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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<40>カンチェッラーラ中心の布陣、シュレク兄弟の復活はあるか? トレック新チーム 2014シーズン展望

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 12月に入り、ヨーロッパのプロチームは、新メンバーを加えてのチームビルディングキャンプが本格化しつつあります。このコーナーでは、これから数回に渡って、UCIプロチームの2014年シーズンを展望してみたいと思っています。今回は、新たに生まれ変わった「トレック ファクトリーレーシング」にスポットを当てます。

クラシックをさらに強化 別府はジロも目標に

 「レイディオシャック・レオパード」の名で活動したチームは、バイクメーカーのトレック社がメインスポンサーに。マウンテンバイク、シクロクロスに続き、ロードレースでも自社のワークス・チームを抱えることになる。

 新体制でのチーム運営は、6月下旬には決定し、時をほぼ同じくしてファビアン・カンチェッラーラ(スイス)が3年契約を結んだ。監督のルカ・グエルチレーナ氏が「カンチェッラーラ中心のチーム」と公言するように、名実ともにチームの顔となる。もちろん、トレック社もカンチェッラーラはじめ選手の意見を最大限反映し、研究・開発に生かす構えだ。

“北のクラシック”では3つのレースで連覇がかかるカンチェッラーラ(E3 ハーレルベーケ2013)“北のクラシック”では3つのレースで連覇がかかるカンチェッラーラ(E3 ハーレルベーケ2013)

 そのカンチェッラーラは来シーズン、複数の目標を設定している。3レース(E3プライス・フラーンデレン、ツール・デ・フランドル、パリ~ルーベ)で連覇がかかる“北のクラシック”が最初の山場だ。グランツールは、2つ出場を予定。その1つはツール・ド・フランスになるだろう。

 前々回にお届けした、アワーレコードへの挑戦にも注目が集まる。トレーニングを進めており、実施は現実味を帯びている。北のクラシック後か、グランツール1つ目の参戦を終えてからの時期に照準を定めている。そして、秋には世界選手権へと向かうことだろう。

フランクとのコンビで、アンディの復活はあるか(ツール・ド・フランス2013)フランクとのコンビで、アンディの復活はあるか(ツール・ド・フランス2013)

 復活を狙うのは、フランクとアンディのシュレク兄弟。グエルチレーナ監督は、グランツールにおけるエースとしての彼らに信頼を寄せる。兄のフランクは薬物使用による出場停止が7月に明けたものの、今年中のレース復帰は果たせなかった。それでも、トレーニングは充実していたといい、「あとはレース感覚を取り戻すだけ」と自信を見せる。弟のアンディは、ツール総合20位という結果から飛躍できるか?

 フランクの復帰戦は、ツアー・ダウンアンダー(1月21~26日)。アンディはツアー・オブ・オマーン(2月18~22日)でスタート。その後は兄弟揃って同じプログラムを経て、ツールへと向かう予定だ。

 チームは、今年までオーナーを務めるフラビオ・ベッカ氏体制からのイメージチェンジに余念がない。所属選手を半数近く入れ替え、12選手が新メンバーとして加わり、トレック社の目指すグローバル化を実現した。そのうちの1人が別府史之だ。

別府はディスカバリーチャンネル時代からの“トレックファミリー”だ(世界選手権ロードレース2007 男子エリート個人TT)別府はディスカバリーチャンネル時代からの“トレックファミリー”だ(世界選手権ロードレース2007 男子エリート個人TT)

 別府は2005年のプロデビュー以降、トレック社がサポートするチームに長く在籍して同社のバイクに親しんできただけあり、新チームプロジェクトにいち早く名を連ねた。社を挙げて「フミ(別府の愛称)は“トレックファミリー”の一員だ」と言わしめるほど、その実力と人間性への評価が高い。別府の存在は、カンチェッラーラを支えるクラシックアシスト強化の1つ。本人はジロ・デ・イタリアへの出場も熱望しており、大車輪の働きに期待がかかる。

 その他の新戦力では、チームNIPPO・デローザのエースとしてアジアのレースを席巻した、ジュリアン・アレドンド(コロンビア)が、いよいよトップシーンへのデビューを果たす。UCIヨーロッパツアーで圧倒的な強さを見せ、ランキング1位となったリカルド・ゾイドル(オーストリア)、今年のツールで才能の片鱗を見せたボーイとダニーのファンポッペル兄弟(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)らにも注目だ。

 9月に43歳となるイェンス・フォイクト(ドイツ)や、4月に37歳となるアイマル・スベルディア(スペイン)らも健在。ベテランと若手とのバランスが良くなり、チームとしての可能性が広がったと言えそうだ。

ユトレヒトで始まる“2015年”ツール グランデパールの詳細を発表

 本コーナー第37回でお届けした、2015年ツール・ド・フランス開幕地の話題。通算6回目のオランダスタートは、同国中部の街・ユトレヒトが舞台だ。

 11月28日にユトレヒト市内で行われた発表会には、大会ディレクターのクリスティアン・プリュドム氏のほか、1968年のツール総合優勝者であるヤン・ヤンセン氏がイベント大使としてスピーチ。大会の主役候補である同国期待のライダーとして、バウケ・モレマ、ウィルコ・ケルデルマン(ともにオランダ、ベルキン プロサイクリング)、トム・ドゥムラン(オランダ、チーム アルゴス・シマノ)も壇上に立った。

ツール・ド・フランス2015 第1ステージ コースマップ©A.S.O.ツール・ド・フランス2015 第1ステージ コースマップ©A.S.O.

 同時に、ユトレヒトで行われる2つのステージの詳細が明らかにとなった。

 第1ステージは、13.7kmの個人タイムトライアル。ヤールビュース国際見本市会場前をスタートし、ユトレヒトの経済の中心地・ユトレヒトサイエンスパークを通過。後半は中央博物館や鉄道博物館など観光地を巡り、ユトレヒト中央駅前でゴールする。全体的にコーナーが多く、テクニックが必要とされるコースとなりそうだ。

 第2ステージもヤールビュース国際見本市会場前をスタート。中心部を抜け、オランダ最古の自転車専用道路とも言われる「マリエバーン」を通過。自然豊かなルートを巡った後は、南へと進路をとることに。

 第2ステージ後半からのルートは、現時点では明らかになっていない。

ユトレヒト市のツール・ド・フランス2015ウェブサイトよりユトレヒト市のツール・ド・フランス2015ウェブサイトより

 ユトレヒト市は、早くからツール2015開催を盛り上げようと、独自のウェブサイトをオープン。若くて活気あふれる街らしく、サイトデザインはポップな仕上がりだ。また、日本では“ミッフィー”として親しまれているキャラクター「ナインチェ・プラウス」の生みの親、ディック・ブルーナ氏の生まれ故郷でもある。イベントロゴやウェブサイト内のどこかにミッフィーが隠れている粋な仕掛けも必見だ。

 2015年のツール・ド・フランスは、7月4日に開幕する。

今週の爆走ライダー-マッテーオ・トレンティン(イタリア、オメガファルマ・クイックステップ)

「爆走ライダー」とは…
 1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 今年のツール第14ステージで、逃げ集団でのスプリントを制した。プロ初勝利は、グランツールでゲット。アシストの役割を解かれた、わずかなチャンスをモノにした瞬間だった。

逃げ集団で有力選手たちをねじ伏せ、プロ初勝利を挙げたトレンティン(ツール・ド・フランス2013)逃げ集団で有力選手たちをねじ伏せ、プロ初勝利を挙げたトレンティン(ツール・ド・フランス2013)

 2011年8月に現チームと正式契約。直後のエネコ・ツアーで早くもUCIワールドツアーデビューすると、スプリントステージを中心に、コンスタントに上位でフィニッシュ。2012年のミラノ~サンレモでは、ゴール直前での落車でフイにはなったが、優勝争いにも加わった。

 チームのエーススプリンターであるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)の信頼をいち早く勝ち取った選手でもある。今シーズン序盤はレース出場を控え、ジロ・デ・イタリア、ツールと連続でグランツール参戦。持ち前のスピードを活かし、カヴェンディッシュをスプリントポジションへと引き上げる役割を担った。

 この冬はシクロクロスに参戦し、フィジカル、バイクテクニック両面での向上を図る。順位は気にせず、レース内容を重視する。フィリッポ・ポッツァート(ランプレ・メリダ)、ファビオ・アール(アスタナ プロチーム)ら、シクロクロス経験のある同国のライダーにも刺激を受けているという。

今年10月のジャパンカップ・クリテリウムで3位に入ったトレンティン(右)。さらなる飛躍を目指して、冬も強化に励む今年10月のジャパンカップ・クリテリウムで3位に入ったトレンティン(右)。さらなる飛躍を目指して、冬も強化に励む

 今年はジャパンカップで来日。レースはもとより、ファンとの交流も楽しんだ。クリテリウムでは3位入賞。「ジャパンカップで活躍したライダーは、その後飛躍する」ジンクスは、トレンティンにも当てはまるだろうか。

 この冬の積極的な姿勢と、ジャパンカップのジンクス。これらにあやかった彼は、2014年シーズン、とんでもない大仕事をやってのけるかもしれない。24歳の走りは、大いなる希望に満ちあふれている。

文 福光俊介

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)
自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて数十年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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