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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<38>ロードレースに別れを告げる、プロトンの功労者たち

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 冬の到来を実感するような寒さがやってきましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。ロードレースの情報に乏しい時期でもありますが、その点はこのコーナーにおまかせください! ということで、引退選手シリーズ第3弾は、功労者としてプロトンでの存在感を発揮した選手たちにスポットを当ててみたいと思います。

各ジャンルで礎を築いた男たちが引退へ

 長年、ガーミン・シャープのキャプテンとしてチームを引っ張ったクリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ)。

ツール総合4位に入る実力をもつヴァンデヴェルデ。安定した力でアシストとしてもチームを支えた(ツール・ド・フランス2012)ツール総合4位に入る実力をもつヴァンデヴェルデ。安定した力でアシストとしてもチームを支えた(ツール・ド・フランス2012)

 16年のキャリアで、グランツール出場は22回を数える。最高位は、2008年ツール・ド・フランスの総合4位。翌年のツールでも、当時チームメートだったブラッドリー・ウィギンス(イギリス)のアシストに回りながら自らも総合8位と好走。山岳、タイムトライアルともに安定した走りが持ち味だった。何より、チームとしてグランツール初出場だった、2008年ジロ・デ・イタリア第1ステージのチームタイムトライアルで勝利に大きく貢献。マリアローザに袖を通した偉業は、チームの躍進のきっかけとなった。

アフリカの選手として、ツール初のステージ優勝を挙げたハンター(ツール・ド・フランス2007)アフリカの選手として、ツール初のステージ優勝を挙げたハンター(ツール・ド・フランス2007)

 同じくガーミン・シャープでキャリアを終えるロバート・ハンター(南アフリカ)は、アフリカのロードレース界に数多くの「初」をもたらした選手だ。

 まず、2002年にアフリカ人ライダーとして初のツール完走。そして、彼のキャリアにおけるハイライトとも言える、2007年ツール第11ステージの勝利は、アフリカが生んだ初のツールステージ優勝になった。近年はエーススプリンターを支える発射台の役割を積極的に担っていた。ロードレース熱が高まっているアフリカ大陸のパイオニアとして、彼を手本としている選手は多い。

中盤からマイヨアポアを守り続け、山岳賞を獲得したシャルトー(ツール・ド・フランス2010)中盤からマイヨアポアを守り続け、山岳賞を獲得したシャルトー(ツール・ド・フランス2010)

 今年夏の時点で引退を宣言し、それをシーズン終盤のモチベーションとしていたのはアントニー・シャルトー(フランス、チーム ヨーロッパカー)。

 チームは、ボンジュール、ブイグテレコム、Bボックス・ブイグテレコム、そして現在のチーム ヨーロッパカーと、スポンサーが変わってもフランス国内での人気は常にトップクラス。ツールでは大きな期待がかけられる。

 そうしたなか、2010年に古巣へ復帰するやいなや、ツールで山岳賞を獲得。その走りにフランス中が熱狂したことは言うまでもない。後半ステージでは、新城幸也を筆頭に、チーム一丸となってシャルトーのマイヨアポア(山岳賞ジャージ)を守るべく大集団を牽引する姿が幾度となく見られた。以降、翌年のトマ・ヴォクレール(フランス)の総合4位、ピエール・ローラン(フランス)のラルプデュエズ制覇、2012年ツールでのヴォクレールの山岳賞と、ビッグチームと対等に渡り合えるだけのチーム力を証明している。その勢いを生んだのは、シャルトーの2010年ツールでの走りが一因だったことは確かだろう。

総合力の高さで2度のツール総合2位を記録したクレーデン(ツール・ド・フランス2006)総合力の高さで2度のツール総合2位を記録したクレーデン(ツール・ド・フランス2006)

 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レイディオシャック・レオパード)は、移籍先が見つからずキャリアの終了を決断。

 何といっても、ツール総合2位2回(2004、2006年)が光る。1週間程度のステージレースにもめっぽう強く、近年では2011年のブエルタ・アル・パイス・バスコ(バスク一周)で総合優勝を果たしている。

 クレーデンは、キャリアを通じてビッグネームとともに歩んでいることが多く、Tモバイルチーム時代はヤン・ウルリッヒ(ドイツ)やアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)、アスタナ時代はアルベルト・コンタドール(スペイン)、現チームではアンディ・シュレク(ルクセンブルク)ら。常にステージレース総合優勝を狙えるだけの強さを持ちながら、アシストに回ることもしばしば。自身もそうしたキャリアの積み方を望んでいたのかもしれない。

カンチェッラーラ アワーレコードに挑戦へ

 11月も半ばに入り、トップライダーたちは来シーズンに向けてウインタートレーニングを本格化する時期に。そんななか、ファビアン・カンチェッラーラ(スイス、レイディオシャック・レオパード)は、来シーズン中にアワーレコードに挑戦する意向を示している。

トラックといえばパリ~ルーベのベロドロームが印象強いカンチェッラーラ(パリ~ルーベ2010)トラックといえばパリ~ルーベのベロドロームが印象強いカンチェッラーラ(パリ~ルーベ2010)

 アワーレコードとは、1時間でどれだけの距離を走ることができるか、トラックでの単独走行でチャレンジする種目。オリンピック、世界選手権などの種目としての採用はないが、ロードレースの名ライダーたちがチャレンジしてきた歴史がある。

 1990年代には、空力効果を活かしたライディングフォームや機材が導入され、驚異的な記録が次々とマークされたが、2000年にノーマルバイクでの挑戦のみ公式記録に採用されることとなった(それまでの記録は「UCIベスト・ヒューマン・エフォート」として扱われる)。現在の最高記録は、2005年にオンドレイ・ソセンカ(チェコ)がマークした49.700km/h。

 カンチェッラーラのアワーレコード挑戦は、個人TTで無敵の強さを誇っていた2010年にも一度持ち上がり、本人も色気を見せていたが、当時のチーム事情から挑戦を見送った経緯がある。しかし、来シーズン所属するトレック・ファクトリーチームは、名実ともに彼中心の布陣。チーム監督のルカ・グエルチレーナ氏もチャレンジに太鼓判を押す。

今シーズンも勝利を積み重ねたカンチェッラーラ。さらなる偉業達成なるか(ツール・デ・フランドル2013)今シーズンも勝利を積み重ねたカンチェッラーラ。さらなる偉業達成なるか(ツール・デ・フランドル2013)

 このほどトラック練習を開始。記録挑戦は春のクラシック後か、出場を予定している2つのグランツールのうちの1つ目が終わった後と考えているようだ。また、開催地としては、スイス・ベルンの自宅近くにオープンするグレンヘンの競技場を希望しているという。その他の候補地として、マンチェスター(イギリス)、アグアスカリエンテス(メキシコ)、アナディア(ポルトガル)も挙がっている。

 個人TT、クラシックなど多くのタイトルに恵まれている現役最高ライダーの1人だが、来シーズンはさらなる偉業を打ち立てる可能性が高まっている。

今週の爆走ライダー-リッチー・ポート(オーストラリア、スカイ プロサイクリング)

「爆走ライダー」とは…
1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 次々とタレントが輩出され、いまや世界トップの選手層とも言えるオーストラリア。オールラウンダーの先頭に立つのがポートの存在である。

グランツール初出場のポートが鮮烈なデビューを飾った(ジロ・デ・イタリア2010)グランツール初出場のポートが鮮烈なデビューを飾った(ジロ・デ・イタリア2010)

 トライアスロンから転向し、彗星のごとくロードレース界に現れたのが2010年。初出場のジロ・デ・イタリアではマリアローザを3日間着用し、最終的に総合7位。マリアビアンカ(新人賞)を獲得した。以降、グランツールではアルベルト・コンタドール、ブラッドリー・ウィギンスらを支え、強力アシストとしての地位を確立した。

 2013年シーズンは、パリ~ニース総合優勝。ツール直前のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは、チームリーダーのクリストファー・フルーム(イギリス)とともに圧倒的な強さを発揮。総合2位でフィニッシュすると、ツールでも見事な働きを見せた。

フルームを強力にアシストし続けたポート。飛躍の時が迫ってきている(ツール・ド・フランス2013)フルームを強力にアシストし続けたポート。飛躍の時が迫ってきている(ツール・ド・フランス2013)

 機は熟し、いよいよチームのエースの1人として来シーズンを迎えることとなる。目標はジロ。チームはすでにポート中心のシフトを組み始めている。

 世界をその名を広めることとなった快走から3年、これまでに培った経験を強さに変えるときが、もうすぐやってくる。

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)
自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて数十年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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