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豊岡英子と田中苑子の欧州シクロクロス遠征記<3>年末年始恒例の“10日間5レース” 怒濤のレースウィークを乗り切った!

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 豊岡英子選手(パナソニックレディース所属、通称“姫”)と私(フォトグラファー田中苑子、通称“チュー”)のシクロクロス遠征。ワールドカップ2戦を終え、年末年始はシクロクロスレースがもっとも盛り上がる時期です。遠征前半戦のクライマックスとなる、濃密な1週間に突入しました。

1月1日のレース前、おせち料理ではなく「味がなくて最高にまずいパスタ」を食べる豊岡英子1月1日のレース前、おせち料理ではなく「味がなくて最高にまずいパスタ」を食べる豊岡英子
レースの出走受付をする豊岡英子。当日の朝、ゼッケンなどを受け取るレースの出走受付をする豊岡英子。当日の朝、ゼッケンなどを受け取る
会場へ向かう観客たちが通りの向こうまで続く。bバンクトロフィー・バール大会にて会場へ向かう観客たちが通りの向こうまで続く。bバンクトロフィー・バール大会にて

 この時期のベルギーでは、世界チャンピオンが出走するトップレースが毎日のように開催されます。今季からは女子選手が出走できるレースも増え、豊岡選手もUCI1クラスのレースが1日おきに3つ連続するスケジュールでした(前回レポートしたワールドカップ2戦を含めると、10日間のあいだに5レースが集中します)。もっとも注目を浴びるこの時期に開催されるレースは、どれも個性的で格式高いのがお決まりです。豊岡選手が出走した3つのレースを紹介しましょう。

bバンクトロフィー・ルンハウト大会のレース序盤、一桁の番手で走る豊岡英子bバンクトロフィー・ルンハウト大会のレース序盤、一桁の番手で走る豊岡英子
bバンクトロフィー・ルンハウト大会では、惜しくもメカトラブルで走行不可能となった豊岡英子bバンクトロフィー・ルンハウト大会では、惜しくもメカトラブルで走行不可能となった豊岡英子
bバンクトロフィー・ルンハウト大会では、惜しくもメカトラブルで走行不可能となった豊岡英子bバンクトロフィー・ルンハウト大会では、惜しくもメカトラブルで走行不可能となった豊岡英子

 まずはbバンクトロフィーのルンハウト大会(12月28日)。シクロクロス熱の高いオランダとの国境近くで開催されるもので、コースに連続するコブを越えるBMXコースが取り入れられています。さらに「泥のコース」としても有名で、畑を使ったエリアが毎年ひどい泥に覆われます。経験豊富な辻浦圭一選手が言うには、「ここの泥はヘドロ臭くって、走った後にお腹が痛くなる」とのこと…。

 今年も例外ではなく、泥の厳しいレース展開に。ベルギーチャンピオンのスヴェン・ネイスが泥でハンドル操作が効かなくなり、コース外の観客に突っ込むトラブルもありました。

bバンクトロフィー・ルンハウト大会の名物、コブが連続するBMXコースbバンクトロフィー・ルンハウト大会の名物、コブが連続するBMXコース
bバンクトロフィー・ルンハウト大会、男子エリートのレース風景。長い泥のエリアを走る選手たちbバンクトロフィー・ルンハウト大会、男子エリートのレース風景。長い泥のエリアを走る選手たち

 次に続くのは、スーパープレステージのディーヘム大会(12月30日)。これは夜のレースとして有名で、エリート男子のスタート時刻は17時半です。街を上手に使ったコース設定も特徴で、ブリュッセルの国際空港近くの大通りをスタート/フィニッシュとし、陸上トラックや教会の横、民家の路地裏の道もコースに組み込まれます。今季から昼間に女子のカテゴリーが新設されました。

高いエンターテイメント性をもつスーパープレステージ・ディーヘム大会。会場は熱狂に包まれる高いエンターテイメント性をもつスーパープレステージ・ディーヘム大会。会場は熱狂に包まれる
ワールドカップでの獲得ポイントが反映され、2列目からスタートする豊岡英子。スーパープレステージ・ディーヘム大会にてワールドカップでの獲得ポイントが反映され、2列目からスタートする豊岡英子。スーパープレステージ・ディーヘム大会にて
格式高い夜のレース、スーパープレステージ・ディーヘム大会。17時半のスタート時はすっかりと日が暮れる格式高い夜のレース、スーパープレステージ・ディーヘム大会。17時半のスタート時はすっかりと日が暮れる
雨の降るなかで開催されたスーパープレステージ・ディーヘム大会雨の降るなかで開催されたスーパープレステージ・ディーヘム大会
ヨーロッパでのレース経験が豊富な池本真也選手が急遽ピットに入ってくれることに!ヨーロッパでのレース経験が豊富な池本真也選手が急遽ピットに入ってくれることに!
エブリンがレース後の汚れた豊岡選手のヘルメットを掃除してくれるエブリンがレース後の汚れた豊岡選手のヘルメットを掃除してくれる

 そして一連のスケジュールで、最後のレースとなったのが、bバンクトロフィーのバール大会(1月1日)。これはグランプリ・ネイスというレースタイトルも付くとおり、ネイスのホームタウンで開催されるもので、彼が勝つのが暗黙のルール。新年早々、元旦の日に開催されるのもスゴいですよね? 今年は雨が続いて、斜面に作られたコースは、どこもかしこもひどい泥に覆われ、傾斜のきつい下り坂は非常にテクニカルなものでした。

bバンクトロフィー・バール大会の泥だらけのコースbバンクトロフィー・バール大会の泥だらけのコース
bバンクトロフィー・バール大会での水っぽい泥bバンクトロフィー・バール大会での水っぽい泥
水気の多い泥で覆われたbバンクトロフィー・バール大会の会場水気の多い泥で覆われたbバンクトロフィー・バール大会の会場
UCI審判たちも長靴が欠かせない。bバンクトロフィー・バール大会にてUCI審判たちも長靴が欠かせない
bバンクトロフィー・バール大会、最初のラップをトップが見える位置で走る豊岡英子bバンクトロフィー・バール大会、最初のラップをトップが見える位置で走る豊岡英子
bバンクトロフィー・バール大会、テクニカルな下り坂を進む豊岡英子bバンクトロフィー・バール大会、テクニカルな下り坂を進む豊岡英子

 今年のベルギーは例年よりも暖かく、毎日必ず1回は雨が降っています。このため、いつもは凍っているようなコースでも、泥になって重たくなってしまうのです。しかし、難易度の高いコースであっても、それはすべての選手にとって同じ条件。気持ちが切れた時点でレースは終わってしまうものです。

 そんな中で豊岡選手は健闘しました! ルンハウトではメカトラのため途中棄権でしたが、ディーヘムでは17位、バールでは12位という結果でした。例年以上に良く走れているのは、ファンの目にもしっかりと映るようで、沿道からの声援は増し、バールでのレースを終えたあとは、こちらのプロチームから声がかかったほどです。

 洗っても洗っても汚れるジャージの洗濯や、レース会場との往復など、過密スケジュールでのレース遠征は大変でしたが、無事にスケジュールをこなし、予想以上の好成績に、気持ちのいい新年を迎えられたことを嬉しく思います。何もお正月っぽいことはしていませんが……。

17位でフィニッシュしたスーパープレステージ・ディーヘム大会17位でフィニッシュしたスーパープレステージ・ディーヘム大会
レース後に水で顔に付いた泥を落とす豊岡英子レース後に水で顔に付いた泥を落とす豊岡英子
「いいリザルトながら、もっと上をめざすための課題が見つかった」とレース後に話す豊岡英子「いいリザルトながら、もっと上をめざすための課題が見つかった」とレース後に話す豊岡英子

 チュー「怒濤のレースウィークだったね!」

 「日本ではまず年末年始がすべて休みになるのに、こっちでは2日に1回、出ようと思えば毎日でもレースがある。(渡欧前に)日本にいるときは、脚の故障もあったので、(予定のレースに)全部出られるとは思っていなくって、いくつかはキャンセルするかも…って気でいたけれど、無事に全部スケジュールをこなせて良かった!」

 チュー「私もじつは、大きなトラブルなく年始を迎えられるなんて、思っていなかったんだよね。だから、ずっと気が張っていた。ルンハウトでのメカトラブルは残念だったけれど、この過密スケジュールながら、いい結果に終わって、本当に良かったよね!」

 「いやー、激しいスケジュールやった。レースのあとは毎回、寝てると足の指から手の先までつるんだよ。それだけ追い込めてたってことかもしれないけれど、改めてこっちの選手はすごいと思ったよ」

 チュー「どのレースが印象に残ってる?」

 「初めて出場したディーヘムは登りも砂も階段も泥もある。シクロクロスのすべての要素が盛り込まれていて、難しいんだけど、だからこそ伝統あるレースなんだと思った」

「吐きたくなるほどキツかった」と話す立体交差の階段。bバンクトロフィー・バール大会にて「吐きたくなるほどキツかった」と話す立体交差の階段。bバンクトロフィー・バール大会にて

 チュー「そうだよね、そしてそのあとのバールもすごいコースだった! 何だったんだろう、あの泥は!!」

 「スタート前に友だちの選手たちと話していて、みんなクレイジーだって言っていた。出たくないって言っている子も多かった。雨が続いていたからコース全体が泥で覆われて、それが特有の粘土質で滑るんだよね。最終周回で派手にこけたけれど、本当にあの泥はひどかったよ!!!」

 チュー「よく走りきったよ!」

 「ピットのあとの立体交差の階段はキツすぎて吐きそうだった。でもお客さんが、すごく応援してくれたんだよね。日本語で『頑張れ!』って言ってくれたり、『パナソニックちゃーーーん!!!』って応援してくれる人もいたんだよね、嬉しかった!」

 チュー「最終周回は泥だらけで、もはや姫って判別不可能だったよ……。かろうじて、ヘルメットが光ってるかも、ってくらいで。でも、コースの外で観客もみんな滑っていたんだよ。で、手に持っているビールをこぼして、さらに泥がぐちょぐちょになる悪循環!もう、どうにかしてくれよって思った。見に来る観客たちも、変わっているよね…本当にあれは田んぼの中みたいだった〜」

bバンクトロフィー・バール大会の最終周回、泥だらけになって走る豊岡英子bバンクトロフィー・バール大会の最終周回、泥だらけになって走る豊岡英子

 「うーん、極めつけは、そんな泥をたくさん食べたしな。とりあえず口の中がじゃりじゃりするねん。で、家に帰るまでずっとじゃりじゃりしてるねん! 耳とか目とかすべての器官に泥が入ってるし。いやー、自分で言うのもなんだけど、あの泥のコースを無我夢中で走ってる自分は“変態”としか言いようがないわ。まぁ、今回のバールは一生忘れられないレースになったと思う。あのジャスティン(手伝ってくれている男の子)ですら、レースを終えて帰ってきた私の姿に『うわっ!!』って引いてたもん。あのまま焼いたら“土偶”になれる勢い!笑。2日たった今ですら、爪に入った泥が取れないし」

 チュー「ははは…。私の靴やカメラも間違いなく土偶になれる。でも、なんだかんだ姫は泥のコースに強いと思う。難しいセクションでもほかの選手より落ち着いていたよ!」

会場で配られているレーススポンサー“bバンク”の帽子。レースから拠点に戻ってパチリ会場で配られているレーススポンサー“bバンク”の帽子。レースから拠点に戻ってパチリ

 「たしかにな」

 チュー「次のUCIレースまでは2週間くらい空くけど、どうする?」

 「今週末、急遽近くのナショナルレースに出ることになったけれど、頭のなかから内臓、足の先まで疲れすぎてるから、とりあえず休養して回復しながら……リラックスのために、ときどきショッピング、やな!」

 チュー「じゃぁしばらく、泥の変態モードはお休みで、キレイな女子モードだね!笑。あっ、私も泥だらけの靴を洗わなきゃ!」

 「せやで、あの靴を放置しているうちは彼氏とかできないし…」

 次のレースは1月6日、地元のワレヘムで開催されるナショナルレース(UCI公認のレースではない。関西シクロクロスやGPミストラルのようなレースです)。強い選手があまり出走しないこともあり、サポートスタッフたちは表彰台に立てる!と意気込んでいますが、まずはゆっくりと休んで次からのレースに備えたいと思います。

豊岡英子(とよおか あやこ)
1980年、大阪生まれ。トライアスロンを経て自転車競技の選手に。シクロクロスでは2005年~11年まで全日本選手権で7連覇を達成し、2012年は2位。ヒョウ柄のウエアとバイク、キラキラのヘルメットなど華やかなビジュアルが彼女のトレードマーク。

中川裕之田中苑子(たなか そのこ)
1981年、千葉生まれ。2005年に看護師から自転車専門誌の編集部に転職。2008年よりフリーランスカメラマンに転向し、現在はアジアの草レースからツール・ド・フランスまで、世界各国の色鮮やかなサイクルスポーツを追っかけ中。

(写真・文 田中苑子)

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