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栗村修の“輪”生相談<8>30代男性「スネ毛って剃らなくちゃダメなんでしょうか?」

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スネ毛って剃らなくちゃダメなんでしょうか? また、剃るとしたらどこまで剃るのが正しいのか、腕の毛も剃るのか、なども教えてください。
(30代男性)

 スポーツバイクを始めた人が衝撃を受ける事実はいくつかあると思うのですが、これなんか最たるものですよね。ノーパンでレーパンを穿くことと並んで、シモを代表する試練です。

 といっても、別にルール化されているわけではありません。そんな競技規則は見たことないですし、かつて、断固として脚の毛を剃ることを拒んだ日本人選手が、僕の知る限り2人いました。信念でもって剃らなかったようなのですが、ツアー・オブ・ジャパンで、もじゃもじゃの脚を見たイタリア人選手が大騒ぎしていたのを覚えています。サイクリスト、特にプロのレーサーにとって、脚の毛を剃ることは世界的な常識なのです。日本の女性が腋毛を処理するようなものです。

毛が剃られ、美しく引き締まったサイクリストの脚。さて、誰の脚でしょう?毛が剃られ、美しく引き締まったサイクリストの脚。さて、誰の脚でしょう?

 さて、なぜ毛を剃るか。これについて質問されることも多いのですが、正直なところ、僕の中で明確な答えは出せていないのです。

 それらしい答えはいくつかあります。(1)落車でケガをした場合、毛があると雑菌が入りやすい、治療がしにくい、など (2)マッサージをする際に邪魔になる (3)空気抵抗の削減 (4)見てくれ。どれももっともらしいのですが、突っ込みどころがあります。

 (1)(2)、特に(1)は教科書的な答えでもあるのですが、いずれも明らかに変です。というのは、選手は基本的に腕の毛を剃っていないからです。腕は、脚以上に落車でケガをしやすい場所です。ケガ対策ならば、腕の毛も剃らないといけないはずですが、剃らない。(2)についても同じで、マッサージは全身に施しますから、腕や胸の毛も剃らないといけないはずなのに、ヨーロッパの選手なんてモジャモジャです。(1)(2)にはどうも無理矢理感があります。(3)も不自然です。本当に効果があるんでしょうか。ヒゲ面のTTスペシャリストがいるくらいですからね。(4)もどうなんでしょう。腕はいいんでしょうか。

 このように、明らかに矛盾がありながらも、ケガ対策、マッサージのため、という答えが模範解答として広く言われてきました。僕もよく質問されましたが、何か心にひっかかるものを感じつつ、上記の答えを繰り返してきたものです。つまり、選手であった僕自身もはっきりとした理由は知らなかったのです。

 ところが、僕が引退し、日本でのんきに解説者などをやっている間、毛をめぐる世界事情は急変していたのです。

 オランダ系チームであるスキル・シマノのスポーツディレクターを務めていたときのことです。あるオランダ人選手の着替えを偶然目撃してしまいました。言い忘れましたが、僕たちの世代の選手は、レーパンから出ている領域のみ、毛を剃っていました。それが常識でした。

 ところが、その選手は下半身の毛を「全部」剃っていたんです。小学生状態です。○イパンです。ここまで来ると、ケガ対策、マッサージ云々という従来の答えは、完全に崩壊したと言わざるを得ません。

 (1)ケガ対策。どれだけ器用に転ぶつもりなのかと。(2)マッサージ。ちょっとまずいですよ、それは…。(3)空気抵抗。レーパンくらい穿きましょう。(4)美観。…。

脚の毛は綺麗に剃っているバルベルデ。拡大してみると…脚の毛は綺麗に剃っているバルベルデ。拡大してみると…

 ところが、その彼をよく見ると、腕や胸、脇の毛は残ってるんです。もはや訳がわからなくなってきました。正直に言います。僕にもよくわかりません。謎は深まる一方です。もしはっきりとした答えをお持ちの方がいらしたら、お手数ですが輪生相談(ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jp)宛にご連絡ください。待っています。

 世界陸上などを見ていると、女子選手でも、脇がモサモサだったり、ツルツルだったりとかなりの個人差があります。これは推測ですが、グローバル化に伴い、毛をめぐる文化が全世界的に混迷期に入ったのではないでしょうか。オランダという国はヨーロッパでも先進的、お洒落なイメージの国ですから、その国の若者は毛をめぐる世界の動向を敏感に感じ取っていたのかもしれません。
 
なお、僕も解説者として現役選手の気持ちを忘れないために、たまーにですが「オランダ式」を試みたりしています。まあ、夏場、若干快適なのは確かです。最近、あの毛は不要なんじゃないかと思いはじめました。

(編集 佐藤喬/写真 砂田弓弦)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)
プロ・ロードレースチーム「宇都宮ブリッツェン」監督。レース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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