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グレッグ・レモンが走った!「ありがとう!」被災地に響く声援 産経新聞記者が体験した「ツール・ド・三陸」

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 東日本大震災の被災地の岩手県陸前高田市や大船渡市を自転車で巡るイベント「ツール・ド・三陸」が10月6日に開催された。イベントは陸前高田市の商工会などでつくる実行委員会が主催。被災地の現状を見てもらい、復興支援につなげるのが目的で、昨年に続いて2回目となる。全国から集まった自転車愛好家ら800人が沿岸部を駆け抜けた同イベントに、記者も参加してみた。(産経新聞東北総局・釜石駐在 高木克聡)

ツール・ド・フランスの個人総合優勝経験者、グレッグ・レモンさん(中央)が、特別名誉ライダーとして先頭でスタートを切ったツール・ド・フランスの個人総合優勝経験者、グレッグ・レモンさん(中央)が、特別名誉ライダーとして先頭でスタートを切った

色濃く残る震災の爪痕

陸前高田市と大船渡市を舞台にした「ツール・ド・三陸」に800人のサイクリストが集まった陸前高田市と大船渡市を舞台にした「ツール・ド・三陸」に800人のサイクリストが集まった

 スタート・ゴール地点は陸前高田市立第一中学校の仮設グラウンド。大船渡市の景勝地・碁石海岸を経由する約49kmのコースや、約17kmのファミリーコースなど3つのコースが設定されている。

 スタート直後、参加者らの目に飛び込んでくるのが、津波が直撃した陸前高田市の市街地だ。建築規制のかかる同地区は、ほとんどが更地にされ、復興工事の資材や重機の置き場となっている。来春までに処理が完了する見通しとはいえ、いまだに高く積まれた震災がれきや住宅の基礎部分をみると、ここが被災地だということを強く意識させられる。

津波の浸水地域は建築規制が敷かれ、更地が広がる =陸前高田市津波の浸水地域は建築規制が敷かれ、更地が広がる =陸前高田市

 北上市から参加した音石良晴さん(42)は「かつての白砂青松の松原を知っていると、今の景色はもの悲しいものがある」と話した。

 

変わらぬ原風景

 数kmの津波浸水地域を抜けると、コースは内陸部へと向きを変えていく。

内陸部に入るとちょうど収穫期を迎えた稲に黄金色の穂が実る =陸前高田市内陸部に入るとちょうど収穫期を迎えた稲に黄金色の穂が実る =陸前高田市

 陸前高田市の内陸部には田園風景が広がる。収穫期を迎えた田んぼでは、黄金色に実った稲が穂をたれていて、刈り取り作業をする農家の人たちの姿も見える。住宅地や仮設住宅を通り抜け、峠を上ると、遠方に広田湾のカキの養殖筏(いかだ)を見下ろすことができる。

 スタートから約8km。コースは分岐点にさしかかる。全長17kmのファミリーコースはここからゴール地点に引き返し、40kmの健脚コースA、Bは南の広田半島を目指す。50kmの健脚コースSを行く記者は、ここから大船渡市方向へとハンドルを切る。

眼下に広がる三陸の海を楽しみながら走る参加者たち =大船渡市眼下に広がる三陸の海を楽しみながら走る参加者たち =大船渡市
休憩所に指定された、名所「碁石海岸」 =大船渡市休憩所に指定された名所「碁石海岸」

 スタート地点から約10km。大船渡市に入る。休憩所が設けられている碁石海岸まではあと一息だ。

 碁石海岸は、大船渡市末崎半島の東南端約6kmの海岸線で「国の名勝・天然記念物」などに指定されている。波によって磨かれた玉砂利が碁石のように丸みを帯びていることが名前の由来という。

 碁石海岸に立ち寄ったあとは、健脚コースA、Bと合流する。

 

北の鉄人も参戦

 リアス式海岸の特有のアップダウンの激しい、広田半島を走っていると、深紅のジャージーに身を包んだ一団に出くわした。彼らは、昭和53年からラグビー日本選手権7連覇を果たした新日鉄釜石ラグビー部の選手らが結成したNPO法人「スクラム釜石」のメンバーだ。スクラム釜石は国内で開催が決まっている平成31年のラグビーワールドカップ(W杯)の釜石招致を目指している。スポーツを通じて、復興を支援する同士として参加した。

釜石市から応援に駆けつけた北の鉄人「スクラム釜石」のメンバーら =陸前高田市釜石市から応援に駆けつけた北の鉄人「スクラム釜石」のメンバーら =陸前高田市
シティサイクルで坂道を駆け上がるスクラム釜石のメンバーら =陸前高田市シティサイクルで坂道を駆け上がるスクラム釜石のメンバーら =陸前高田市

 シティサイクル(ママチャリ)で登り坂を駆け抜ける健脚ぶりで、「北の鉄人」と呼ばれた強靱な肉体を見せつけた。代表の石山次郎さんは「サイクリングも、ラグビーも1つのことにみんな熱くなって、応援したくなる。イベントに参加して、自分達も元気をもらった」と振り返った。

 

沿道からの力強い声援

沿道からは、参加者に大声援が送られた =陸前高田市沿道からは、参加者に大声援が送られた =陸前高田市

 疲れをみせる体を後押ししてくれるのが、沿道からの温かい応援だ。仮設住宅からも「がんばれ!」と手を振る人々の声が飛ぶ。中には自作のプラカードや応援グッズを作る地元住民も。陸前高田市広田町の民宿志田を営む菅野修一さん(60)はコース沿いに大漁旗20枚を掲げると、参加者らは立ち止まり、それぞれ記念写真を撮っていた。このほかにも、震災の体験談や被害の状況など、被災者の声に耳を傾ける光景があちこちでみられた。

地元の民宿の前では、20枚の大漁旗が参加者を鼓舞した =陸前高田市地元の民宿の前では、20枚の大漁旗が参加者を鼓舞した =陸前高田市
沿線の住民らと交流する姿も数多くみられた =陸前高田市沿線の住民らと交流する姿も数多くみられた =陸前高田市

 特に印象的なのは「ありがとう」という声援が多く聞こえてきたことだ。

 (復興の支援をしてくれて)(被災地に来てくれて)(震災を忘れないでいてくれて)「ありがとう」―。

 この一言に込められたさまざまな思いに、胸をこみ上げるものを感じた。

沿道には、復興支援を感謝する看板などが立っており、参加者らを励ます =陸前高田市沿道には、復興支援を感謝する看板などが立っており、参加者らを励ます =陸前高田市

復興への希望

復興するカキの養殖筏を見下ろし、ラストスパートをかける参加者たち =陸前高田市復興するカキの養殖筏を見下ろし、ラストスパートをかける参加者たち =陸前高田市

 広田半島を1周し、平地に戻ってくると、ゴールはもうすぐだ。海岸線沿いに走るコースからは、津波で破壊された防潮堤や高潮などを防ぐために積まれた土嚢(どのう)などがみえる。しかし一方で、これからまさに収穫が始まるカキの養殖筏も目前に広がる。昨年も参加した千葉県の島田典子さん(49)は「道路も整備されて、がれきも減っている。来る度にちょっとずつ復興が進んでいる」と話した。

「ツール・ド・三陸」を走る産経新聞の高木克聡記者「ツール・ド・三陸」を走る産経新聞の高木克聡記者

 再び、第一中学校に戻り、ゴールを迎えた参加者らは用意された地元の海産物などのご当地グルメに舌鼓を打ち、「来年もぜひ参加したい」と語り合っていた。特別名誉ライダーとして参加したツール・ド・フランスで個人総合優勝の経験者、グレッグ・レモンさん(52)=アメリカ=は「豊かな自然を抜けたあと、津波が直撃したまちなかに戻ってきたときはグッときた。未来に向かって進む被災地の人々に共感した」と来年の参加を誓った。

MSN産経ニュースより) 

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