じてつう物語<18>自転車通勤や自転車ツアーでパリ市内を駆け回る! パリちゃり倶楽部 松本浩二さん

  • 一覧

 「フランス・パリで自転車通勤しています」…夏の終わり、そんなメールが編集部に舞い込んできた。メールの送り主は、松本浩二さん(51)。31年前に渡仏、フランスのバニュー市に住み、パリにある旅行会社まで毎日自転車通勤をしているという。通勤はもちろん、本業の旅行会社でも自転車を活用する松本さんに、いろいろとお話を伺ってみた。

料理の勉強のために渡仏して31年、今は自転車ツアーを展開

フランス在住の松本浩二さん(51)フランス在住の松本浩二さん(51)

 松本浩二さんの出身地は、大阪府門真市。フランスに渡ったのは31年前、1982年の夏のことだった。

 「日本を出る前は、飲食関係の職業に就いていたんです。日本の大手ビールメーカーが経営する海外レストランの募集を受けて採用され、東京・赤坂のレストランで研修を受けた後、パリ支店に勤務することになりました。その後1987年まで勤務し、以後、別の日本食レストランで勤務した後、今勤務している旅行会社「JISC」(ジスク ボワヤージュ)に移りました。実は今の会社もいちど退職して、リムジンの運転手やハイヤー手配会社の仕事などをしていたのですが、ハイヤー手配会社が倒産したのを機に、現職に戻ったんです」

 実は、現職に戻るきっかけのひとつが、自転車だったのだと言う。

 「日本でもパリでも自転車が注目されているから、近いうちに自転車での観光を始めよう…ということで、JISCに戻りました。そして本来の業務であるガイドやトランスファーリストなどの派遣をこなしながら、日々少しずつ企画を進め、2013年1月、パリに『旅ステーション』という日本語のツアーサポートデスクをオープンさせたのを機に、『パリちゃり倶楽部』という自転車でパリを楽しむツアーを開始させました」

ヴァンサンヌ城と松本さんヴァンサンヌ城と松本さん

 松本さんが担当する「パリちゃり倶楽部」では、パリ市内を自転車で観光したり、スポーツバイクでモン・サン=ミッシェル、ロワールなどへロングライドツアーに出かけたりといったメニューを展開。松本さん自身も、自転車で伴走を行っている。

 パリ発・日帰りのメニューは、例えばパリ〜バルビゾン経由〜フォンテンヌブロー城の片道約80km(帰りは列車)や、パリからレンヌまで始発のTGVにて移動し、レンヌからモンサンミッシェルまで約80km(帰りはバス)など。また、オリジナルツアーのアレンジにも対応するという。

ロングライドツアーで訪れたモン・サン=ミッシェルロングライドツアーで訪れたモン・サン=ミッシェル

禁煙したら体重増加、ウォーキングを経て自転車通勤に

 松本さんが自転車通勤を始めたのは、6年前のこと。もちろん子供の頃から自転車に乗っていて、大人になってからもちょくちょく自転車には乗っていたが、本格的に毎日自転車通勤をするようになったのは、あるきっかけがあった。

 「アーティストとして絵を描いていたことがあるのですが、描いているときは赤箱のマルボロが手放せないくらいの、ヘビースモーカーだったんです。2000年に最初の子供が生まれたのをきっかけに、煙草はやめました。ところが今度は、口が寂しくなるせいか、体重が10kgも増えてしまいました。健康優良児のごとくプクプク体が大きくなりました。確か43歳くらいの頃、メタボという言葉を聞き、血液検査をしたのですが、その結果があまり良くなくて。お医者さんにも、“このまま50歳までこの状態を続けるとちょっとやばいんじゃない?”と宣告されてしまいました」

 そのとき、職場の先輩が松本さんに勧めたのはウォーキング。松本さん自体も、このウォーキングには結構ハマった。

 「先輩から“1日30分歩けば体にいいんだよ”という助言を貰い、それから毎日、最低でも30分は歩くことを半年続けました。多いときは1時間も2時間も歩いたときもありました。ただ、靴のかかとは減りましたが、体重はあまり減りませんでした。また、仕事が終わってからウォーキングをして、そして家に帰っていたので、帰宅時間が遅くなる。家には小さい子供が2人いたので、妻は早く帰ってきてほしかったみたいです」

 そんなとき、松本さんの妻から出たひと言は「また自転車に乗ったら?」。

 「妻にそんなことを言われる数日前に、今考えると運命だったのかもしれませんが、たまたまスポーツ店に行く機会があって、何年ぶりかに自転車をじっくり見ましたら、これまた感動してしまって。マウンテンバイクにしろロードバイクにしろ、すばらしいのひと言でした。そんな自転車を見た数日後に“また乗ったら?”なんて言われたのですから、即その週末にそのスポーツ店に出向き、人生で初めてのマウンテンバイクを購入しました」

通勤に使用しているフルサスペンションのMTB。石畳を楽に走ることができる。休みの日には郊外の森を走ることも通勤に使用しているフルサスペンションのMTB。石畳を楽に走ることができる。休みの日には郊外の森を走ることも

 数年ぶりにまじまじとスポーツサイクルを見て、その内容に圧倒されていた松本さん。購入後は毎日自転車通勤をするようになった。

 「購入した後は、片道11kmの通勤を、雪の日以外は毎日続けています。マウンテンバイク購入後の最初の6ヶ月で、なんと10Kg痩せるのに成功しました。ウォーキングでは、まったく痩せなかったのに。また血液検査をしたところ、コレステロールの問題もほぼクリアできました」

ヴェリブをきっかけに街に自転車が増えた

 自転車通勤をする前は、電車で通っていた松本さん。バニューはパリ郊外の街で、口外鉄道「RER」とメトロを乗り継いで、45分ほどかけていた。「自転車だと片道35分ほどですね。フランスの鉄道はストが多いので、電車通勤の頃はときどき大変な思いをしていましたよ」と松本さんは話す。

 自転車通勤をするようになって、周囲や日本の友人からよく言われるのが「あんなパリの交通状態の中を走って怖くないの?」ということだという。

 「最初の頃は、もちろん怖いと思うこともありましたが、パリのドライバーは意外と優しい方が多いように思います。私は普段から、手信号で自分の行動を周りの人に分かるように心がけています。手信号を出す前に、必ず後方を確認します。あるとき、後方確認のために顔を後ろに振ったら、ほとんどのドライバーが減速していることに気づきました。パリのドライバーは、ちゃんと自転車の動きを意識しているんです。これ以来、パリでの走行は怖くなくなりました」

ロングライドツアーの伴走にはロードバイクを使用ロングライドツアーの伴走にはロードバイクを使用

 パリで働くようになって31年の松本さんだが、パリで自転車通勤をしている人は、もともと多かったのだろうか。

 「6年前に本格的に自転車通勤を始める前にも、自転車で職場まで行ったことはありますが、以前はさほど自転車通勤をしている人は見かけなかったように思います。ひとつのきっかけは、2007年からスタートした公共の貸し自転車“ヴェリブ”ですね。ヴェリブができて以来、自転車通勤の方が増えました。また、これもヴェリブのおかげなんでしょうか、市内に自転車道が増えたので走りやすくもなっています。ヴェリブはもちちろん、自分の自転車で通勤している人も増えた印象があります。自転車天国とまではいかないかもしれませんが、それに近い物が今のパリにはありますよ」

通勤のみならずMTBでのツーリングに熱中

 ヴェリブをきっかけに、自転車への配慮がより進んでいるパリ市内だが、自転車競技の本場であるフランスだけに、スポーツとして自転車を楽しむ環境はとても充実している。

 「自転車通勤でマウンテンバイクを利用する主な理由は、いたる所にある石畳の道を走るのに都合が良いからなのですが、毎日乗ることによって、スポーツバイクの楽しさにすっかりハマッてしまいました。通勤でさえ、ちょっとでも長く乗っていたいので遠回りして帰ったりしていたのですが、それでももの足りず、マウンテンバイクでツーリングをしているクラブを探してみたんです。そうしたら、さすがスポーツバイクの大国。そういうクラブがたくさんあるんです。しかも、どこのクラブも初心者歓迎。私も大喜びでクラブに参加して、ツーリングを楽しむようになりました。今でも、パリ近郊の森で行われるツーリングにときどきでかけます。将来は、オンフルールからモンサンミッシェルまでの365kmを4日間で走るツアーにも参加したいと思っています」

パリ市内を走る松本さんパリ市内を走る松本さん

 自転車通勤や森の中のツーリングで、自転車の楽しさや、パリとその近郊の自転車を取り巻く環境を体感することになった、松本さん。そういったご自身の体験と、旅行会社での業務がぴったり一致しているのは、なんとも幸せなことだ。そんな松本さんがコーディネートする「パリちゃり倶楽部」、興味を持った方は、Webサイトをのぞいてみるといいだろう。

勤務先:ジスク ボワヤージュ
通勤ルート:バニュー市〜パリ 往復22km
使用している自転車:フルサスペンションのMTB
心がけてること:後方確認と手信号

旅ステーション
http://www.tabi-station.fr/tabi/

パリちゃり倶楽部
http://www.parischariclub.fr/

松本さんのブログ
http://parischariclub.blog10.fc2.com/

文・須貝弦 写真・パリちゃり倶楽部

じてつう人募集中!!
あなたの自転車通勤ライフを当サイトで紹介してみませんか?
目安として片道5km以上を通勤されている方。
詳しくはまで。

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

じてつう物語

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載