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足を伸ばしてゆったり旅気分もっとディープなしまなみへ 自転車+船で巡る「ゆめしま海道」サイクリング

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 愛媛県今治市と広島県尾道市とを結ぶ「しまなみ海道」。その東側に、しまなみ海道のルートにつながっていない島々が点在する。弓削島(ゆげしま)、佐島(さしま)、生名島(いきなじま)、そして岩城島(いわぎじま)の上島町(かみじまちょう)の4島だ。橋でつながっている前の3島と水路でつながる岩城島を含むこのエリアは「自転車+船」で巡る「ゆめしま海道」と呼ばれ、しまなみ海道を走りつくしたサイクリストたちの間で“ミニしまなみ”として新たな注目を集めている。しまなみ海道に続く魅力的なルートを知りたい、ゆっくり自転車旅気分を味わいたいという人におすすめの“しまなみ離島サイクリング”を紹介する。

「しまなみ海道」を逸れて、自転車+船で離島サイクリングへ Photo: Hiroyuki NAKAGAWA

4つの島々からなる「ゆめしま海道」

生名島(写真手前)と佐島をつなぐ生名橋。奥は弓削島と佐島をつなぐ弓削大橋(岩城島の積善山から望む) Photo: Hiroyuki NAKAGAWA

 「ゆめしま海道」はしまなみ海道の因島と生口島の東側に囲まれるように点在する4つの島を結ぶサイクリングロード。岩城島・生名島・佐島・弓削島の4つの島のうち岩城島以外の3島はすでに橋でつながっており、残りの岩城島と生名島をつなぐ「岩城橋」も2021年の開通を目指して建設が進められている。現在陸路でつながっている生名橋・弓削大橋の2つの橋を介し、3島をそれぞれ一周しても総距離約40km程度。アップダウンも少ない上に、近年は、島内におしゃれなカフェやレストラン、ゲストハウスが続々オープン。寄り道しながらゆっくりとサイクリングを楽しむには最適なエリアなのだ。

上島町のおすすめサイクリングコースや絶景ポイント、島民しか知らない隠れスポットなど上島町の”素顔”を集めた「かみじま 島ぶらMAP」。現地はもちろん、上島町のホームページでも入手可能 ©上島町
今治から来島海峡大橋を渡って大島へ。しまなみ海道おなじみのブルーラインに導かれて Photo: Hiroyuki NAKAGAWA

 ゆめしま海道へは快速船で渡る。主なアクセスルートとして、因島から渡るルートと今治から渡る2ルートがある。今回の旅の拠点となる今治港から因島・土生港へと向かう快速船「芸予汽船」は、ゆめしま海道の各島へと寄港する。ただし、時間帯によっては自転車を積載できない便もあるので事前のチェックをおすすめする。

 今回の旅では、来島海峡大橋を介して大島へ渡り、亀老山(きろうさん)展望台を経て、大島の東側に位置する友浦港からフェリーに乗るプランを目指す。来島海峡大橋がかかるダイナミックな景色を一望できる亀老山展望台は、個人的にはしまなみに来たら必ず訪れておきたい絶景ポイント。少し強度の高いヒルクライムポイントなので、それぞれの脚力や持ち時間に合せてルートをチョイスしてみてほしい。

短いながらも平均勾配9%と、強度高めのヒルクライム Photo: Hiroyuki NAKAGAWA

 亀老山は標高307m、距離3.7km。距離は短いが、平均勾配9%のヒルクライムだ。坂を上るにつれ斜度は増し、最大で13%に達するゾーンもある。一気に駆け上がるため、景色はみるみる眼下へ。辿り着いた展望台は、朝が早いせいか、まだ人の気配はない。澄んだ空気と朝日に照らされた瀬戸内の海、数々の島が山脈のように連なる景色を独り占めする贅沢。山並みならぬ“しまなみ”とはよくいったもの。深呼吸し、これから向かう「ゆめしま海道」の方向に視線をやり、再びペダルを漕ぎ出した。

これから向かう「ゆめしま海道」のある上島町エリアを望む Photo: Hiroyuki NAKAGAWA

レモンの魅力ぎっしりの岩城島

亀老山から10kmほど走ったところにある友浦港から乗船し、岩城島へ向かう Photo: Hiroyuki NAKAGAWA

 亀老山を下り、10kmほど走ったところで友浦港に到着。10時発の快速船に乗船し、岩城島へ向けて約30分の船旅が始まる。自転車の積載には追加料金がかかるが、輪行せずにそのままの状態で船の甲板に載せることができる。

 島の間を縫うように進む船。窓の外には島の側面や造船所がある風景が流れてゆく。乗り下りする島の人々の動きを見ながら、この船はここでの生活において陸を走るバスと同じくらい一般的な交通手段なのだと知る。しまなみのルートを少し外れただけなのに、広がってゆく見知らぬ風景に次第に旅感がかき立てられていく。

島々の間を縫うように進む船。瀬戸内では重要な交通手段として生活に溶け込んでいる Photo: Hiroyuki NAKAGAWA
ちょっと船に乗るだけで、旅感がぐっと増す Photo: Hiroyuki NAKAGAWA

 到着した1つめの岩城島は、「青いレモンの島」として知られる。一般的な黄色にレモンに対して、「青いレモン」とは採れたて、新鮮さの代名詞で、国産レモンを象徴する色でもある。岩城島ではレモンの収穫が始まる秋から年内いっぱいまで青いレモンを出荷。この日も、観光と併せて青いレモンを買いに訪れたという横浜からのサイクリストに出会った。

“青いレモン”の島、岩城島に上陸。一周15kmほどで、気軽に島一周サイクリングを楽しむのにちょうどいい距離 Photo: Hiroyuki NAKAGAWA
穏やかな海を眺めながら。海との距離の近さに、島ならではの暮らしを感じる Photo: Hiroyuki NAKAGAWA

 海岸沿いを走る一周コースは15kmほどで、アップダウンも少なく快適。「信号がない島」として知られるように交通量が少ないので走りやすい。静かに波が打ち寄せる音が聞こえる空間は、心なしか時間の流れが穏やかで、青く穏やかな海を間近に眺めながらのサイクリングは走っているだけでも心地よい。

 島のほぼ中央に位置する積善山(せきぜんさん)は全長3.8kmのヒルクライムコース。頂上にはゆめしま海道屈指の絶景展望台があり、360度のパノラマが見られる。この積善山は、春には約3000本の桜が見事に咲き誇るという絶景スポットなので、季節を合せて訪れてみるのも良いだろう。自転車で上る場合は、島の南側の岩城港から上るのがおすすめ。積善山を回りこむような道になっており、傾斜が緩やかになっている。

ライド中に見かける造船所も、造船産業が盛んなこのエリアならではの風景 Photo: Hiroyuki NAKAGAWA
岩城橋と隣の生名島をつなぐ岩城橋の予定場所。2021年に完成予定 Photo: Hiroyuki NAKAGAWA

 この岩城島でぜひ味わっておきたいのが「レモンポーク」。飼料に無農薬のレモンの搾りかすを配合して育てた島のブランド豚で、うまみが濃く、ジューシーで脂が甘いのが特徴だ。島内ではこのレモンポークを使ったしゃぶしゃぶやレモンポーク丼を堪能できる店舗があるので、ランチのタイミングに合わせて訪れてみるのも良いだろう。

岩城島の「レモンポーク」。ジューシーで脂が甘いのが特徴 Photo: Hiroyuki NAKAGAWA
「レモンポーク」を使ったしゃぶしゃぶに舌鼓 Photo: Hiroyuki NAKAGAWA

 このほかに、岩城港近くにある物産店には、青いレモンを皮ごと使ったマーマレードやレモンケーキなどのスイーツ、レモンのリキュールなどの製品が数多く並ぶ。岩城島にはレモン好きはもちろん、そうでなくても小さなバックパックを用意して臨むことをおすすめする。

レモンポークを使った絶品豚丼。「いわぎ物産センター」内の売店・喫茶「レモンハート」で食べられる Photo: Hiroyuki NAKAGAWA
デザートと補給食に島名物のレモンケーキもゲット Photo: Kyoko GOTO

“昔ながらの島”を新しく

 次は、2つ隣の佐島へ船で向かう。ゆめしま海道エリアは、船の自転車料金が無料になる「かみじまサイクルフリー券」を利用するとお得。上島町の各港などに置いてあるサイクルフリー券、またはホームページからダウンロードして印刷した券に、必要事項を記入して運賃支払い時に渡すと自転車の追加料金が無料になる(2018年3月31日まで有効)。

岩城島から2つ隣の島、佐島港へ向かう Photo: Hiroyuki NAKAGAWA
「かみじまサイクルフリー券」を渡すと船の自転車料金が無料になる Photo: Kyoko GOTO
弓削大橋を渡って佐島から弓削島へ。ゆめしま海道にもブルーラインがある Photo: Hiroyuki NAKAGAWA

 佐島から弓削大橋を渡り、弓削島へと向かう。ゆめしま海道にもしまなみ同様、進路を誘導するブルーラインが引かれてあるので、初めて訪れる人でも道に迷う心配はない。時間がない人は生名島からスタートして、佐島、弓削島の3島を最短ルートで巡るのも良いだろう。

 弓削島は上島町役場が位置する島で、同エリア内では中心的な存在。近年、他県からの移住者も増えつつあり、土地の豊かさや島の魅力を生かしたカフェなどの登場によって賑わいを見せている。

弓削港近くにある上島町ゆげ海の駅舎「ふらっと」 Photo: Hiroyuki NAKAGAWA
観光情報の発信拠点であり、休憩所としても使える Photo: Hiroyuki NAKAGAWA

 その1つが「食堂まるふ農園」。弓削港そばの路地裏に佇む、農薬や化学肥料を使わずに自家農園で育てた野菜をふんだんに使った「野菜が主役」の一汁三菜ランチが人気のレストランだ。

自家製野菜ランチが人気の弓削島「食堂まるふ農園」。バイクラックも完備 Photo: Hiroyuki NAKAGAWA
「お母さん」のような女将のまっきーさんこと、藤巻光加さん。カウンター越しにごはんを待つ子どものような気持ちに Photo: Hiroyuki NAKAGAWA

 野菜もそれぞれの土地で育てられ、伝えられてきた「固定種」(種採りがしやすい伝承品種)と「在来種」に限るというこだわりよう。季節ごとにとれた野菜でメニューが作られるため、島の旬を味わえるとあって地元でも人気を集めている。営業時間は11時30分〜13時30分(営業日は要確認)まで。なくなり次第終了なので、ここでのランチを目指すなら計画を立てて早めの入店をおすすめする。

農薬や化学肥料をつかわずに自家農園で育てた固定種の野菜をたっぷりとつかった「野菜が主役」の一汁三菜ランチ Photo: Kyoko GOTO
店内で使用する食器も知り合いの陶芸家の手作り Photo: Hiroyuki NAKAGAWA
100年以上の古民家を改修したパン・お菓子・コーヒーの工房「kitchen 313 kamiyuge」 Photo: Kyoko GOTO

 もう1つが、築100年以上の歴史をもつ古民家の蔵をリノベーションした、パンとお菓子、コーヒーの工房「Kitchen 313 Kamiyuge」だ。上弓削港近くの集落の小さな路地裏にあり、気を付けないと見落としてしましそうな隠れ家的な佇まい。素朴な風景になじみつつ、古さを感じさせない店構えにセンスの良さが光る。

 店名の「313」は住所の313番地に由来。国産小麦を材料に、手ごねでつくる「313食パン」や、もちもちのベーグルが人気。スイーツも島でとれる柑橘ジャムなどを積極的に使用しており、ここでも新たな形で“島の味”を堪能できる。コーヒー豆も自家焙煎で、焙煎してから大体5日以内の新鮮な珈琲豆を提供している。ライド中の休憩におすすめだが、火木土のみ11時~15時半の営業なので、こちらも計画的に立ち寄ろう。

手ごねでつくる「313食パン」 Photo: Hiroyuki NAKAGAWA
所せましと並ぶ美味しそうなパンやベーグル。おしゃれな品揃えに思わず写真を撮りたくなる Photo: Hiroyuki NAKAGAWA

時間や走力に合せてプランがたてやすい

 上弓削港よりさらに北上していくと、白い砂浜と鮮やかな水色のコントラストが美しい海岸線が続く。その先に現れたのが高浜八幡神社。海に向かって開いている神殿が珍しく、特徴的だ。

弓削島の北部にある「高浜八幡神社」 Photo: Hiroyuki NAKAGAWA
旅の無事を祈願して Photo: Hiroyuki NAKAGAWA
代金100円を置いておみくじを引く。何気に置かれている「恋みくじ」を引いて一喜一憂 Photo: Hiroyuki NAKAGAWA

 ここから先、さらに北へ向かうと、ゆめしま海道でとくに“絶景ルート”として人気がある外周ルートがある。島の北~東側を巡る約12㎞のコースで起伏が多く、ときに急坂も現れる、いわゆる上級者向けのルートだが、しまなみ全域で最東端を走るルートならではの大海原がダイナミックに広がる絶景が見られる。少し難易度高めのルートに挑戦したいという人や、時間に余裕がある人はぜひトライしてみてほしい。

船に乗ってもっとディープなしまなみへ Photo: Hiroyuki NAKAGAWA

 自転車に船を組み合わせるサイクリングは、「乗船時間が気になる」という人もいるかもしれないが、ゆめしま海道は各島がコンパクトで、かつルートにさまざまなバリエーションがあるので、往復の乗船時間さえチェックすれば、それに合わせたプランが立てやすい。いつもとちょっと違った自転車旅にトライしてみたい、と考えている人にはうってつけのルート。しまなみの後は“もっとディープなしまなみ”へ。自分で道を探す旅に出かけてみてはいかがだろう。

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