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豊岡英子と田中苑子の欧州シクロクロス遠征記<4>ゆっくりとした毎日 ベルギーの練習環境の良さを実感!

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 豊岡英子選手(パナソニックレディース所属、通称“姫”)と私(フォトグラファー田中苑子、通称“チュー”)のシクロクロス遠征。この遠征の前半の山場となる怒濤の年末年始5連戦を終え、この1週間は休養とトレーニングを中心に、比較的ゆっくりと過ごしました。

秋〜春にかけて食べられるムール貝。白ワインベースのスープで蒸されている秋〜春にかけて食べられるムール貝。白ワインベースのスープで蒸されている
和食を料理する豊岡英子。みそ汁と巻き寿司がこの日のメニュー和食を料理する豊岡英子。みそ汁と巻き寿司がこの日のメニュー
こちらで入手できるサーモンとアボガドを使った巻き寿司。和食は人気なのでスーパーで「巻き寿司セット」なども売られているこちらで入手できるサーモンとアボガドを使った巻き寿司。和食は人気なのでスーパーで「巻き寿司セット」なども売られている

 ベルギーに来て2週間ちょっと。ようやく少しのんびりする時間ができました。1月1日のレースを終えると、次のUCIレースは14日のオーテヘム(C2)となり、約2週間レースがありません。激動の年末年始が嘘だったかのように、レース→洗濯→レースのスパイラルからも解放され、豊岡選手は、疲れた身体をリセットするために、まずはマッサージや完全休養に時間を充てました。

 1月3日は、完全休養日だったので、ブリュッセル観光に行きました。じつは友人が年末から会社の冬休みを使って、遠征の手伝いにきてくれていました。彼女の帰国日に合わせて、空港に行く前に、ブリュッセル市内に立ち寄った形です。ベルギーを拠点にして4年目。豊岡選手は初めてブリュッセルの中心部に行ったそう。これまでの遠征では、観光する時間なんてなかったんです。彼女の飛行機の時間が迫るなか、世界一美しいと言われるグランプラスやベルギー名物のムール貝を満喫。楽しい1日になりました。

ブリュッセルのグランプラス近くにある観光名所「小便小僧」の像。思ったよりも小さいブリュッセルのグランプラス近くにある観光名所「小便小僧」の像。思ったよりも小さい
ブリュッセルのグランプラスにて。駆け足での観光を楽しんだブリュッセルのグランプラスにて。駆け足での観光を楽しんだ
ベルギー名物のワッフル。フランドル地方のワッフルは外側がサクサクで、中はしっとり!ベルギー名物のワッフル。フランドル地方のワッフルは外側がサクサクで、中はしっとり!

 そして、1月6日には当初スケジュールにはありませんでしたが、急きょ、隣街ワレヘムで開催されるアマチュアレースに参加することになりました。アマチュアレースは「Bレース」と呼ばれています(プロの出るレースはAレース)。小さな子どもから大人まで、たくさんの人が参加し、街の裏手の畑があっという間にコースになります。

 ベルギーにはツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアのような大規模なレースはありませんが、生活のすぐ近くに自転車レースがあるような印象を受けます。アマチュア選手としてレースを楽しむ人たちが本当に多く、ロードレースもシクロクロスレースもエントリー料金は5〜10ユーロほど。国技が「自転車」と言われる理由が、このようなアマチュアレースを見ていると頷けます。

ワレヘムBレースの入場ゲート。入場券を買うと手に入退場フリーのスタンプを押してくれるワレヘムBレースの入場ゲート。入場券を買うと手に入退場フリーのスタンプを押してくれる
Bレースで売られていたホットドック(3ユーロ)。見るからに美味しそう!Bレースで売られていたホットドック(3ユーロ)。見るからに美味しそう!
参加者たちでごった返すスタート地点。一人一人スタートコールされる参加者たちでごった返すスタート地点。一人一人スタートコールされる
たくさんの参加者が出走したワレヘムのBレースたくさんの参加者が出走したワレヘムのBレース

 そして、豊岡選手の参加したワレヘムのレースは、ジュニア選手のベルギーカップというシリーズ戦にも指定されているらしく、11時頃に会場に着くと、すでに子どもから大人まで、泥だらけになっている選手がたくさんいました。コースは全体的にフラット(畑のなかにテープを張って、コースを作っているような状態です)ですが、やはり降り続く雨により、一帯が深い泥に覆われていました…。もっとも深いところでは、膝まで泥に浸かるような状態……これには思わず苦笑い!

 でもこのコース、豊岡選手が苦手とする「重い」コースだったので、絶好のトレーニングになりました。結果は3位入賞で、賞金も獲得できましたが、それだけでなく重い泥での独特な走り方が終盤になって掴めてきたそう。いい実戦トレーニングになりました。

ワレヘムのBレースにて。深い泥のセクションを進む豊岡英子ワレヘムのBレースにて。深い泥のセクションを進む豊岡英子
ワレヘムのBレースにて。深い泥のセクションを進む豊岡英子ワレヘムのBレースにて。深い泥のセクションを進む豊岡英子
ワレヘムのBレースにて。足首が泥に埋まってしまうくらいの泥区間ワレヘムのBレースにて。足首が泥に埋まってしまうくらいの泥区間
ワレヘムのBレースを3位でゴールした豊岡英子ワレヘムのBレースを3位でゴールした豊岡英子
Bレースでのフィニッシュ地点。タイム計測にセンサーなどは使わないBレースでのフィニッシュ地点。タイム計測にセンサーなどは使わない
ゼッケンを返すとエントリー代の半額が返却されるシステム。さらにスタートマネーや賞金も受け取ったゼッケンを返すとエントリー代の半額が返却されるシステム。さらにスタートマネーや賞金も受け取った
テクニカルな上りや下りが何度も登場する森の中のトレーニングコーステクニカルな上りや下りが何度も登場する森の中のトレーニングコース

 さらにいいトレーニングといえば、水曜日に地元の子が連れて行ってくれた森の中に最高の練習コースがありました! 隣町ハレルベイケのサッカースタジアムの周りの森を使ったバイクコースで、地元の女子選手がコースをシクロクロス用に改良したそうで、急な登りや下り、芝のコブ、砂、シケイン……などと、1周15分程度で、シクロクロスのほぼすべての要素が練習できるようになっています。拠点からは自転車で30分ほどで到着する距離。

 ベルギーでは多くの学校が、水曜日の午後はお休み。この日は学校を終えたたくさんの子どもたちでコースは賑わっていました。本格的なトレーニングというよりも、遊びの延長。こうやって、未来のスター選手は生まれるんだろうな、と自転車競技をめざす上で、改めてベルギーの環境の良さを実感しました。

Bレースでは、街の普通の道がパーキングエリアとなり、至る場所で洗車などの作業が行われるが、苦情等は一切ないというBレースでは、街の普通の道がパーキングエリアとなり、至る場所で洗車などの作業が行われるが、苦情等は一切ないという

 チュー「UCIレースが落ち着いて、地元で練習をする毎日だよね。いろんな縁から、この街に来たけど、練習環境は恵まれているよね。隣町でのBレースはどうだった?」

 「いやー本当に泥がすごかった。ジュニア選手と同時スタートで、一番後ろからのスタートで、マジで!? って思ったけど、いい練習になったよ!」

 チュー「受付とか子どもたちが面倒見てくれたんだよね?」

 「せやで! なんか子どもたちに連れて行かれて、出走の手続きをしたんだよ。面倒見てくれている人の子どもからその友だちって繋がっていって、よくわかんないけど、気がついたら子どもたちが面倒見てくれてる、みたいな。SNSにもやたらと子どもから友だちリクエストが来るし!」

Bレースでは、簡易テントの中で選手受付をし、ゼッケンを受け取る。Bレースでは、簡易テントの中で選手受付をし、ゼッケンを受け取る。
ジュニア選手との混走で最後尾に並ぶ豊岡英子。50名程度の選手が一斉にスタートするジュニア選手との混走で最後尾に並ぶ豊岡英子。50名程度の選手が一斉にスタートする

 チュー「でもありがたいことだよ。森のトレーニングも14歳のマティアスが連れて行ってくれたんだもんね!」

マティアスと森のトレーニングコースに向かう豊岡英子マティアスと森のトレーニングコースに向かう豊岡英子

 「雨が降ってたから、最初はやめようかとか言っていたけど、私が行くって言ったら、雨のなか、迎えに来てくれたから、本当にかわいいなぁって思った」

 チュー「英語が話せないけど、ハンドルに“右”と“左”を英語で書いてくれていたのにはビックリしたよ!」

 「たぶんお父さんに聞いてやったんだろうなぁと思ったんだけど、なんか本当粋な感じよね。仲良くしたいって思ってくれているのが伝わってくる!」

 チュー「マティアスの案内で、行った森の練習コースもすごく良さそうだったけど、どうたっだ?」

森のトレーニングコースで先導し、コースを教えてくれるマティアス森のトレーニングコースで先導し、コースを教えてくれるマティアス
トレーニング中の豊岡英子と14歳のマティアストレーニング中の豊岡英子と14歳のマティアス

 「行ってビックリ! って感じ。ほぼシクロクロスレースに出てくる全ての要素が盛り込まれていたよね。難しい上りや下り、砂や泥だけでなくって、スピードを出すところもしっかりあって。はぁ、そりゃ、スーパースターがこの国から生まれるのがわかる! って感じ。チビちゃんたちがずっとそこで遊んでいて、次から次へと子どもたちが増えてきて、暗黙の了解で道順もできていて、とにかくすごいって思った」

 チュー「あのコースはすぐに実戦に適応できるの?」

 「できるねぇ!」

 チュー「子どもたちもみんなレースがあって、その練習をしていたっていうのもすごい」

 「マティアスにあやこのおかげでいい練習になったよ! って言われたし。来年になったら抜かされてるかもしれん! 何年かして、ワールドカップの会場で会うかも……って感じ。でも強くなる子は、この時期からすでに決まっているような雰囲気もあった。彼はグッドライダーだからって言われている子がいて、彼が来たら、みんな道を譲るんだ。いまのネイスやアルベルトみたいなスーパースター選手は子どもの頃あんなだったのかなって思う」

右がコブのある滑りやすい泥のコース、左が50メートルほどの砂の練習コース右がコブのある滑りやすい泥のコース、左が50メートルほどの砂の練習コース
テクニカルな上りや下りが何度も登場する森のなかのトレーニングコーステクニカルな上りや下りが何度も登場する森のなかのトレーニングコース

 チュー「日本の環境とは本当に違うよね」

 「あの子たちは楽しくて仕方ないって雰囲気で、誰かに言われるわけではなく、好きだから何時間も何時間もずっと走ってた。子どもの頃からああやって自転車に乗っていたら強く、上手になるのは当然!」

 チュー「でも、姫も今からでも遅くない! ここで感性を磨くんだ!」

 「はい、毎日通わせていただきます!」

 チュー「いざとなったら、ステキなベルギー人の旦那さん見つけて、定住してもいいんだよ!」

 「いや、子どもにしかモテないから…。13歳以上に声をかけられたことはないんだよ…」

 チュー「え…」

サッカー場に隣接するシクロクロスのトレーニングコースサッカー場に隣接するシクロクロスのトレーニングコース
練習後に「いい練習になったよ!」と満足げなマティアス練習後に「いい練習になったよ!」と満足げなマティアス

 次のレースは14日のオーテヘム。これも隣町(大きな区分では同じ町)で開催されるシクロクロスレース。毎年、必ずベルギーナショナル選手権の翌日に開催されるという伝統があり、UCI2クラスながら、その年のチャンプが真新しいチャンピオンジャージを披露するのがお決まりです。そして、その写真を撮るためだけに、たくさんのメディアがやってきます。今年から女子カテゴリーが加わり、女子も世界チャンピオンなど、名だたる選手がスタートすると聞いています。

 そして先日、ようやく(!?)世界選手権が開催されるアメリカ・ルイビル行きのチケットを取りました。いよいよ、この遠征での最終レースである世界選手権(2月3日)が見え始めてきました。レースの結果も大切ですが、無事に世界選手権まで到達できることが最低限、必須の目標です。

豊岡英子(とよおか あやこ)
1980年、大阪生まれ。トライアスロンを経て自転車競技の選手に。シクロクロスでは2005年~11年まで全日本選手権で7連覇を達成し、2012年は2位。ヒョウ柄のウエアとバイク、キラキラのヘルメットなど華やかなビジュアルが彼女のトレードマーク。

中川裕之田中苑子(たなか そのこ)
1981年、千葉生まれ。2005年に看護師から自転車専門誌の編集部に転職。2008年よりフリーランスカメラマンに転向し、現在はアジアの草レースからツール・ド・フランスまで、世界各国の色鮮やかなサイクルスポーツを追っかけ中。

(写真・文 田中苑子)

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