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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<226>ロンバルディアに豪華メンバーが参戦 シーズン終盤戦注目の秋クラシックを展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 数々のドラマに沸いた2017年のサイクルロードレースシーズンは終盤戦。それでも、注目のレースはまだまだ残されている。UCIワールドツアーでは10月7日にイル・ロンバルディア(イタリア)、UCIヨーロッパツアーでは8日にパリ~トゥール(フランス)と伝統のレースが控えている。そこで、今回はこの2レースの注目ポイントを展望。コースの特徴や活躍が期待される選手にスポットを当ててみたい。

今年も激戦が予想されるイル・ロンバルディア。写真は2016年大会から、名所マドンナ・デル・ギザッロを上るプロトン =2016年10月1日 Photo: Yuzuru SUNADA

イル・ロンバルディア展望

 シーズン終わりが近い時期のクラシックレースであることから「落ち葉のクラシック」とも呼ばれるイル・ロンバルディア。クラシックレースの中でも特に格式の高い「モニュメント」の1つとされ、選手たちは1年間の疲れを抱えつつも、サイクルロードレース界きっての栄誉を賭けて力を振り絞る。

 例年コースが変化するが、年々その難易度が増していることや、不安定な秋の天候も関係し、大荒れのレースとなることもしばしば。出場選手の半数以上がリタイアするケースや、開催ギリギリまでビッグネームの参戦が決まらないなど、シーズン終盤ならではの出来事も起こりがち。一方で、来シーズンを見据えた選手たちの活躍のチャンスでもあり、ここでの走りから翌シーズンの飛躍につなげるライダーや、チームとの契約更新、または移籍先が未定の選手が“就職先”を見つけるきっかけになることもある。

イル・ロンバルディア2017コースレイアウト © RCS

 第111回目を迎える今年は、ベルガモからコモまでの247km。レースが大きく動くであろう登坂区間は、後半に集中する。

 サイクリストの聖地「ギザッロ教会」があるマドンナ・デル・ギザッロの上りが174.3km地点から始まると、続くムーロ・ディ・サルマーノは登坂距離1.92kmながら最大勾配が27%という驚異の上り。その後の下りでいったんプロトンはまとまると見られるが、これらの区間を余裕をもってクリアできないと重要局面で太刀打ちができないだろう。

イル・ロンバルディア2017ラスト10kmのコースレイアウト © RCS

 勝負は、226.1kmから始まるシヴィグリオ(登坂距離4.2km、平均勾配9.7%、最大勾配14%)と、235.9km地点から始まるサン・フェルモ・デッラ・バッタグリア(登坂距離2.7km、平均勾配7.2%、最大勾配10%)で決まるだろう。レース全体での獲得標高は、今回も4000mを超える。

 レース展開としては、この2カ所を前にサブエースクラスが先手のアタックを打ち、シヴィグリオから優勝候補たちの本格的な駆け引きが見られそう。サン・フェルモ・デッラ・バッタグリアの頂上からフィニッシュまでは5.3km。下り終えてラストの1.5kmは平坦となるが、優勝をほぼ手中にした選手の独走となるか、はたまた小集団で現れるかも見ものだ。

豪華メンバーが続々参戦表明

 イル・ロンバルディアを主催するRCSスポルトは、9月29日に出場を予定する主要選手を発表。今年はこれまでになく豪華な顔ぶれとなる見通しだ。

ヴィンチェンツォ・ニーバリが優勝した2015年大会以来2年ぶりにイル・ロンバルディアへと戻ってくる =2015年10月4日 Photo: Yuzuru SUNADA

 地元イタリア勢では、2年前の覇者であるヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)がその時以来の参戦。総合2位で終えたブエルタ・ア・エスパーニャの後も精力的にレースに出場しており、この大会の前哨戦ともいわれる9月30日のジロ・デル・エミーリア(イタリア、UCI1.HC)では2位と上々の走りを見せた。チームは実力者のジョヴァンニ・ヴィスコンティと、ベテランのフランコ・ペッリツォッティの両イタリア人ライダーをアシストに据えることを決めており、万全を期して大会へと乗り込む。

 アスタナ プロチームからは、ファビオ・アルがメンバー入り。自己最高の成績は2014年の9位と、あと一歩優勝争いに加わることができていないが、得意とするタフな上りから今回は勝機を見出せるか。ヤコブ・フルサング(デンマーク)、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)も出場が予定される。グランツールでも活躍する3本柱の誰かで優勝を狙うことだろう。

2009年、2010年と連覇したフィリップ・ジルベールも復権を狙う =ジロ・ディ・ロンバルディア、2010年10月16日 Photo: Yuzuru SUNADA

 イタリア勢以外では、2009年と2010年にこの大会を制したフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)が今大会へ並々ならぬモチベーションだ。ここ数年はロード世界選手権への注力もあり、ロンバルディアでの走りが鳴りを潜めているが、今年は“復権”を目論んでいる様子。心強いのは、けがから完全復調したジュリアン・アラフィリップ(フランス)の存在だ。激しい上りを繰り返す中で、スピード感満載の展開に持ち込むことができれば、両者のどちらかで優勝を狙える確率がグッと高まる。厳しい上りが含まれるワンデーレースにめっぽう強いダニエル・マーティン(アイルランド)も控え、あらゆる側面から攻撃を繰り出すはずだ。

個人TT世界王者のトム・デュムランもロンバルディア制覇を狙う =2017年9月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

 どこよりも先んじて8人の出走ライダーを発表したチーム サンウェブは、個人タイムトライアル新世界王者のトム・デュムラン(オランダ)がエース。ライバルと比較し、アタックの爆発力は落ちるものの、淡々と上るスタイルは消耗戦で強さを発揮する。また、ジョーカーとしてマイケル・マシューズ(オーストラリア)もメンバー入り。上れるスプリンターの新境地なるか。

 選手層で言えば、チーム スカイも強力。ミケル・ランダ(スペイン)、ワウト・プールス(オランダ)、ミカル・クウィアトコフスキー(ポーランド)が出場を予定。上り、下り、平坦にと自在に攻撃ができるメンバーをそろえてきた。

総合2位となったツール・ド・フランス以降も好調なリゴベルト・ウランも活躍が期待される =ツール・ド・フランス2017第9ステージ、2017年7月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ツール・ド・フランス総合2位のリゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)は、ジロ・デル・エミーリア3位と好調。そのツールでは不発に終わったナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)もシーズンの締めくくりに一発会心の走りを見せたいところ。ロンバルディアのタイトルにあこがれるバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)に加え、ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール ラモンディアル)といったグランツールレーサーもエントリーに名を連ねている。

 なお、前回優勝のエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)は、ジロ・デル・エミーリアで落車し右肩甲骨を骨折。シーズン終了を発表し、ロンバルディアには出場しない。

パリ~トゥール展望

 秋のスプリンターズクラシックの代表格、パリ~トゥール。こちらも今年で第111回目を迎える。UCIカテゴリーは1.HCクラスで、UCIヨーロッパツアーに属するが、伝統や格式はワールドツアーに匹敵する。それゆえUCIワールドチームが多数出場。プロコンチネンタルチームやコンチネンタルチームは、トップチームの胸を借りる絶好の機会だ。

パリ〜トゥール2017コースレイアウト ©︎ A.S.O.

 フランス北部の街・ブルを出発し、トゥールまでの234.5km。おおむね平坦基調で、スプリンターに有利なレイアウトではあるが、残り9kmで登場するコート・ド・ブー・ソレイユと残り7kmで通過するコート・ド・レパンの上りがレースに波乱を呼び込む可能性がある。過去には終盤の上りで抜け出した選手たちの優勝争いになった例もあり、大集団をもってしても追いきれないといった展開もあり得る。エーススプリンターを擁するチームは、この上りでしっかりとペースをコントロールする必要がある。

昨年優勝のフェルナンド・ガビリアが2連覇をかけてパリ〜トゥールに参戦する =2016年10月9日 © B.Bade

 昨年優勝のフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)が2連覇をかけて参戦する。平地系アシストをそろえ、完全ガビリアシフトで臨む心積もりのよう。

 対抗馬はアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)。夏場は体調不良で思うような日々を過ごせなかったが、ここへきて復調傾向にある。また、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)も参戦に意欲を見せている。ツールでの落車負傷から戦線復帰を果たしているが、本調子には程遠い状況。調整を兼ねて直前数レースに出場する予定だが、コンディションを上げられるか。地元フランス勢では、ナセル・ブアニ(コフィディス ソリュシオンクレディ)が初優勝を目指す。

 アレクシス・グジャール(フランス)とオリバー・ネーセン(ベルギー)のアージェードゥーゼール ラモンディアル勢は、スプリンターチームの統率をかいくぐって逃げ切りを狙える選手。アンダー23(23歳未満)ロードレース世界王者になったばかりのブノワ・コズネフロイ(フランス)も控え、今大会のダークホースとなる可能性は大いにある。

今週の爆走ライダー−ツガブ・グルマイ(エチオピア、バーレーン・メリダ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 このほど、トレック・セガフレードが来季加入する選手を発表。その中には、今年バーレーン・メリダの一員として走ったグルマイの名もあった。国際色豊かなチームに、アフリカ大陸の星が加わる。

2018年からトレック・セガフレードへの加入が決まったツガブ・グルマイ =ツアー・ダウンアンダー2017チームプレゼンテーション、2017年1月14日 Photo: Yuzuru SUNADA

 このところの台頭で、プロトンでのアフリカ勢の存在は当たり前になりつつあるが、その中にあってグルマイは異色の1人。なぜなら、自転車競技では無名に近いエチオピアのライダーだからだ。次々と有望株が現れる隣国のエリトリアは、かつてエチオピアに併合され、選手たちも同国代表でオリンピックなどに出場した経緯を持つが、純粋なエチオピア人選手としてトップシーンで走るのはグルマイが初めてだという。

 MTN・クベカ、ランプレ・メリダ、そして現チームとキャリア6年目を迎え、ツール2回を含むグランツールには5度の出場。持って生まれた心肺機能と運動能力の高さは、ステージレース向きだと自負する。

 トレック・セガフレードへの移籍にあたっては、「ステージレースでの優勝を目指したい」と目標を語った。どんな苦しみにも耐えられる原動力である「国を背負って戦っている」という思いが、この先の飛躍にきっとつながるはずだ。

 何より、26歳というのも魅力的。サイクルードレース界においては、まだまだこれからの年齢。類い稀なフィジカルに、駆け引きをものにするスマートさが加わればステージレースでの勝利がより近くなるだろう。その前途は確実に開かれている。

ステージレースでの総合優勝が目標というツガブ・グルマイ。国を背負って走る責任のもと、新天地での活躍を誓う =ツール・ド・フランス2017第18ステージ、2017年7月20日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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