スペシャルインタビューサイクリストにとって台湾KOMは、山岳家にとってのエベレスト リー・ロジャースさんが描く大会の未来

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「台湾KOM」について語るリー・ロジャースさん「台湾KOM」について語るリー・ロジャースさん

 台湾で標高3275mを目指して走るヒルクライムイベント「台湾KOMチャレンジ2013」が11月9日に行なわれた。4度目の開催となった今年は、海外からより多くの選手やメディアを招待するなど、台湾の魅力を世界のサイクリストに向けて発信する姿勢が感じられた。台湾在住のエリート・サイクリストで、今大会では海外選手・メディアの窓口として運営に携わったリー・ロジャース(Lee Rodgers)さんに話を聞いた。(柄沢亜希)

 

イベントが持つポテンシャル

 ふもとからスタートを切り、頂上でゴールをする形式のヒルクライム大会は、日本でも人気が高い。ヒルクライムがサイクリストを惹きつける理由は世界共通だ。頂上へたどり着くために常に自分自身と闘い続ける極限の挑戦と、乗り越えた時の達成感を、誰もが求めている。台湾KOMの総距離105kmのコースには、勾配率が2ケタ%を超す上りが何度も現れ、ゴール手前10kmの急坂区間には勾配27.3%もの“壁”も待ち構える。

 このように、ヒルクライムの中でもとびきり過酷なコースに多くの選手たちが挑戦する理由を、ロジャースさんは「山岳家にとってのエベレスト」と例えた。「ある参加者は台湾KOMを『鏡のようだ』と言っていましたが、まさにその通り。ハイペース過ぎても遅すぎてもゴールにはたどりつけない。自問自答を繰り返し、ペダルを回し続けなければいけません」

ダイナミックな風景の中を上りつつける ©Taiwan KOM Challenge 2013ダイナミックな風景の中を上りつつける ©Taiwan KOM Challenge 2013
山頂の記念碑の前にワン・インチー選手(右)と並んだロジャースさん(2013年6月)山頂の記念碑の前にワン・インチー選手(右)と並んだロジャースさん(2013年6月)

 大会を主催した台湾観光局やサイクリスト協会は、台湾KOMが“プレミアムイベント”であることを強調する。台湾の誇る美しい景観の太魯閣(たろこ)国立公園を通過するコース設計であることに加え、安全面を考慮して今回であれば400人といった限られた規模での開催となるからだ。

 ロジャースさんはこの点を、「ライダーや大会の質を保つためにも良い」とポジティブにとらえ、質や安全が確保されたのちには「いずれは1000人規模にしたい」と話した。また現在は1日だけのイベントを、「例えば金曜から日曜にかけての開催に拡大し、プロレース、メインとなるヒルクライム、アマチュアライダーイベントといった種類の異なるイベントで盛り上げることもできる」と構想を広げた。

選手・メディア・運営すべての立場から見えた課題

「台湾KOM」前夜に各国メディアを集めた記者会見が行なわれた=台湾・花蓮市「台湾KOM」前夜に各国メディアを集めた記者会見が行なわれた=台湾・花蓮市

 海外からの参加者が昨年の60人から150人に増えた一方で、課題も散見する。筆者が大会を取材する中で経験した例では、情報の統制がとれず、出発前などに選手やメディアが路頭に迷う場面があったこと、また海外メディアを乗せた車内で流れるはずのレースラジオがほとんど展開を中継せず、さらにほぼ中国語のみだったこと、台湾内や開催地域での周知がいまひとつだったこと―などが挙げられる。

 ロジャースさんは、コンチネンタルチームなどに所属してアジアの各レースを転戦してきた経験豊富なレーサーだ。台湾KOMには2011年大会に選手として参戦。メディア人としても多数の自転車関連記事を執筆し、現在はウェブサイト「crankpunk」を運営している。

 今回は初めてオーガナイザーとして携わり、改善すべきポイントも見えてきたという。そのひとつとして、「来年はローカルテレビで中継放送を流したい。メディアカーにテレビを設置すれば、レース展開も把握できる。海外参加者数が最多の日本でも放送できればと思っています」と具体案を示した。

 また男子エリートクラスでの賞金額は1位で10万台湾ドル(約34万円)と少なくない。大会が大きくなるにつれ、ドーピング対策を講じる必要が出てくるだろうと、大会後に運営側でも協議が始まっていた。

キーワードは「女性サイクリスト」

「台湾KOM」女子優勝者の與那嶺恵理選手をゴールで迎えたロジャースさん「台湾KOM」女子優勝者の與那嶺恵理選手をゴールで迎えたロジャースさん

 ロジャースさんはまた、女性サイクリストにも注目する。その理由として、最終的な目標はアジアや台湾での自転車競技の発展だという。「アジアの国々に自転車文化は根付いていても、スポーツとしての自転車やトレーニングとなるとまだ発展途上にある」と指摘した上で、ロジャースさんが実施している若手のコーチングビジネスの需要が高いことで今後の盛り上がりに可能性を感じていると話した。

 「世界中に、プロレース以外に女性をターゲットにした賞金の出る大会はほぼ存在しない。台湾KOMを、女性向け大会をリードするものにしたい。例えば今回、女性の1着の賞金は男性の10分の1でしたが、来年からは同じ額にしてもいい。『ジロ・デ・イタリア』の女性版、『ジロ・ローザ』の優勝者招待も視野に入れています」

◇      ◇

 台湾KOMは、大会の拡大とともに国際化の面でも今後のさらなる発展に期待がかかる。同じアジアの国として、日本が見習える点もあるのではと感じた。

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