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栗村修の“輪”生相談<7>20代女性「フロントの変速機をどう使えばいいのか分かりません」

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最近スポーツバイクに乗り始めたのですが、フロントの変速機をどう使えばいいのか分かりません。どういうときに変速するのでしょうか?
(20代女性)

 こういう基本的なことにわかったふりをするのは非常によくないので、変速全般についてお話しします。はじめての人にはすべてがはじめてですからね。

 まず構造ですが、自転車の変速って、ものすごく原始的です。100年の歴史の中で、ギアの数が前2枚、後ろが11枚まで増え、さらには手元変速やモーターによる電動変速機能が登場したりといった進化は確かにあったのですが、チェーンを「脱線」させて、いわば無理やりに大きさの違うギヤに移動する、という基本的な仕組みは変わっていません。自動車やバイクに比べれば、進歩は遅いんじゃないでしょうか。

 ペダルからの駆動力が直接伝わる前のギアは、大きい(ギアの歯数が多い)ほうにチェーンが乗り移れば重く(ペダル一回転あたりの進む距離が長く)、小さい方ならば軽くなります。駆動力を受ける側の後ろのギアは逆で、大きければ軽く、小さければ重くなります。

 前と後ろの違いは、ギアの枚数の違いからわかるように、変速時の落差が異なる点です。2枚しかない前は、落差が大きい。大きいほう(アウター)から小さいほう(インナー)に落とすのは、車に例えれば、一気に5速から1速に落とすようなものです。

 これは、大幅に速度が変わるときに使います。時速35kmで平地を巡航していたら、速度が時速10kmまで落ちる激坂が現れた…というような場面です。しかし、上りに入ったら細かく勾配が変化して、速度が時速9km、15km、12kmとちょこちょこ変わる、といった場面では後ろのギアで対応します。枚数が多いので、細かい変速が可能なんです。大きな速度の変化は前、細かい変化は後ろ。これが基本です。

1995年の世界選手権で、ギアの組み合わせをチェックする、イタリアのクラウディオ・キャプッチ。当時のリア変速は8段しかなく、コースに応じて歯数の組み合わせを細かく変えていた1995年の世界選手権で、ギアの組み合わせをチェックする、イタリアのクラウディオ・キャプッチ。当時のリア変速は8段しかなく、コースに応じて歯数の組み合わせを細かく変えていた

 さて、ここからちょっと突っ込んだお話しです。お伝えしたように、今の最新のロードバイクは2×11=22段変速なのですが、実際にギア比が22速の幅だけあるわけではありません。ここが自動車と違う点です。

 理由は、フロントがインナーのときと、アウターのときとで、ギア比が重なる領域があるためです。ギア比は、前後のギアの歯数の比率で決まりますから、フロント大-リア大とフロント小-リア小では、ギア比が一緒になってしまうんです。この領域の使い分けはちょっとしたポイントで、かつ諸説入り乱れている領域でもあります。

 低速での走行がベースとなっている状況ならフロントはインナー、高速ならアウター、が基本でよいでしょう。その枠の中でリアの11速を使い分けると。しかし、ギア比が一緒でも、歯数によって性質が違うという説があり、トラック競技では、レースの種類によって、同じギア比でも違う歯数を組合せる場合がありました。大-大と小-小などです。

 ひとつは、一定速度でのアベレージ走行では、ギアがチェーンを噛んでいるコマ数が多いほどパワーの伝導効率がよい、という考えによるものです。ですから、速度が一定で距離が長めの競技では大ギア-大ギアという組合せになります。

 もうひとつは、ギアの歯数が小さいほど加速がいい、という説です。チェーンとの摩擦が減るということなんでしょうか。だから、一瞬の加速が重要なスプリント競技では前も後ろも小さいギアだったりしました。

 これをロードバイクに応用できるならば、同じ上りでも、一定速度で淡々と上るならばフロントはアウターでリアを軽く、アタックが頻繁にかかるならば、フロントはインナーでリアを重め、という使い分けができそうですね。でも、変速枚数が多いロードバイクの場合、チェーンラインが斜めになると抵抗が増すと言う説もあり、非常にややこしくなっています。このあたりは、研究(?)の進歩を待つほかないのでしょうか。

(編集 佐藤喬/写真 砂田弓弦)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)
 プロ・ロードレースチーム「宇都宮ブリッツェン」監督。レース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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