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いきなり「茨城シクロクロス取手ステージ」編Cyclist編集長がシクロクロスに初挑戦 第1話「予備知識ゼロで臨んだ小貝川」

by 澤野健太 / Kenta SAWANO
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 近年、Cyclist編集部で取材していて、関係者を含め色々な人が“ハマっている”シクロクロス。40歳を過ぎ、新しい自転車の分野に挑戦したいと思いながら、なかなかできないでいるCyclist編集長が、重い腰を上げてシクロクロスに挑戦する連載、「Cyclocross Diaries(シクロクロスダイアリーズ)“シクロクロス中年日記”」を始めます。出場の仕方、トレーニングの仕方からメカニックのことまで、第一線の先生に習いながら、これから始める方にも分かりやすくお届けします。第1弾は何も知らないまま出場した開幕戦「茨城シクロクロス(CX)取手ステージ」参戦記をお届けします。

最終周のコーナーをなぜか笑顔と苦悶の入り混じった表情で回る筆者 Photo: Motoshi KADOTA

いきなりレースに参加!

 「何かを始めるのに遅すぎるということはない」というどこかで聞いたことのあるようなフレーズ。私も40歳を超えて3年。編集長になり4カ月。仕事以外でもなにか新しいことを始めたいと思っていた。普段、お仕事でお付き合いしつつも、オフでも話を聞いていて魅かれる同年代の人たちは皆シクロクロスに夢中のようだ(というより仕事に打ち込みつつも、シクロクロスでも上位である人が多い)。今回、昨年台湾一周(環台=ファンダオ)に誘ってもらって以来、自転車のこと、普段の仕事についても相談している、GIANT JAPANの斎藤朋寛さんに教えを乞うことにした。

取手ステージはC1を7位で終えた斎藤朋寛さん Photo: Kenta SAWANO

 斎藤さんはGIANT JAPANの企画課課長として台湾、中国へと忙しく駆け回る一方で、シクロクロスのトップカテゴリーC1でも上位ランクを維持。今季開幕戦の茨城CX城里町うぐいすの里ステージでもC1優勝。海外出張の合間にレースに出るような生活で、仕事と自転車を見事に両立させている点も学ばせてもらおうと思った。

いわゆるインスタ映えも抜群なGIANTのTCX ADVANCED PRO 2。しかし初レースまでに、ほぼオンロードしか走っていなかった Photo: Kenta SAWANO

 まずは初戦をどこにするかじっくり考えて、そこに向けて、練習を積み、少しずつ装備を揃えていこうと、斎藤さんに相談すると、「まずは予備知識なしでレースに出てみましょうか。一番近い小貝川(茨城CX取手ステージ)がいいんじゃないですか」と笑顔で2週間後のレースが指定された。バイクはGIANTのTCX ADVANCED PRO 2(2017年モデル)を貸してもらえることになった。2週間で乗れたのは3回、ロード練習中に1回だけオフロードの山を越えただけだった。技術的なことは何も聞かず心配になって斎藤さんに連絡しても「澤野さんなら大丈夫。出てみると色々わかりますから」と優しい声が帰ってくるだけ。カテゴリーが一番下の「C4」に出場することだけが決まった。

空気圧の話だけで盛り上がり

 デビュー戦の日はあっという間にやって来た。前夜運動会の前の子供のようにワクワクして深夜1時過ぎまで寝つけず、午前4時に起床、4時半に神奈川の自宅を出発すると、小貝川には6時15分に到着。6時30分オープンの駐車場にはかなりの上位で滑り込み大満足。コースを目の前にした駐車場にとめ、朝日に輝く小貝川の川面を見ながら、折り畳みスツールにこしかけ朝のコーヒーを飲んだだけで、目的の半分が達成されたようで大満足…いや違った、きょうは大事な初戦だ、と自分に言い聞かせ7時の試走を迎えた。

 試走のためスタート地点からコースに入ると、テクニカルなコーナーの連続。細かく回りながらジャンプもある。小学生の時にBMXのレースに出ていた時のことを思い出し、周りに迷惑が掛からぬよう細心の注意で走る。数日前の雨で少しぬかるんだ土のコーナーをよけながら走っていると、上位カテゴリーの選手だろうか、狭いコーナーでも、内側から外側からどんどん私を抜いていく。「とりあえず周りを事故に巻き込まぬようにしよう」。落ち着いて走りながらコースを頭に入れた。コースの後半は舗装路を含めたオンロードのような、スピードの出る直線が多かった。

 試走で気づいたのはタイヤが滑ってしまうことと、路面の凹凸に上手く対応できていないこと。1周を走って「タイヤの空気圧が入りすぎているのではないか」と考えたが、今どれくらい入っているかも把握していなかった。3周目で合流した斎藤さんに聞いてみると「確かに入りすぎてますね。想像してた通りですけどね」と悪戯っぽく話し、エアゲージで確認したところ3.0barだった空気圧を、体重を確認した後「チューブ入りだし今日はこれくらいにしましょう」と1.8barまで下げてくれた。すると一気に路面を安心して攻められる(そんなに攻められないが)ようになった。

一列で連続コーナーを美しく回るC1レース前半のトップグループ Photo: Kenta SAWANO 

 近くにいた門田基志選手(TEAM GIANT)からは「何も教えないでパンパンのタイヤで走らせればよかったやん」と悪魔のようなアドバイスが。Rapha代表の矢野大介さんは私のタイヤをグイっと親指で押し「もう少し落としてもいいんじゃないの」と一言。実際にこの日、レース時の斎藤さんの空気圧は1.45barだった。タイヤの空気圧だけで、これだけ盛り上がるのか、それだけ大切なものなのか、と奥の深さを実感した。

 斎藤さんには1周試走につきあってもらい「基本的にコーナーはアウト→イン→アウトで抜けてください。連続コーナーでは常に先を見て次のコーナーを意識して走ること」とアドバイスを受けた。最初は常に大きく膨らんでいたが、常に先を意識することで大回りしなくなった(気がする)。最後に「スタートの前にはしっかりアップしておかないとだめですよ」と言い残し、すごいスピードで試走の選手の波に入っていった。

スタートは上々も…

67人出走でゼッケン67、最後尾からスタート Photo: Tomohiro SAITO

 筆者が出場するC4は午後1時55分スタート。それまでは観戦、応援と取材をしながら過ごす。C1のスピードとテクニックは「美しい」の一言。特に初めて体験するシケインやゴール手前での連続する180度コーナーではトップ選手のスムーズな動きをチェック。イメトレは万全であっという間に、自分のスタートが来た。C4のスタートはC1の直後。招集の放送が流れる中、C1のゴール写真や表彰式を撮影。全くアップなどできないまま、スタートの時間は唐突にやってきた。私のゼッケン67は最後尾。ゼッケンの番号ごとに最前列から並んでいくこともこのときに知った。

 快晴どころか、気温が30度近くなる中スタート。少しペダルのキャッチに手間取りそんなに多くの人は抜けず、最初のコーナーに入る。路面も乾ききって土埃が立つ中、先頭のライダーが遠くに見えた。「1位になるにはあれだけの人を抜かないといけないのか」と絶望的な気持ちになりながらも、「まずは一人ひとり抜いていくしかない」と気持ちを入れ替えた。このコースで一番アップダウンのあるコーナーで大勢がゆっくり上り、大きく膨らんでいるように見えたので、内側を差すようなイメージで速めに回ると、4、5人を抜けた。

アドバイス以上に連続コーナーで大回りする筆者 Photo: Tomohiro SAITO 
コーナーで慎重になりすぎスピードが落ちる Photo: Tomohiro SAITO

 しかしそこからは全く抜けないどころか、細かいコーナーでスピードが落ちるたびに横から抜かれることが多かった。後半の平地が続くコースでは、なんとか挽回しようとするが、だんだんと1人旅になり、なかなか前の集団をとらえることができなかった。

予備知識ゼロなので、前の人に必死に食らいつくしかなかった Photo: Tomohiro SAITO 
かなりのへっぴり腰で恐る恐るコーナーに入る Photo: Tomohiro SAITO

 苦しいことばかりではなかった。応援がすごいのだ。2周目に入り少し余裕が出てくると、いろいろな人が声をかけてくるのに気づいた。2mくらいの段差を緩やかに降りるセクションでは知らない人から「うまいコース取りだ!」などお世辞?が飛んできた。ゴール前の連続コーナーではGIANTブースや知らない人からも、「澤野さん、うまいよ」とか、「かっこいい!」などやる気にさせてくれる声援が飛んできた。終盤のきつい場面ではシングルスピードのシクロクロッサー・腰山雅大さんから「顔が怖いよ。笑って笑って」とゲキが飛び、思わず笑顔で走らないわけにはいかなかった。

 しかし、パワーは続かなかった2周目、10分が過ぎてくると、スピードを維持するのがつらくなってきた。コーナーの回り方も雑になってきて、連続コーナーでは次々と大きく膨らむ連鎖が続いた。最も失速したのはぶっつけ本番で臨んだシケイン。C1、C2の選手を朝から観察して、どこでビンディングペダルを外しているか、フレームのどこを持ってかついでいるか、足の運び方まで入念に観察したが、同じようにはいくわけがなかった。シケインを越えるごとに大きくジャンプし、1個ずつ時間をかけながら飛んでしまった。また自転車に再び乗るときの「飛び乗り」では大きく飛びすぎたり、最終周では飛んだ瞬間に右足がつりそうになったり、思った以上に体力とタイムを消耗する障害物だということが分かった。

中盤から完全なる独り旅に… Photo: Lemond SAWANO 

課題を把握 シーズン最後に表彰台を!

小貝川は木陰も気持ちよいコースだった。涼んでいる余裕はないが… Photo: Lemond SAWANO

 レースは30分間。スタート後15分くらいになると、完全に一人旅になった。おそらく最下位近くのグループにいそうなイメージだったので、前のグループに追いつこうと必死にペダルを回した。テクニカルな前半で前をとらえそうになっても、後半のスピードが出るゾーンで離されてしまった。3周回を終えると、残り1周のアナウンスがコール。周りの応援にも押され、なんとか前の1人を抜こうと頑張った。後半のシケインを超えた後の芝生ゾーンのコーナーで1人抜いて、さらに最後の応援を受け、ゴール前で前の選手を抜こうと前ばかり見ていたら、ずっと後ろにつけられていた選手に抜かれて無念のゴール…。

最後はゴール前で抜かれ54位でフィニッシュ Photo: Lemond SAWANO

 結果はC4Aで60人中54位。C4カテゴリーはあと1組あったが、各組の上位3人が上のクラスのC3へ昇格できるシステムということ。そのためにはあと50人は抜かないといけないという現実が叩き付けられた。疲労困憊でGIANTブースの斎藤さんへお礼がてら「全然ダメダメでした」と報告に行くと「お疲れ様でした。準備ほとんどしてないのに良く走れてましたよ!課題もたっぷり確認できましたし」とありがたい返答をもらった。自分なりに初戦の課題を整理すると、

①10分以上、全力走が持たない。
②新車での練習不足。ポジションが合っているのかわからない。はじめてのSRAMで逆に変速してしまった。
③シケインの超え方が分からない。
④コーナーの回り方を再確認
⑤前の選手の抜き方

の5点となった。「じゃあそれを練習して、次のレースに備えましょう」と次回にやっと指導を仰げることになった。さらには今シーズンの目標も設定。「野辺山で上位、シーズン最後のシクロクロス東京で表彰台を狙ってみましょう」と、かなりの無茶ぶりをされた。相当難しいことに決まっているが、高い目標に向かって、仕事と自転車競技を両立させて、シクロクロスの楽しさ、難しさを伝えていきたいと。

午後3時にやっとランチ。自分へのご褒美はカレー&ナン Photo: Kenta SAWANO 
レース後には色々な人から自分の写真が送ってもらえ、感動を振り返ることができた Photo: Yukikaze ISHIYAMA 

 初戦からの帰り道、シクロクロスならではの楽しさを感じることになった。それはいろいろな人に自分の走っている姿を写真に撮ってもらえ、それをSNSで拾ったり、直接送ってもらえるということ。「今日はお疲れ様でした」というメッセージとともに、メッセンジャーやフェイスブックで様々な人がアルバムを作ってくれ、そこに自分の真剣な(ふりで)表情の写真を見ることができるのだ。C1、C2の上位者は後日、さらに多くのカメラマンが撮った写真がアップされていた。今回のレースを含め、国内シクロクロスシーンの画像はInstagramのハッシュタグ「#cxjp」で検索することができる。

 最終的には、自分が表彰台に乗っている写真もいろいろな人に撮ってもらえるような実力をつけ、シーズン最後に笑いたいと思う。それまでシクロクロスのきつい練習とレースを楽しもうと思う。

■使用機材「GIANT TCX ADVANCED PRO 2」
フレーム:Advanced-Grade Composite OLD142mm
フロントフォーク Pro-Spec, Advanced-Grade Composite Full Composite OverDrive 2 コラム 12mm Axle
BBセット SRAM GXP Press Fit
(BB86)
ドライブトレイン:SRAM RIVAL 1 40T
F.ディレーラー:GIANT 1X チェーンガイド
R.ディレーラー:SRAM RIVAL 1
ハンドルバー:GIANT CONTACT 31.8
ハンドルステム:GIANT CONTACT OD2
サドル:GIANT CONTACT SL NEUTRAL
シートピラー:GIANT D-FUSE SL Composite 350mm
Fハブ:FORMULA DISC 28H
Rハブ:FORMULA DISC 32H
リム:GIANT P-X2
タイヤ:SCHWALBE X-ONE EVOLUTION 700x33C

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