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栗村修の“輪”生相談<6>16歳男性「自転車のプロ選手ってどのくらい儲かりますか?」

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 自転車が大好きで、レースにもたくさん出ています。結構速いほうだと思います。将来はプロ選手もと夢見ていますが、ぶっちゃけ食っていけるのかと心配です。自転車のプロ選手ってどのくらい儲かりますか? 自転車業界でメシを食っていくって難しいですか?
(16歳男性)

 この問題は、我々にとっても切実です。でも、いい質問ですね。もはや避けて通れない問題ですから。

 まず、答えから。お金を稼ぎたいのならば、ロードレースの選手を目指すのはやめてください。他のスポーツに転向しましょう。色々な方面から怒られるかもしれませんが、残念ながらこれが現実です。

 どうしても、というならば、ヨーロッパのプロを目指しましょう。たとえば、フランスのトマ・ヴォクレールくらいになれば、チームとの契約金は1億円ほどあるはずです。ただ、別の見方をすれば、ツール・ド・フランスを開催している国の頂点でもこのクラスだということです。多いと思いますか? 僕はそうは思いません。

報道陣に囲まれるヴォクレール。ツールの地元フランスで絶大な人気を誇る選手だ報道陣に囲まれるヴォクレール。ツールの地元フランスで絶大な人気を誇る選手だ

 選手によっては、個人的なスポンサーなどの副収入が期待できます。フィリップ・ジルベールやフェビアン・カンチェッラーラは年10億円以上稼いでいるという話もありますよね。けれど、プロチームですら、最低年俸が300万円ほどだったりします。どういうことかというと、年収300万円のプロ選手がいるということです。

 ロードレースの世界にはビジネス的に成熟したリーグがありませんから、チームや選手を守るしっかりしたルールがないんです。そのせいか、他のスポーツよりも収入が低いのが特徴です。

 新城選手や別府選手ならば、同い年でバリバリ稼いでいるサラリーマンよりも高い年棒を貰っていると思います。でも、翌年や翌々年にどうなっているか、まったくわかりません。サラリーマンなら、基本的に収入は安定し、一般的には少しずつ増えていきますよね。でも、それがない。リスクだけが高い世界です。

 日本国内で活動する限りは、「上限」が、同世代の「平均」年収です。上限がですよ。ケガも多いし、レースは命がけです。お金なんて、という意識がベースにないと、やっていくのは難しいでしょう。もちろん、国内トップ選手の年収が瞬間的に同世代のサラリーマンを上回ることはありますよ。でも、他のスポーツみたいに、引退後は現役時代の貯蓄で食っていく、ということは不可能です。

新城幸也とヴォクレール新城幸也とヴォクレール

 ところが、貧乏は自転車の世界では美とされているんです、なぜか。少ない収入でハングリーにやることが美しいとされる世界です。お金を呼び込めるだけの価値があるスポーツなのに…。ヨーロッパでもそれは同じで、「セレブじゃない感じ」が魅力のスポーツです。最近も、F1ドライバーがプロチームを買う、という話が出たりしました。あれは、果たしてめでたいニュースなんでしょうか。

 僕はイヤですね、そんなの。だから自転車界を変えたいと思っています。ヨーロッパにも似た考えの人たちがいて、たとえば放映権によって稼ごうという発想が出ています。でも、周囲からは叩かれる。ごく一部に小銭を稼ぐ人たちがいて、あとは食うや食わずやの若者が一生懸命自転車に乗っている。これが自転車界の現状です。僕はそんな現状を変えたいと思っています。

(編集 佐藤喬/写真 砂田弓弦)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)
 プロ・ロードレースチーム「宇都宮ブリッツェン」監督。レース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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