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つれづれイタリア~ノ<13>パスタに目がなく、ライスも大好きなイタリア人 レース中の補給食パニーニがおにぎりに変わる日は来る?

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 最近、イタリアの自転車競技前の食事としてライスものが静かに浸透しつつあります。今日はパスタと米(ごはん)について話したいと思います。

パスタとお米、両方大好きなイタリア人

スーパーでパスタを買いあさるイタリア人スーパーでパスタを買いあさるイタリア人

 イタリア人はパスタに目がありません。朝食を除けば、昼・夜はパスタを食べます。日本でもよく知られているスパゲッティのメニュー、アリオ・オリオ・ペペロンチーノは夜食だったりします。

 さらにイタリア人はお米も大好きで、北部を中心に盛んに耕作されています。春にダミアーノ・クネゴの出身地、ヴェローナ近郊やピエモンテ州ヴェルチェッリ地方を訪れれば、まるで日本の米どころ、新潟県の田園地帯にいるような錯覚に陥ります。

 イタリアの米販売大手の「リゾ・スコッティ社」が、1999年に自転車チームのメインスポンサーにもなったこともありました。そのチームではイヴァン・バッソがプロデビューを果たしました。

イタリア人とお米の歴史

 イタリア人とお米の付き合いは、12世紀にアラブ人が南イタリアに持ち込み、少しずつ北部に広がったことから始まりました。当時の食べ方は、主に米粉にしてスープに入れていました。15世紀に入ると、ミラノ近郊まで作られるようになりました。実はレオナルド・ダ・ヴィンチのミラノ移住のひとつの理由は水田に必要な水路を作るためだったそうです。

イタリアのパスタやリゾット。世界選手権シーズンには特別デザインのパスタも売られていたイタリアのパスタやリゾット。世界選手権シーズンには特別デザインのパスタも売られていた

 お米が全国民に浸透したのは、20世紀に入ってから。急な人口増加に対する食糧を確保するため、イタリア政府が大掛かりな干拓工事を行い、ピエモンテ州はイタリアのお米どころになったのです。

 そうは言っても、イタリアではごはん物はそれほど食べられていません。北イタリアはリゾット、南イタリアはアランチーニ(ライスコロッケ)、夏にはライスサラダという食べ方がありますが、多くても月に3~4回程度です。パスタとお米の割合を表すならは、20:1といったところです。

 値段はパスタとほとんど変わりありません。スーパーで売られている一般的なパスタ(500g)は0.60~0.90ユーロ、お米1㎏あたり1.50~2.00ユーロぐらいです。

 平日には、洗う必要がないパスタをたっぷりのお湯で茹でて、トマトソース又は簡単なソースをかけて食べます。リゾットは日曜日の少し贅沢な一品として食べられていていますが、もちろんごはんもアルデンテ(固茹で)!

モリモリ食べる、レースでの朝食

 一般的なイタリア人の朝食は、驚くほど質素です。しかし自転車プロ選手となると話は別です。大きな大会直前までは極限までカロリー摂取を抑える選手たちも、レース前になると私たちが想像できないくらいよく食べます。

ジャムを塗りたくって補給食を作るチームスタッフ(ジロ・デ・イタリア1989)ジャムを塗りたくって補給食を作るチームスタッフ(ジロ・デ・イタリア1989)

 現在はUCIの規定で、注射による栄養剤摂取は禁止されたため、食事から摂取するエネルギー計算はとても重要となります。例えば、長い山岳コースで1日に9000~1万kcalを消費する選手たちにとって、食事はレースの一部だと位置づけられています。

 また食事は選手のコンディションを計る大事なバロメーター。疲労による食欲低下は致命的な結果につながるためです。グランツールの場合、食欲がなくなった選手はだいたい3日後にはリタイヤします。

 実際に、2010年までプロ選手だったアンドレア・トンティのジロ・デ・イタリアでの朝食例を見てみましょう。

ジロ・デ・イタリア2008を走るアンドレア・トンティジロ・デ・イタリア2008を走るアンドレア・トンティ

ステップ1
まずは甘い物でスタート。シリアルと牛乳、パンにヌテッラ、バターとジャム、フェッテ・ビスコッターテ(※)に蜂蜜というように組み合わせます。ヌテッラはイタリア人の誰もが愛しているチョコクリーム。必要なエネルギーを摂るというより、おいしさでメンタル的なサポートを果たしています。

※イタリアではおなじみ、味のついていないサクサク感のあるラスク。高カロリーで消化が早いので朝食を数秒で終わらせたいイタリア人にとっては重要な食べ物

ステップ2
次に、塩気のあるもの。大盛りパスタとパルメザンチーズ、オムレット、ハムなど。パスタの味付けはエクストラバージンオイルのみ。

ステップ3
ぱんぱんになった胃袋を調整するため魔法の飲み物が欠かせない。マーク・カヴェンディッシュも虜になっているエスプレッソコーヒーです。

自転車競技でパスタと米を効率よく使い分ける

 ところで自転車競技においては、パスタと共に、ごはんの摂取も増え続けています。その理由は栄養の面だけでなく、消化時間にあります。例えば、栄養分布だけで見ると、パスタと米に大きな差はありません。

■乾燥パスタ(100g当たり):366kcal
タンパク質: 13g、脂肪分:2.4g、炭水化物: 77.9g

■精米(100g当たり):332kcal
タンパク質: 6.7g、脂肪分:0.4g、炭水化物: 80.4g

【参考】ジャガイモ(100g当たり)
タンパク質: 2.1 g、脂肪分:1g、炭水化物: 17.9g

※INN(Istituto Nazionale della Nutrizione、イタリア国立栄養研究所)調べ

イタリアのスーパーで売られていた“なんちゃって寿司”イタリアのスーパーで売られていた“なんちゃって寿司”

 ところが、消化にかかる時間はごはんのほうがパスタと比べて少し遅くなります。長いステージを走る選手にとっては、この差はとても大事です。パスタのエネルギーが終わったら、ごはんのエネルギーを使ってエンジンを回します。とても便利なものです。2011年からリクイガス(現在のキャノンデール プロサイクリング)が採用している摂取方法だそうです。

 近年、日本人の活躍がヨーロッパで増えています。スーパーでも「なんちゃって寿司」が見られるようになりました。いつかレース中の補給食がミニパニーニではなく、ミニおにぎりに変わる日が来るかな? おいしい未来だと思います。

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)
イタリア語講師。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会で、自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」(インビーチ)を担当する。サイクルジャージブランド「カペルミュール」のモデルや、Jスポーツへ「ジロ・デ・イタリア」の情報提供なども行なう。東京都在住。ブログ「チクリスタ・イン・ジャッポーネ

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