウロ・サンタンブロージオから、ドーピング検査で相次いでEPOが検出された。チームが誕生して以来、初めてのケースだ。

 チームは両選手の解雇という厳しい措置をとったが、それでもチーム全体が汚名を浴びて、レースを自粛することになった。シーズン後にチームは解体。メーンスポンサーだったヴィーニファンティーニは契約を更新せず、育成チームを連れてNIPPO・デローザと組むことになった。

 新しく生まれ変わったチームは、すでにプロコンチネンタルチームとしてUCI登録されているが、体制や選手についてまだ不明なところが多い。「イエローフルオ(蛍光黄色)」というチーム名も、2013年シーズンのチームウエアの色にちなんだ仮の名前だ。チーム名はスポンサーが決まり次第変更されるというが、現時点で未定の上、チームを支える選手とスタッフの名前も公表されていない。

 ルーカ・シントは確かに信頼されている名監督だ。しかし、ドーピングスキャンダルがあっただけに、社会の厳しい目が注がれている。来シーズンのチーム運営が注目される。

 ジロ・デ・イタリア2014への出場チームは、来年1月8日に発表される。

(文 マルコ・ファヴァロ / 写真 砂田弓弦)

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